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とんとん拍子
風が吹く。
DIOとの戦闘を終え、一息ついたところで
エスデスが動き出した。
表情に疲れの色は浮かんでおらず、激しい宴の後であっても己の常を崩すことはしない。
彼女が向かう先は南。
西に行けばエドワード達が、東に行けばジョセフやヒースクリフと接触が可能である。
しかし、彼らが必ずしも滞在している保証はなく、無駄足になることも考えられる状況だ。
無論、時間を浪費することだけが理由ではなく、エスデスの興味は雷光に集中してしまったのだ。
此処より南の地点で轟く雷光の輝きはエスデスを夢中にさせてしまった。
DIOの足取りが掴めない中でそれを見てしまえば、彼女の足は止まらない。
無意識に闘争を求めるが故に、氷の女王は殺し合いの会場を駆ける。誰も止めない、止められない。
(DIOの奴は恐らく近くの建物に逃げ込む……まぁいい。
夜まで待ってやる。そこで吸血鬼とやらの真の力を見せてみろ)
御坂美琴に意識が集中しようと、DIOを放置する訳ではない。
相手が昼に規制を受け夜に真骨頂を発揮する吸血鬼ならば、次の宴は月が昇った時。
スタンドを操り、冷気を操り、時間をも止められる相手はエスデスにとって初めてであり、この機を逃すと二度と出会えないだろう。
保証も確証もないが彼女の本能が告げる。DIO程の力を持った存在と出会う機会などあり得ない。
ならば最大限までに楽しみ、己の手で殺し、終止符を打つ。
弱い相手を蹂躙するならば、より強い相手を求めるのは必然であり、時間が解決するならばエスデスは待つ。
「その間まで私の相手をしてもらおうか、御坂美琴」
出会ってもいない参加者の名前を呟きながら彼女は、闘争を求める。
「コンサートホール、か」
炎上する施設を横目に思い出すは数時間前まで共に行動していた存在の影。
鹿目まどかと
モハメド・アヴドゥルがこの世を去り、残る承太郎と足立の行方は不明。
ヒースクリフには首輪の解析を託しつつ、自由に動けるよう手配はしている。結果がどう転ぶかは解らない。
たった数時間前まで生きていた参加者が眼を離している少しの間に死んでしまった。
殺し合いの異常なる環境が齎す闇の答えなのだろうか、違う。
弱いから死んだ。それ以外に説明など必要ない。状況はどうであれ他者を捻じ伏せればその場の死は免れる。
鹿目まどかとモハメド・アヴドゥルは弱い人間ではなかった。
しかし死んでしまえば、敗者であり、所詮はそれだけの存在になる。
何も彼らが嫌いな訳でもなければ、彼らを罵倒する訳でもない。
強いて言えばエスデスの興味が彼らから失ってしまっただけである。もう昂ぶる機会は訪れない。
その存在は覚えている。薄れることはあろうと忘れることはない。だが過去の存在に変わりない。
時が止まった死者に囚われるなど、そんなことはエスデスにとってあり得ない。
彼女の興味は死者よりも生者に傾く。
「こんなところで何をしている」
雷光を頼りに進んでいた彼女はやがて荒れた大地に辿り着く。
地面はめくり上がり、明らかに自然現象ではなく人為的な力によって変えられた戦場。
不自然に近くに居た一人の少年にエスデスは声を掛ける。当然のような声色で。
「大きな音がしたので来てみたら……誰もいなくて……」
少年の声は孤独の現状と状況による恐怖からか震えており、瞳は少々潤いを帯びている。
エスデスと同じく雷光に導かれた存在だろうが、彼女とは駆け付けた理由に大きな違いがある。
「誰かいるかなと思ったんですが……」
当然ではあるが、明らかに闘争を求めているような台詞ではない。
大きな物音が聞こえてしまえば気になるのは普通であり、少年もまた飛び出して来たのだろう。
「そうか、私はエスデスと名簿に記載されているが名前は?」
若干の時が流れた後に少年は自分の名を告げた。
初対面の人間に名前を問われては困惑するのは当然であり、歯切れが悪くても仕方がない。
だが、エスデスの名前を聞いた時に表情がほんの僅かに変化したことを彼女は見逃さなかった。
「セリム、雷光の持ち主は見ていないか?」
「持ち主ですか?」
「犯人でも何でもいいがな。正体は恐らく御坂美琴らしいが……見ていないか?」
「その人かどうかは解りませんが南の方へ誰か移動していたのは目撃しました」
方角だけでも掴めただけ良しとするか、と言いたげな表情を浮かべたエスデスはセリムに背中を向ける。
本音を言えば御坂美琴に限らずDIOを始めとする他の参加者の情報が欲しかったが、無いものに期待することもない。
彼女の興味は御坂美琴に向いており、その動向が掴めれば今は何も要らない。
「あ、あの……何処に向かうんですか」
去ろうとするエスデスにセリムは小さい声で尋ねる。
まるで独りにしないでくれ、と主張する天涯孤独の子のように。
「お前が南に誰か移動しているのを見たのだろう?
此処から南ならばそうだな……途中に進路を変えたことも含めれば図書館かDIOの屋敷に行けば出会えるだろう」
「あ……その、えっと……」
「なんだ、一緒に行動したいのか?
ならばくだらん皮を被っていないで本質を曝け出せ。相手をしてやってもいいが私は生憎忙しくてな」
エスデスの口から紡がれる言葉は完全に話の流れを無視している物だった。
傍から見れば適当にしか聞こえないが、セリム・ブラッドレイからすればこの言葉は少々重く感じてしまう。
皮を被っている――御坂美琴と同じようにエスデスはホムンクルスを知っているのか。
自分の正体を知っている上での行いならば不自然な点は見当たらない。しかし行動はどうだろうか。
セリム・ブラッドレイがホムンクルスのプライド。
この事実を知っている人間が自分を放置するだろうか。
おまけに煽り、刺激するような言動をしているのだ。エスデスは何を求めているのか。
戦う訳でもなければ、釘を差してこちらの行動を抑制するつもりも無いらしい。
その気があれば相手は強気に出る筈だ。しかし彼女は余裕と謂わんばかりの対応である。
「お前の相手は後でしてやる。そもそも御坂美琴が近くに居てこの付近に生者が居るのはおかしいからな。
交戦した相手はお前だろう、セリム・ブラッドレイ。
……と、もし追い掛けて来るならばイェーガーズ本部にでも来い。来る者は拒まないからな、相手をしてやる」
「貴方は一体何をしたいのですか」
「愚問だな、折角の機会だ……樂しまなければ意味が無いだろう?」
「どのような思考回路をしているのか……興味は湧きませんが」
去るエスデスの背中を見つめながらプライドは彼女に変人の烙印を押していた。
自分の正体或いは力を知っていながら見逃す神経は、何がしたいか解らない。
放置すれば被害が出る訳だが、気にもせずに御坂美琴を追って行く彼女は楽しみを求めているらしい。
「御坂美琴には悪いことをしたかもしれませんね」
戦闘を行う分に不都合は無いが、結局のところ数分の問答でエスデスの正体は掴めなかった。
アカメから聞く限りでは悪に分類される人間であり、葬られる対象と認識していた。
「アカメから聞いた通り……狂気が似合う人間でした、さて――私も動きますか」
謎の接触があったものの、武器庫へ向かうことに変わりはない。
別段エスデスとの会話で何かが起きた訳でもなく、流してしまえ。
自分の正体を見抜かれているかの真偽は掴めないままだが、何も驚くことも焦ることもない。
死体は何も喋らない。死んでしまえば、この世から消えてしまえば真実など幾らでも操作出来るが故に。
【C-4/一日目/午後】
【セリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(小)、精神不安定(ごく軽度)、迷い
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2 、
星空凛と
蘇芳・パブリチェンコの首輪
[思考]
基本:今は乗らない。
1:武器庫へ向かう。
2:無力なふりをする。
3:使えそうな人間は利用。
4:正体を知っている人間の排除。
5:ラースが…?
[備考]
※参戦時期はキンブリーを取り込む以前。
※会場がセントラルにあるのではないかと考えています。
※賢者の石の残量に関わらず、首輪の爆発によって死亡します。
※DARKER THAN BLACK、ラブライブ!、アイドルマスターシンデレラガールズ、とある科学の超電磁砲の世界観を知りました
※殺し合いにお父様が関係していないと考えています
※新一、
タスク、アカメ達と情報交換しました。
※マスタングが人体錬成を行っていることを知りました。
雷光を目撃した人間がいれば、雷光と遭遇した人間もまた存在する。
数分前まで交戦を行っていた狡噛とタスクは北を目指し移動している。
超電磁砲の前に犠牲者が出なかったことは奇跡だろう、特段移動に支障を来す傷も覆っていない。
しかし口数は減っている。
疲れからか、不安からかは不明だが明らかにタスクの口数が減っている。
何か傷を負ったかどうかを狡噛が訪ねても「全然! っ大丈夫です!」と笑顔で返されるだけ。
必要以上に聞く必要も無いが、本人がそう言うならば信じるしかない。
――! どうするか。
腰に備えているリボルバーに手を添えながら狡噛はタスクの動きを止める。
「何も隠れる物が無いのは辛いな。狙撃手が潜んでいれば俺達はとっくに頭部をぶっ飛ばされてる」
「どうしたんですか狡噛さん……なる程」
狡噛の言葉の意味を理解していないタスクであったが、答えは瞳の先に転がっている。
太陽が輝いていて、木々や建物も無ければ視界は良好である。
それ故に目の前から歩いている人間を補足出来た。そして補足されている。
近づいて来る人間は蒼い髪の美しい女性であった。
一人で行動しているらしく、しかし表情は孤独の恐怖に蝕まれておらず寧ろ笑顔である。
殺し合いの会場を独り笑顔で徘徊する女性――文字にすれば狂気の塊だろうか。
「近くで御坂美琴を見かけなかったか」
「だとしたらどうする? 聞いたところでお前は追い掛けるのか」
「勿論だ。あれ程の雷光――興味が湧くだろう」
「でも危険で――狡噛さん?」
「無駄だ、この女は言葉じゃ変わらない人間だ」
「ほう……お前は理解が早くて助かる」
「褒められた気はしないな。あの雷光に興味が湧くならとっくに人間の枠を飛び越えているだろアンタ。
普通の人間も興味を持つだろうが御坂美琴の存在を知っていて興味が湧く人間は大体頭がぶっ飛んでいる」
「少ない言葉で解っているならば教えろ、御坂美琴は何処に向かった」
狡噛慎也の脳内では目の前の女が危険人物であることを逸早く勘付いていた。
御坂美琴の能力は超電磁砲である。SFの世界にしか存在しないような能力の持ち主である。
おまけに殺し合いに乗っている人間だ、彼女に興味を持つ人間もまた人外の存在であることは容易に想像出来る。
それに加え蒼い髪の女性。
戦闘を求めている狂気性からこの女の正体も狡噛慎也はアテがついていた。
「あんた、エスデスか?」
「本当に話が早くて助かるな。そうだ、それで、誰から聞いた」
「あんたの部下である
ウェイブからだ。あいつは東の方角に向かっている」
「御坂美琴は」
――完全に目先の獲物しか考えていないなこの女。
部下の生死よりもどうやら御坂美琴に興味があるのか、エスデスが求めるのは雷光のみ。
上司としてどうかと思うが、残念ながら狡噛に口を出す資格が無いため黙っておく。
さて、此処で御坂美琴の情報を教えていいものかと考える。
先に結論から述べると黙れば実力行使にでも開示を求められるのが目に見えているため、教えることになるのだが。
白井黒子から聞いた御坂美琴。
殺し合いに乗るような人物像では無かったが、殺し合いの環境が彼女を変えてしまったのだろう。
悪い予感が的中してしまい、出会いは襲撃という最悪の形となってしまった。
エスデスと御坂美琴。
お互いに牽制し、くたばってくれればこの上ない結果となるが後者はまだ見捨てる人間ではない、と白井黒子は信じている。
実際に交戦した狡噛慎也からすれば御坂美琴は殺し合いによって犯罪係数が上昇してしまった人間になる。
だが、それはシビュラに囚われた考えである。常守監視官が初陣で犯罪者に救いの手を差し伸べた実例もある。
――まさか俺が監視官と似たようなことをやるとはな。
狡噛慎也や御坂美琴を含み多くの人間が殺し合いに巻き込まれていることだろう。
救える人間は可能な限り救いたい。絵空事ではあるが、夢を見ることだって誰にでも存在する。
――御坂美琴は手遅れ、だがな……。
「御坂美琴が何処に行ったかは解らないが……あんたが北から来たなら大分絞れるだろう。
此処から東か西になる。序に言えばウェイブも東だな」
「感謝するぞ……おっとお前たちの名前を聞いていなかったな」
「俺は狡噛でこっちはタスクだ」
「そうか……ウェイブはどうだ」
「どうだと言われもな。あいつはあいつなりに頑張ってるとしか言えないな。
俺はあいつの事を知らない。知っているのは殺し合いに巻き込まれてからだけのあいつだからな」
「頑張っている、か。元気そうで何よりだ」
「知らん」
ばっさりと一言で狡噛の質問を終わらせたエスデスは何事も無かったように東へ向かう。
西か東と言われ無意識に東を選んだようだ。
「そうだ」
去ると思われたが足を止め、何かを思い出したように彼女は声を挙げる。
「此処から近くにセリム・ブラッドレイが居る。見た目は少年程度の参加者だ。
何やら本性を隠しているような奴だったが方角から考えて武器庫に向かったと思う。
どうだ、流石にタダで情報を貰っては申し訳ないからな――役に立ったか、狡噛慎也」
「ああ――知りたくは無いが知りたい情報だ」
「それは良かった。序に近くには吸血鬼が潜んでいるから気をつけるといい」
そしてエスデスは去る。
最期に残した言葉は「迷いを抱いていると戦場では生き残れんぞ」タスクに向けた彼女なりの忠告だった。
悟られるようなことをしたつもりはないが、短い時間の中で彼女は彼の心理を見抜いていたらしい。
「なんか凄い人でしたね……」
「全くだ、あんなのがトップなら部下の死体でビルが建てれそうだ」
通り過ぎた嵐のような存在と対峙したのは数分だが精神的に辛い時間だった。
何事も無かったが返しを少しでも間違えれば爆発していただろう。信管剥き出しは質が悪い。
「出来る限り東寄りで病院に向かうぞ――ホムンクルスは当分見かけたくないからな」
エスデスから得た情報は一つだが充分過ぎる情報だった。
戦闘を避けれるならば越したことはない――プライドとの接触を回避出来るのだから。
【D-4/一日目/午後】
【狡噛慎也@PSYCHO PASS‐サイコパス‐】
[状態]:疲労(小)、槙島への殺意、右足に裂傷(止血済み)、全身に切り傷
[装備]:リボルバー式拳銃(5/5 予備弾20)@PSYCHO PASS‐サイコパス‐
[道具]:基本支給品、
ノーベンバー11のタバコ@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、ライター@現実
[思考]
基本:槙島を殺す。そして殺し合いも止める。
1:病院に寄り医療道具を調達後、潜在犯隔離施設へ向かう。
2:槙島の悪評を流し追い詰める。
3:首輪解析の為の道具とサンプルを探す。
4:危険人物は可能な限り排除しておきたい。
5:
キング・ブラッドレイ、御坂に警戒。 特にブラッドレイは下手に刺激することは避ける。
6:ブラッドレイが自分の本性に気付く前に何とか脱出派に引き込みたい。
7:銃の予備弾もそろそろ補充したい。
8:吸血鬼……?
[備考]
※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『DTB黒の契約者』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。
※黒、戸塚、黒子、穂乃果の知り合い、ロワ内で遭遇した人物の名前と容姿を聞きました。
【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中) 、不調、嫌な予感(極大)
[装備]:スペツナズナイフ×2@現実、刃の予備@マスタング製、火薬刃の予備@マスタング製
[道具]:基本支給品
[思考・行動]
基本方針:
アンジュの騎士として
エンブリヲを討ち、殺し合いを止める。
0:狡噛を護衛する。
1:アンジュを探す。無事でいてほしい……。
2:エンブリヲを殺し、悠を助ける。
3:生首を置いた犯人及びイェーガーズ関係者を警戒。あまり刺激しないようにする。
4:ブラッドレイと遭遇した時は穏便に済ませられないか交渉してみる。
5:御坂を警戒。
6:首輪のサンプルを探す。
7:吸血鬼……?
[備考]
※未央、ブラッドレイと情報を交換しました。
※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。
※狡噛と情報交換しました。
※アカメ、新一、
プロデューサー達と情報交換しました。
※マスタングと情報交換しました。
※不調で股間ダイブをアンジュ以外にするかもしれません。
【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(小)、全身に打撃痕(痛みは無し)、高揚感、狂気
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3、修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!
[思考]
基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。
0:亡き友アヴドゥルの宿敵DIOを殺す。
1:東に向かい御坂美琴と交戦する。
2:
クロメの仇は討ってやる。
3:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。
4:
タツミに逢いたい。
5:ウェイブが近くに居るなら顔を見たい。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。
※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。
※アブドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。
※DIOに興味を抱いています。
※
暁美ほむらに興味を抱いています。
※暁美ほむらが時を止めれる事を知りました。
※自分にかけられている制限に気付きました。
※DIOがスタンド使い及び吸血鬼であることを知りました。 また、DIOが時間停止を使えることを知りました。
※足立が何か隠していると睨んでいます。
※平行世界の存在を認識しました。
最終更新:2016年03月04日 21:56