鮮血の結末 - (2007/09/23 (日) 16:49:50) の最新版との変更点
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**鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o
(怖い)
ティアナは転送された街灯の明かりから外れた路地裏で膝を抱え座り込み、心の奥底から込みあがってくる恐怖に震えていた
ロージェノムに食って掛かったあの時の男の攻撃。あれは以前資料映像で見た自分たちの教官、高町なのはのスターライトブレイカーさえ超える破壊力はあっただろう
だというのに、(バリアがあったとはいえ)攻撃を受けた当のロージェノムはまるでそよ風でも受けたかのように平然としていたのだ
しかも襲ってきた男を一撃で倒すほどの圧倒的な力の差。戦闘機人三人と戦い殺されそうになったときでさえ、ここまで絶望的な気持ちではなかった
そもそも、このゲームの参加者の中にもあのランスと呼ばれていた男ほどのとんでもない戦闘力を持った者が複数居る可能性も充分にある
その震える手にしっかりと握られているのは支給品のオートマチック銃、コルトガバメント
実弾のずっしりとした重さが、それ以上の重圧に怯える心に更に重くのしかかり、そのまま押しつぶされそうになる
だが、諦めるわけにはいかない。生きて執務官になる夢をかなえるためにも
「そうだよね、スバル」
自分を勇気付けようと友の顔を思い出し、手に握った銃に力を込める。それだけで手の震えは多少収まった
真っ白な月光を地上に降り注がせる満月を見上げ、まずは機動六課の面々と合流しようと立ち上がろうとし
「――!!」
その時、背後から足音が聞こえた。足音はティアナのほうに向けてどんどん近寄ってきている
明らかにこちらに自分が居ることに気づいた誰かがこちらへ向かい駆け寄ってきているのだ
(もしゲームに乗った人間なら、こんなところに座ってたらいいマトだ、隠れなきゃ)
そう思い座り込んでいた状態から立ち上がりバッグを抱えあげ、ビルの曲がり角の向こうへ駆け抜けると息を潜めて隠れる
近づいてくる誰かが殺し合いに乗っていたときに備え手早く銃のセーフティを外しスライドを引く
緊張に息が詰まり、嫌な汗がじっとりと銃のグリップに纏わりつき、思わず指が白むほどに力が篭る
鼓動は早まり、一瞬が永遠にも長く感じられ、渇いた喉へ無意識のうちに唾液が飲み込まれる
(大丈夫、大丈夫……だから)
心を落ち着かせようと自分に言い聞かせながら、飛び出すタイミングを見計らい
そして
(今だ!)
足音がすぐ近くまで来たときに、路地から飛び出し銃を突きつけ
「止まりなさ」
「ティアナさんっ!!」
その誰かを牽制しようとしたティアナの耳に響く聞き慣れた声
次の瞬間、ティアナは体が突き飛ばされるような衝撃を感じた
同時に、銃を持った右腕が跳ね上がるような反動と、闇夜のビル街に反響し長く響く銃声
地面に尻餅をつきながら、その魔力弾とは違う初めて撃つ実弾の銃の衝撃に思わず目が閉じられたのは、まばたきほどの一瞬
「……え?」
そして再び開いた目に映る、街灯の明かりの中で背後へ血の花を咲かせながら、ゆっくりと仰向けに倒れる桃色の髪の少女の姿
「キャロ…?」
少女――キャロ・ル・ルシエの胸には一点の黒い穴が穿たれ、そこからは少し遅れて鮮血が溢れ出しはじめた
その小さな体は、一度小さく地面を跳ねた後、枯れ葉でも落ちるような軽い音を立てて地面へ倒れ落ちた
「キャロ、しっかりして、キャロっ!!」
ティアナは這うようにキャロに近寄ると、血に塗れるのも構わずその体を抱き上げる
背中から鮮血を溢れさせるキャロの口が小さく開き、血を吐きながら何かを呟くが、それは言葉としては意味をなさないほど小さく
ティアナの耳には、それがまるで自身への呪詛を呟いたように聞こえた
「違うの!私、撃つつもりなんかじゃ、撃つ…っ!!」
涙ながらに言い訳するティアナの腕の中から、ずるり、と血でぬめったキャロの体が滑り落ちて
「あ……」
目に映った、血で真っ赤に染まった両の腕が
「違う」
その手に硬く握られたままだった銃が
「私」
銃口から立ち上る硝煙の残滓が
「私じゃ…」
最後に、血だまりに落ちて末期の痙攣をするだけになったキャロの体が
「私、が…?」
自分がこの幼い同僚を撃ったのだと、そうティアナの心に告げた
ティアナの顔が恐怖と絶望に凍りつく
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
髪を振り乱し絶叫を上げながら、ティアナは一心不乱に駆け出し、あっと言う間に入り組んだ路地裏へ消えていく
後には、キャロの死体と、二つのデイバックだけが残っているだけ
――それだけのはずだった
「あらあらざぁんねん、一人逃げちゃいました」
レミントンM700の暗視用スコープから目を離し、照準を覗き込むため額にずらしていた眼鏡をかけなおして、クアットロは腹ばいの体勢から立ち上がった
ここは二人が居た場所を見下ろす場所にあるビルの屋上
そうティアナはキャロを撃ってはいない。本当はこのクアットロがティアナを殺すつもりで狙撃したのである
だがその時に、どうやってかは知らないがその意図に気づいたらしいキャロが飛び出してきて、ティアナへの狙撃は失敗してしまったのだ
しかもボルトアクション式のこの銃に二発目を装填しようとまごついて居る間に、ティアナは逃げ出してしまっていた
「やっぱりこういう直接的な肉体労働は私には似合わいませんわねぇ」
肩をすくめて体についた土ぼこりを鬱陶しそうに払い、デイバックの中にライフルを押し込む
結果としては幸運にも一人を撃ち殺すことに成功したわけだが、それは本当に幸運以上の何者でもない
だが
「逃げていくときのあの子の顔……うふふ、これはこれで面白いことになるかもしれませんわぁ」
街灯に照らされ、遠目でも判るほどに恐怖がべっとりと塗りたくられたティアナの顔、ビル街に響き渡った怯える声を思い出し、クアットロは、くっと小さく笑った
あの怖がり方はただ狙われたというだけではない、恐らく自分が撃ってしまったとでも勘違いしたのだろう
血に塗れ恐慌に震えた、あんな状態で他人に会えばどうなるか。想像しただけでも愉快な気分になってくる
出来ることなら追いかけてその顛末を見てしまいたかったが、今から追いかけたところで間に合いはしないだろう
しかも誰かが先ほどの銃声に気づいてこちらに向かってくる可能性もある。ならば面倒ごとを避けるためにも――もしくはその近づいてくる誰かに取り入るためにも――何時までもここに留まっているわけには行かない
そう判断するとクアットロは浮遊しながら屋上から飛び降り、キャロの死体に近づいていく
「貴女も馬鹿ですよねぇ。仲間なんて見捨てていればもうちょっとだけ長生きできたのに」
すでに冷たくなり始めた少女の傍らに置かれた二つのデイバックから支給品を頂戴しながら、愉快そうに笑い呟いた
そう、この少女のように、殺しあえと言ったところで下らない良心を振りかざす人間は出てくる
そんな自称「善良な人間」達の中に紛れ込み、「仲間」の数が多くなったところで、でたらめや誇張で疑心暗鬼を煽っていく
いざとなれば自身のIS(インヒューレントスキル)『シルバーケープ』でそれらしい幻影を見せてでも
最後には膨らんだ疑心暗鬼で「善良な人間」達は殺しあうだろう。そう想像するだけで心が騒ぎだす
その末に自分が生き残った暁には自分たちやドクターの理想の世界を創造してみろとふっかけてみるのもいいだろう
もしくはそれほどの力があるならば、いっそ利用してやるのも面白いかもしれない
「感謝しますわぁ、螺旋王ロージェノム。こーんなに、皆さんを躍らせがいのある舞台に私を招いて頂いて」
そうクアットロは夢想し半月状の笑みを浮かべながら、手ごろな獲物を探すべく闇夜の中を歩き去っていった
転送され、仲間たちの姿を探していたキャロが、ティアナが狙撃されようとしているのを発見できたのは本当に偶然でしかなかった
深夜の町を駆けて、街灯の横に隠れるように座るティアナの姿を見つけたキャロは嬉しさの余りそこへ駆け寄ろうとした
だがその時、月明かりに照らされたガラス質の何かの輝きと、それを身につけた人影が目に映った。一瞬の思考の後、そこに誰かが居て路地裏に隠れたティアナを狙っていると気づき
躊躇うよりも先に体は動き、ティアナを突き飛ばした次の瞬間、胸から背中へ衝撃が貫くのをキャロは感じた
仰向けに倒れこみ、暫く遅れて焼き尽くすような激痛が全身を走り、すぐに消えて行く
胸から、背中から溢れ出して行く真っ赤な鮮血を見て、もう自分は助からないと、そう心が告げていた
(ティアナ、さんは……)
ならばせめて、ティアナだけでも、と最後に地面を掴み立ち上がろうとするが、もう腕に力は入らない
だが倒れ付した自分をティアナらしき人影が自分を抱き起こすのを感じる
(よかっ、た……ティアナ……さん……無事……だった……)
そう呟こうとした唇からは言葉の代わりに鮮血が溢れ出す
血がどんどん失われ、目がはっきり見えない。ティアナが何か言っているが、耳もすでに聞こえない
(にげ、て)
そんな状況になっても、キャロはティアナが撃たれないことだけを祈る
その思いが通じたのか、ティアナであろう人影は自分を放って駆け出していくのを感じた
(にげて、くれた……)
安堵の中、末期の血が口から吐き出される
意識もどんどん遠くなり、視界が真っ黒に染まっていく
(フリード……ヴォルテール……ご……めん)
薄れ行く意識の中、大事なパートナーへ、生きて帰れないことを謝り
(はやてさん……シャマル先生……スバルさん……ティアナさん……エリオくん……みん……生……き……)
このゲームに放り込まれた仲間達への思いを胸に、心優しい少女はそのまま永遠に覚めない眠りへ落ちていった
【C-5/映画館近くの路地裏/1日目/深夜】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:恐慌、混乱、血まみれ
[装備]:コルトガバメント、残弾6発
[道具]:なし
[思考]:1.キャロを殺してしまった。それだけで他のことを考える余裕はない
※参戦時期はゆりかご事件で戦闘機人三人と戦って以降のどこかです
※一応西に走り出しましたが、混乱のためでたらめに走っているので、どこにたどり着くかはわかりません
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM700残弾4発、暗視用スコープ
[道具]:支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:1.勝ち残り、ドクターの元へ生きて帰る
2.善良な人間の中に紛れ込み、扇動してお互いを殺し合わせる
3.出来る限り自分は肉体労働しない
4.手頃な善人や利用し易い人間を探すために南下、D-5へ
※呼ばれた時期は不明、他の書き手にお任せします
※キャロ殺害の真犯人です
&color(red){【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】}
*時系列順で読む
Back:[[熱血ハートのサイボーグ]] Next:[[せめて歩ませよ我が外道の道を]]
*投下順で読む
Back:[[立つ鳥後を濁さず]] Next:[[せめて歩ませよ我が外道の道を]]
|ティアナ・ランスター||
|クアットロ||
|&color(red)[キャロ・ル・ルシエ}||
**鮮血の結末 ◆t2vl.cEw/o
(怖い)
ティアナは転送された街灯の明かりから外れた路地裏で膝を抱え座り込み、心の奥底から込みあがってくる恐怖に震えていた
ロージェノムに食って掛かったあの時の男の攻撃。あれは以前資料映像で見た自分たちの教官、高町なのはのスターライトブレイカーさえ超える破壊力はあっただろう
だというのに、(バリアがあったとはいえ)攻撃を受けた当のロージェノムはまるでそよ風でも受けたかのように平然としていたのだ
しかも襲ってきた男を一撃で倒すほどの圧倒的な力の差。戦闘機人三人と戦い殺されそうになったときでさえ、ここまで絶望的な気持ちではなかった
そもそも、このゲームの参加者の中にもあのランスと呼ばれていた男ほどのとんでもない戦闘力を持った者が複数居る可能性も充分にある
その震える手にしっかりと握られているのは支給品のオートマチック銃、コルトガバメント
実弾のずっしりとした重さが、それ以上の重圧に怯える心に更に重くのしかかり、そのまま押しつぶされそうになる
だが、諦めるわけにはいかない。生きて執務官になる夢をかなえるためにも
「そうだよね、スバル」
自分を勇気付けようと友の顔を思い出し、手に握った銃に力を込める。それだけで手の震えは多少収まった
真っ白な月光を地上に降り注がせる満月を見上げ、まずは機動六課の面々と合流しようと立ち上がろうとし
「――!!」
その時、背後から足音が聞こえた。足音はティアナのほうに向けてどんどん近寄ってきている
明らかにこちらに自分が居ることに気づいた誰かがこちらへ向かい駆け寄ってきているのだ
(もしゲームに乗った人間なら、こんなところに座ってたらいいマトだ、隠れなきゃ)
そう思い座り込んでいた状態から立ち上がりバッグを抱えあげ、ビルの曲がり角の向こうへ駆け抜けると息を潜めて隠れる
近づいてくる誰かが殺し合いに乗っていたときに備え手早く銃のセーフティを外しスライドを引く
緊張に息が詰まり、嫌な汗がじっとりと銃のグリップに纏わりつき、思わず指が白むほどに力が篭る
鼓動は早まり、一瞬が永遠にも長く感じられ、渇いた喉へ無意識のうちに唾液が飲み込まれる
(大丈夫、大丈夫……だから)
心を落ち着かせようと自分に言い聞かせながら、飛び出すタイミングを見計らい
そして
(今だ!)
足音がすぐ近くまで来たときに、路地から飛び出し銃を突きつけ
「止まりなさ」
「ティアナさんっ!!」
その誰かを牽制しようとしたティアナの耳に響く聞き慣れた声
次の瞬間、ティアナは体が突き飛ばされるような衝撃を感じた
同時に、銃を持った右腕が跳ね上がるような反動と、闇夜のビル街に反響し長く響く銃声
地面に尻餅をつきながら、その魔力弾とは違う初めて撃つ実弾の銃の衝撃に思わず目が閉じられたのは、まばたきほどの一瞬
「……え?」
そして再び開いた目に映る、街灯の明かりの中で背後へ血の花を咲かせながら、ゆっくりと仰向けに倒れる桃色の髪の少女の姿
「キャロ…?」
少女――キャロ・ル・ルシエの胸には一点の黒い穴が穿たれ、そこからは少し遅れて鮮血が溢れ出しはじめた
その小さな体は、一度小さく地面を跳ねた後、枯れ葉でも落ちるような軽い音を立てて地面へ倒れ落ちた
「キャロ、しっかりして、キャロっ!!」
ティアナは這うようにキャロに近寄ると、血に塗れるのも構わずその体を抱き上げる
背中から鮮血を溢れさせるキャロの口が小さく開き、血を吐きながら何かを呟くが、それは言葉としては意味をなさないほど小さく
ティアナの耳には、それがまるで自身への呪詛を呟いたように聞こえた
「違うの!私、撃つつもりなんかじゃ、撃つ…っ!!」
涙ながらに言い訳するティアナの腕の中から、ずるり、と血でぬめったキャロの体が滑り落ちて
「あ……」
目に映った、血で真っ赤に染まった両の腕が
「違う」
その手に硬く握られたままだった銃が
「私」
銃口から立ち上る硝煙の残滓が
「私じゃ…」
最後に、血だまりに落ちて末期の痙攣をするだけになったキャロの体が
「私、が…?」
自分がこの幼い同僚を撃ったのだと、そうティアナの心に告げた
ティアナの顔が恐怖と絶望に凍りつく
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
髪を振り乱し絶叫を上げながら、ティアナは一心不乱に駆け出し、あっと言う間に入り組んだ路地裏へ消えていく
後には、キャロの死体と、二つのデイバックだけが残っているだけ
――それだけのはずだった
「あらあらざぁんねん、一人逃げちゃいました」
レミントンM700の暗視用スコープから目を離し、照準を覗き込むため額にずらしていた眼鏡をかけなおして、クアットロは腹ばいの体勢から立ち上がった
ここは二人が居た場所を見下ろす場所にあるビルの屋上
そうティアナはキャロを撃ってはいない。本当はこのクアットロがティアナを殺すつもりで狙撃したのである
だがその時に、どうやってかは知らないがその意図に気づいたらしいキャロが飛び出してきて、ティアナへの狙撃は失敗してしまったのだ
しかもボルトアクション式のこの銃に二発目を装填しようとまごついている間に、ティアナは逃げ出してしまっていた
「やっぱりこういう直接的な肉体労働は私には似合わいませんわねぇ」
肩をすくめて体についた土ぼこりを鬱陶しそうに払い、デイバックの中にライフルを押し込む
結果としては幸運にも一人を撃ち殺すことに成功したわけだが、それは本当に幸運以上の何者でもない
だが
「逃げていくときのあの子の顔……うふふ、これはこれで面白いことになるかもしれませんわぁ」
街灯に照らされ、遠目でも判るほどに恐怖がべっとりと塗りたくられたティアナの顔、ビル街に響き渡った怯える声を思い出し、クアットロは、くっと小さく笑った
あの怖がり方はただ狙われたというだけではない、恐らく自分が撃ってしまったとでも勘違いしたのだろう
血に塗れ恐慌に震えた、あんな状態で他人に会えばどうなるか。想像しただけでも愉快な気分になってくる
出来ることなら追いかけてその顛末を見てしまいたかったが、今から追いかけたところで間に合いはしないだろう
しかも誰かが先ほどの銃声に気づいてこちらに向かってくる可能性もある。ならば面倒ごとを避けるためにも――もしくはその近づいてくる誰かに取り入るためにも――何時までもここに留まっているわけにはいかない
そう判断するとクアットロは浮遊しながら屋上から飛び降り、キャロの死体に近づいていく
「貴女も馬鹿ですよねぇ。仲間なんて見捨てていればもうちょっとだけ長生きできたのに」
すでに冷たくなり始めた少女の傍らに置かれた二つのデイバックから支給品を頂戴しながら、愉快そうに笑い呟いた
そう、この少女のように、殺しあえと言ったところで下らない良心を振りかざす人間は出てくる
そんな自称「善良な人間」達の中に紛れ込み、「仲間」の数が多くなったところで、でたらめや誇張で疑心暗鬼を煽っていく
いざとなれば自身のIS(インヒューレントスキル)『シルバーカーテン』でそれらしい幻影を見せてでも
最後には膨らんだ疑心暗鬼で「善良な人間」達は殺しあうだろう。そう想像するだけで心が騒ぎだす
その末に自分が生き残った暁には自分たちやドクターの理想の世界を創造してみろとふっかけてみるのもいいだろう
もしくはそれほどの力があるならば、いっそ利用してやるのも面白いかもしれない
「感謝しますわぁ、螺旋王ロージェノム。こーんなに、皆さんを躍らせがいのある舞台に私を招いて頂いて」
そうクアットロは夢想し半月状の笑みを浮かべながら、手ごろな獲物を探すべく闇夜の中を歩き去っていった
転送され、仲間たちの姿を探していたキャロが、ティアナが狙撃されようとしているのを発見できたのは本当に偶然でしかなかった
深夜の町を駆けて、街灯の横に隠れるように座るティアナの姿を見つけたキャロは嬉しさの余りそこへ駆け寄ろうとした
だがその時、月明かりに照らされたガラス質の何かの輝きと、それを身につけた人影が目に映った。一瞬の思考の後、そこに誰かが居て路地裏に隠れたティアナを狙っていると気づき
躊躇うよりも先に体は動き、ティアナを突き飛ばした次の瞬間、胸から背中へ衝撃が貫くのをキャロは感じた
仰向けに倒れこみ、暫く遅れて焼き尽くすような激痛が全身を走り、すぐに消えていく
胸から、背中から溢れ出して行く真っ赤な鮮血を見て、もう自分は助からないと、そう心が告げていた
(ティアナ、さんは……)
ならばせめて、ティアナだけでも、と最後に地面を掴み立ち上がろうとするが、もう腕に力は入らない
だが倒れ伏した自分をティアナらしき人影が抱き起こすのを感じる
(よかっ、た……ティアナ……さん……無事……だった……)
そう呟こうとした唇からは言葉の代わりに鮮血が溢れ出す
血がどんどん失われ、目がはっきり見えない。ティアナが何か言っているが、耳もすでに聞こえない
(にげ、て)
そんな状況になっても、キャロはティアナが撃たれないことだけを祈る
その思いが通じたのか、ティアナであろう人影は自分を放って駆け出していくのを感じた
(にげて、くれた……)
安堵の中、末期の血が口から吐き出される
意識もどんどん遠くなり、視界が真っ黒に染まっていく
(フリード……ヴォルテール……ご……めん)
薄れ行く意識の中、大事なパートナーへ、生きて帰れないことを謝り
(はやてさん……シャマル先生……スバルさん……ティアナさん……エリオくん……みん……生……き……)
このゲームに放り込まれた仲間達への思いを胸に、心優しい少女はそのまま永遠に覚めない眠りへ落ちていった
【C-5/映画館近くの路地裏/1日目/深夜】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:恐慌、混乱、血まみれ
[装備]:コルトガバメント、残弾6発
[道具]:なし
[思考]:1.キャロを殺してしまった。それだけで他のことを考える余裕はない
※参戦時期はゆりかご事件で戦闘機人三人と戦って以降のどこかです
※一応西に走り出しましたが、混乱のためでたらめに走っているので、どこにたどり着くかはわかりません
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM700残弾4発、暗視用スコープ
[道具]:支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:1.勝ち残り、ドクターの元へ生きて帰る
2.善良な人間の中に紛れ込み、扇動してお互いを殺し合わせる
3.出来る限り自分は肉体労働しない
4.手頃な善人や利用し易い人間を探すために南下、D-5へ
※呼ばれた時期は不明、他の書き手にお任せします
※キャロ殺害の真犯人です
&color(red){【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】}
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|ティアナ・ランスター|058:[[業苦]]|
|クアットロ|044:[[獣を見る目で俺を見るな]]|
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