貴方を/貴方達を守るために――(後)
静寂に支配された薄暗い草原の中。
先程まで早鐘のように打ち鳴らされていた剣戟の音は、既に途絶えている。
小夜音は馬乗りの態勢を堅持したまま、眼下の六花を冷たい目で眺める。
先程まで早鐘のように打ち鳴らされていた剣戟の音は、既に途絶えている。
小夜音は馬乗りの態勢を堅持したまま、眼下の六花を冷たい目で眺める。
「失敗しましたね。貴女はわたしの誘いに乗って、不用意な攻撃を仕掛けてしまった」
小夜音の見せた隙は、意図的に作られたものだった。
隙を晒したかのように演技して、小夜音は次の一足であっさりと態勢を持ち直した。
そのまま六花の薙ぎ払いを掻い潜って、体当たりで今の状況にまで持ち込んだのだ。
隙を晒したかのように演技して、小夜音は次の一足であっさりと態勢を持ち直した。
そのまま六花の薙ぎ払いを掻い潜って、体当たりで今の状況にまで持ち込んだのだ。
「ですが罠を仕掛けた私自身も、今ので勝負が決められるとまでは思いませんでした。
手心を加えられるとは……私も侮られたものですね」
「あ、くぅっ…………」
手心を加えられるとは……私も侮られたものですね」
「あ、くぅっ…………」
六花も必死に態勢を変えようとするが、小夜音は押し退けられない。
この状況から獲物を逃す程、月瀬小夜音は甘い剣士では無い。
六花に許されたのは精々、下から睨み付ける事くらいだった。
この状況から獲物を逃す程、月瀬小夜音は甘い剣士では無い。
六花に許されたのは精々、下から睨み付ける事くらいだった。
「悔しいですか? でもね、これは貴女が招いた結末。
戦場で敵に情けを掛けるなんて最低最悪の行為が、貴女を敗北させたのよ」
「……悔しいよ。でも、負けた事が悔しい訳じゃ無い」
戦場で敵に情けを掛けるなんて最低最悪の行為が、貴女を敗北させたのよ」
「……悔しいよ。でも、負けた事が悔しい訳じゃ無い」
六花のその言葉に、小夜音の片眉が持ち上げられる。
小夜音が見下ろす先、六花の目尻には涙が浮かんでいた。
小夜音が見下ろす先、六花の目尻には涙が浮かんでいた。
「わたしは小夜音さんを止めたい……友達に人殺しなんてして欲しくない。
なのに何も出来ないまま、何も分からないまま終わるのが悔しいの……っ!」
「……そう」
なのに何も出来ないまま、何も分からないまま終わるのが悔しいの……っ!」
「……そう」
友人の嗚咽を前にして、小夜音は短く答えを返すだけに留まった。
命を奪おうとしている自分に、慰めの言葉を掛ける資格など無いと理解しているのだ。
だから、口にするのはたった一つの事実。
命を奪おうとしている自分に、慰めの言葉を掛ける資格など無いと理解しているのだ。
だから、口にするのはたった一つの事実。
「良いわ。貴女を見逃してあげる事は出来ないけど、せめて私が戦う理由くらいは教えてあげましょう」
寄せられる六花の視線。
それを正面から受け止めながら、小夜音は己が願いを告げる。
それを正面から受け止めながら、小夜音は己が願いを告げる。
「蔵人さんを生還させる。それだけが、私の目的よ」
明かされた動機に、六花の目が見開かれる。
これ以上の会話は無用だと云わんばかりに、小夜音が刀を振り上げる。
そのまま白刃が突き立てられるかに思われたが、そこで鋭い声が近くから聞こえて来た。
これ以上の会話は無用だと云わんばかりに、小夜音が刀を振り上げる。
そのまま白刃が突き立てられるかに思われたが、そこで鋭い声が近くから聞こえて来た。
「――そこまでだ」
振り返った小夜音と六花が目撃したのは、十メートル程離れた位置に屹立する恭介の姿。
恭介の手元には、黒光りする無骨な金属の塊が握り締められている。
月明かりのお陰で、それがマシンガンである事が小夜音達にも見て取れた。
恭介の手元には、黒光りする無骨な金属の塊が握り締められている。
月明かりのお陰で、それがマシンガンである事が小夜音達にも見て取れた。
「月瀬、って云ったな。今すぐ武器を下ろして大人しくしろ。
許可無く動けば……分かるよな?」
「……失策、でしたね。六花だけに気を取られ過ぎましたか。
まさかそんなモノまで隠し持っているとは思いませんでした」
許可無く動けば……分かるよな?」
「……失策、でしたね。六花だけに気を取られ過ぎましたか。
まさかそんなモノまで隠し持っているとは思いませんでした」
恭介が持っているのはナイフだけでは無かった。
目立ち過ぎる所為で装備こそしていなかったものの、マシンガンも支給されていたのだ。
これで完全に形勢は逆転。馬乗りの態勢となっている小夜音に、吐き出される銃弾から逃れる術は無い。
目立ち過ぎる所為で装備こそしていなかったものの、マシンガンも支給されていたのだ。
これで完全に形勢は逆転。馬乗りの態勢となっている小夜音に、吐き出される銃弾から逃れる術は無い。
「しかし――本当に撃てますか?」
だと云うのに、紅の剣士はまるで焦る様子を見せなかった。
あくまでも冷静な面持ちで、漆黒の銃器と恭介を交互に見据える。
あくまでも冷静な面持ちで、漆黒の銃器と恭介を交互に見据える。
「銃は私の専門外ですが、その扱いが容易でない事くらいは知っています。
見た所、貴方は学生……恐らく銃を撃った事すら無いのではないでしょうか。
そんな貴方がマシンガンなどと云う代物を撃てば、私だけで無く六花にも当たりかねませんよ?」
見た所、貴方は学生……恐らく銃を撃った事すら無いのではないでしょうか。
そんな貴方がマシンガンなどと云う代物を撃てば、私だけで無く六花にも当たりかねませんよ?」
銃器というものは、完全な素人が使いこなせる程生易しい代物では無い。
その扱いには、十分な知識と訓練が必要になってくる筈だった。
マシンガンの性質上、この状態からならまず当たりはするが、六花を巻き込まない云う保証は無い。
その扱いには、十分な知識と訓練が必要になってくる筈だった。
マシンガンの性質上、この状態からならまず当たりはするが、六花を巻き込まない云う保証は無い。
「そうだな。けど、だからと云って躊躇するつもりは無い」
「……その引き金を引いた結果、六花も死ぬ事になってもですか?」
「……その引き金を引いた結果、六花も死ぬ事になってもですか?」
平然とした返答に、訝しむ様子となる小夜音。
六花が固唾を飲んで見守る中、恭介は躊躇い無く断言する。
六花が固唾を飲んで見守る中、恭介は躊躇い無く断言する。
「――それでもだ」
殺す、と。
六花が巻き添えになろうとも、警告に従わぬのならこの銃を撃ってみせると。
何の迷いも感じさせぬ冷徹な瞳で、棗恭介は断言していた。
六花が巻き添えになろうとも、警告に従わぬのならこの銃を撃ってみせると。
何の迷いも感じさせぬ冷徹な瞳で、棗恭介は断言していた。
「恭介、さん……何で?」
六花が肩を震わせて、哀しげな声を絞り出す。
恭介は氷の表情で銃を構えたまま、淡々と少女の疑問に答える。
恭介は氷の表情で銃を構えたまま、淡々と少女の疑問に答える。
「……月瀬と同じだよ。月瀬がその蔵人って奴の為に戦っているように、俺にも守りたい人間がいる。
違うのは、俺が守りたい人間は二人。そして俺は伊集院観影をまるで信用していないって事だ」
「守りたい人が二人……? なら恭介さんは、この殺し合いに逆らおうとしている……の?」
違うのは、俺が守りたい人間は二人。そして俺は伊集院観影をまるで信用していないって事だ」
「守りたい人が二人……? なら恭介さんは、この殺し合いに逆らおうとしている……の?」
六花が恐る恐る尋ねると、恭介はこくりと頷いた。
「だったら! 殺し合いに反対しているのなら、こんな事をしないでも……っ」
「――勘違いしないでくれ。俺が殺し合いを潰すのは、あくまでも理樹と鈴を生還させる為だ。
その過程で必要があれば、殺人を躊躇うつもりはないさ」
「――勘違いしないでくれ。俺が殺し合いを潰すのは、あくまでも理樹と鈴を生還させる為だ。
その過程で必要があれば、殺人を躊躇うつもりはないさ」
六花の言葉を途中で断ち切って、恭介が冷たく言い放つ。
変わらない。殺人遊戯に反抗しようとしているものの、根底にある考え方は小夜音と全く同じ。
そんな事実を突き付けられて、最早六花は何も云えなくなってしまった。
一方で、小夜音は揺さ振りを掛けても無駄だと判断したのか、ようやく刀を下ろした。
変わらない。殺人遊戯に反抗しようとしているものの、根底にある考え方は小夜音と全く同じ。
そんな事実を突き付けられて、最早六花は何も云えなくなってしまった。
一方で、小夜音は揺さ振りを掛けても無駄だと判断したのか、ようやく刀を下ろした。
「……分かりました、此処は退きましょう。ですが、このまま貴方の云いなりになるつもりはありません」
「何?」
「こういう事です」
「何?」
「こういう事です」
小夜音は馬乗りの態勢の状態から、腕と膝の力だけで後方に跳躍。
少女の飛んだ先、草むらの向こうには大きく崖が広がっていた。
恭介も小夜音を狙い撃とうとしたが、跳躍の高度が低い。
照準が定まるよりも早く、小夜音の姿は崖に吸い込まれて行った。
少女の飛んだ先、草むらの向こうには大きく崖が広がっていた。
恭介も小夜音を狙い撃とうとしたが、跳躍の高度が低い。
照準が定まるよりも早く、小夜音の姿は崖に吸い込まれて行った。
「六花。その甘さを捨てなければ……次はありませんよ?」
最後にそんな言葉を残しながら。
剣鬼は戦場を後にした。
剣鬼は戦場を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇
「……ふう。流石に少々疲れましたね」
数分後、安全圏まで移動した小夜音は休憩を取っていた。
崖から飛び降りた事による負傷は無い。襲撃する前に周囲の地形は概ね把握している。
あの崖が大した高さで無いと知っていたからこそ、小夜音は躊躇わずに飛び降りたのだ。
木の幹を背に座り込んで、乱れた呼吸を整える。
崖から飛び降りた事による負傷は無い。襲撃する前に周囲の地形は概ね把握している。
あの崖が大した高さで無いと知っていたからこそ、小夜音は躊躇わずに飛び降りたのだ。
木の幹を背に座り込んで、乱れた呼吸を整える。
「いけませんわね、こんな事では」
失敗した、と思う。死合いに集中する余り、もう一人への警戒を怠ってしまった。
今の自分に重要なのは死合いを制するよりも、確実に敵を仕留める事。
この殺し合いが始まってすぐに考えたのは、如何にして恋人の蔵人を生き延びらせるかだった。
今の自分に重要なのは死合いを制するよりも、確実に敵を仕留める事。
この殺し合いが始まってすぐに考えたのは、如何にして恋人の蔵人を生き延びらせるかだった。
どちらがより強いかを競って、仮想世界の中で斬り合った事。
共にショッピングモールを訪れて、楽しい時間を過ごした事。
最高の相棒として肩を並べ、世界の危機へと立ち向かった事。
その全てが、小夜音にとっては掛け替えの無い大切な思い出である。
共にショッピングモールを訪れて、楽しい時間を過ごした事。
最高の相棒として肩を並べ、世界の危機へと立ち向かった事。
その全てが、小夜音にとっては掛け替えの無い大切な思い出である。
蔵人は小夜音に、思い出を、暖かさを、幸せを与えてくれたのだ。
彼さえ生きていてくれるのなら、この手がどんなに汚れようとも構わない。
彼さえ生きていてくれるのなら、この手がどんなに汚れようとも構わない。
そこに私情を挟む気など無い。
命乞いする者であろうとも、殺す。
鍛え抜かれた男であろうとも、殺す。
何の力も持たぬ幼子であろうとも、殺す。
嘗て友情を確かめ合った相手であろうとも――
命乞いする者であろうとも、殺す。
鍛え抜かれた男であろうとも、殺す。
何の力も持たぬ幼子であろうとも、殺す。
嘗て友情を確かめ合った相手であろうとも――
『でも私も……蔵人さんの事が好き、なんです。こればかりは六花にも譲れません』
『小夜音さん……やっぱり小夜音さんは格好良いね、そう云うところ』
『小夜音さん……やっぱり小夜音さんは格好良いね、そう云うところ』
唐突に脳裏を過ぎったそれは、嘗て六花と交わしたやり取り。
六花とは恋敵とも云える関係だったし、観影の実験の中で殺し合った事もあった。
にも関わらず、六花は敬意を持って友人として接してくれていた。
様々な垣根を越えて認め合った、大切な友人。
そんな相手ですらも殺さなければならない。
六花とは恋敵とも云える関係だったし、観影の実験の中で殺し合った事もあった。
にも関わらず、六花は敬意を持って友人として接してくれていた。
様々な垣根を越えて認め合った、大切な友人。
そんな相手ですらも殺さなければならない。
「っ……………」
唇を噛む。刀を握り締める。
溢れ出しそうになった感情を、懸命に押し殺す。
溢れ出しそうになった感情を、懸命に押し殺す。
「……蔵人さん、あの時から小夜音は貴方のものです。
私がどうなっても構わない。たとえ地獄に堕ちようとも、必ず貴方だけはお守りします」
私がどうなっても構わない。たとえ地獄に堕ちようとも、必ず貴方だけはお守りします」
そうして小夜音は再び立ち上がった。
演じるのは、戦いをひたすらに愉しむ剣鬼。
どれだけ心が軋みを上げても、絶対に退きなどしない。
そもそも、退路など存在している筈が無い。
演じるのは、戦いをひたすらに愉しむ剣鬼。
どれだけ心が軋みを上げても、絶対に退きなどしない。
そもそも、退路など存在している筈が無い。
元より自分は、未来を望めぬ身なのだから。
【E-4 森/1日目 深夜】
【月瀬小夜音@終末少女幻想アリスマチック】
【装備:長曽祢虎徹入道興里(黒衣)@終末少女幻想アリスマチック】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:肉体的疲労(小)】
【思考・行動】
基本方針:他の参加者達を皆殺しにして、蔵人を優勝させる。
1:他の参加者達を皆殺しにする。
※長曽祢虎徹入道興里は長さ一尺八寸(約55cm)の小太刀です。
※小夜音の参戦時期は、小夜音ルート信綱撃破以降の時期です
【装備:長曽祢虎徹入道興里(黒衣)@終末少女幻想アリスマチック】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:肉体的疲労(小)】
【思考・行動】
基本方針:他の参加者達を皆殺しにして、蔵人を優勝させる。
1:他の参加者達を皆殺しにする。
※長曽祢虎徹入道興里は長さ一尺八寸(約55cm)の小太刀です。
※小夜音の参戦時期は、小夜音ルート信綱撃破以降の時期です
◇ ◇ ◇ ◇
剣鬼が去った後の戦場より、百メートル程離れた草原の中。
少年と少女は口を閉ざしたまま、地面に腰を落としている。
そのまま、どれだけの間沈黙が流れただろうか。
やがて六花が、恐る恐ると云った様子で疑問を投げ掛ける。
少年と少女は口を閉ざしたまま、地面に腰を落としている。
そのまま、どれだけの間沈黙が流れただろうか。
やがて六花が、恐る恐ると云った様子で疑問を投げ掛ける。
「……もし小夜音さんが戦いを続けようとしたら、銃を撃っていましたか?」
「ああ、撃っていただろうな」
「っ――――」
「ああ、撃っていただろうな」
「っ――――」
絶句する六花。そんな彼女の様子にも構わずに、恭介は言葉を続ける。
「月瀬は強い。正面から戦えば、マシンガンを持っていても勝てるか分からない。
危険な橋を渡るくらいなら、お前ごとでも撃っていたさ」
危険な橋を渡るくらいなら、お前ごとでも撃っていたさ」
小夜音の力量が並外れている事は、六花との一戦から明らかである。
もし小夜音が戦いを続行しようとすれば、恭介とて殺される可能性があった。
なればこそ恭介は、警告が無視された場合は本気で発砲するつもりだったのだ。
そんな恭介の考えは、六花にとって受け入れ難いもの。
もし小夜音が戦いを続行しようとすれば、恭介とて殺される可能性があった。
なればこそ恭介は、警告が無視された場合は本気で発砲するつもりだったのだ。
そんな恭介の考えは、六花にとって受け入れ難いもの。
「どうして……どうして! 何で小夜音さんも恭介さんも、そんな風に人を殺すなんて云えるんですか…………っ」
ポロポロと涙を流しながら、六花が思い切り声を張り上げる。
小夜音や恭介が、何故わざわざ観影の言葉に踊らされているのか。
他の人間の命を奪おうなどと、そんな馬鹿げた事を考えられるのか。
少女は激情を抑えようともせず、更なる糾弾を行おうとして――
小夜音や恭介が、何故わざわざ観影の言葉に踊らされているのか。
他の人間の命を奪おうなどと、そんな馬鹿げた事を考えられるのか。
少女は激情を抑えようともせず、更なる糾弾を行おうとして――
「なーんてな。驚かして悪かったな、六花」
ピタリと、時間が停止する。
「…………へ?」
六花は何が何だか分からずに、間の抜けた声を洩らしてしまった。
そんな六花を前にして、恭介はすいとマシンガンを持ち上げる。
そんな六花を前にして、恭介はすいとマシンガンを持ち上げる。
「これはモデルガンだよ。元々は俺や仲間達が遊びで使ってたものなんだが、それが偶然支給されたみたいでな。
当たるとそれなりに痛いが、殺傷力は皆無だ」
当たるとそれなりに痛いが、殺傷力は皆無だ」
そこまで説明されても、六花には事態がまだ飲み込めない。
目を白黒させながら、更なる解説を要求するのがやっとだった。
目を白黒させながら、更なる解説を要求するのがやっとだった。
「えーと……つまり?」
「月瀬やお前に云った事はハッタリさ。俺は確かに理樹や鈴を守るつもりだが、出来る限り人命は尊重したいと思ってる。
仮に俺がこの銃を撃ったとしても、誰も死ぬ事は無かった。月瀬を退かせる為にあんな演技をしていたって訳だ」
「…………」
「月瀬やお前に云った事はハッタリさ。俺は確かに理樹や鈴を守るつもりだが、出来る限り人命は尊重したいと思ってる。
仮に俺がこの銃を撃ったとしても、誰も死ぬ事は無かった。月瀬を退かせる為にあんな演技をしていたって訳だ」
「…………」
お前ごと撃つと云われた時とは違う意味で、絶句してしまう六花。
恭介の瞳に、先程までのような鋭さは欠片も無く。
あれだけ緊迫していた雰囲気は、いつの間にか跡形も無く消し飛んでいた。
恭介の瞳に、先程までのような鋭さは欠片も無く。
あれだけ緊迫していた雰囲気は、いつの間にか跡形も無く消し飛んでいた。
「それにしても俺の演技、なかなか上手くやれていたと思わないか?
映画のシリアスシーンみたいで、ドキドキハラハラしただろ?」
映画のシリアスシーンみたいで、ドキドキハラハラしただろ?」
そう云って笑う恭介は、まるで悪戯を成功させた子供のようだった。
六花は答えない。俯いたまま、ただ肩を小刻みに震わせている。
やがて、六花の喉奥から小さな声が零れ落ちた。
六花は答えない。俯いたまま、ただ肩を小刻みに震わせている。
やがて、六花の喉奥から小さな声が零れ落ちた。
「……………む」
「む?」
「む?」
未だ異変の前兆に気付かぬ恭介が、六花の顔を覗き込もうとする。
軽率なその行動は、只の自殺行為に過ぎなかった。
軽率なその行動は、只の自殺行為に過ぎなかった。
「むっき――――――――!!!」
「おわぁ!?」
「おわぁ!?」
その動き、正に疾風の如し。
恭介が反応する間も無く、六花は組み技の態勢へと移行。
小柄な体に似合わぬ程の力で、恭介の首を締め上げていた。
恭介が反応する間も無く、六花は組み技の態勢へと移行。
小柄な体に似合わぬ程の力で、恭介の首を締め上げていた。
「あったまに来た! そりゃ助けてくれた事には感謝してますけど、でも…………でもっ!
小夜音さんを退かせる時は仕方無いとしても、その後まで演技し続ける事無いじゃないですか!
本当に哀しかったんですから! わたしが涙まで流した意味は一体!?
あの時の辛さとか哀しさとか涙とか、その他色々返して下さい! 返せったら返せーっ!!!」
小夜音さんを退かせる時は仕方無いとしても、その後まで演技し続ける事無いじゃないですか!
本当に哀しかったんですから! わたしが涙まで流した意味は一体!?
あの時の辛さとか哀しさとか涙とか、その他色々返して下さい! 返せったら返せーっ!!!」
豪快にヘッドロックを決めながら、矢継ぎ早に六花が捲くし立てる。
だが此処で忘れてはいけないのは、六花は古流武術を修めていると云う事だ。
六花程の使い手にもなれば、槍術以外も一通りは身に付けている訳で、そんな彼女の締め技は殺人技にも等しい訳で。
だが此処で忘れてはいけないのは、六花は古流武術を修めていると云う事だ。
六花程の使い手にもなれば、槍術以外も一通りは身に付けている訳で、そんな彼女の締め技は殺人技にも等しい訳で。
「…………あ゛」
六花が気付いた時には、腕の中の恭介は顔面蒼白となっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「げほっ、がはっ………ったく、酷い目に遭ったぜ」
「うう……すみません。でもでも! 恭介さんがあんな酷い嘘を吐くのがいけないんですよ!
本っ当に、反省して下さい!」
「うう……すみません。でもでも! 恭介さんがあんな酷い嘘を吐くのがいけないんですよ!
本っ当に、反省して下さい!」
何とか死の淵から舞い戻った恭介が、痛む喉をさする。
対する六花は申し訳無さそうな表情となりながらも、未だ心中では怒り収まらぬ様子だった。
とは云え、こんなやり取りを続けて時間を浪費するべきでは無い。
恭介はごほんと一度咳払いしてから、改めて六花の方に向き直った。
対する六花は申し訳無さそうな表情となりながらも、未だ心中では怒り収まらぬ様子だった。
とは云え、こんなやり取りを続けて時間を浪費するべきでは無い。
恭介はごほんと一度咳払いしてから、改めて六花の方に向き直った。
「兎に角、だ。何時までもこうしちゃいられない。この殺し合いを止める方法の模索、理樹達の捜索。
他にもやるべき事は一杯あるんだ。お前だってやる事はあるだろ?」
「それは勿論です。わたしは小夜音さんを止めないと……いけませんから」
「よーし、なら早くリトルバスターズの活動を始めようぜ」
「リトルバスターズって……さっきも云ってましたよね。それって一体何なんですか?」
他にもやるべき事は一杯あるんだ。お前だってやる事はあるだろ?」
「それは勿論です。わたしは小夜音さんを止めないと……いけませんから」
「よーし、なら早くリトルバスターズの活動を始めようぜ」
「リトルバスターズって……さっきも云ってましたよね。それって一体何なんですか?」
聞き慣れない単語に、六花が首を傾ける。
恭介は勝気な笑みを浮かべながら、少女の問いに返答した。
恭介は勝気な笑みを浮かべながら、少女の問いに返答した。
「悪を成敗する正義の仲間――人呼んで、リトルバスターズさ」
そうやって紡がれた声は、何処か感慨深げだった。
六花の反応を待たずして、恭介は草原の中を歩き出す。
後ろから足音が付いてくるのを確認しながら、マシンガンに左手を添える。
六花の反応を待たずして、恭介は草原の中を歩き出す。
後ろから足音が付いてくるのを確認しながら、マシンガンに左手を添える。
そして。
六花からは見えないような角度で、『イングラムM10の安全装置を入れた。』
六花からは見えないような角度で、『イングラムM10の安全装置を入れた。』
――マシンガンは、偽物などでは無かった。
演技だった、という事こそが真の演技。
恭介は本当に六花ごと小夜音を撃つつもりだったし、これからも必要さえあれば他者を切り捨てるだろう。
問答無用で発砲しなかったのは、六花と云う駒の入手を優先しただけの話。
殺人遊戯の転覆を狙ってはいるものの、理樹と鈴以外の命など思慮の外である。
演技だった、という事こそが真の演技。
恭介は本当に六花ごと小夜音を撃つつもりだったし、これからも必要さえあれば他者を切り捨てるだろう。
問答無用で発砲しなかったのは、六花と云う駒の入手を優先しただけの話。
殺人遊戯の転覆を狙ってはいるものの、理樹と鈴以外の命など思慮の外である。
理樹と鈴の為に必要だからこそ、抗う。
此処に居る棗恭介は、致命的なまでに理樹と鈴だけのミカタだった。
少年の頭を占めるのは、既に亡き親友達から託された言葉。
此処に居る棗恭介は、致命的なまでに理樹と鈴だけのミカタだった。
少年の頭を占めるのは、既に亡き親友達から託された言葉。
『恭介。理樹と鈴を頼んだぞ……』
親友達はその言葉を遺して、満足そうに笑いながら死んでいった。
死を目前に控えて何故笑えるのか、常人には理解出来ないかも知れない。
だが恭介には、彼らの気持ちが痛い程に理解出来た。
あれは、自分への信頼の表れだ。
恭介なら理樹と鈴を守ってくれると、信じているからこその笑みだ。
死を目前に控えて何故笑えるのか、常人には理解出来ないかも知れない。
だが恭介には、彼らの気持ちが痛い程に理解出来た。
あれは、自分への信頼の表れだ。
恭介なら理樹と鈴を守ってくれると、信じているからこその笑みだ。
ならば、応えなければならない。
絶対に、絶対に、何が何でも彼らの信頼に応えなければならない。
自分の命も他者の命も、手段も理屈も倫理観も、悉くがどうでも良い。
絶対に、絶対に、何が何でも彼らの信頼に応えなければならない。
自分の命も他者の命も、手段も理屈も倫理観も、悉くがどうでも良い。
重要なのは理樹と鈴を生還させると云う、ただその一点のみ。
血を吐くような決意を胸に、少年は暗闇の草原を往く。
その右拳は、今にも血が滲み出そうな程に握り締められていた。
その右拳は、今にも血が滲み出そうな程に握り締められていた。
【E-3 森/1日目 深夜】
【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:イングラムM10(30/30)】
【所持品:支給品一式、イングラムM10の予備マガジン×5、折り畳み式ナイフ、不明支給品(0~1)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:ゲームを転覆させて、理樹と鈴を生還させる。その過程で必要があれば、容赦無く他者を踏み躙る。
1:ゲームを転覆させる手段、並びにこの島から脱出する手段を探す。
2:直枝理樹と棗鈴を探す。手掛かりが見付かった場合は、最優先で探し出して保護する。
3:善人を演じるが、必要があれば誰であろうと殺す。
4:六花を利用する。必要があれば切り捨てる。
【装備:イングラムM10(30/30)】
【所持品:支給品一式、イングラムM10の予備マガジン×5、折り畳み式ナイフ、不明支給品(0~1)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:ゲームを転覆させて、理樹と鈴を生還させる。その過程で必要があれば、容赦無く他者を踏み躙る。
1:ゲームを転覆させる手段、並びにこの島から脱出する手段を探す。
2:直枝理樹と棗鈴を探す。手掛かりが見付かった場合は、最優先で探し出して保護する。
3:善人を演じるが、必要があれば誰であろうと殺す。
4:六花を利用する。必要があれば切り捨てる。
【観興寺六花@終末少女幻想アリスマチック】
【装備:ベナウィの槍@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:肉体的疲労(小)、首に浅い切り傷】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いを止める
1:小夜音を止める。
2:ゲームを転覆させる手段を探す。
3:恭介と共に行動する。
4:知人や棗鈴、直枝理樹を探す
※ベナウィの槍は全長約210cm程で、先端に斧のような刃が取り付けられています。
※参戦時期は未定です
【装備:ベナウィの槍@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~2)】
【状態:肉体的疲労(小)、首に浅い切り傷】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いを止める
1:小夜音を止める。
2:ゲームを転覆させる手段を探す。
3:恭介と共に行動する。
4:知人や棗鈴、直枝理樹を探す
※ベナウィの槍は全長約210cm程で、先端に斧のような刃が取り付けられています。
※参戦時期は未定です
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