あにまん民のオリキャラ同士をAIの力を借りて戦わせるスレ @ ウィキ
《忘却の勇者アルフ・ヴェーリッヒ VS クレッシェンドハート》
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aioricharabattle
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《忘却の勇者アルフ・ヴェーリッヒ VS クレッシェンドハート》
何もない平原。ただ、風の音だけが草を揺らしていた。 太陽は天頂にあり、雲ひとつない空が広がっている。
その静寂の中に、ぽつんと立つひとりの少女がいた。
「ドキドキが……する! なんだろうこの感じ、ここに何か……すっごくトキメく何かがいる気がするの!」
彼女の名はクレッシェンドハート。歌と心を糧に生きる魔法少女。今日も“ドキドキ”を求めて世界を巡っていた。
彼女の姿は鮮やかで、リズミカルに揺れる髪の毛さえ、旋律を奏でるようだった。
だが──
そこには、彼女が認識できるものは何もなかった。
目を凝らしても、何もいない。
それでも、確かに何かが“いる”気配だけが満ちている。
それでも、確かに何かが“いる”気配だけが満ちている。
ガァァァン……
突如、乾いた空気を裂くように鳴り響く音が耳を打つ。まるで何かが斬られたような、不自然な“結果”がそこにだけ浮かび上がった。
地面が斜めに裂け、黒い裂け目が陽光を吸い込む。
「えっ!? こ、この地面……裂けてる……? いつ? 誰が……?」
彼女は振り返る。だが誰もいない。胸の鼓動が早まる。
ドクン。ドクン。ドクンッ!!
「……ドキドキが……止まらない……! これって、もしかして戦いの予感!? やるよ、クレッシェンドハート!」
彼女の背後に、無数の音符が浮かび上がる。
ビュン!ビュンビュン!
色とりどりの弾幕が、空間に向かって乱れ飛ぶ。旋律を帯びた魔力が、空気そのものを震わせて進む。
けれど──
ドゴォン!!
爆ぜるのは、何もない空間だけ。
まるでそこに何かがいるかのように……何もいないのに、音符は“何か”に当たって消えていく。軌跡が空に消えるごとに、草がなぎ倒され、衝撃だけが結果として残る。
「当たってる…っぽいのに、何にも見えない! そんなの、そんなのって……」
ガンッ!
次の瞬間、彼女の肩口から光が迸る。間違いなく”何か”が彼女を斬りつけたのだ。
だが彼女には“それ”が見えない。血が飛び散ることすらなく、ただ痛みだけがそこにあった。
「きゃっ…!? い、いつの間に!?」
目を凝らすが、視界には何も映らない。心の奥底で、彼女は気づき始めていた。
──この戦場には、“結果”だけがある。
──この戦場には、“結果”だけがある。
「……っ、なら……こっちも全力で応えるしかないよねっ!」
彼女はいつものように歌い始める。
明るく、華やかで、どこまでも伸びやかな旋律。 風が止まり、空が彼女の声に反応するかのように震えた。
「ドッキ・ドッキ・ハートビート♪ トッキ・メッキ・ラブパルスッ☆」
高らかに歌い上げたその瞬間、空気が振動し、彼女の背後から無数の音符が炸裂する。
ビートの魔法が解き放たれ、煌めくようなエネルギー弾が次々と空へと躍り出た。
弾幕は彼女を中心にして円状に拡がり、その波紋はやがて空間全体を包囲する陣形へと変貌する。
ドンッ、ドンッ、ドンッ
空間に漂う旋律はやがて重層的な音壁となり、ただ耳に届くだけだった音楽が、物理的な圧力へと変貌していく。
低音は大地を震わせ、高音は空間を裂くように鋭く、音そのものが暴力的な存在感を持ち始めていた。
ビリビリと肌を焼くような音の波が幾重にも折り重なり、視認できないほど精妙な震動が空気を編み込み、透明なドームのように戦場を覆い尽くす。
その中心に立つのはクレッシェンドハート。彼女の心臓の鼓動が拍子となって、魔力のリズムは絶え間なく拡張を続けていた。
しかし、その魔音の中心部で、一瞬の違和感が生まれる。
音の圧力がある一点で歪み、見えざる“何か”が内部から干渉している気配が走った。
草が一斉にその音圧でなぎ倒され、空気の流れが劇的に変化する。
ヒュッ。
突如として生まれた無音の隙間。音で満ちていたはずの世界が、一拍の休符のように静まり返る。
音の壁が形成した包囲網──その背後、完全に“認識外”から、ただ一太刀だけが放たれた。
ズシャアアッ!!
その斬撃は、空気すら裂く鋭さ。風の音が断絶され、瞬間的に周囲の世界が凍りついたかのようだった。
まるで彼女の存在そのものを否定するような、致命的な一閃。
鋭利で、曖昧で、どこから来たのかすら分からない刃が、ただ“結果”として彼女を襲った。
「えっ……なに、今……?」
声が出るより先に、体が反応した。意思とは無関係に身体が吹き飛び、草原を何メートルも滑りながら転がる。
その視界の中で、彼女は必死に何かを探した。だが──そこには“誰もいない”。
何もいないはずの空間に、明確な攻撃の痕跡だけが存在していた。
体は重く、感覚が遠のいていく。指先から熱が抜け、骨の中まで衝撃が響くような感覚が残る。
それでも、どこから来た攻撃なのか、その手がかりすら見つけられない。
その不可視の剣技は、彼女の目を欺くだけでなく、感覚すら通り越して“記憶”をすり抜けていた。
気づけば、彼女は地に伏していた。草の匂い、擦れた肌、心臓の鼓動だけが現実だ。
「いったぁ……! でも、ま、まだ……負けない……!」
鼓動が強くなる。 全身の力が、溢れ出す。 体中を音の波が駆け巡り、髪が光に染まり始める。
「これが、わたしの──クレッシェンド・フィナーレッ!!」
全ての音符が収束する。爆発的なエネルギーが、光となって広がった。
草原すべてを呑み込むかのような大音響。音の奔流は空を揺らし、天を焦がした。
草原すべてを呑み込むかのような大音響。音の奔流は空を揺らし、天を焦がした。
ドォォォン!!!!!!
辺り一帯が焼き尽くされ、爆音と衝撃波が空を裂き、雲を消し飛ばす。
空が赤く染まり、草原はその余波で波打ち、焼け焦げた土の匂いが一面に広がる。
空が赤く染まり、草原はその余波で波打ち、焼け焦げた土の匂いが一面に広がる。
かつてのなだらかな大地は音の暴力に刻まれ、巨大なクレーターや亀裂を生み、地形そのものが異様な姿へと変貌していた。
その中心に──何もいなかった。否、いないはずだった。
けれど、その“何もない”空間に、ほんのわずかな違和感が走る。
けれど、その“何もない”空間に、ほんのわずかな違和感が走る。
スッ……
それは風が通る音か、はたまた鼓動が止むほどの静けさの中に紛れた異音か。
次の瞬間、彼女の目の前にだけ、一閃。
まるで“それ”だけが世界から切り取られたかのような、孤高の軌跡。
まるで“それ”だけが世界から切り取られたかのような、孤高の軌跡。
──アルフ・ヴェーリッヒは、その瞬間だけ存在を許された。
それは、クレッシェンド・フィナーレの衝撃すら耐え切った“結果”だった。
なぜなら、アルフは物理的な攻撃を避けたのではない。“存在そのものが、そこにいなかった”のだ。
彼は忘却の権能によって、世界から観測されず、干渉されず、あらゆる因果から抜け落ちていた。
だからこそ……フィナーレの大爆発にも巻き込まれなかった。
音も、熱も、衝撃も──彼を対象としない限り、彼に届く術がない。
そして彼は、彼女が気づくよりも早く、決着の一太刀を放った。
「──え……?」
視界が、回転する。
足が地から離れ、空へと投げ出された。
世界がぐるぐると回り、空と地の境界が消える。
ドサッ。
彼女は倒れ伏し、そのまま意識を手放した。
歌声も鼓動も、音と共に消えていった。
……そして、そこには何もいなかった。
誰一人として、彼女を倒した存在を“認識”できないまま。
ただ一つ──忘却の風だけが吹き抜けた。
「勝者──アルフ・ヴェーリッヒ」