アマネオ

シンクロ(1994年秋)

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amaneo

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 日焼けしたナツが暗闇の川べりに立ち、赤ン坊の声を聞いていた。水際には灰色の葦が大量に生えている。
「赤ちゃん、どこかいな」
ナツは赤ン坊が自分の子供だと確信している。霧の中、声をたよりに葦の林を掻き分けると見つかった。

 葦の舟に風車が一本。鮮やかな朱と青が塗ってある。それだけが枯れてくすんだ風景に浮かび上がっていた。ナツは舟を覗き込む。かわいらしい赤ン坊がいた。ナツは「それ」を抱き上げた。
「君は男の子? 女の子?」

 二人の幼い男女が入り交じったような顔。しばし首を傾げた後、まあどっちでもいっか、とナツは頬を寄せる。首のすわらないままに、きょとんとした表情でナツを見つめる。
「名前は」

 葦の舟の内側には文字がびっしりと書きこまれている。

天子怨天子怨海女禰音女海
天子怨天子怨女禰緒音緒禰
天子怨天子怨禰緒音緒海女

「君はあまねお? いや。それはウチやし。なら君は――」

 腕の中で大量の触手が這い回った。赤ン坊はクリオネのような化け物になっている。テレビの砂嵐めいた声を出した。
「僕は、星の落とし子」

 ナツは驚いて川に落としてしまった。「星の落とし子」と名乗った「それ」から、頭部が裂けて蝙蝠のような羽が出てきた。沈みながら、醜悪な触手をナツへと伸ばす。

 しかし蠢く触手はナツの頬に触れるのみ。
「お母さん、お母さん!」

 星の落とし子は触手を伸ばしたまま、川を流され沈んでいった。ナツは呆然として、その消えた辺りを見つめていた。

 ナツは自室のベッドで目を覚ました。夢を見ていたが、細部は窓の外にたちこめる濃霧のように曖昧だった。階下から母親の呼ぶ声がする。朝食ができた、早く起きなさいと。

 ナツは急に夢の一部を思い出した。視界が涙で歪んでくる。腕で目元を覆った。
「あの子、捨てられとった。私も捨ててしまった。あの子は何回捨てられるん? いつ幸せになれるん?」