アマネオ
蜜月旅行(2003年)
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amaneo
窓の外には遠く白壁の古城があり、その岸には翠玉色の波が打ち寄せた。蒼穹の天辺をなぞるカモメたちまで、カナメには西語を話しているような気がした。
大きなダブルベッドで、ナツはひとり穏やかな朝日を迎えた。肌触りの良い毛布に太股を擦ると、満足気な顔で息を吐く。
と、急に目を開いた。何かに気付いた様子で、毛布を掴みながら起きる。辺りを見回して、不安げな表情をする。ナツは立って毛布を身体に巻き付ける。白い絹地が褐色の肌にコントラストして眩しい。
部屋を抜け、テラスに小柄な彼の姿を見つけ、駆け寄っていく。背中に勢いよくぶつかると、カナメは体勢を崩して海へ落ちそうになった。ナツは慌ててその腕をつかんでバランスを戻す。彼は怒った様子で何か言おうとしたが、ナツのシュンとした顔を見てキスをした。
彼女は彼の腕を引っ張って傍にある黄金色のパエリアを指差す。テーブルを囲み、彼がワインを開けているとナツが彼の傍に椅子を持ってきて座った。
どうやらテーブルが広すぎて寂しかったらしい。二人は食事前にまたキスをした。
エビの香草焼きが乗ったパエリアと、クレソンとトマトにガーリックフライが添えられたサラダに、白ワイン。乾杯して、ナツはバリボリとエビの殻ごと食べた。頬についたバジルソースを不意に彼に拭き取られ、苦笑いして頬を染めた。
気づけば、彼が頬杖をつき彼女が食べるのを嬉しそうに眺めていた。
ナツは乱暴に食べかけのエビを彼に差し向けた。
むろんカナメはそれをぱくぱくぱくと無造作に食べる。
2003年、スペイン。二人は新婚旅行中。