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望まれないもの(後編) ◆MoMtB45b5k
闇夜に、白刃が閃いた。
それは橋のたもとから放たれ。
「――っ!」
一直線に、槙島の胴体を貫いた。
「が……ぐ、は……」
ドミネーターのエネルギーが虚空を貫く。
ダンスをするかのように槙島の体が回転し、やがて橋に蹲った。
――アカメに、
槙島聖護を殺すことへのためらいはなかった。
ただ、一人の青年が倒れ伏し、その向こうでは槙島聖護が、図書館で情報交換した
狡噛慎也に奇妙な銃を向けている。
その光景を目にしたとき、ほとんど反射的に手にした刀を投げていた。
新一も雪乃もすでに行動を重ね、アカメという少女の思考がどんなものかを理解しあっている。
そんなアカメを止められないし、止めなどしない。
「狡噛!」
「狡噛さん!」
口口に叫びながら、少年少女たちが橋に駆けよってくる。
雪乃が
タスクを助け起こそうとする。
新一は狡噛のそばに走る。
そしてアカメは動かない槙島にとどめを刺さんと、体を貫く剣を引き抜きにかかる。
『コウガミ!』
「狡噛さん……」
胸に突き刺さったナイフを見て、新一とミギーが絶句する。
どう見ても助かるはずのない傷。
死んでいないのが不思議なほどだ。
「……めろ……」
そんな状態にありながらも、狡噛は何事かを呟いていた。
聞き取ろうと、新一が口元に耳を寄せる。
この時、狡噛慎也だけが槙島聖護を見ていた。
歴戦の暗殺者であるアカメですら、すでにけりは付いたと考えている。
執念。
それゆえに、今まさに自分が死のうとし、敵もまた乱入者によって瀕死に追い込まれようとも。
狡噛慎也は槙島聖護から目を離していない。
「槙島を止めろ!」
「え――?」
新一が振り向いた時には、もう遅かった。
体を貫かれ、橋に蹲る槙島。
だが、その手は狡噛が最初に取り落とした拳銃を拾い上げ、
――そしてコート越しに、真後ろにいるアカメを一直線に狙っていた。
「――!!!」
意図に気付いたアカメが、全力で回避せんと横に跳ぶ。
ミギーが触手を伸ばし妨害しようとする。
雪乃ですら体を投げ出す。
その誰よりも早く――弾丸は発射された。
「こんど、は、させなかった、ぞ……」
静寂の中に、ビインというかすかな音だけが反響する。
倒れたままのタスクが発射した2本目のスペツナズナイフ。
それは弾丸の発射と同時に、槙島の体に突き刺さり――。
結果、銃弾は、再び虚空を貫いた。
「――は、は」
蹲ったままの槙島が、疲れたようにため息をつく。
「どうやら、僕の負けのようだ……執行官」
最後の力を振り絞るように、立ち上がる、
凄絶な姿に、その場の全員が息を呑む。
「……何て言ったら、いいのかしらね」
雪乃がぽつりと呟く。
「雪ノ下、だったね。先ほども会った……。
……せいぜい、敗北者として、覚えておくといいさ」
ふらふらと、橋の際へと向かっていく。
「もっと見ていたかった、が、致し方、あるまい……。
ゲームの幕引きは、自分自身ですることにしよう――」
その行動の意味気付いたアカメが、雪乃が駆け寄り、ミギーが触手を伸ばす。
だがその誰よりも速く――槙島聖護は、橋から中空へと身を躍らせた。
落ちる直前、狡噛が自分に向けて手を伸ばしていたのを、目に焼き付けながら――。
☆
(なぜだろう……)
落ちていく中、槙島聖護の脳裏にあったのは、狡噛慎也のことではなく。
自分を剣で貫いた少女のことだった。
あの時、自分の正面の射線上には、狡噛慎也が入っていた。
つまり、狡噛を殺そうと思えば殺せた。
だが――槙島はそれをしなかった。
銃口は狡噛ではなく、アカメに向けられた。
その理由が、槙島にはどうしても分らなかった。
ただあの時、自分はタスクが乱入してきたときにわずかに感じた苛立ちを、更に強く感じていたのだ。
その意味とは、つまるところ。
――邪魔を、された。
自分と狡噛慎也の殺し合いを、決闘を、侮辱された。
そう感じたということではないのか。
『ぬきな!どっちが素早いか、試してみようぜ』
いつか見た気がする、前世紀の映画のワンシーンが頭をよぎり――
(馬鹿な)
すぐさま打ち消す。
(くだらない幻想、だな)
――しかしその幻想は、最後まで壊れることはなかった。
☆
「まきし、ま……」
身を投げた槙島にしばらく呆然としていた面々が、狡噛の絞り出すような声で我に返る。
「や、つ、は……」
「今、身を投げた――死ぬな!」
新一が、雪乃が、アカメが、自分に駆け寄ってくる。
だが、視界がかすむ。
もう彼らに声をかけることすらできない。
声を出そうとしても、声にならない。
「狡噛さん……こう、がみ、さん……っ!」
タスクが、自分にすがりついて、泣いていた。
なぜ、自分などにそんなに気をかける必要があるのだろう。
お互いに会って一日すらたっていない、行きずりの、仮そめの仲間にすぎないのに。
――だが、悪くはなかった。
遠くなっていく意識の中、狡噛慎也は不思議と温かな感触を覚えていた。
(……そうか)
執行官になって以来、忘れていた感触だった。
これが、孤独ではないということだったのだろう。
この場での死人は、自分一人だけに留めることができた。
執行官一人の命。
シビュラシステム開闢以来最悪の犯罪者を葬る代償としては、安すぎるほどのものだろう。
おまけに、自分を思ってくれる人間に、見守られてすらいる。
社会のつまはじき者としては、上等すぎる死にざまだった。
奇妙な安らぎに、目を閉じようとして、
(槙、島……)
それでも、「この手で殺せなかった」という思いを捨てられなかった自分は、愚かなのだろうか。
二人は、初めて出会う以前から、ああなる運命だったんだろう。
すれ違っていたわけでもない。分り合えなかったわけでもない。
彼らは誰よりもお互いを理解し、相手のことだけを見つめていた。
だが、その運命を捻じ曲げられた中、二人は知らず、それに抗い――
【槙島聖護@PSYCHO PASS-サイコパス- 死亡】
【狡噛慎也@PSYCHO PASS-サイコパス- 死亡】
【残り30人】
【E-2/橋上/一日目/夜中】
【アカメ@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(絶大)、ダメージ(大)、頭部出血(中、止血済)、頬に掠り傷、全身にかすり傷、奥歯一本紛失、顔面に打撲痕
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲(水道水入り)@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)
[思考]
基本:悪を斬る。
0:狡噛……
1:北西の方に向かいロックを探索したいが……
2:
タツミとの合流を目指す。
3:悪を斬り弱者を助け仲間を集める。
4:村雨を取り戻したい。
5:血を飛ばす男(
魏志軍)と御坂と足立は次こそ必ず葬る。
6:
エスデスを警戒。
[備考]
※参戦時期は不明。
※
御坂美琴が学園都市に属する能力者と知りました。
※ディバックが燃失しました
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスク、
プロデューサー達と情報交換しました。
【泉新一@寄生獣 セイの格率】
[状態]:疲労(大)、出血(止血済み)、横腹に刺し傷、ミギーにダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム品0~1 消火器@現実、分厚い辞書@現地調達品、
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。
0:狡噛さん……槙島……
1:北西の方に向かいロックを探索したいが……
2:後藤、血を飛ばす男(魏志軍)、槙島、電撃を操る少女(御坂美琴らしい?)エスデスを警戒。
3:ホムンクルスを警戒。
4:
サリア……。
5:イリヤって確か、雪ノ下達が会った……。
6:余裕ができたら指輪やロボットも探してみる。
7:黒って人とも合流した方が良いのか……。
[備考]
※参戦時期はアニメ第21話の直後。
※新一、タスク、プロデューサー達と情報交換しました。
※ミギーの目が覚めました。
【雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、友人たちを失ったショック(極大) 、腹部に切り傷(中、処置済み)
[装備]:MPS AA‐12(残弾4/8、予備弾倉 5/5)@寄生獣 セイの格率
[道具]:基本支給品、医療品(包帯、痛み止め)、ランダム品0~1
[思考]
基本方針:殺し合いからの脱出。
0:狡噛さん……
1:北西部へと向かう。
2:比企谷君……由比ヶ浜さん……戸塚くん……
3:イリヤが心配。
[備考]
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスク、プロデューサー達と情報交換しました。
※槙島と情報交換しました。
【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大) 、
アンジュと狡噛の死のショック(超絶大)、狡噛の死に対する自責の念(超絶大)、後悔(超絶大)
[装備]:刃の予備@マスタング製
[道具]:基本支給品、
前川みくの首輪
[思考・行動]
基本方針:アンジュの騎士として
エンブリヲを討ち、殺し合いを止める。
0:狡噛さん……っ!
1:アンジュを探し、弔いたい。
2:エンブリヲを殺し、悠を助ける。
3:生首を置いた犯人及びイェーガーズ関係者を警戒。あまり刺激しないようにする。
4:ブラッドレイと遭遇した時は穏便に済ませられないか交渉してみる。
5:御坂美琴、
DIOを警戒。
6:エドワードから預かった首輪を解析したい。
[備考]
※未央、ブラッドレイと情報を交換しました。
※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。
※狡噛と情報交換しました。
※アカメ、新一、プロデューサー達と情報交換しました。
※マスタングと情報交換しました。
※不調で股間ダイブをアンジュ以外にするかもしれません。
※エドワード、杏子、ジョセフ、猫(マオ)、サファイアと軽く情報交換しました。
※槙島聖護のデイバッグと支給品一式、リボルバー式拳銃@PSYCHO PASS‐サイコパス‐、サラ子の刀@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞は槙島とともに奈落に落下しました。
※サリアのナイフ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞、ドミネーター@PSYCHO PASS-サイコパス-(電池切れ)が4人の周辺に落ちています。
最終更新:2016年04月20日 02:42