夜の冷気が肌を突き刺す。服を着ていれば、それも防げていただろうが、それは無理な話だった。何故なら先程身に纏っていた全ての服を剥ぎ取られてしまったのだから。
露になった胸を両腕で隠す。その豊かな胸は何ら恥じることのない均整のとれたものだ。その下にある腰周りも引き締まっており、男なら誰だって目を奪われてしまうような優美な曲線が描かれている。それでも当の本人は、やっぱり恥ずかしいのだろう。しなやかな手はしきりに局部を行ったり来たりして、彷徨っている。一糸纏わぬ姿では、それも当然のことだ。だけど頬を朱に染めてやるその素振りは、逆に人の目を憚らんとする尊い宝石のような輝きを放っていた。
「み、見るな!」
自分に向けられた視線に気づき、すぐさま抵抗の声を発した。それと共に手を前に掲げる。
その長く伸びた肢体は、戦いに身を置いてきたというのにも関わらず、傷一つない。といって、手折れてしまいそうな細さはない。程よく肉付いたそれは一種の艶やかさを放っており、人を魅了する。真っ黒に塗られた夜のキャンパスの上に彩られた肉体の数々は、まさしく一枚の絵画のようにあった。しかし幾ら芸術的であろうと、そこに描かれているのが裸では、本人は喜ぶことはできない。南斗水鳥拳を伝承するレイはそんな己の格好を省みて、再び嘆息を漏らさずにはいられなかった。
「女々しい奴だな。いつまでそうしょげている気だ」
長く伸びた金色の髪を後ろに撫でつけ、インテグラは隣を裸で歩くレイを睨んだ。当初、レイによって素っ裸にされたインテグラは今、レイのコンバットスーツを着ている。結局、レイに命じた服の探索も手持ちのバッグになかった以上、場所と状況を考慮した結果、先送りとなったのだ。それでも裸で闊歩などしたくないと、インテグラは鬼気迫る表情でレイの服を奪い取り、それを身に纏っている。スッポンポンになった理由は自分にあるため、成すがままにインテグラの代わりに丸出しとなったレイだが、今は少し後悔していた。寒いのだ。あまりの寒さに頬は赤みを増してくるし、身体には鳥肌が浮かんでくる。無論、修練を積んだレイが、夜風によって身体機能を低下させることはないが、それでもやはり寒いのだ。
「しかたあるまい。こうまで冷え込むとなると、おまえが着ている服が羨ましくなりもする」
少しでも暖を逃すまいとレイは再び自分の胸を抱きしめる。
「私は言ったはずだぞ。貴様が悪いのだと」
「分かっている」
ズビビビと鼻をすすり、レイは頷いた。マミヤの時は、裸にしても割と上手く物事は進行したが、どうやらインテグラは違うようだ。その証拠にインテグラは自らの裸を全く恥じずに、更に何ら気後れすることなく人の服を剥ぎ取り、おまけに物凄く重たい紫外線照射装置を無理矢理背に付け、洞窟の探索を強いている。ここまで己を突き通す女性を、レイは知らない。世紀末の世界にあっては女性は弱者であり、いつだって搾取される側だ。そこに自らを主張できる機会などはない。確かにマミヤのように抵抗できる者もいる。しかし、その数は決して多くないし、またインテグラはマミヤほどに強くはない。それなのにインテグラは毛ほども恐れることなく、自分を示しているのだ。一体インテグラの住まう地はどうなっているのだろうか。疑問に思ったレイは素直にインテグラに訊ねてみた。
「ところで、インテグラはどこに住んでいるのだ?」
「イギリスのロンドンだが……それがどうした?」
「いや、なに、そちらは復興は進んだのかと思ってな」
「ふむ、おかげさまでな。まだ多くはないが、人も戻りつつある」
インテグラはロンドンで起きたナチスの災禍を思い出し、神妙に答えた。あの事件によってロンドンは文字通り火に焼かれ、数多くの命が犠牲となったが、それでグレート・ブリテンが前へ進み道を失ったわけではない。最後まで吸血鬼の暴虐に抗い、国を守った国民がいたのだ。インテグラは、そんな祖国のことを思い、自然と胸を張った。
「……そうか」
と、レイは静かに頷いた。レイの住む地では、モヒカンがひしめき合い、毎日自らを恥じることなく蛮行に手を染めている。そんな中では、人間の善性など疑いをかけずにはいられないが、まだ世界には望みはあるのだ。レイはインテグラの答えに、世紀末の明るい夜明けを夢見た。
「レイは日本人か? そちらの方はどうだ? 災難にあったと聞いたが?」
レイの瞑目する様子にこちらを真に心配しているのが見て取れたインテグラは、今度は逆にレイに心を配った。祖国の復興に忙しいとはいえ、日本での災害のニュースは度々彼女の耳に入ってきていたのだ。
「問題ない、と言いたいところだが、先行きはまだ明るくない」
「そうか」
「だが、いずれは平和を取り戻すさ。そのための希望の光も、おれは見つけた」
レイは
ケンシロウのことを思い出しながら、力強く答えた。その瞳からこぼれる温かい眼差しには、自らの強い意志と相手への深い信頼が窺える。それに気がついたインテグラは、思わず微笑んでしまった。感じてしまったのだ。どんな逆境にも負けず、諦めないという人の強さというものを。勿論、それがいつだって勝利をもたらすことはないということは知っている。「化物」は、いつだってその強さを捻り潰してくるものだ。だけど、勝利に必要なのは、いつだってその強さだということも、インテグラは知っている。彼女はその強さを垣間見せてくれたレイを頼もしく思った。
「あれは……?」
頬を緩めたインテグラの耳に、レイの声が突如として聞こえてきた。彼の視線を辿ってみれば、彼の背から発せられる紫外線に反射して、キラリと光るものが置いてある。インテグラは周辺の警戒一切をレイにまかせて、それを手にとった。
「これは……眼鏡か」
それは黒縁の四角いレンズをした眼鏡だった。地面に落とした時に壊れてしまったのが、片方のレンズにはヒビが入っている。一時間も洞窟を歩き続けて、ようやく見つけたものだ。何か意味があるものではないかと、仔細に調べてみるが、どこにも変わった様子は見られない。
「どうだ?」
眼鏡を舐めるように見るインテグラに、レイは訊ねた。
「いや、これは単なる眼鏡のようだ。だが、こうした人工物があったということは、いつかは分からないが、人がいたということは確かなようだ」
「ああ……だが、近くに人の気配は感じられない」
レイの言葉に軽く頷き、インテグラは更なる洞窟の奥を見やる。どうにも洞窟の終わりは随分と先のようだ。紫外線照射装置でもっても尚、光が届かない暗闇に目を向けて、インテグラは小さな溜息を吐いた。地図にわざわざ書かれており、そして人が通れるほどの大きな穴が延々と続いているのだから、洞窟に何かしらあるのではないかとインテグラは勘ぐってみたが、それを証明するにはまだまだ時間が必要のようだ。
「レイ、引き返すぞ」
「む、いいのか? 折角、ここまで来たというのに」
「一時間も歩いて、これではな……。些か勿体無い気もするが、やはりこれ以上は時間を無駄にするわけにはいかん。他の参加者の探索に力を割こう」
そう言うなり、インテグラたちは踵を返して歩いていった。
【レイ@北斗の拳】
【状態】健康、鼻水がタラリ、すっぽんぽん
【装備】紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険
【道具】武器支給品、支給品一式
【思考】
基本 インテグラの言葉に従う
1. 自分が着る服を探す
【支給品説明】
対吸血鬼、柱の男用にナチスが開発した武器。背部に機械を背負い、両肩にランプが伸びる。吸血鬼を一瞬で塵に変えるほどの強烈な紫外線を照射する。
最終更新:2013年10月28日 00:15