「シモン、あなたはどうしていますか?」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
シモン、あなたはどうしていますか? - (2007/09/23 (日) 16:30:46) のソース
**シモン、あなたはどうしていますか? ◆XzvibY6nJE ニアが目を覚ましたのは、緑あふれるキャンプ場の近くだった。 「綺麗なところ……ここは一体どこでしょう? テッペリンの中ではなさそうですけど」 彼女がかつて住んでいたテッペリン宮殿にも緑のある場所はあったが、そことは違う。 まるで見たこともない草花が、月明かりの下に美しく咲いている。 「それに、なぜ私はここにいるのでしょう?」 ニアは首をかしげる。 さっきまでダイグレン(足の生えた地上戦艦)の中で、大グレン団のみんなにお昼ご飯を作っていたはずだった。 それが気がついたらここにいた。 「早く帰らないと……シモンや他の皆さんがおなかを減らして待っているわ」 そう呟いて立ち上がると、ニアはダイグレンを探して周囲を見渡した。 だが、ダイグレンのあの特徴的なフォルムは、(暗いからでもあるが)どこを見ても見当たらない。 しばらく待っていれば皆が探しに来てくれるかと思い、じっと待ってみるが、辺りは静かで誰も来る気配がない。 そうしているうちに、ニアは首の辺りの違和感に気がついた。 『それ』は、首輪だった。 「……もしかして、あれは夢ではなかったのですか?」 実の父である螺旋王ロージェノムが、大勢の人を集めて殺し合いを強要するシーンが思い返される。 首輪に気づくまで、ニアはそれを夢だと思っていた。 なぜなら、ニアはとっくの昔にロージェノムに捨てられて、今はシモンたちと行動を共にしているはずだったから。 しかし。この首輪こそが、先ほどの光景が夢ではなかったことの証だった。 これが現実だと気づいたニアは、まずシモンの心配をした。 「シモンも同じように殺し合いをさせられているのでしょうか?」 ニアは思う。 シモンは強い。だが、それは心の話であって、肉体的には普通の少年とあまり変わらない。 強い心と気合以外、特殊な能力など持ってはいない。 そしてニア自身はと言えば、多少人より運動ができるというだけの、ただの子供だ。 意味もなく他人と争うのはイヤだし、まして殺し合いなどできるはずもなかった。 「……お父様をどうにかして止めないと。でも私ひとりではどうにもならないし、とりあえずシモンを探そうかしら」 ニアは再びキョロキョロと辺りを見回すと、夜の森の中を歩き始めた。 ※ ふいに、背後の茂みがガサガサと動いたかと思うと、何かが飛び出してきた。 そしてニアは、瞬く間に押さえつけられてしまう。 「!? な、なんですか!?」 「おっと、動くんじゃないよ」 聞こえてきたのは、やけに迫力のある女の声。 その女はニアの背中にしっかりと跨っているようで、身動きひとつできないうえに凄く重い。 「あ、あの……重いです……」 「動くなって言ってるだろ。お前、名前は?」 「は、はい。私、ニアと申します」 「ニアか、悪くない名前だ。さてと……」 女はニアに跨ったまま、その身体を器用にまさぐり始めた。 「きゃあ! な、なにを……!?」 「よーし、危険な物は持ってないようだね」 それは別に変な目的があったわけではなく、武器を持っていないか探るためだったようだ。 女はニアの身体をまさぐっていた手をどけると、さっきよりは少し優しく声をかけてきた。 「いいかい? 痛い目見たくなかったら抵抗するんじゃないよ。わかったね」 「は、はい」 ニアは素直に頷いた。 なにしろ、誰か探そうとしてた丁度その時に、その『誰か』に会えたのだ。 脅すような言動をする相手とは言え、とりあえずは顔を見てみたい。 「よし、いい子だ。今どいてやるよ」 重量級の肉体が背中から離れ、ニアは大きく息を吐いた。 ※ 声だけでなく、見た目もやけに迫力のある初老の女は、ドーラと名乗った。 その手に持った刀をニアに向けたまま、彼女が持っていた荷物を奪って中を調べるドーラ。 中に入っていたのは、基本的な支給品の他に小さなカプセルが3つ入った袋と、釘を打ち付けたバットだった。 「この棍棒はともかく、こっちのカプセルはなんだい?」 勝手に荷物をあさり、中身を調べ始めるドーラに、ニアは言葉も出ない。 「ん、説明書きがあるね。『毒入り。飲むと死にます』……か。ま、これなら女の子でも人を殺せるかもしれないね」 毒入りカプセルを手の中でもてあそびながら、ドーラはニアをじろりと睨む。 「さて、ニアって言ったね。お前はこの『ゲーム』に乗っている……ようには見えないね。聞くだけ無駄か」 それまではおろおろしていたニアだったが、ドーラの問いに対しては臆することなく、毅然とした態度で答えた。 「はい。殺し合いなどするつもりはありません」 「こうやって殺されそうになってもかい?」 刀を突きつけてくるドーラ。しかしニアは怯まない。 「はい。私はお父様を止めなければなりません!」 この状況で全く怯えていないその態度と、なにより発言の内容が、ドーラのニアに対する興味を駆り立てた。 「お父様を止める? 何のことだい?」 「螺旋王ロージェノム……あの人は、私のお父様です」 「な、なんだって!?」 ドーラの顔があまりの驚愕に歪む。 無理もない。ただの小娘にしか見えない少女が、敵の娘だというのだから。 それでも、ドーラにはニアが嘘をついているとは思えなかった。 伊達に50年生きているわけではない。嘘をついているかどうかはすぐに分かる。 ドーラの頭の中に、ニアを人質にしてロージェノムを脅し、ここから脱出する算段が即座に浮かぶ。 そして、次の瞬間にはそれを自ら否定した。 実の娘を殺し合いに放り込むような親だ。交渉の余地などないだろう。 ドーラは目の前のニアを見つめ直す。王の娘を名乗るだけあって、確かに高貴な雰囲気が感じられた。 「螺旋王、とかいうあの男の娘か。じゃあ王女様なんだね?」 「はい。でも今は違います……私はお父様に捨てられましたから」 少し悲しげな瞳で答えるニア。 「捨てられた?」 「はい。私は眠ったまま、箱に詰められてゴミ捨て場のようなところに捨てられていたそうです」 それを聞いたドーラは大きくため息をつくと、ニアに哀れむような眼差しを向ける。 「ふん、ちょいと同情するよ。あたしら海賊でさえ家族を大事にするって言うのにねぇ」 だがニアは、ゆっくりと首を振る。 「ありがとうございます。でも、大丈夫です。今の私には、大切な仲間がいますから」 しっかりとした口調で、真っ直ぐな瞳で答えるニア。 その様子にドーラは少し感心する。 よほど信頼している人物がいるのだろう、その人物がどうにかならない限りこの子は大丈夫だろう、そう思った。 「それにしても、殺し合いに参加させるほど実の娘が憎いかねぇ? 捨てるだけじゃ足りないってのかい?」 「お父様は何か目的があると言っていました。私が参加させられたのも、意味があってのことなのでしょう」 「(そう言えば、螺旋がどうとか言っていたねぇ。意味はよく分からなかったがね)」 「……ですが、その手段が殺し合いというのは間違っています。私が止めなくてはいけません!」 ニアのその決意に、ドーラは大きく頷いた。 声には出さなかったが、心の中でニアを少し気に入り始めていた。 ドーラは海賊だから、金品を奪うために殺しをしたことはもちろんあった。 しかしそれは、あくまでも『金品を奪う』というはっきりとした目的があってのことだ。 意味も分からず殺し合えと言われて素直に従うつもりはない。 それに親が子を殺し合いに参加させるというのは胸糞が悪かった。 だがそんな事よりももっとドーラの心を動かしたのは、ニアの言動から感じ取れた芯の強さだ。 それはシータに感じたものと近いものであったのかもしれない。 「お前、あたしと一緒に来るかい? お前みたいな女の子が独りでいたんじゃあ何かと物騒だろう」 「よろしいんですか? 私がいたら、ドーラさんの邪魔になるのではないですか?」 「なに、あたしの目的はこんな腐った『ゲーム』から脱出することだ。だがそのためには、この首輪を どうにかしなけりゃならない。それには少しでも情報や人手があった方がいいからね」 それに、螺旋王の娘であるこの少女は、何かの鍵になるかもしれない。 言葉には出さないものの、ドーラは心の中でそう付け加える。 「ありがとうございます。ドーラさんっていい人ですね!」 ペコリトお辞儀をしながらのニアの言葉に、ドーラは笑って答えた。 「いい人はやめておくれ。体がくすぐったくなる」 ※ 二人で行動を共にすることが決まったので、ドーラはニアに荷物を返してくれた。 そして、その場に腰を下ろして話し合う。 「ところでお前は、誰か探したい人はいないのかい?」 月明かりを頼りに名簿を見ていたニアは、知り合いの名前を見つけると嬉しそうに話し始める。 「えーと、シモンという男の人と、ヨーコさんという女の人を探しています。シモンはこの位の背で、穴掘りが得意です」 「穴掘り? なんだいそりゃ」 「本当に上手なんですよ。故郷では『穴掘りシモン』って呼ばれてたそうです」 そんな特徴を説明されても困る、と言わんばかりのドーラだったが、ニアはそれに気づかず説明を続ける。 「ヨーコさんはシモンより少し背が高くて、その、ぷろぽーしょん、って言うんですか? ……が素晴らしいです」 「ふん、あたしだって若い頃はね……」 と、昔語りを始めそうになるドーラに構わずにニアは名簿を見続けていたが、やがて顔を上げる。 「あとは……いませんね。その二人だけです」 実はもうひとり、気になる名前があった。 ――カミナ 「(この『カミナ』という名前、確かシモンが言っていたアニキさんの名前だわ。同名の別人でしょうか?)」 そのカミナは死んだはずなので別人の可能性が高いが、万が一という事もある。 どちらにしても、今はまだはっきりとしないことなので、ニアは黙っておくことにした。 一方のドーラも、どこからか眼鏡を取り出して知った名前がないか探し始める。 「シャルルたちはいないようだねぇ。全く、どいつもこいつも肝心な時に役に立たない、情けない子たちだよ。 おや、シータとパズーがいるのかい。それに……それにムスカだって?」 「その三人がお知り合いの方ですか?」 「あぁ。あ、いや。シータとパズーは知り合いと言うか身内みたいなもんだね。だがこのムスカって奴は……」 ドーラは三人について簡単に説明した。 シータとパズーの特徴。そしてムスカについては少し詳しく。 シータを狙っていたこと。ラピュタを支配しようとしていたことなども付け加えた。 「まぁ、あたしらもお宝を拝借しようとしてはいたがね、ムスカはもっとろくでもない目的があったようだよ」 「では、そのムスカという方は、悪い人なのですか?」 「海賊のあたしが言うのも変だが、かなりの悪人だね。でも外面は良さそうだから、騙される奴もいるかもしれないねぇ」 「そうですか……」 シモンが騙されたりしないか少し心配なニアだったが、彼女は基本的にシモンを全面的に信頼しているので、 「シモンなら大丈夫」と小さく呟いて頷くと、それだけで気持ちは落ち着いた。 ドーラは「さて」と言って立ち上がると、コンパスと地図で方向を確かめ始めた。 幸い、すぐ近くにキャンプ場の看板が見えたので、現在位置は特定できる。 「とりあえずは互いの知り合いを探すことにしようかね」 ニアもスカートの裾を払いながら立ち上がると、ドーラの後ろから地図を覗き込んだ。 「……よし、それじゃあ出発するよ」 「はい!」 ※ 出発した二人は、ドーラの提案でまず街の方へ向かうことにした。 なにか役立つものが手に入るかもしれないし、街の方が人が多いだろうというのがその理由だ。 もちろん危険も増すが、危険を恐れて人気のないところに隠れていても事態は好転しないだろう。 「あの、それでひとつ聞いてもいいですか? 先ほどはムスカさんの事が気になって訊けなかったのですけど……」 「なんだい?」 「ラピュタって一体なんですか?」 「ん? そうだねぇ。簡単に言えば、空に浮かぶ島だね」 「空に浮かぶ……島、ですか?」 ニアが思い浮かべたのは、ロージェノム配下の四天王のひとりが所有する空中戦艦。 島と言うからにはもっと大きいのだろうが、ニアには想像もできなかった。 「詳しい話は後だ。歩きながら話してもいいんだが、お前の甲高い声は辺りに響くからねぇ」 「す、すみません。私、あまり喋らない方がいいですか?」 「そうだね。いつ襲われるか分からないよ。あたしは簡単にやられるつもりはないがね」 そう言って、ドーラは手に持った刀を振るってみせる。 その姿はなかなか様になっていて、ニアは少し安心する。 ニアもまた釘バットを握り締めると、空に輝く月を見上げ、どこにいるかも分からないシモンへ心の中で語りかけた。 「(私はドーラさんという親切な人と出会えました。シモン、あなたはどうしていますか?)」 【G-7/キャンプ場の近く/1日目/深夜】 【ニア@天元突破グレンラガン】 [状態]:健康 [装備]:釘バット [道具]:支給品一式 毒入りカプセル×3@金田一少年の事件簿 [思考]:1.ドーラと行動を共にする。まずは街へ行って、落ち着いたら情報交換 2.シモン、ヨーコ、シータ、パズーを探す 3.カミナの名前が気になる(シモンの言うアニキさんと同一人物?) 4.お父様(ロージェノム)を止める ※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。 【ドーラ@天空の城ラピュタ】 [状態]:健康 [装備]:カミナの刀@天元突破グレンラガン [道具]:支給品一式 不明支給品×1~2 [思考]:1.ニアを連れて行く。まずは街へ行って、落ち着いたら情報交換 2.シータ、パズー、シモン、ヨーコを探す 3.ムスカを警戒 4.ゲームには乗らない。ニアに付き合うが、同時に脱出手段も探したい ※シータ、パズーを仲間に入れた後~ラピュタ崩壊前のどこかから呼ばれています 詳しい時期は後の人にお任せします。 ※※シータとムスカは、正式な名前ではなく普段の名前で名簿に記載されています。 ・毒入りカプセル 服用した場合、常人ならほぼ即死。また、毒に耐性があっても重傷は免れない。 どうやって飲ませるかが課題。 ・カミナの刀 カミナが故郷の村長から奪った刀。日本刀に似ている。 特殊な能力などはないが、わりとよく斬れる。 *時系列順で読む Back:[[嗚呼川の流れのように]] Next:[[それが我の名だ]] *投下順で読む Back:[[人の名前を変えんじゃねえ!!(後編)]] Next:[[それが我の名だ]] |ニア|| |ドーラ||