ALBERT THE IMPACTR ◆wYjszMXgAo
◇ ◇ ◇
――――このまま終わるのか? と彼は自問する。
――――否、断じて否! と彼は自答する。
――――否、断じて否! と彼は自答する。
一人の男の顔が脳裏に浮かぶ。
たった一人の少年の為に。
そして、己が使命を遂行するために。
たった一人の少年の為に。
そして、己が使命を遂行するために。
腹に穴を開けられようとも、不本意な決着という未練を残しながらも。
――――自らの意に準じた男が、確かにいた。
――――自らの意に準じた男が、確かにいた。
自分はどうだ?
……まだだ。
この程度で終わりはしない。
心臓を貫かれた程度で、終わる事などあってはならない!
この程度で終わりはしない。
心臓を貫かれた程度で、終わる事などあってはならない!
自分の為に。
自分たちの為に。
自分たちの為に。
自分たちの登ってきたものが、届かぬ梯子などでなかったことを証明するために!!
その為の力を得てきたはずだ。
ここで潰える力ではないはずだ。
ここで潰える力ではないはずだ。
――――吼える。
強く強く、殺人狂の哄笑を掻き消す威を込め、堂々と。
どこまでも力強く。
強く強く、殺人狂の哄笑を掻き消す威を込め、堂々と。
どこまでも力強く。
「……笑うなぁぁ――――ッ!!」
――――衝撃のアルベルトは立ち上がる。
心臓に剣を突き刺したまま、十傑集として。
力に呑まれた同胞を助け出す為に。
心臓に剣を突き刺したまま、十傑集として。
力に呑まれた同胞を助け出す為に。
嗤い続ける殺人狂の顔は驚愕に染まり、
「ヒャァハハハ……ハ……オイ、まさか」
殺しきれなかった不快感に染まり……次いで、アルベルトを再度殺せることへの歓喜に染まる。
「その、まさかよ」
アルベルトは髪を乱しながらも威風堂々とその姿を見せつけ、両掌に衝撃波を発生させる。
その目も、その立ち振る舞いも、その声色も。
……ありとあらゆる要素が、彼の燃え盛る命の火の強さを表していた。
その目も、その立ち振る舞いも、その声色も。
……ありとあらゆる要素が、彼の燃え盛る命の火の強さを表していた。
本来なら在りえぬその光景に、しかし殺人狂はニィ、と笑みを深くする。
……楽しそうに、楽しそうに。
……楽しそうに、楽しそうに。
「マジかよ……オイオイオイオイ、ありえねぇだろオイ!
最高だ! 最高だよアルベルトちゃん! 死ぬのは一回でいいってのに!
テメエは、今ここで! 俺に殺されるためだけに! もう一回身体を差し出してくれるって訳だ!
いいねぇ、信じらんねぇサービス精神! 痺れちまうよ!
ヒャァハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハッ!!」
最高だ! 最高だよアルベルトちゃん! 死ぬのは一回でいいってのに!
テメエは、今ここで! 俺に殺されるためだけに! もう一回身体を差し出してくれるって訳だ!
いいねぇ、信じらんねぇサービス精神! 痺れちまうよ!
ヒャァハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハッ!!」
暗闇に轟く狂った哄笑。
あまりにも禍々しく、災厄の前触れを告げるかのような詩歌をしかし。
あまりにも禍々しく、災厄の前触れを告げるかのような詩歌をしかし。
「五月蝿いッ!! 十傑集を……」
――――しかし、アルベルトは一喝する。
「嘗めるなぁぁぁぁぁぁあああああぁあああぁぁあああああッ!!」
――――同時、戦端は開かれた。
左手に溜めた直線状の衝撃波が、コンクリートを断ち割りつつ殺人狂に向かい飛ぶ。
対する殺人狂はステップを踏みながら、右手だけの歪な拳闘の姿勢を取り、突っ込んできた。
「遅ぇよ温ぃよ当たらねぇんだよんなインチキパワーはよぉ!」
――――回避。
わずか二歩の動作で体を衝撃波と平行になるよう姿勢を変えた殺人狂の側を衝撃波が突き抜ける。
後方に突き進み続ける衝撃波は、その過程で道中にある全ての建造物を粉微塵にして止まらない。
それを見届けもせず悠々と、しかして怖ろしい速度でアルベルトに近寄ろうとする殺人狂へ、
わずか二歩の動作で体を衝撃波と平行になるよう姿勢を変えた殺人狂の側を衝撃波が突き抜ける。
後方に突き進み続ける衝撃波は、その過程で道中にある全ての建造物を粉微塵にして止まらない。
それを見届けもせず悠々と、しかして怖ろしい速度でアルベルトに近寄ろうとする殺人狂へ、
「……オイ」
ちょうど回避先に重ねるように、アルベルトが波動を叩き込む。
殺人狂は僅かに驚きを顔に出すも、即座に残忍で獰猛な笑みを顔に浮かべ、ゆらりと左腕を持ち上げた。
殺人狂は僅かに驚きを顔に出すも、即座に残忍で獰猛な笑みを顔に浮かべ、ゆらりと左腕を持ち上げた。
「……面白ぇ、面白ぇなあおい衝撃のアルベルトちゃんよぉ!!」
殺人狂は鋼鉄の左腕を突き出し、チェーンソーのような歪な半円を、あまりにも暴力的に描く。
義手と衝撃波が鬩ぎ合い、双方が砕け散った。
衝撃波の威力は殺人狂の左腕ごとミンチにしてなお余りある。
だが、囚人服状のバリアジャケットに阻まれ余波はまったく殺人狂の胴体部まで届かない。
――――そして、即座に腕が回復。
加えて殺人狂の莫大な螺旋の力は、バリアジャケットの再構築も一瞬で完成させた。
義手と衝撃波が鬩ぎ合い、双方が砕け散った。
衝撃波の威力は殺人狂の左腕ごとミンチにしてなお余りある。
だが、囚人服状のバリアジャケットに阻まれ余波はまったく殺人狂の胴体部まで届かない。
――――そして、即座に腕が回復。
加えて殺人狂の莫大な螺旋の力は、バリアジャケットの再構築も一瞬で完成させた。
「……ヒャハ、ヒャァハハハハハハハ、ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
一瞬の静止。
間を置かず身を沈め、殺人狂は攻城の投石兵器ばりの突進力で即座に身を詰めてくる。
間を置かず身を沈め、殺人狂は攻城の投石兵器ばりの突進力で即座に身を詰めてくる。
アルベルトは再度掌に衝撃波を発生させ、同時、もう一つの衝撃波を推進力に変換。
自身を砲弾と変えて殺人狂に相対する。
自身を砲弾と変えて殺人狂に相対する。
「かあぁぁあああぁぁぁぁぁあああああああああぁあああああっ!!」
「おいおいマジかよどうやってるんだよオイオイオイオイオイオイ!!」
「おいおいマジかよどうやってるんだよオイオイオイオイオイオイ!!」
激音。
擦れ違いざま、殺人狂の左腕とアルベルトの右掌が交差。
殺人狂の左腕が砕け散り、アルベルトは無傷。
……否。右掌こそ無事だが、ボディに一撃食らっていた。
軽いものとはいえ、殺人狂は左右のワンツーを繰り出していたのだ。
直後、殺人狂の腕が修復を完了する。
結果だけ見ればダメージが残るのはアルベルトだけだ。
殺人狂の左腕が砕け散り、アルベルトは無傷。
……否。右掌こそ無事だが、ボディに一撃食らっていた。
軽いものとはいえ、殺人狂は左右のワンツーを繰り出していたのだ。
直後、殺人狂の腕が修復を完了する。
結果だけ見ればダメージが残るのはアルベルトだけだ。
「く……ッ」
実感する。
元々の制限に加えて、今の自身は更に能力が低下している。
胸に突き刺さったヴァルセーレの剣が、今も自身の力を吸い取り続けているのだ。
元々の制限に加えて、今の自身は更に能力が低下している。
胸に突き刺さったヴァルセーレの剣が、今も自身の力を吸い取り続けているのだ。
そして相対する殺人狂は、異常なほどの螺旋の力を放出し続けている。
元の体が一般人であろうとも、それを補い余りあるほどの。
不死者の回復能力頼りに、筋力を限界まで酷使しているのも大きな要素だ。
元の体が一般人であろうとも、それを補い余りあるほどの。
不死者の回復能力頼りに、筋力を限界まで酷使しているのも大きな要素だ。
それ以上に、そもそもの回復能力。
――――キリがない。
――――キリがない。
拳を交わし、収束した衝撃波を放ち、生身の右腕で殴られ、鋼鉄の左腕を吹き飛ばし、
建物ごと殺人狂に衝撃波を叩き込み、フック船長の鉤爪に肋骨を折られ、
足場を破壊して動きを制限し、空を駆け、特大の衝撃波を放ちながら。
――――それでも、殺人狂はその全てを無と化していく。
建物ごと殺人狂に衝撃波を叩き込み、フック船長の鉤爪に肋骨を折られ、
足場を破壊して動きを制限し、空を駆け、特大の衝撃波を放ちながら。
――――それでも、殺人狂はその全てを無と化していく。
……しかし、諦めるという文字はアルベルトの脳裏にその一画すら存在しない。
そう、彼女を護り、導くと誓ったばかりではないか。
彼女の自我が危機に陥ればそれを救い出し、力に呑まれ道を踏み外したなら正しい方向を示すことこそ彼の信じた道。
そう、彼女を護り、導くと誓ったばかりではないか。
彼女の自我が危機に陥ればそれを救い出し、力に呑まれ道を踏み外したなら正しい方向を示すことこそ彼の信じた道。
――――草間大作に、戴宗がそうしたように。
柊かがみに見せねばならない。
自分たちの道は、揺らぐ事無く確かに此処にあるのだと。
柊かがみに見せねばならない。
自分たちの道は、揺らぐ事無く確かに此処にあるのだと。
呼ぶ。呼ぶ。呼びかける。
柊かがみである事を放棄した殺人狂。
それでも彼女を取り戻せる事を信じて、声を張り上げ彼女の名前を咆える。
柊かがみである事を放棄した殺人狂。
それでも彼女を取り戻せる事を信じて、声を張り上げ彼女の名前を咆える。
届け。届け。突き破れ。
「いいか……柊かがみ!」
背後に回りこむ殺人狂の足下に衝撃波を撃ち込む。
「ワシは決して貴様に恨みを抱いた訳でもなければ、落胆した訳でもないッ!!」
体勢を崩した殺人狂に拡散する衝撃波を叩き込む。威力そのものよりも、吹き飛ばす事を重視して。
「だがな、この梯子の先にどんな光景があろうとも、これだけは分かっているぞ!」
既に原形を留めていないコンクリートの壁に叩きつけられるも、殺人狂は即座に立ち上がる。
「……そう、我らの運命は、こんな狂人などに好きにさせるものではないッ!」
狂った哄笑を続ける殺人狂と正面から向かい合い、アルベルトは己の胸に刺さった剣の柄を握り締める。
「全ては我々BF団と、かの螺旋の王の勢力どもとで、決着をつけるものだ!!」
肉が、組織が潰される音とともに剣がゆっくりと引き抜かれた。
同時、殺人狂は躊躇わずにこちらに突っ込んでくる。
同時、殺人狂は躊躇わずにこちらに突っ込んでくる。
「違うか!」
――――彼女に届かせねばならない。
殺人狂という殻を突き破り、彼女の意思そのものまで届けねばならない。
自分の意志を。自分たちの道を。
殺人狂という殻を突き破り、彼女の意思そのものまで届けねばならない。
自分の意志を。自分たちの道を。
その為には、普通のカタチでは駄目なのだ。
「……違うかッ!」
衝撃波に力を加え、手に持つ剣に纏わせる。
ただ纏わせるのではない……カタチを操作し、練り上げる。
――――螺旋のカタチに。
彼女の意思まで届き、梯子の先の天元すらも突破しうるドリルの形に。
ただ纏わせるのではない……カタチを操作し、練り上げる。
――――螺旋のカタチに。
彼女の意思まで届き、梯子の先の天元すらも突破しうるドリルの形に。
殺人狂の螺旋の輝きすら霞むほどの緑色の眩さが、周囲を燦然と照らし出す。
「…………違うかぁぁぁああぁぁあぁぁあああぁッ!」
一歩を踏み出し、剣を、『柊かがみ』に突き刺していく。
剣はその体躯にゆっくりと呑みこまれ――――
剣はその体躯にゆっくりと呑みこまれ――――
緑と赤黒の衝撃が、辺りの全てを染めていく。
――――気がつけば、かがみはそこにいた。
廃墟。
いや、爆心地か。
周囲を見渡せば、あちこちが瓦礫に覆われ崩れている。
特に酷いのは自分の真後ろだ。
石ころ一つ残っていないとすら言っていいだろう。
ちょうど、自分の真後ろだけまるでドリルか何かで抉られたかのように、
数百メートル、あるいはそれ以上にも渡って全ての建造物が消え去っていたのだ。
いや、爆心地か。
周囲を見渡せば、あちこちが瓦礫に覆われ崩れている。
特に酷いのは自分の真後ろだ。
石ころ一つ残っていないとすら言っていいだろう。
ちょうど、自分の真後ろだけまるでドリルか何かで抉られたかのように、
数百メートル、あるいはそれ以上にも渡って全ての建造物が消え去っていたのだ。
何となく胴体に脱力感と違和感を感じてそちらを見てみれば、自分の腹を剣が貫通していた。
慣れてはいるけど、痛いなあ、とだけ考え、そして気付く。
ちょうど剣の切っ先の方向が、背後の建造物の消失した方と同じ向きだ。
まるで、刀身の先端からビームでも出たみたいだと思い、苦笑する。
とりあえずそれを引っこ抜いて、そばの適当な瓦礫に立てかける。
すぐに回復する体を見て、そういえばそんな体だったなあ、と思い出した。
慣れてはいるけど、痛いなあ、とだけ考え、そして気付く。
ちょうど剣の切っ先の方向が、背後の建造物の消失した方と同じ向きだ。
まるで、刀身の先端からビームでも出たみたいだと思い、苦笑する。
とりあえずそれを引っこ抜いて、そばの適当な瓦礫に立てかける。
すぐに回復する体を見て、そういえばそんな体だったなあ、と思い出した。
よくよく観察すると、服も申し訳程度にボロ布が纏わりついているだけで裸同然だ。
まともに回らない頭で、とりあえず着替えないとね、と思う。
まともに回らない頭で、とりあえず着替えないとね、と思う。
――――何か忘れている気がする。
だけど、それが何なのか。
とても大切なことのはずなのに、思い出したくないような気もする。
だけど、それが何なのか。
とても大切なことのはずなのに、思い出したくないような気もする。
考えて、考えて、考えて――――
諦めようと思ったけど、もう少しだけ考えてみようと顎に手を当てた瞬間、その声が耳に届いた。
諦めようと思ったけど、もう少しだけ考えてみようと顎に手を当てた瞬間、その声が耳に届いた。
「……ようやく目覚めたか、不死身の」
――――それだけで全てを思い出した。
アルベルトの体に沈み込んでいく剣の感触を。
自分の名を呼び、意思の奮起を促し続ける彼の声を。
自身の体に突き刺さった剣と、そこから発された緑と赤黒の閃光を。
自分の名を呼び、意思の奮起を促し続ける彼の声を。
自身の体に突き刺さった剣と、そこから発された緑と赤黒の閃光を。
全て、全て。
「あ、あ……アル、ベルト? 生きて……」
回らない口でただ呆然と言葉を紡ぐ。
気がつけば、傍らにはアルベルトがいつの間にか立っていた。
乱れた髪で、スーツをあちこち破らせながら相変わらずの態度の彼は、ゆっくりと手を上にあげる。
気がつけば、傍らにはアルベルトがいつの間にか立っていた。
乱れた髪で、スーツをあちこち破らせながら相変わらずの態度の彼は、ゆっくりと手を上にあげる。
殴られるかもしれないと、びくりと体を震わせるかがみの頭に、ぽんと暖かいものが乗る。
……怒りも恨みもなく、そのままアルベルトはかがみを撫でていた。
……怒りも恨みもなく、そのままアルベルトはかがみを撫でていた。
「……ふん。まあ、及第点といった所か」
ぶっきらぼうな口調ながら、声色は優しい。
見れば、表情も未だ見たことのないような穏やかな笑みだった。
見れば、表情も未だ見たことのないような穏やかな笑みだった。
「……アルベルト?」
理解が追いつかず、今まで以上に呆気に取られた表情でかがみはそのまま撫でられるに身を任せる事しかできない。
「……力に呑まれた結果とはいえ、このワシに一太刀を入れたのだぞ?
もっと誇りに思うがいい」
もっと誇りに思うがいい」
――――その言葉を聞いた途端、かがみの瞳からぼろぼろぼろぼろ涙が零れ落ちる。
えずき続け、肩を震わせてごめんなさいごめんなさいと繰り返すかがみ。
えずき続け、肩を震わせてごめんなさいごめんなさいと繰り返すかがみ。
アルベルトは何も言わず、ただ頭を撫で続けていた。
散々髪の毛をかき乱した後、アルベルトは自身の顔に手を当て、眼帯を取り外す。
そして改めてかがみに向き直り、言葉を続けた。
散々髪の毛をかき乱した後、アルベルトは自身の顔に手を当て、眼帯を取り外す。
そして改めてかがみに向き直り、言葉を続けた。
「……戦場に出る時でない限り、これを常に身につけておけ。
ワシが貴様を認める証であり、また、貴様が二度と力に呑まれぬ為の戒めだ。
自らの意思で、あの狂人の力を行使するべきときこそ――――その眼帯を外すがいい」
ワシが貴様を認める証であり、また、貴様が二度と力に呑まれぬ為の戒めだ。
自らの意思で、あの狂人の力を行使するべきときこそ――――その眼帯を外すがいい」
涙を湛えたままの自分を見上げるかがみの目に眼帯を括りつけながら、アルベルトは目を弓にして、笑みを更に強くする。
かがみを安心させるかのように。
かがみを安心させるかのように。
「しばしあの力を忌み嫌うかもしれんが、考え様によっては悪いことではないのだぞ?
このワシを相手取る事ができるほどの力を、貴様は得たのだからな」
このワシを相手取る事ができるほどの力を、貴様は得たのだからな」
泣き続けて息苦しくなったので、ゆっくりと息を吸う。
何か言わなくてはいけないと思うも、かがみはしかし何も言葉が思いつかずに口をパクパクさせるだけだ。
立てかけられた剣を手に取り、かがみに手渡しながらアルベルトは言葉を連ねる。
何か言わなくてはいけないと思うも、かがみはしかし何も言葉が思いつかずに口をパクパクさせるだけだ。
立てかけられた剣を手に取り、かがみに手渡しながらアルベルトは言葉を連ねる。
「――――この剣も、ワシの力を大分蓄えたようだ。
いずれ貴様の力になることだろう」
いずれ貴様の力になることだろう」
そうして、アルベルトは表情を真面目なものに戻し、かがみの目を見つめながら一語一句力を込めて伝えていく。
彼女への、戒めの言葉を。
彼女への、戒めの言葉を。
「……かがみよ。
二度と己が力に飲み込まれるな。見事あの力を制した姿をワシに見せつけてみせろ。
……そして、己が道を違えるな。見失う事無く、常に進み続けるのだ。
それこそが天元を越え、その先にあるものを掴み取る為の術なのだから」
二度と己が力に飲み込まれるな。見事あの力を制した姿をワシに見せつけてみせろ。
……そして、己が道を違えるな。見失う事無く、常に進み続けるのだ。
それこそが天元を越え、その先にあるものを掴み取る為の術なのだから」
ケースから葉巻を取り出し、火をつける。
それを咥えて一服しながら、アルベルトは遥か空を見上げ、呟いた。
それを咥えて一服しながら、アルベルトは遥か空を見上げ、呟いた。
「さて、共に行こうか……不死身の柊かがみよ。
我らの目指す果てはまだ遠く、しかし確たる未来は必ずや待ち受けているのだから」
我らの目指す果てはまだ遠く、しかし確たる未来は必ずや待ち受けているのだから」
夜の闇に紫煙が立ち昇ってゆく。
――――まるで、細い細い梯子のように。
しかし、確かに天上へとそれは届いていた。
――――まるで、細い細い梯子のように。
しかし、確かに天上へとそれは届いていた。
◇ ◇ ◇
……ふと、葉巻が大部短くなっている事に気づき、アルベルトはシガレットケースを探して体をまさぐる。
だが、それをするまでもなかった。
……目の前には誰かの手。
突き出されているのは自身のシガレットケースだ。
だが、それをするまでもなかった。
……目の前には誰かの手。
突き出されているのは自身のシガレットケースだ。
「――――よう、衝撃の。
こいつを落とすとはお前さんらしくないな」
こいつを落とすとはお前さんらしくないな」
アルベルトはその姿を見て目を見開く。
それもそのはずだ。
――――彼は、上海で、そしてここで。
二回とも不本意に死に別れたはずの宿敵だったのだから。
それもそのはずだ。
――――彼は、上海で、そしてここで。
二回とも不本意に死に別れたはずの宿敵だったのだから。
「な、戴、宗……?」
馬鹿な、と続けようとして、しかし戴宗は豪快にそれを笑い飛ばす。
「何を驚いてんだよ衝撃の旦那。
ここは死人が生き返ることすらありえるってお前さんが言い出したんじゃねえか。
……あっちには俺の討ち取った、セルバンテスだって来てんだぜ?」
ここは死人が生き返ることすらありえるってお前さんが言い出したんじゃねえか。
……あっちには俺の討ち取った、セルバンテスだって来てんだぜ?」
ニヤリという笑いと共に背後を親指で指差す戴宗。
見れば、廃墟にかすんでオイル・ダラーと呼ばれた男の懐かしい姿が浮かび上がっている。
二人の顔を見比べて、アルベルトは納得とばかりに破顔した。
大きな声で。
大きな声で。
思い切り笑う。
見れば、廃墟にかすんでオイル・ダラーと呼ばれた男の懐かしい姿が浮かび上がっている。
二人の顔を見比べて、アルベルトは納得とばかりに破顔した。
大きな声で。
大きな声で。
思い切り笑う。
「ク、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
……なんと! 螺旋の王も実に粋な計らいをしてくれる!
実に、実に整った舞台ではないか!」
……なんと! 螺旋の王も実に粋な計らいをしてくれる!
実に、実に整った舞台ではないか!」
戴宗からケースを受け取りながら二本目の葉巻を抜き出し、咥える。
そのまま腕を組み、アルベルトは戴宗に向かって問いかける。
そのまま腕を組み、アルベルトは戴宗に向かって問いかける。
「……未練は今この時にもあるか? 戴宗」
「ありゃ、実にやる気だねぇ、衝撃の。
お前さんの盟友はあそこでお前さんを待っているんだぜ?
今更決着をつけ直す意味なんてあるのかよ」
お前さんの盟友はあそこでお前さんを待っているんだぜ?
今更決着をつけ直す意味なんてあるのかよ」
闘う気のなさそうな台詞に反し、戴宗は躊躇いなく拳を構える。
嬉しそうに笑いながら、これこそ未練を消し去る最高の機会だと言わんばかりに。
対するアルベルトの顔に浮かぶのも全く同じ表情だった。
嬉しそうに笑いながら、これこそ未練を消し去る最高の機会だと言わんばかりに。
対するアルベルトの顔に浮かぶのも全く同じ表情だった。
「フン……それで貴様とワシの因縁が消える訳ではなかろう。
ワシはワシの道を進む。
それ故に、あ奴の所に行く前に貴様との決着をつけねばならんのだ。
貴様が使命に準じたように――――そうだろう、戴宗」
ワシはワシの道を進む。
それ故に、あ奴の所に行く前に貴様との決着をつけねばならんのだ。
貴様が使命に準じたように――――そうだろう、戴宗」
――――そして、それだけではない。
自分の生き様というものを見せてやらねばいけない人間がいるからだ。
目を閉じ、すぐ近くでこのやり取りを見ているはずの彼女を意識する。
自分の生き様というものを見せてやらねばいけない人間がいるからだ。
目を閉じ、すぐ近くでこのやり取りを見ているはずの彼女を意識する。
「……あの嬢ちゃんか」
耳に届く戴宗の声を肯定し、アルベルトは静かに問いかける。
「――――貴様にとっての草間大作は、ワシにとってのあ奴のような存在だったのか?」
聞こえる声は、しかしそれを肯定しない。
ただ、自分たちのとっての真実を告げるだけだ。
ただ、自分たちのとっての真実を告げるだけだ。
「……さぁなあ。ただ言える事はあるぜ。
……俺達はあいつらを間違った大人にしちゃぁいけない。
それを貫いてんのは真実だろ? これまでも、これからもな」
……俺達はあいつらを間違った大人にしちゃぁいけない。
それを貫いてんのは真実だろ? これまでも、これからもな」
――――それを聞き、アルベルトは僅かに息を吐く。
腕を解き、両腕に衝撃波を溜める。
おそらく向かいでは戴宗が噴射拳を同じ様に使おうとしているだろう。
目を開けなくても分かる。
腕を解き、両腕に衝撃波を溜める。
おそらく向かいでは戴宗が噴射拳を同じ様に使おうとしているだろう。
目を開けなくても分かる。
暗闇の中で、アルベルトは一人の少女に対して告げる。
「……さあ、見るがいい柊かがみよ。
これこそが、衝撃のアルベルトの進む道だ」
これこそが、衝撃のアルベルトの進む道だ」
満面の笑みを見せながら、アルベルトは走り出す。
その両手に二つ名の通りの衝撃波を携えて、戴宗との一騎討ちにいざ臨む。
その両手に二つ名の通りの衝撃波を携えて、戴宗との一騎討ちにいざ臨む。
――――さあ、決着をつけようか。
貴様とワシの生き様を、後から来る者に見せ付けてやろう。
貴様とワシの生き様を、後から来る者に見せ付けてやろう。
「なぁ……戴宗」
◇ ◇ ◇
誰かの名前を呼んだその直後。
――――ぽとり、とアルベルトの手から葉巻が落ちた。
シガレットケースの中に残る葉巻は二本。
アルベルトは結局一本だけを吸った後、もう二度とそれを取り出すことはなかった。
アルベルトは結局一本だけを吸った後、もう二度とそれを取り出すことはなかった。
「……アルベルト?」
少女の声が夜の闇に溶け消える。
風は静かに冷気を運び。
月は静かに万事を照らし。
星は静かに空に瞬き。
人は静かに、現実に身を浸していく。
月は静かに万事を照らし。
星は静かに空に瞬き。
人は静かに、現実に身を浸していく。
たった一人の少女を除き、何一つ動くもののない廃墟の中で。
衝撃のアルベルトは威風堂々と、空を見据えて立っていた。
――――他の何をすることもなく、ただ立っていた。
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 螺旋力覚醒】
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 全生命活動停止確認】
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 全生命活動停止確認】
【B-5南部/道端/2日目/深夜】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、ずたずたの番長ルック(吐瀉物まみれ、殆ど裸)、髪留め無し、空腹、脱力、茫然自失
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル!!
ぼろぼろのつかさのスカーフ@らき☆すた、壊れたローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
穴の開いたシルバーケープ(使用できるか不明)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]
基本-1:アルベルトの言葉通りに二度と力に呑まれず、己の道を違えない。
基本-2:螺旋王を『喰って』願いを叶えた後、BF団員となるためにアルベルトの世界に向かう。
0:……アルベルト?
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、ずたずたの番長ルック(吐瀉物まみれ、殆ど裸)、髪留め無し、空腹、脱力、茫然自失
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル!!
ぼろぼろのつかさのスカーフ@らき☆すた、壊れたローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
穴の開いたシルバーケープ(使用できるか不明)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]
基本-1:アルベルトの言葉通りに二度と力に呑まれず、己の道を違えない。
基本-2:螺旋王を『喰って』願いを叶えた後、BF団員となるためにアルベルトの世界に向かう。
0:……アルベルト?
[備考]:
※ボイスレコーダーには、なつきによるドモン(チェス)への伝言が記録されています。
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※繰り返しのフルボッコで心身ともに、大分慣れました。
※ラッド・ルッソを喰って、彼の知識、経験、その他全てを吸収しました。
フラップターの操縦も可能です。
※ラッドが螺旋力に覚醒していた為、今のところ螺旋力が増大しています。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※本人の意思とは無関係にギルガメッシュ、Dボゥイ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。抑え切れない可能性があります。
※小早川ゆたかとの再会に不安を抱いています。
※ヴァルセーレの剣にはガッシュ本編までの魔物の力に加え、奈緒のエレメントの力、アルベルトの衝撃の力が蓄えられています。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
現在喪失中ですが、再構築は可能です。
※ラッドの力を使用することにトラウマを感じています。
※ボイスレコーダーには、なつきによるドモン(チェス)への伝言が記録されています。
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※繰り返しのフルボッコで心身ともに、大分慣れました。
※ラッド・ルッソを喰って、彼の知識、経験、その他全てを吸収しました。
フラップターの操縦も可能です。
※ラッドが螺旋力に覚醒していた為、今のところ螺旋力が増大しています。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※本人の意思とは無関係にギルガメッシュ、Dボゥイ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。抑え切れない可能性があります。
※小早川ゆたかとの再会に不安を抱いています。
※ヴァルセーレの剣にはガッシュ本編までの魔物の力に加え、奈緒のエレメントの力、アルベルトの衝撃の力が蓄えられています。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
現在喪失中ですが、再構築は可能です。
※ラッドの力を使用することにトラウマを感じています。
※螺旋力覚醒
[持ち物]:デイバッグ×14(支給品一式×14[うち一つ食料なし、食料×4消費/水入りペットボトル×1消費])
【武器】
超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
包丁、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム、王の財宝@Fate/stay night、ミロク@舞-HiME
【特殊な道具】
フラップター@天空の城ラピュタ、雷泥のローラースケート@トライガン
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、オドラデクエンジン@王ドロボウJING
緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)、サングラス@カウボーイビバップ
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ
ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、赤絵の具@王ドロボウJING
黄金の鎧@Fate/stay night(半壊)、シェスカの全蔵書(数冊程度)@鋼の錬金術師
首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)、首輪(クアットロ)
【通常の道具】
シガレットケースと葉巻(葉巻-2本)、ボイスレコーダー、大量の貴金属アクセサリ
防水性の紙×10、暗視双眼鏡、
【その他】
奈緒が集めてきた本数冊 (『 原作版・バトルロワイアル』、『今日の献立一〇〇〇種』、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』)
がらくた×3、柊かがみの靴、予備の服×1、破れたチャイナ服、ガンメンの設計図まとめ
超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
包丁、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム、王の財宝@Fate/stay night、ミロク@舞-HiME
【特殊な道具】
フラップター@天空の城ラピュタ、雷泥のローラースケート@トライガン
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、オドラデクエンジン@王ドロボウJING
緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)、サングラス@カウボーイビバップ
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ
ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、赤絵の具@王ドロボウJING
黄金の鎧@Fate/stay night(半壊)、シェスカの全蔵書(数冊程度)@鋼の錬金術師
首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)、首輪(クアットロ)
【通常の道具】
シガレットケースと葉巻(葉巻-2本)、ボイスレコーダー、大量の貴金属アクセサリ
防水性の紙×10、暗視双眼鏡、
【その他】
奈緒が集めてきた本数冊 (『 原作版・バトルロワイアル』、『今日の献立一〇〇〇種』、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』)
がらくた×3、柊かがみの靴、予備の服×1、破れたチャイナ服、ガンメンの設計図まとめ
※アルベルトの衝撃波によりB-5中部~南部が壊滅しました。B-5周辺にいるキャラクターが認知した可能性があります。
※ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!の首輪は南東方向に吹き飛ばされました。現在C-6西部を飛行中です。落下位置は未定です。
※結城奈緒@舞-HiMEはアルベルトの衝撃波に巻き込まれたため、B-5近辺の何処かに吹き飛ばされました。
※ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!の首輪は南東方向に吹き飛ばされました。現在C-6西部を飛行中です。落下位置は未定です。
※結城奈緒@舞-HiMEはアルベルトの衝撃波に巻き込まれたため、B-5近辺の何処かに吹き飛ばされました。
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