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  • てのひらのたいよう(後編)

てのひらのたいよう(後編)

最終更新:2023年05月22日 18:18

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だれでも歓迎! 編集

てのひらのたいよう(後編) ◆tu4bghlMIw





――怒っているとかいないとか、もはやこの段階まで来てしまえばそんな事を論じている場合じゃない。

自分の眉は吊り上がり、厳しい顔付きをしてこそいるものの、ソレは切迫した事態を重んじているだけだ。
何もゆたかを叱り飛ばそうとか、そんな事を考えている訳ではなかった。

(うご……くのか……!?)

清麿は大怪球フォーグラーと地下エレベーターを結ぶ通路で一人呆然としていた。
視界の先にはもはや単なる無機物ではなく、シズマという命の入った巨大ロボット。
黒い点ではなく、血のように赤い眼が清麿を見下ろしている。

中にゆたかが入っている事をフォーグラーの音声装置から漏れた声によって、清麿は既に理解している。
つい数分前、彼が明智への連絡を終えゆたかを迎えに来た時、そこにあったのはゆたかのデイパックだけだったのである。
そう、明らかな入れ違いである。
が、こうして分厚い鉄の塊を通してではあるが、再会出来た事は本当に幸運と言えるだろう。

(分かる……外から見てるだけの俺にだって分かるぞ……!! コイツはどう見ても"起動済み"だ!!
 中で一体何があったんだ? 一本のシズマでは何も起こらなかった……遅れて起動した……という事か?)

完全にフォーグラーへと至る通路は閉鎖され、もはや中に入ってゆたかを連れ出す事など不可能。
ならば、彼女に"起動"を停止させるか? つまり車ならばギアを戻し、再度イグニッションキーを回させる行為だ。
しかし、そもそも自分は『何故フォーグラーが起動したのか』という命題について明確な答えを導き出せていない。        
仮説自体は当然いくつも存在する。

(アンチ・シズマ管がなければアンチ・シズマフィールドは発生しない。それではエネルギーが……いや待てよ!
 『初めから起動に応えるだけのエネルギーが供給されていた』と考えるのはどうだ?
 内部のゆたかちゃんが何らかのアクションをフォーグラーに試みたとすれば…………動く、十分に動くぞ!?
 とはいえ"行動"はまだ開始していない。例えるなら鍵を回してアイドリング状態にある車のような物だ。
 つまり、中からの操作で何だって出来る状態。しかも乗り込んでいるのは意識が朦朧としているゆたかちゃんだ。
 こいつは……厄介なんてもんじゃない……!)

何よりも優先すべきはフォーグラーを『浮かび上がらせない事』だ。
フォーグラーの操る力は重力。
そう、この機体はジェット噴射やサイキックなどの力ではなく、重力場をコントロールする事によって移動する。

先程計測したその際の衝撃が及ぶ範囲は――――約500m。
眼と鼻の先にいる自分達など、フォーグラーの力が相手では一溜まりもない。

「ゆたかちゃん!! 俺の事が分かるかい!?」            
『……た……高嶺くん?』
「そうだ、高嶺清麿だ!! ゆたかちゃん、今から俺の言う事を落ち着いてよく聞いてくれ!! まだ間に合うんだ!!
 君が起動させてしまったソレ、大怪球フォーグラーが『本当に動き出した場合』とんでもない事になる!!」

……良かった。
フォーグラー内のゆたかに意識がある事を知り、清麿はホッと安堵のため息を付いた。
想定される最悪のケースとはつまり『ゆたかが昏倒していた場合』である。
先刻フォーグラーの起動パターンをシミュレートした際、いくつかの事実が明らかになった。
まず、このロボットは非常にオートメーションが進んでいる、という点だ。

そもそも全長300mを越す巨大ロボットに精密な動作を要求する事など現実的に考えて不可能。
故に操作マニュアルが簡略化され設計されるのは当然の運びだ。
主なコントロールは操縦席に備えられた四つのコンソールパネルで行うとして、非常に単純なコマンドで動作を起こす事も出来る。
加えて、このサイズのロボットを会場に放置するという事は、すなわち螺旋王はこの機体を『誰かに使って欲しい』のだ。

では――誰が使う事を彼は想像してこんな玩具を放逐したのだろうか。

人類最古の英雄王たるギルガメッシュか? 
キングオブハートの称号を持つ稀代の武道家、ドモン・カッシュか?
流派東方不敗を完成させた絶対王者たる東方不敗か? 
単身で宇宙間戦闘を可能とし、惑星をも落とすテッカマンか?

違う。彼らのような強者は、決してこんな機械人形に乗り込んだりはしない。
なるほど。力を求める者が更なる破壊を求めて、狂気に身を落とし、この機動兵器を駆る、という場面ならばまだ想像しやすい。
しかしここは螺旋王が、参加者に螺旋力の覚醒を促すために造り上げた闘技場である。
そう、おそらく彼が何よりも望んだ結末とは、

――戦う力など持たないか弱き者が、フィールドにおいて騒乱の種となり、他の者の覚醒における起爆剤となる事。

(こう考えればゆたかちゃんにコアドリルが支給された理由も分かる……! 
 螺旋と密接な関係性を持つ道具を自然と庇護される対象になるである彼女に支給し、周りの奮起を促す。
 殺し合いに乗った者に奪われても問題なし。なぜなら彼らは自ずと戦いの中で螺旋力に目覚めるッ……!!)

こうなっていると、こちらの声は一切届かず起動状態が続行してしまう。
長時間の放置がフォーグラーにどのような効果を齎すか……想像することさえ恐ろしい。
『エネルギーが切れて、起動停止』とはさすがにならない可能性が高い。
が、ここで手をこまねいていてもまるで前進はない。そうだ、自分がしっかりしなければ……


「大丈夫だから落ち着いてくれ!! いいかい、俺が何とかしてみせる!! 
 だからまずは教えてくれ。ゆたかちゃんがフォーグラーに何を――」
『……や、やめて……やめてくださいっ!!』
「え?」


清麿の決意と責任を込めた言葉は――ゆたかの絶叫に遮られた。
当然の如く、清麿は彼女のその予想外のリアクションに呆然となる。


『た、高嶺君は……怒ってるん、ですよね。私が……私が……"コレ"を動かした事に……』
「怒ってなんかいない! いや、それにそんなことはどうでもいいんだ!! まずは俺の話を――」
『どうでもいいなんて言わないでくださいっ!!!!』
「ッ――!?」


それは、今まで清麿が持っていたゆたかのイメージからはまるで想像出来ないような語調の厳しい一言だった。
スピーカー越しに伝わってくるしゃくり上げるような泣き声と、そして何らかの意志。
脅えているような、戸惑っているような、酷く……複雑な感情が込められていた。


『わたしの…………話を、聞いて……聞いてください……』
「ゆたか……ちゃん」


清麿は酷く混乱していた。
今自分と相対しているのは本当に小早川ゆたか本人なのであろうか、と。

その声はまるで今にも千切れ飛んでしまいそうな、糸のような印象を受けた。
こちら側からゆたかの顔は見えない。
他人とのコミュニケーションにおいて、視界が左右する要素は非常に重要な部分を占めている。
彼女がどんな表情で、どんな動作で、自分に言葉を掛けているのか分からない。
これは、ゆたかを説得しなければならない清麿にとってはあまりにも不利な材料だった。

つまり、先ほどの一言は清麿からはゆたかが視認出来ないという状況から発生した清麿のミスだ。
相手の気持ちを慮る事が出来なかった致命的な悪手。
そしてそもそも、理詰めの考察ならばともかく、話術は彼の専門ではない。


『言われなくても……分かってるんです……私……邪魔、ですよね。重い、ですよね。うざったい……ですよね』
「そんなこ……ッ」


そこまで出掛かった言葉を清麿は無理やり飲み込んだ。
淡々とナイフで自らの皮膚を削り取るかのように、ゆたかは言葉を重ねる。
明らかな、自傷行為。
そんな彼女の台詞を何度も遮る事は、確実に彼女の精神を磨り減らす事と見て間違いない。

(駄目だ……ここは、ゆたかちゃんに好きなだけ喋らせるべき状況だ……!
 俺には、情報が足りない。ゆたかちゃんが何故、ここまで追い詰められ、何を思っているのか。
 説得の基本は相手の意思を読み取り、思考を自らと同調させ"共感"を生む事……
 迂闊な動きは……逆効果にしかならない……ッ!)

こんな時、明智が居てくれれば良かったのに、そう思いながら清麿は唇を噛んだ。
彼は確かロスで交渉術を学んでいたと言っていた。
声だけのやり取りで犯人を説得するそのスキルはまさに、この場で最も活用される技能だろう。


『高嶺君は…………本当に、凄いと思います。私の方が年上なんて、全然思えないくらいに。
 明智さんも菫川先生も大人の方だけあって……いいえ、やっぱり何かが違います。
 だって私がこのまま大きくなって、同じくらいの年齢になっても……私はお二人みたいになれる気はしません』


ゆたかの言葉はズブズブと心臓に突き刺さる。
まるで黒塗りの巨大な鉄釘がゆっくり、ゆっくりと血と肉と血管の海に沈んでいくようだ。

――誰の、心に対してだ?

もちろん、


『皆さん、自分の役割を自覚して、それぞれが頑張っているんです。
 私には明智さんみたいに他の人を引っ張っていく事も、
 高嶺君みたいにロボットの働きを分析する事も、
 菫川先生みたいにお話を書く事も……何一つ出来ません。私は、無力です。守られているだけの役立たず……
 それどころか、足を引っ張っているだけ。私がいたからシンヤさんは死んだんです。Dボゥイさんもきっと……』


(ゆたか……ちゃんッ!!!!)


清麿とゆたか――――二人の、だ。



『だから……私は、思ったんです』
「……何を……だい?」


ゆっくりと、清麿は口を開いた。
彼女が、そう尋ねる事を望んでいるような気がしたから。

握り締めた拳は今にも皮膚が破れ、血が流れ出すのではないかと思うぐらい固く閉じられている。
このやり場のない衝動をぶちまける場所は、何処にも存在しなかった。
つまり一人の少女をここまで追い詰めた自分に対する強い怒りの感情。


『私には、私がいらない。もう何もかもがどうなろうと……関係ない。全部…………全部…………』


空気が、震えた。



『終わっちゃえばいいのに、って』



清麿は垣間見た。
決して幻や妄想などの類ではない事も感覚的に分かる。
赤い瞳でこちらを見つめるフォーグラーの向こうに、壊れた笑顔を浮かべる少女が居る光景を。


光のない笑みと共に、頬を紅潮させた少女があどけない表情で嗤う。
世界なんていらない。
励ましも、感情も、思いやりも全部、全部だ。


二人の隙間を埋めるのは無機質な鉄と冷たい空気だけ。
終わりを求める少女の心は、いつの間にか空っぽになっていた。
残ったのは泥のように汚い醜悪な感情だけ。


自己の崩壊。他者への強烈な依存。そして羨望。
その結果生じる、状況認識力の低下。
自ずと湧き上がる破滅的思考。
非力な自己に対する憎悪。
徹底的な自身への蔑み。
思考力の著しい低下。
倫理観の歪み。
常識の欠落。
進化の終焉。
自己完結。
段階滅破。
終末願望。
無気力。
疲労。
発熱。
紅。
死。

何もかもが幻のようだった。
それは、世界が終焉を迎える寸前の出来事だ。


とある世界のとある男のように――少女は、世界に絶望を求める。




そして――――"黒き太陽"が動き出す。


           ▽


(このニンゲンは……ッ!?)

ヴィラルは驚愕していた。
突然背後から黒尽くめの怪しい格好の少年が現れた事もそうだが、何よりもヴィラルを驚かせたのは彼の弁である。
おそらく、自分達を尾行していたであろうルルーシュという少年が持っていた情報は、ほぼ同じものがヴィラル達にも与えられていた。
確かに聞き覚えはある。が、それをルルーシュは一瞬で組み立て、幾つかの仮説としてスカーへと叩き付けているのだ。
恐ろしく頭の切れる人間。まるで、悪魔のように……


「クククク……神の手か、それとも特別な能力者か? これは是非とも詳しい話を聞いてみたい所だな……!」


残忍な笑みを浮かべる少年は、そこまで話すとピタリ、と歩みを止めた。
そして傍らのヴィラルとシャマルを一瞥する。

「さて、ヴィラル、そしてシャマルよ。これから貴様らには俺の傘下へと入って貰う」
「なん……だと……」
「聞こえなかったか? この場を制圧するためにこの俺、ルルーシュ・ランペルージが力を貸そうと持ちかけているのだぞ」
「笑止!! 貧弱なニンゲン風情が獣人である俺を部下にしようと言うのか!? 俺が仕えるのは螺旋王ロージェノム様、お一人だけだッ!!」
「……ほう。ならば、このまま成す術なく奴に命を差し出すか? それとも捕らえられ、その女と共に拷問にでも掛けられる事が望みか?」
「ッ――!!」

ルルーシュは小さくため息を付いた。そして、未だ地面に身体を付けたままの彼を冷徹な眼で見下ろす。
その視線に含まれるのは明らかに立場が下な者に対する蔑みだった。
言葉など介せずして彼は語る。そんな事も分からないのか、と。

個人としての戦闘力は皆無に等しい彼が見せるこの自信は何なのか。
それが王としての風格なのだろうか。
しかし、確実に突然現れた少年にヴィラル達が掌握されつつあるのもまた事実。

「俺一人ならば、この場から離脱するのは造作もないのだぞ? わざわざ、恩赦を掛けてやっている事を忘れられては困るな」
「クッ……しかし一時的とはいえ、俺に螺旋王様以外の者の下へ就くなど……」
「ヴィラルさん!!」

シャマルが突如怒声交じりにヴィラルを叱り付ける。
ヴィラルは予想外の事態に大きく眼を見開いた。

「ルルーシュさん。分かりました、今だけ……私達はあなたに従います」
「シャマル!? お前何を言って……ッ!?」
「私達は…………!!」

グッ、とシャマルがバリアジャケットの胸元を握り締める。
その仕草から感じられるのは明らかな逡巡。
ヴィラルと共に歩む決意を固めた彼女だ。ルルーシュの提案に心を悩ませない訳がなかった。しかし、


「生きて……そして、二人で……優勝するんです」
「……シャマル」


それ以上、ヴィラルは何も言わなかった。
彼は一瞬で理解したのだ。彼女の、自らが大切に思う女性が何を考え、この決断を下したのかを。

『生きる』『二人で』『優勝する』

短く、そして曖昧な言葉だ。今傷の男一人に圧倒されている彼らにとっては圧倒的に現実味に欠ける言葉だ。
だがヴィラルとシャマル。二人にとっては何よりも重く、全てを懸けるに値する命題でもある。
このまま二人だけで戦い続けても戦況を覆すことは非常に難しいだろう。
こちらには未だ使用していない重機関銃とロケット砲があるが、褐色の男も何かしらの奥の手を隠しているように見える。

参加者の首をチミルフに献上するなど夢のまた夢だ。そして、

(最も避けねばならないのは生きたまま捕らえられる事。俺は螺旋王様の部下だ。おそらく利用価値があると判断される。
 だがシャマルは……!!)

殺し合いに乗った、それも情報を持たない人間がどのような扱いをされるか……想像するまでもない。
ならば一時的にこの男と手を組んだ方が遥かにマシだ。自分にとって何よりも耐え難いのはシャマルを失う事なのだから。
撃墜マークよりも優先すべきは二人の生存……!

「……ニンゲンよ。勝機はあるのだろうな」

スッとヴィラルは立ち上がった。
右手には大鉈。そして全身から放たれる緑色の闘気――螺旋力。
金色の髪が黒色の空を突き刺すかのように闇の中で輝く。
傍らには同じ髪色の女性――シャマルがもはや言葉など要らないとばかりに控える。


「誰に向かって物を尋ねている。戦略が戦術に潰される……? そんな事があってたまるものか」


ルルーシュが両手を大きく広げ、残忍な笑顔を更に色濃くする。
それこそが彼の矜持。そして確固たる自己の確立による意志の強さ。絶対的な自信。            


「傷の男。貴様に恨みは無い……いや、むしろ偽ゼロに関して言えば感謝したいくらいだ。だがこの場は圧し通る。王たる俺の覇道のために」
「やはり、容易くは行かないか」
「ああ、少なくとも俺がこの場に参戦した事実、これだけでもこの二人には大きなアドバンテージになる。
 機動兵器を用いない人対人の戦闘に関して言えば、俺の知識は文献で参照した程度に過ぎん。
 とはいえ戦闘における"視界"の重要さは十分に理解しているつもりだ。
 貴様は俺の力を知っている。故に、意識せざるを得ない……チェックメイトだ」


確かにルルーシュの戦闘能力は皆無であり、運動神経との兼ね合いで言えばニア=テッペリンにすら劣ると言わざるを得ない。
だが彼が持つ特殊能力――ギアスはその効果を知る者にとっては、恐ろしい程の脅威となる。
古来より邪眼、魔眼の類に位置する魔導は非常に強力な力を秘めている。
例を挙げるとすれば、第五次聖杯戦争に「ライダー」のクラスでもって参加したギリシア神話におけるゴルゴーン三姉妹が末妹メデューサ。
彼女の石化の魔眼・キュベレイなどがその代表であろうか。

視力による状況の把握。それは戦闘において何よりも重視されるファクターだ。
まだルルーシュとの一対一であれば、スカーにも十分過ぎる程の勝利の要素は残されていた。
実際、ルルーシュが一人で彼を倒すのは、不可能に近い。


(この口振り……軍師、か。なるほど、戦いにおいて他者を動かす事に長けた『智』を持つ存在は何よりも尊い……)


だが、状況は三対一の明らかなパワーゲームへと転じた。
雌雄の双剣にその武器を振るう頭が加わったのである。
ルルーシュが己の邪眼によって、スカーの行動を牽制しつつ、ヴィラルとシャマルに指示を出す……一切の隙間も無い作戦だ。


黒の皇子、ルルーシュ・ランペルージ。彼の本領は肉体労働でも戦闘でもない。
単純な理詰めの考察においても比類なき力を発揮するが、それは彼の頭脳が優秀過ぎる故の副産物に過ぎない。              
ルルーシュが最も得意とするのは深謀遠慮に基づく、権謀術数。
そして部隊指揮と戦術立案である。特に彼は他の人間を動かすという点ではまさに天才的な才能を持っている。
大規模なソレに関して言えば参加者の中でも恐らく最上。

(まさかこの俺がニンゲン如きの下で剣を振るう羽目になるとは……! だが……シャマルを守るためだ、致し方ないか)

明智健悟、高嶺清麿、ギルガメッシュ、そしてルルーシュ・ランペルージ。
特に知略に秀でた彼ら四人の中でも、ルルーシュは現代的な戦術と独創性を取り入れた人員展開に関しては一日の長がある。


「クククククッ……過ぎたるは及ばざるが如し、と言った所か?」


ルルーシュとスカーの間で交わされる言葉にヴィラルとシャマルは互いの顔を見合わせた。
どうも、彼には「奥の手」のような能力が存在するらしい。
とはいえ核心を明らかにせずルルーシュが喋り続けているため、いまいち要領を得ない。
分かるのは彼の存在が天秤を一気に自分たちの側へと傾けた事だけ――


「宣告しよう、傷の男よ。貴様は俺達に打ち倒される――その、豊かな情報が貴様を殺すのだ」


それは、いわば智の魔人であった。
人を生かすためではなく、自らをより優位な状況へと導くためにルルーシュはその頭脳を駆使する。
悪魔は嗤い、禁忌の力をその身に宿した復讐鬼へと迫る。

しかし、


「では始めようか。まず力押しなど初めから考えるな。ヴィラル、これは山狩りではなく対人戦である事を頭に叩き込め。
 俺と傷の男、このラインを死守。距離もだ。そして、絶対に俺へと奴を近づけるな。
 ヴィラルは左、シャマルは右。奴の戦闘スタイルの基点は右腕にある。決して万能なモノではない。十分過ぎる程、勝機は――」


ルルーシュがそこまで言い掛けた時だった。


「む……何だ? この揺れは…………ッ!?」


世界に、亀裂が走ったのは。


刑務所のある北の方角から、火山の噴火にも似た凄まじい轟音が響き渡たる。
ルルーシュ達は戦闘の事も忘れ、一斉に音のした方向を見た。
そして眼に飛び込んできたのは信じられないような光景だった。

「刑務所が……っ!?」

誰ともなしに呟く声が響く。
そう、全長数百メートルはある刑務所がまるで、大海に飲まれる船のように地面へと沈み込んでいくのだ。
唖然。驚愕。それ以外の言葉が見当たらない。
ここは陸の上である。
寄る辺なき母なる海の上などではなく、大地によって足場を支えられた地上なのだ。
何故このような事が……!?

しかし、彼らはここで大きなミスをした。
予想外の事態に弱い事に関して定評のあるルルーシュだが、今回のケースに関しても同様の事が言える。

完全に不意を突かれたのだ。
冷静な時の彼であれば、一瞬でこう判断した筈なのだ。
大地の急激な沈下――それは大地震の前兆、もしくは地下にて何らかの緊急事態が発生した、と。

つまり、気にしなければならなかったのは音などではなく、自らの足元――



「……地面が、割れっ――――?」



まるで断末魔の嘆きのようなルルーシュの情けない叫び声が響いた。

グラリ、と彼の体勢が崩れる。
バキッという何かが砕け散る音と共に、あたり一面のコンクリートにヒビが入ったのだ。
そして隆起。
ザラザラとした茶色い地肌がまるで空へと持ち上がるように顔を出した。
足腰が弱いルルーシュはあっという間に、その流れに飲み込まれる。


「何だとっ――!?」


ヴィラルもショーアップしていくかのように競り上がり弾ける地面に気を取られ、周りの事が疎かになってしまった。
つまり"彼女"への配慮が欠けてしまったのだ。
故に――気が付かなかった。


「シャマルッ!!」
「……………………!」
「あっ……!」

駆け出そうとした時には既に遅かった。
この異常に唯一心を乱されず、状況に適応して行動した者が一人だけいた。
その名はスカー。褐色の肌の破壊者。

スカーは右腕で隆起するコンクリート片を強引に破壊。
そして、動くことさえままならないシャマルへと凄まじいスピードで接近する。
シャマルも近付いてくるスカーに気付き、必死に応戦しようとするが重量のあるワルサーWA2000では射撃体勢に入る事さえ出来ない。


「きゃああああああああああああああ!!」


ヴィラルは必死に身体を動かそうとした。しかし、届かない。届く筈もなかった。
必死に何メートルも離れた場所にいる彼女へ向けて手を伸ばす。
しかし、伸ばした手は無情にも無常にも虚空を切る。

触れる事など叶わない。


時間がゆっくりと進んでいるような気がした。


繋いだ手の感触がふと蘇る。

――暖かく、
――柔らかく、
――優しく、
――そして何かが満たされていく。

本来、夜になればカプセルに入り眠りに就かなければならないヴィラルにとって、太陽の光とは何よりも尊いものであった。
そしてシャマルは、一緒に居るだけで自分の心を照らしてくれる太陽のような女性だった。


何よりも大切な気持ちがあった。
自分の全てを懸けて守ってみせると決めた相手だった。
他の誰よりも、今の自身にとって掛け替えのない存在だった。


初めて――――愛した女性だった。



「シャマルッッッッッッ!!!!!」



スカーの右腕がシャマルの腹部へと吸い込まれる。


そして――ドンッ、という何かの爆ぜる音が聞こえた。
漆黒の空に流れる一丈の光。

何もかもが崩れていく。
漆黒の夜空を彩っていた真白なる星が掻き消える。
現れたのは黒点。"巨大"という言葉で言い表すことさえおこがましく感じられるような人造の星。


黒い、太陽。


「う……あ…………」


身体が揺れる。落ちていく。沈んでいく。
割れた瓦礫がまるで天へと昇っていくような、そんな独特な光景だった。


「……キ、キサマァァァァアアアアアアアアアア!!!! シャマルを!! シャマルを――ッ!!!」
「無力である事は、戦士にとって最大の罪科だ」


スカーはヴィラルを一瞥すると、若干名残惜しい表情のまま瓦礫を避けながら身を翻した。
向かう先は刑務所のあった場所だろうか。
そうだ。奴はその方向から現れたのだから、そう考えるのが自然だ。


「待て、キサマァァッッ!! グッ――!?」


すぐさま、追いかけたかった。
シャマルのためにも、そうするのが最も勇敢なやり方だという事も分かっている。
だが、あまりにもヴィラルは無力だった。
ある程度刑務所から離れたこの場所は完全に地面が二つに乖離する現象、いわゆる地割れは起こらず地表の隆起だけに留まっている。

しかし未だ揺れは酷く、舞い散るコンクリート片が邪魔をしてスカーに追いつく事など出来る筈もない。
加えてスカーは去り際に地表を破壊する事でヴィラルの進路を遮ったのだ。
降り注ぐアスファルトと硬い石盤。
獣人とはいえ、筋力に関してはそれほど高い恩恵を得ている訳ではないヴィラルにとって、追跡は不可能だった。


「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」


咆哮。
ヴィラルは自らが気高き獣人である事に心の底から誇りを持っている。
獣人とは人を超え、獣を超えた尊き存在であり、そのどちらにも劣る訳がない、と。


愛する人を失った悲しみを、シャマルを守り切れなかった愚かな自身への怨嗟を。
そして彼女を奪っていった傷の男への言葉に出来ない憎しみを込めて――

この一瞬だけ、ヴィラルは獣へと戻った。




空に瞬くのは一面の星と黄金色の輝きを放つ真ん丸の月。
真ん中から圧し折れた街灯の硝子の破片がパラパラと舞う。
荒廃した大地のように、地面を覆っていたアスファルトは無残な様相を示していた。

未だ日の昇る気配などは微塵もなく、おぼろげな光だけが男の視界を照らす。



――――黒き太陽が昇り、掌の太陽は空へと還る。



            ▽



「ゆたかちゃんっ!!! ゆたかちゃんっ!!! 俺の話を聞いてくれっ!!!!」 

清麿は声の限りに叫ぶ。フォーグラーがその装甲から放つ圧倒的威圧感。
決して、それは気のせいではなかった。つまり、重力だ。
全神経が明確過ぎるほど、その生命の危機を察知していた。

「高嶺君」

そして、その時彼の背後から響く成人した男性の声。

「明智さんっ!?」
「…………コレは、中々由々しき事態のようですね」
「どうして……ここに!?」
「高嶺君、君はもう少し賢い人間だと思っていたのですが。そう、よく考えれば分かる事ですよ。
 私は行き違いを繰り返していた君と小早川さんを呼びに来た……それだけです。ああ……しかし、」

明智が眼鏡をクッと持ち上げ、そして僅かに肩を竦めた。
清麿は、当然彼のそんな動作に違和感を覚える。
確かに明智はねねねに言わせれば「嫌味ったらしい奴」である……らしい。
だが、彼はリーダーシップに優れ、自分やゆたかなどの幼い相手に対してもその優雅な態度を崩さない優れた人間だ。
まるで自分を小馬鹿にするような、そんな口調で話し掛ける場面など初めてだ。


「どういう、事なのでしょうか。コレは」
「…………俺が、俺が……ゆたかちゃんの説得に失敗しました!」
「ほう?」
「結果、ゆたかちゃんが自暴自棄になって、フォーグラーを浮遊させようとしているんです!」
「……続けて下さい」
「大怪球フォーグラーは重力をコントロールして数tの巨体を浮遊させ行動するロボットです。
 全長300m、推定重量500万t……
 これだけの質量の物体を制御する事が可能な重力場と言うと……少なく見積もっても半径数百メートルは塵に還ります」 
「……この刑務所など一溜まりもないでしょうね」


明智は小さく、そして何度も頷いた。
そもそも刑務所の地下に大怪球フォーグラーを安置していた以上、起動時には建造物が崩れるのは想定済みの筈である。
故に螺旋王がこの建物を建造する際に考える事は、いかに周囲に被害を及ぼす形で施設を崩壊させるか、だ。
フォーグラーが完全浮遊するためには今しばらく時間が掛かるようだが、どう考えても脱出出来る間合いではない。

(打つ手は無し……か!? いや、諦めるにはまだ早い! ゆたかちゃんが俺の話を聞いてくれる可能性も残っている筈だ!)

「ゆたかちゃん! 明智さんも来てくれたぞ! 一度俺達の話を聞いてくれっ!」


すぐさま清麿はゆたかへの呼び掛けを再開する。
大怪球フォーグラーが鼓動を始めてから、ゆたかからの反応は一切なくなっていた。
聞こえていないのか?
いや、そんな事はない。外部スピーカーもマイクも、どちらも確実に機能しているはずだ。

「ゆたかちゃん! ゆたかちゃ――」
「……高嶺君。一つだけ、尋ねましょう」
「明智さんっ! こんな時に何を悠長な事を言っているんですか!?」

この状態においても明智の物腰はまるで変わらなかった。
メタルフレームの眼鏡の下に微笑を携え、額には汗一つ掻いていない。
言葉尻も丁寧な普段の彼のままで、うろたえる様子すら微塵も見せない。


「……高嶺君。君には『覚悟』がおありですか?」
「覚悟……ッ!? ゆたかちゃんを救ってみせるという意味なら勿論――」
「違います」


明智は清麿の返答を一蹴した。
そして、懐から『とある物体』を取り出し、それを清麿へと握らせる。
首輪の位置を解析し、最も効果的な判断によって状況を掌握するための道具――携帯電話。
別々に行動している際も、ずっと明智が周囲の状況を確認していたのだろう。
僅かながら暖かい体温が感じられた。


「――生き残った人間を導き、螺旋王の実験を阻止する覚悟があるのかと聞いているんです」


清麿は一瞬で明智の言葉を、行動を理解した。
そして、これから彼が何をしようとしているのかも何もかもをだ。


「あ……けち、さん……!!」
「高嶺君。君は若く、そして聡明だ。生き残らなければならない義務がある」
「でも……っ!! そんな……!!」
「衛宮君の時は見せ場をイリヤさんに取られてしまいましたからね。それに、菫川先生も命を賭してスカー氏を説得されたんです。
 私にだって活躍の場があるべきだとは思いませんか?」


自分の言葉が意志とは無関係に擦れていく感覚を清麿は意識した。
明智は全くこの一刻を争う状況にそぐわない仕草で小さく笑った。
その動作はあまりにも自然で、己にこれから訪れるであろう運命を幻視しているとは到底思えない。
だが、彼は状況も、自らの役割(ロール)も全てを把握した上でこの言葉を告げている。

明智健悟は導く者。集団を統率し、その場で最良と思われる答えを導き出す。

『集団の全滅を防ぐために高嶺清麿を一人フォーグラーの眼前から退避させ、自身が小早川ゆたかを説得する』

この選択が個々人の能力に見合った最も適切な処置だ。彼はそれを確信している。
銀色の髪がさらり、と揺れた。


「私には交渉術を学んだ経験がありますからね。小早川さんを連れてすぐに追い付きます。高嶺君、菫川先生の元へ、早く」
「……俺は……俺は……」
「高嶺君ッ!」


銀色の男が更に一歩前へ、出る。
苦悶する清麿の瞳に移ったのは銀色の髪、銀色の表情、銀色の思考――そして、大きな背中。
男の足取りには一片の迷いもなく、一片の後悔もない。
彼は胸を張って自らの役割へと講じる事が出来る。
そして後を託すに十分の力を持つ仲間もいる。では、何を戸惑う事があるというのか。

そんな物、存在する訳がない。


「小早川さんの事を恨んではいけませんよ」
「明智さん……それって……」
「私は今までに数多くの殺人事件と遭遇してきました。ですが、本当に心の底から喜んで殺人を犯す人間などほぼ皆無と言っていい。
 彼らの多くは心の中で泣いていました。救いを――――求めていました。
 ……話は終わりました。さぁ……高嶺君、早く」


彼の言葉を断れるほど、清麿は無粋でも愚かでもなかった。
我侭を言う気持ちなど毛頭なかった。彼が、そう決めた事だ。リーダーである彼の選択だ。
それでも、


「ウォオオオオオオオオオオオッ!!!」




胸の中で燻るこのやり切れない感情を誤魔化す事は出来なかった。

清麿は表情を伏せたまま、エレベーターに向けて全力で走り出す。
唇から漏れる嘆きの叫びを抑えようともせずに。
手には明智から渡された携帯電話を強く握り締め、男が作ってくれた希望に最後の望みを託す。
ただ真っ直ぐと。男の意志を無駄にする訳にはいかないのだから。

(明智さん……あなたは……っ!! 俺に、何を……何をやれって言うんだ!!
 皆を引っ張っていく……!? 確かにやってやれない事はないさ! だけど、違う! それは……それは、あなたの役割なんだ!!)

清麿の心を切り裂いていくのは単純な無力感だった。

――もし今自分の隣にガッシュがいたならば、
――右手に魔本があったならば、

あんな鉄屑に怯んだりする事はなかった。
真っ向から彼女の狂気を見据え、受け止め、救い出してやる事が出来た筈なのに。

(一人じゃ何も出来ないのかっ……俺は!? クソッ……!! 畜生!! 明智さん……!!)

そして清麿がもう一度明智の姿をその眼に収めようと振り返ろうとした直後だった。
その、凄まじい削岩音が地下空洞に響いたのは。


「……なっ!?」


ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ、という鼓膜を突き破るかのようなその音に清麿は聞き覚えがあった。
現代の日本で暮らす普通の中学生としての側面も持ち合わせる彼にとって、半ば耳馴染みのモノ。
辺り一面をアスファルトに囲まれ、年末ともなれば修繕作業に日本中の街が腐心する。
つまり――――鉄を、土を穿つドリル。

音の方向は右でも左でもなく、上。
黒に染まり、どこまで続いているのかも分からない天井だ。
そして音の暴力の氾濫に巻き込まれた世界に突如乱入して来たのは、


「明智、清麿!! 無事か!?」


紅にカラリーングされたロボット――ラガン、に乗り込んだ菫川ねねねの姿だった。
額、右腕、左腕の合計三箇所から飛び出した巨大なドリルが豪快な音を立てながら回転する。
全身から緑色の光を放ちながら、岩盤を突き破り降り立ったラガンはエレベーターの近くで呆然とする清麿の元へ一気に移動する。


「な、す……菫川先生!? な、なんですかこのロボットは……?」
「んな事気にしてる場合か! いいから早く乗れって!」
「は、はい……」


清麿は鬼気迫るねねねの表情に押され、急いでラガンのコックピットに乗り込んだ。
内部は精々二、三人程度の人間しか収納出来ないかと思える程狭い。
ゴツゴツした金属の感触。明らかに本来は一人乗りの機動ロボットなのだろう。

「菫川先生! 明智さん達はこの先です! ゆたかちゃんがフォーグラーを起動させました! 急いでください!!」
「……あのデカブツを……ゆたかが?」
「はい! もうすぐここは重力波で崩壊します。急いで明智さんを助けに行かないと……!」

清麿は必死に訴える。
どういう原理で動いているかは分からないが、あの厚いコンクリートと岩盤をぶち抜いて地下まで降り立ったロボットだ。
コンソールの中央に見える螺旋形のメーターのど真ん中に何故かゆたかが持っていた筈のコアドリルが刺さっている。
もしや……このロボットの原動力は?


「おい、待て。明智はもしかして『ここは私に任せて先に行ってください』とか言ったんじゃないよな?」
「え……は、はい。何故それを……」
「………………やっぱりか。じゃあ、私達は逃げるぞ」


清麿は自分の耳を疑った。
彼の言葉を聞き、ねねねが一瞬その眼鏡の下の表情を曇らせた……ここまではいい。
しかし彼女はすぐさま凄まじい言葉を残し、ラガンのドリルを再度回転させ始めたのだ。

『逃げるぞ』と。


「な……ど、どうしてですっ!? 今から行けば間に合うかも――」
「馬鹿かお前は! 頭いいんだから少しは考えろ! 明智が勝算もないのに、んな事言う訳無いだろ!?」
「違います! 状況は切迫している……明智さんは死ぬ気で俺を……」
「だったら尚更だ! もうここは長くは持たない。今からアイツの所に行ったら、お前を逃がした明智の意志はどうなる!?」
「あ……」


ねねねはソレっきり唇を真一文字に結んで黙ってしまった。
清麿も彼女にどんな台詞を掛ければいいのか分からない。
二人とも理解しているから辛いのだ。明智の行動の理由は明らかに自分達を生かすためなのだから。


「……いいか、清麿。自分を信じるな。明智を信じろ。お前を信じる、明智を信じろ……分かったか」
「クソッ……クソッ……クソォオオオオオオオオオオ!!」


清麿の叫び声が空気を伝わり、世界を揺らす。
握り締めた拳が何度も何度も、ラガンを殴りつけた。赤い血が噴出し、皮膚が裂ける。
清麿はそれでも拳を打ち付けるのを止めない。止められる訳がない。


「……行くぞ。掴まってろ。アイツは……絶対に帰って来る。ゆたかを連れて帰って来る」
「……はい」


ラガンが再度全身から緑色の光を放ち、空へと昇って行く。
崩れかかった黒の天球を突き破りながら。



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