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Omegaの視界 未解封のハコニハ - (2023/04/15 (土) 10:28:26) の編集履歴(バックアップ)
Omegaの視界 未解封のハコニハ ◆wYjszMXgAo
「……はは、すまんなあ、ヴァッシュはん……うちは……もう駄目どす。かんにんな……」
「シ、シズルさん!? 駄目ですよ! まだ……まだ持つはずだ! 耐えてください!!」
「シ、シズルさん!? 駄目ですよ! まだ……まだ持つはずだ! 耐えてください!!」
紅いコートの男が女を庇って立ち塞がる。
相手取るは金の髪に赤い瞳の覇者。王の中の王、英雄王。
……勝ち目はない、それは嫌というほど分かっている。
しかし。
しかしそれでも。ヴァッシュ・ザ・スタンピードは諦めない。
ここで膝を屈してしまえばどうなることか。
最悪の想像を、実現する訳には行かないのだ。
無様でもいい。情けなくてもいい。
地面にひれ伏し、乞い願う。
相手取るは金の髪に赤い瞳の覇者。王の中の王、英雄王。
……勝ち目はない、それは嫌というほど分かっている。
しかし。
しかしそれでも。ヴァッシュ・ザ・スタンピードは諦めない。
ここで膝を屈してしまえばどうなることか。
最悪の想像を、実現する訳には行かないのだ。
無様でもいい。情けなくてもいい。
地面にひれ伏し、乞い願う。
「もう……もう、止めてください、ギルガメッシュさん。
僕達にできる事はなんでもしましょう。配下にも加わります。
で、ですから……お願いですよぉ、本当に……」
僕達にできる事はなんでもしましょう。配下にも加わります。
で、ですから……お願いですよぉ、本当に……」
だが、その願いは届かない。届くことなく無残に散るのが雑種の定め。
王が王たるのは何故か?
平伏する臣民にそれを見せ付けるかのように、ギルガメッシュは威風堂々とその身を曝す。
王が王たるのは何故か?
平伏する臣民にそれを見せ付けるかのように、ギルガメッシュは威風堂々とその身を曝す。
「ふむ、いい心掛けだ。よかろう、臣下とするには申し分ないぞ、赤外套。
……だが、それとこれとは話が別でな。あるべき物はあるべき形でなければならん。
それはたとえ我の財や臣民に対しても同じことだ。そこに情けや容赦の付け入る隙などない。
その意味は分かるであろう?」
……だが、それとこれとは話が別でな。あるべき物はあるべき形でなければならん。
それはたとえ我の財や臣民に対しても同じことだ。そこに情けや容赦の付け入る隙などない。
その意味は分かるであろう?」
「……だけど……ッ!!」
凄惨な戦場の中で、ヴァッシュは絶望する。
何でこんなことになったのだろう。
つい先刻までは、平和裏に話を進めていられたはずなのだ。
……こんな嬲られるような、惨い拷問に曝される理由はなかったはずなのだ。
一体、何を間違えたのか。
薄れそうになる意識の中、彼は先刻までのようやく手に入れたはずだった穏やかな時間を思い出していた。
何でこんなことになったのだろう。
つい先刻までは、平和裏に話を進めていられたはずなのだ。
……こんな嬲られるような、惨い拷問に曝される理由はなかったはずなのだ。
一体、何を間違えたのか。
薄れそうになる意識の中、彼は先刻までのようやく手に入れたはずだった穏やかな時間を思い出していた。
◇ ◇ ◇
「……英雄王、ギルガメッシュ……ですかあ?」
聞いたその名に、ヴァッシュと静留は顔を見合わせる。
目の前の腰帯一枚の乞食じみた男からは、言われてみればそんな雰囲気が漂っていなくもない気はするが……
目の前の腰帯一枚の乞食じみた男からは、言われてみればそんな雰囲気が漂っていなくもない気はするが……
「ギルガメッシュと言えば、古代の英雄譚の主人公どす。
……あにさんがそうだと言い張るんどすか?」
……あにさんがそうだと言い張るんどすか?」
疑いの眼差しを向ける静留に、しかし乞食王は全身から王気を迸らせて破顔する。
あ、風でめくれた。
ナニが見えたかは気にしないことにする。
あ、風でめくれた。
ナニが見えたかは気にしないことにする。
「ほう、物分りがいいな、女。雑種にしては良く勉強している。
ナオにどことなく共通する雰囲気といい、よかろう。
我の配下に加えてやる。光栄に思うがいい」
「なんでうちが……って、少々待ち! あにさん、結城奈緒はんのこと知っとるんどすか!?」
「やはり知己の仲だったか。かの蜘蛛女は我の配下としてなかなか良い働きをしてくれていたぞ。
今は少しばかり離れて行動しているが、な」
「……そう、どすか。それは奇妙な縁やね」
ナオにどことなく共通する雰囲気といい、よかろう。
我の配下に加えてやる。光栄に思うがいい」
「なんでうちが……って、少々待ち! あにさん、結城奈緒はんのこと知っとるんどすか!?」
「やはり知己の仲だったか。かの蜘蛛女は我の配下としてなかなか良い働きをしてくれていたぞ。
今は少しばかり離れて行動しているが、な」
「……そう、どすか。それは奇妙な縁やね」
怪しさ全開の裸族ではあったが、自分の知る人物の名を出されたことで、静留は少しは信用してもいい気になった。
手駒は多いほうがいい。
とても自分の言う事は聞きそうにない性格なのは僅かなやりとりでも十分分かるが、
それでもこの自信満々な態度は少しは実力に自身があってのものだろう。
少しでもおだててやれば自分の思うとおりに動いてくれるはずだ。
手駒は多いほうがいい。
とても自分の言う事は聞きそうにない性格なのは僅かなやりとりでも十分分かるが、
それでもこの自信満々な態度は少しは実力に自身があってのものだろう。
少しでもおだててやれば自分の思うとおりに動いてくれるはずだ。
そして、互いにこれまでの情報を交換する。
エレメントやチャイルド、希望の船の事。これはギルガメッシュも知っていた。
しかし、他の情報はありがたいものが多い。
特に、ギルガメッシュの語る衝撃のアルベルトとやらは要注意であることが明白だ。
そして、この会場内でのルールの事。その制限や、地図の端や上空に関する考察。
これらも非常に有用だろう。
エレメントやチャイルド、希望の船の事。これはギルガメッシュも知っていた。
しかし、他の情報はありがたいものが多い。
特に、ギルガメッシュの語る衝撃のアルベルトとやらは要注意であることが明白だ。
そして、この会場内でのルールの事。その制限や、地図の端や上空に関する考察。
これらも非常に有用だろう。
「……ふむ。この殺し合いに乗ったつもりではない、か。
成程、螺旋王などの言動に踊らされぬ性根は中々のもの」
「え、ええ! そうなんですよ! やっぱりこの世の中はラーヴ! アンド! ピース!!
平和に幸せに暮らすべきですよねぇ!」
「唯一たる王の下で良き統治をすれば、容易いことよな。
しかし螺旋王初めとする雑種ごときの下策では混乱は拭いきれぬ。
赤外套、我に付いて来る気はあるか? 臣下となるならば、貴様の願い、我が賜ってやってもよい」
「そうなんですよねえ。独裁ってのはトップが良ければ結構有効だったりするわけで、歴史的にも。
しかし、皆が平等にってのも大切だと思うんだよ、僕は、ね」
成程、螺旋王などの言動に踊らされぬ性根は中々のもの」
「え、ええ! そうなんですよ! やっぱりこの世の中はラーヴ! アンド! ピース!!
平和に幸せに暮らすべきですよねぇ!」
「唯一たる王の下で良き統治をすれば、容易いことよな。
しかし螺旋王初めとする雑種ごときの下策では混乱は拭いきれぬ。
赤外套、我に付いて来る気はあるか? 臣下となるならば、貴様の願い、我が賜ってやってもよい」
「そうなんですよねえ。独裁ってのはトップが良ければ結構有効だったりするわけで、歴史的にも。
しかし、皆が平等にってのも大切だと思うんだよ、僕は、ね」
……なんや、これ。
静留は嘆息する。何故か目の前の二人は気が合うらしい。
しかも、男どもの会話は噛み合わない様で噛み合っている上、
それが明後日の方向に飛びすぎていて自分の介入の余地がない。
今は殺し合いについての情報交換をしていたはずなのだが。
時間が惜しい。それよりも、この男のこれからの行動指針を知るべきだろう。
使えるものは使わなければ。
静留は嘆息する。何故か目の前の二人は気が合うらしい。
しかも、男どもの会話は噛み合わない様で噛み合っている上、
それが明後日の方向に飛びすぎていて自分の介入の余地がない。
今は殺し合いについての情報交換をしていたはずなのだが。
時間が惜しい。それよりも、この男のこれからの行動指針を知るべきだろう。
使えるものは使わなければ。
「……あにさん、ヴァッシュはん。とりあえずそれは置いとき。
時間が惜しい。
あにさん……これからあにさんはどうするおつもりですのん?」
時間が惜しい。
あにさん……これからあにさんはどうするおつもりですのん?」
言うと、ぴたりと二人は動きを止め、こちらを向く。
その目には今しがたの気の抜けた様子はなく、即座に戦場を駆けるつわものの目になっている。
……切り替えが早い。
どちらの男も、抜けているようでやはり油断がならない。
ギルガメッシュの実力の程は定かではないが、自分より上だろうと確信する。
結城奈緒を臣下として扱っているくらいなのだ。
この場において、最も格下なのは自分に違いない。
悔しいが、しかし認めなくては始まらないのは分かっている。
なつきを取り戻せるならば、へりくだる事くらい耐えられないはずがない。
その目には今しがたの気の抜けた様子はなく、即座に戦場を駆けるつわものの目になっている。
……切り替えが早い。
どちらの男も、抜けているようでやはり油断がならない。
ギルガメッシュの実力の程は定かではないが、自分より上だろうと確信する。
結城奈緒を臣下として扱っているくらいなのだ。
この場において、最も格下なのは自分に違いない。
悔しいが、しかし認めなくては始まらないのは分かっている。
なつきを取り戻せるならば、へりくだる事くらい耐えられないはずがない。
「……我は北を目指すつもりだ。その理由は分かるであろう、女?」
それ以外の選択肢などないとばかりに口を歪ませるギルガメッシュ。
どういう意味だろうか。
この態度には腹が立つが、怒っても話は進まない。
どういう意味だろうか。
この態度には腹が立つが、怒っても話は進まない。
「少うしばかりうちは頭、回ってない様で……
どういう事か、教えていただけますか? あにさん。
それに、あまりに曖昧すぎて具体的なことは全く分からへん」
どういう事か、教えていただけますか? あにさん。
それに、あまりに曖昧すぎて具体的なことは全く分からへん」
意図を聞けば、ギルガメッシュはしたりとばかりに頷き、真顔で告げる。
「螺旋王の言動を考えれば分かることだがな、どうやら禁止エリアとやらは南部に集中している。
これは即ち、南部が用済みになったと言うことだ。
彼奴の意図に乗る様ではあるが、しかし、これ以上南にいても得るものは少なかろうよ。
……そして、目指すべき地点は博物館や水族館、図書館……加えて映画館と言った施設だ。
この理由くらいは貴様にも分かろう?」
これは即ち、南部が用済みになったと言うことだ。
彼奴の意図に乗る様ではあるが、しかし、これ以上南にいても得るものは少なかろうよ。
……そして、目指すべき地点は博物館や水族館、図書館……加えて映画館と言った施設だ。
この理由くらいは貴様にも分かろう?」
ここまで言われて分からないと告げるのも癪だ。
静留は考える。
博物館や映画館と言った娯楽施設。
……普通に考えても、殺し合いにおいて得るものは少ないと思うのだが。
それよりも、病院やショッピングモールといった場所の方が役立つだろう。
薬や各種道具を補給できる可能性があるのだから。
静留は考える。
博物館や映画館と言った娯楽施設。
……普通に考えても、殺し合いにおいて得るものは少ないと思うのだが。
それよりも、病院やショッピングモールといった場所の方が役立つだろう。
薬や各種道具を補給できる可能性があるのだから。
逆に言えば、だ。
普通程度までしか頭の回らない人間は、そこに行こうとなど考えない……!?
普通程度までしか頭の回らない人間は、そこに行こうとなど考えない……!?
「……成程。そういう事どすな……?」
ギルガメッシュはにやりと笑う。
「その通りだ、女。殺し合いも半ばを過ぎ、既に残るは何かに秀でたものばかりだ。
戦に強いものは殺し続けて生き残るだろう。
しかし、そうでないもの達はどうやって生き延びる?
その頭脳を用いたもの、もしくは運の良い者のみがそれを許される」
「……頭のいい人間でこの時点まで生き延びた者ならば、一見役に立たないような施設に篭城している可能性が高い。
そう仰るわけどすか」
「付け加えるとすれば、その上で螺旋王に立ち向かおうとするものであろうな。
謀略を利用して殺害に望む者ならば、むしろ積極的に他者に干渉する事だろうよ。
また、おそらく施設の探索もそういったものは行っている可能性が高い。
有用な何かを持っていると見て間違いなかろう」
戦に強いものは殺し続けて生き残るだろう。
しかし、そうでないもの達はどうやって生き延びる?
その頭脳を用いたもの、もしくは運の良い者のみがそれを許される」
「……頭のいい人間でこの時点まで生き延びた者ならば、一見役に立たないような施設に篭城している可能性が高い。
そう仰るわけどすか」
「付け加えるとすれば、その上で螺旋王に立ち向かおうとするものであろうな。
謀略を利用して殺害に望む者ならば、むしろ積極的に他者に干渉する事だろうよ。
また、おそらく施設の探索もそういったものは行っている可能性が高い。
有用な何かを持っていると見て間違いなかろう」
感心する。
確かに、そういったものたちを味方に引き入れられれば色々役立つだろう。
螺旋王に対抗するのならば、それなりの人員を集めている可能性は高い。
単純に支給品を奪うだけでも価値はありそうだ。
確かに、そういったものたちを味方に引き入れられれば色々役立つだろう。
螺旋王に対抗するのならば、それなりの人員を集めている可能性は高い。
単純に支給品を奪うだけでも価値はありそうだ。
「……成程ね。そういう人たちに協力するって事か!
僕達でもきっと助けになれるよ、きっとね!
それもこれも全て、ラーヴ、アーンド、」
「勘違いするでないぞ赤外套。協力なぞ我はする気はない」
「ピィィィーーーー……スゥ…………? え、ど、どうしてなんだいギルガメッシュさん!」
「奴等が我の配下となるのだ。我が協力するのではない」
僕達でもきっと助けになれるよ、きっとね!
それもこれも全て、ラーヴ、アーンド、」
「勘違いするでないぞ赤外套。協力なぞ我はする気はない」
「ピィィィーーーー……スゥ…………? え、ど、どうしてなんだいギルガメッシュさん!」
「奴等が我の配下となるのだ。我が協力するのではない」
ガクリとヴァッシュが肩を落とす。
……何か、出来の悪い喜劇を見ているようだ。
とにかく、ギルガメッシュの方針が分かった所で、自分達もどうするかを決めねば。
そう思ったところで、ギルガメッシュが手を顎に当てる。
……何か、出来の悪い喜劇を見ているようだ。
とにかく、ギルガメッシュの方針が分かった所で、自分達もどうするかを決めねば。
そう思ったところで、ギルガメッシュが手を顎に当てる。
「ところで、だ。先刻も告げたと思うのだが」
「……何どすかいな?」
「……我は、召し物を欲していてな」
「「…………」」
「……何どすかいな?」
「……我は、召し物を欲していてな」
「「…………」」
そういえば、目の前の男はいまだ半裸だった。
◇ ◇ ◇
「……で、どうなんですのん?」
「……ふむ。中々興味深いものも存在するな。まず女、貴様の一番の望みであるこれだが」
「……ふむ。中々興味深いものも存在するな。まず女、貴様の一番の望みであるこれだが」
ギルガメッシュがまさしく乞食のように身に着けるものを欲しがっているように感じられた為、
何か交換条件を、と思ったところ、ギルガメッシュが
「我の財を見る目は確かでな。貴様らの荷を見極めてやろう」
と申し出てきたのだ。
不死の酒が本物かどうか見極めたかった静留としては、それで納得することにしたという次第である。
何か交換条件を、と思ったところ、ギルガメッシュが
「我の財を見る目は確かでな。貴様らの荷を見極めてやろう」
と申し出てきたのだ。
不死の酒が本物かどうか見極めたかった静留としては、それで納得することにしたという次第である。
しかし、胡散臭いとは言え、多少の期待をしていた静留にギルガメッシュの言葉が突き刺さる。
「結論から言えば、本物ではない」
「……まあ、どうせそないなもんだとは思っとりましたわ」
「……まあ、どうせそないなもんだとは思っとりましたわ」
落胆は隠せない。不死身なんて言葉に多少魅かれた自分が情けなく感じられる。
「だが、贋作でもないな」
「え!?」
どういうことだろうか。疑問に思う間もなく、ギルガメッシュの補足が続く。
「え!?」
どういうことだろうか。疑問に思う間もなく、ギルガメッシュの補足が続く。
「強いて言うならば“出来損ない”といったところか。
不死にはなれるが、しかし老化は止められぬだろうよ。要するに老衰死は防げんと言うことだ。
しかも、この会場内ではその不死性もどこまで有効かは疑問だがな」
「え、じゃ、じゃあ、“本物”も存在すると仰るん!?」
不死にはなれるが、しかし老化は止められぬだろうよ。要するに老衰死は防げんと言うことだ。
しかも、この会場内ではその不死性もどこまで有効かは疑問だがな」
「え、じゃ、じゃあ、“本物”も存在すると仰るん!?」
それが本当なら、本物さえ手に入れれば永遠が手に入る。
その上でなつきを蘇らせれば、若いままの姿で暮らす未来を迎えられるのだ。
その上でなつきを蘇らせれば、若いままの姿で暮らす未来を迎えられるのだ。
「保証しよう。まあ、その出来損ないはこの殺し合いの場では有効に働くことだろうよ。
我は不死などに興味はない。昔も蛇にくれてやったものだ、好きに使うがいい」
我は不死などに興味はない。昔も蛇にくれてやったものだ、好きに使うがいい」
あたかもそれが自分のものであるかのように言うだけ言ってギルガメッシュは不死の酒を静留に手渡し、
ヴァッシュに向き直る。
ヴァッシュに向き直る。
「そして赤外套。この銃も問題なく使えるようだ。
外面が破損しているが、機構も内部素子も異常はない」
「……そう、ですか。それは、うん、良かったなあ」
外面が破損しているが、機構も内部素子も異常はない」
「……そう、ですか。それは、うん、良かったなあ」
ヴァッシュは一瞬躊躇ったが、しかしゆっくりと銃に手を伸ばし、握り締める。
「……ナイヴズ。使わせてもらうよ」
この銃を使うことに抵抗はある。だが、殺し合いを止めると彼は決めた。
自分の葛藤よりも、何よりも。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードには、人が死のうとしている事のほうが重いのだ。
自分の葛藤よりも、何よりも。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードには、人が死のうとしている事のほうが重いのだ。
「……財の使い方には気をつけることだ、赤外套。
ゆめその事を忘れるでないぞ」
ゆめその事を忘れるでないぞ」
自分の右腕。そして、ナイヴズの銃。
それの意味することも、ギルガメッシュには見抜かれていたようである。
ヴァッシュは英雄王に対し、しかし。
それの意味することも、ギルガメッシュには見抜かれていたようである。
ヴァッシュは英雄王に対し、しかし。
「わぁ~かってますって! 何せ僕は愛と平和が大好きなんだから!」
太陽のような、曇りのない笑顔を浮かべるのだった。
そして、残った荷物を一つ一つ検めていくギルガメッシュだが、他のものは自分達の知る以外の用途に使えそうなものはなさそうだ。
……そう思ったとき、
そして、残った荷物を一つ一つ検めていくギルガメッシュだが、他のものは自分達の知る以外の用途に使えそうなものはなさそうだ。
……そう思ったとき、
「……む」
ギルガメッシュの表情が歪む。
何だろう、この悔しそうな表情は。
この傲慢な男にそんな表情をさせるなにがしかなど、持っていただろうかと静留は疑問を抱く。
何だろう、この悔しそうな表情は。
この傲慢な男にそんな表情をさせるなにがしかなど、持っていただろうかと静留は疑問を抱く。
「どないしたんですのん?」
「……ふん、少しばかり嫌な思いを蘇らせてな。貴様らには関係のないことだ」
「……ふん、少しばかり嫌な思いを蘇らせてな。貴様らには関係のないことだ」
見てみれば、ギルガメッシュの手にあるのは渦巻状の奇妙な剣だ。
何か思い入れでもあるのだろうか。
何か思い入れでもあるのだろうか。
「……欲しいのならあげますえ? どうせ、うちには扱いきれませんし、ヴァッシュはんの得物は銃やし」
「我にあの贋作者の剣を使えと? それは我に…………いや、待て」
「我にあの贋作者の剣を使えと? それは我に…………いや、待て」
不意に黙り込むギルガメッシュ。
どうしたものかといぶかしんでいると、やがてギルガメッシュは目を閉じ、盛大な溜息を吐いた。
どうしたものかといぶかしんでいると、やがてギルガメッシュは目を閉じ、盛大な溜息を吐いた。
「螺旋……螺旋、螺旋……か。成程、持っていて損はなかろう。
よい、献上を認める。我がこの剣を正しく使ってやろう、感謝するがいい」
よい、献上を認める。我がこの剣を正しく使ってやろう、感謝するがいい」
尊大な物言いで螺旋の剣をギルガメッシュは傍らに置く。
いい加減腹も立たなくなってきたのは慣れただけなのか、言語野が麻痺しているのか静留には判断がつかなくなってきていた。
いい加減腹も立たなくなってきたのは慣れただけなのか、言語野が麻痺しているのか静留には判断がつかなくなってきていた。
結局、目ぼしいものはそれくらいだったらしく、もう鑑定できるものはあまり残っていない。
……そして、静留の最後の所有物。
それを手にしたときが、拷問の幕開けだった。
……そして、静留の最後の所有物。
それを手にしたときが、拷問の幕開けだった。
◇ ◇ ◇
「……はは、すまんなあ、ヴァッシュはん……うちは……もう駄目どす。かんにんな」
「シ、シズルさん!? 駄目ですよ! まだ……まだ持つはずだ! 耐えてください!!
もう……もう、止めてください、ギルガメッシュさん。
僕達にできる事はなんでもしましょう。配下にも加わります。
で、ですから……お願いですよぉ、本当に……」
「ふむ、いい心掛けだ。よかろう、臣下とするには申し分ないぞ、赤外套。
……だが、それとこれとは話が別でな。あるべき物はあるべき形でなければならん。
それはたとえ我の財や臣民に対しても同じことだ。そこに情けや容赦の付け入る隙などない。
その意味は分かるであろう?」
「……だけど……ッ!!」
「シ、シズルさん!? 駄目ですよ! まだ……まだ持つはずだ! 耐えてください!!
もう……もう、止めてください、ギルガメッシュさん。
僕達にできる事はなんでもしましょう。配下にも加わります。
で、ですから……お願いですよぉ、本当に……」
「ふむ、いい心掛けだ。よかろう、臣下とするには申し分ないぞ、赤外套。
……だが、それとこれとは話が別でな。あるべき物はあるべき形でなければならん。
それはたとえ我の財や臣民に対しても同じことだ。そこに情けや容赦の付け入る隙などない。
その意味は分かるであろう?」
「……だけど……ッ!!」
ヴァッシュは見る。ギルガメッシュの姿を。
あまりにも強力な王気を放つ、その肉体を。
あまりにも強力な王気を放つ、その肉体を。
そう、その姿は――――
「ぷ、ぷぷぷぷぷぷ、ぷ!! あ、あは、あっははははははははははははははは!
も、もう耐えられへんわ! な、何でわざわざ着るん!
それは、あ、あまりにも、あっはははははははははははははははははははははは!」
「し、シズルさん、駄目だよ笑っちゃあ! ギルガメッシュさんに失礼だ!
それに、僕だってずっと必死に耐えてきたってのに!」
も、もう耐えられへんわ! な、何でわざわざ着るん!
それは、あ、あまりにも、あっはははははははははははははははははははははは!」
「し、シズルさん、駄目だよ笑っちゃあ! ギルガメッシュさんに失礼だ!
それに、僕だってずっと必死に耐えてきたってのに!」
猫だった。
黒猫だった。
どこからどう見ても猫だった。
最強の英霊であるギルガメッシュが、王の中の王である英雄王ギルガメッシュが。
……猫の、コスプレをしていたのだ。
あまりにも威風堂々と。あまりにも格好つけて。
黒猫だった。
どこからどう見ても猫だった。
最強の英霊であるギルガメッシュが、王の中の王である英雄王ギルガメッシュが。
……猫の、コスプレをしていたのだ。
あまりにも威風堂々と。あまりにも格好つけて。
「ふむ、意匠も個性に優れ、機能も上々。
我の一品モノ衣装には及ぶべくもないが、悪くはない。
王のあるべき姿に相応しい。
我が財に加わることを許してやろう」
我の一品モノ衣装には及ぶべくもないが、悪くはない。
王のあるべき姿に相応しい。
我が財に加わることを許してやろう」
腰に片手を当て、ポーズをキメる。
その姿は衣装が衣装なら幾人もの女性を虜にしていたのだろうが、今は違う。
ギルガメッシュの元の顔の良さも相まって、珍妙な雰囲気にその場は満たされていた。
その姿は衣装が衣装なら幾人もの女性を虜にしていたのだろうが、今は違う。
ギルガメッシュの元の顔の良さも相まって、珍妙な雰囲気にその場は満たされていた。
(変態王や……!)
(変態王だ……!)
(変態王だ……!)
ヴァッシュと静留は顔を見合わせ、堪えきれなくなって同時に吹き出す。
あまりに珍奇すぎる、その姿に。
あまりに珍奇すぎる、その姿に。
……ヴァッシュは思う。
シズルさんは気付いているのだろうか。君は今、笑えているんだよ、楽しそうに、と。
シズルさんは気付いているのだろうか。君は今、笑えているんだよ、楽しそうに、と。
【E-6/南西部/1日目/夜~夜中】
【チーム:ズッコケ三人組】
[共通思考]
1:北進し、各種娯楽施設の探索及び人材の回収。
2:配下に加わらなければ、実力行使は躊躇わない(ヴァッシュ除く)。
3:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出。
[共通思考]
1:北進し、各種娯楽施設の探索及び人材の回収。
2:配下に加わらなければ、実力行使は躊躇わない(ヴァッシュ除く)。
3:最終目的は主催者の打倒、ゲームからの脱出。
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン】
[状態]:全身打撲、強い決意
[装備]:ナイヴズの銃@トライガン(外部は破損、使用に問題なし)(残弾6/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせるし、誰も殺させない。
0:変態王……?
1:静留に利用されてる振りをし警戒する
2:静留が殺そうとした場合全力で止める。
3:ギルガメッシュと共に、娯楽施設を回る。
4:銃器があるに越したことはない。
5:とりあえず、ギルガメッシュの臣下扱いでもいいかなあ。
[備考]
※クロの持っていた情報をある程度把握しています(クロの世界、はやてとの約束について)。
※第二放送を聞き逃しました。
※ミリィのスタンガンは粉々に破壊されました。
※隠し銃に弾丸は入っていません。どこかで補充しない限り使用不能です。
※ギルガメッシュと情報を交換。衝撃のアルベルトとその連れを警戒しています。
※ナイヴズの銃、そしていざと言う時にエンジェルアームを使う事を決意しました。
[状態]:全身打撲、強い決意
[装備]:ナイヴズの銃@トライガン(外部は破損、使用に問題なし)(残弾6/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]基本:絶対に殺し合いを止めさせるし、誰も殺させない。
0:変態王……?
1:静留に利用されてる振りをし警戒する
2:静留が殺そうとした場合全力で止める。
3:ギルガメッシュと共に、娯楽施設を回る。
4:銃器があるに越したことはない。
5:とりあえず、ギルガメッシュの臣下扱いでもいいかなあ。
[備考]
※クロの持っていた情報をある程度把握しています(クロの世界、はやてとの約束について)。
※第二放送を聞き逃しました。
※ミリィのスタンガンは粉々に破壊されました。
※隠し銃に弾丸は入っていません。どこかで補充しない限り使用不能です。
※ギルガメッシュと情報を交換。衝撃のアルベルトとその連れを警戒しています。
※ナイヴズの銃、そしていざと言う時にエンジェルアームを使う事を決意しました。
【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:疲労(中)、左足に打撲、左眼損傷(ほぼ失明状態、高度な治療を受ければあるいは…)、首筋に切傷、精神高揚
[装備]:雷泥のローラースケート@トライガン
[道具]:支給品一式×3(食料二食分消費)、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
サングラス@カウボーイビバップ 、包丁、不死の酒(不完全版)@BACCANO バッカーノ!
棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)、大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書、防水性の紙×10、暗視双眼鏡
[思考]:
基本思考:螺旋王の力を手中に収め、なつきと共に永遠を生きる
0:変態王……!
1:ヴァッシュとギルガメッシュを利用。
2:邪魔になる人間は殺す
3:足手まといは間引く
4:邪魔にならない人間を傘下に置く
5:ギルガメッシュの臣下のふりをする。
6:不死の酒の本物を手に入れる。
【備考】
※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。
※ビクトリームとおおまかに話し合った模様。少なくともお互いの世界についての情報は交換したようです。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)
※不死の酒(不完全版)には海水で濡れた説明書が貼りついています。字は滲んでて本文がよく読めない模様。 ギルガメッシュの鑑定により、不完全と判明済み。
※一応、殺し合いに乗らず脱出する方針に転換したので、ジャグジーに対する後ろめたさは、ほぼ無くなりました。
※ヴァッシュが利用されている事に気付いてるのを知りません。
※ギルガメッシュと情報を交換。衝撃のアルベルトとその連れを警戒しています。
[状態]:疲労(中)、左足に打撲、左眼損傷(ほぼ失明状態、高度な治療を受ければあるいは…)、首筋に切傷、精神高揚
[装備]:雷泥のローラースケート@トライガン
[道具]:支給品一式×3(食料二食分消費)、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
サングラス@カウボーイビバップ 、包丁、不死の酒(不完全版)@BACCANO バッカーノ!
棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)、大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書、防水性の紙×10、暗視双眼鏡
[思考]:
基本思考:螺旋王の力を手中に収め、なつきと共に永遠を生きる
0:変態王……!
1:ヴァッシュとギルガメッシュを利用。
2:邪魔になる人間は殺す
3:足手まといは間引く
4:邪魔にならない人間を傘下に置く
5:ギルガメッシュの臣下のふりをする。
6:不死の酒の本物を手に入れる。
【備考】
※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。
※ビクトリームとおおまかに話し合った模様。少なくともお互いの世界についての情報は交換したようです。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)
※不死の酒(不完全版)には海水で濡れた説明書が貼りついています。字は滲んでて本文がよく読めない模様。 ギルガメッシュの鑑定により、不完全と判明済み。
※一応、殺し合いに乗らず脱出する方針に転換したので、ジャグジーに対する後ろめたさは、ほぼ無くなりました。
※ヴァッシュが利用されている事に気付いてるのを知りません。
※ギルガメッシュと情報を交換。衝撃のアルベルトとその連れを警戒しています。
【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:疲労(大)、全身に裂傷(中)、猫のコスプレ
[装備]:偽・螺旋剣@Fate/stay night、クロちゃんスーツ+マスク(大人用)@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。【王の財宝】の再入手。
0:独特な個性、何らかの衣装の原典か?
1:“螺旋王へ至る道”を模索。最終的にはアルベルトに逆襲を果たす。
2:北部へ向かい、頭脳派の生存者を配下に加える。
3:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。
4:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】【娯楽施設】 。
5:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
6:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
7:慢心を捨てる――――?
※地図の端と上空に何か細工があると考えています。
※螺旋状のアイテムである偽・螺旋剣に何か価値を見出したようです。
※ヴァッシュ、静留の所有品について把握しています。それらから何かのアイデアを思いつく可能性があります。
※ヴァッシュたちと情報交換しました。
[状態]:疲労(大)、全身に裂傷(中)、猫のコスプレ
[装備]:偽・螺旋剣@Fate/stay night、クロちゃんスーツ+マスク(大人用)@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】の入手。【王の財宝】の再入手。
0:独特な個性、何らかの衣装の原典か?
1:“螺旋王へ至る道”を模索。最終的にはアルベルトに逆襲を果たす。
2:北部へ向かい、頭脳派の生存者を配下に加える。
3:異世界の情報、宝具、またはそれに順ずる道具を集める(エレメントに興味)。
4:出会えば衛宮士郎を殺す。具体的な目的地のキーワードは【高速道路】【河川】【娯楽施設】 。
5:“螺旋の力に目覚めた少女”に興味。
6:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感)
7:慢心を捨てる――――?
※地図の端と上空に何か細工があると考えています。
※螺旋状のアイテムである偽・螺旋剣に何か価値を見出したようです。
※ヴァッシュ、静留の所有品について把握しています。それらから何かのアイデアを思いつく可能性があります。
※ヴァッシュたちと情報交換しました。
【クロちゃんスーツ+マスク@サイボーグクロちゃん】
コタローくんが作った黒猫スーツとクロちゃんに似たマスク。
絶縁・防弾仕様でちゃっかりしている。
剛博士のために作った大人用もある。
コタローくんが作った黒猫スーツとクロちゃんに似たマスク。
絶縁・防弾仕様でちゃっかりしている。
剛博士のために作った大人用もある。
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216:鉄壁の意志、揺るがぬ信念 | ギルガメッシュ | 231:BACCANO -前哨編- |
216:鉄壁の意志、揺るがぬ信念 | 藤乃静留 | 231:BACCANO -そしてバカ騒ぎ- |
216:鉄壁の意志、揺るがぬ信念 | ヴァッシュ・ザ・スタンピード | 231:BACCANO -そしてバカ騒ぎ- |