23話:賑わいを見せる錆塗れの遊戯場
「し……にたく……ぁ……」
喉笛を切り裂かれたドーベルマン獣人の若い女性が、涙を流しながら崩れ落ちた。
己の右手の爪を赤く染めた濃いグレーの雄の人狼、コーディは、
血の付いた爪をぺろりと舐めると、女性の荷物を漁り始める。
女性が装備していた鶴嘴と、デイパックからもう一つ、旧式の回転式拳銃、S&Wスコフィールド・リボルバーと、
予備の弾を発見した。
「銃か、貰っておこう」
鶴嘴は重く使いにくいと見たコーディは捨て置き、スコフィールド・リボルバーと予備弾のみ手に入れる。
「さあて、次に行こうかな……?」
次の獲物を捜すためコーディは歩き出した。
◆
「……行った、か?」
人狼が去った事を確認すると、忠則はドーベルマン獣人の女性の死体に近付く。
喉笛を切り裂かれ大量出血をして死んだようだ。
その表情からは恐怖と苦痛、絶望が感じ取れる。
せめて顔に布でも被せてやりたい所だが都合良く布は見付からない。
手を合わせ、忠則は人狼が去った方向とは別方向に進んだ。
「……」
目の前で死人が出る所を見て改めて自分達が置かれている状況を、忠則は知る。
「お願いだから、無事でいてくれ、凌河」
どこにいるのか、まだ生きているのかも分からない息子に対する思いは、募る一方だった。
ドゴオオン……。
「!」
割と近くから爆発音のような音が聞こえた。
「……何なんだ、何が起きたんだ?」
爆発物を支給された参加者もいるのだろうか。
音がした方向は、さっきの人狼が歩いて行った方向のような気がする。
もしかしたら、息子が襲われたのかもしれない――――その可能性も否定出来ない。
忠則は爆発音のした方向へ向かった。
◆
「ああ、ああ……」
突然の爆発の直後、視界が暗転し、気が付くと美祐は身体中に痛みを感じながら空を見ていた。
しかし下半身は痛くは無い。何故だろう。
「私の、身体、が……!?」
何が起きたか上体を起こして下半身を見る。
そこには下半身は無かった。
下半身の代わりに、ぐちゃぐちゃの赤い肉の何かが広がっている。
チューブ状のソーセージの出来そこないのような物も見える。
成程、痛く無い筈だ、下半身は跡形も無くなっているのだから。
「お、大迫、さんは」
他人の心配をしている場合等では無いのだが気が動転している美祐は同行していたはずの照夫の姿を捜す。
「いっ……」
すぐに照夫を発見する。
厳密に言うと「照夫」だったもの、だが。
頭部の辺りがもう原型を留めておらず、どう見ても生きているとは思えない。
「……」
呆然と照夫の死体を眺めていると、毛皮に覆われた獣の身体で視界が塞がれる。
顔を上げると自分に銃口を向ける人狼の雄の姿。
この人狼が爆弾か何かでも自分達に投げたのだろうか。
今となっては確かめる術も無い。
それより間も無く自分も死ぬらしい。
例え人狼が来ていなくても下半身がこの有様ではもう絶対に自分は助からないと、美祐は思う。
ダァン!!
銃声と同時に額の辺りに衝撃を感じる。
視界が真っ赤に染まって行く。
意識も遠退いて行く。
(なお、しげ、ごめん――――)
どこかにいるはずの愛する飛竜の名前を心の中で呟き、再会もしない内に死んでしまう事を謝る。
そしてそれが美祐の最期の思考となった。
先刻殺害した少年から奪った手榴弾の威力と同じく殺害した女性から奪った回転式拳銃の使い勝手に、
人狼青年、コーディは感心する。
軍人風のドーベルマン獣人の男の持っていた小銃は爆発で壊れてしまったらしい。
少女が持っていた金槌は爆風で吹き飛ばされ近くの建物の壁に突き刺さっている。
役に立ちそうな物は無さそうだ。
もはや肉塊と化した二人の死体にももう興味を失ったのか、コーディはさっさと歩き去って行った。
◆
爆発音を聞いた忠則がその現場と思しき場所に到着する。
そこでは、何か爆発でも起きたような形跡が確かにあり、
肉片や血が飛び散っていた。
原型を留めていない死体が二つあり片方には白いシーツらしい物が掛けられている。
もう一つには虎獣人の少女が今まさにシーツを掛けようとしていた。
「これは、何が起きたんだ」
「……私にも分からないです、私が来た時にはもうこんな有様で」
「私は久木山忠則、君は?」
「深谷春那と言います、私を疑わないんですか? 私がこの人達を殺した可能性だってあるのに」
「……君が殺したのなら、わざわざシーツで死体を覆ったりしないだろう」
「……」
「それにしても酷い事をする……さっき、向こうでグレーの人狼がドーベルマンの女性を殺すのを見た。
こっちの方に歩き去ったから、もしかしたらそいつの仕業かも……」
「私は見ていませんが……」
「君は一人か」
「はい」
「……こんな状況で聞くのも何だが私は息子を捜していてね、凌河って言う、私と同じ白犬の獣人なんだ」
「見てません……私も人を捜しています。唐橋圭輔って言うんですが……」
「いや、見ていないな……」
血と火薬の臭いが漂う中、二人は情報を交わすがどちらにとっても有益な情報は無かった。
「……私は
殺し合いには乗っていない。君も、か?」
「はい」
「何なら一緒に行かないか」
「良いんですか」
先刻酒場で盛っていた二人組はあっさり見捨てた忠則だったが、
少女一人でこの殺し合いの中行動しているのは流石に放置は出来ない。変な意味では無い。
「……ありがとうございます、宜しくお願いします」
「ああ」
二人は一緒に行動する事となった。
【沖元実沙 死亡】
【大迫照夫 死亡】
【萩野美祐 死亡】
【残り 30人】
【朝/F-3廃遊園地】
【コーディ】
[状態]腹部に浅い刺傷
[装備]S&Wスコフィールド・リボルバー(5/6)
[持物]基本支給品一式、.45スコフィールド弾(12)、クロスボウ(1/1) クロスボウの矢(10)、
投げナイフ(1)、ミルズ型手榴弾(2)、粉末ジュースオレンジ味(3)
[思考・行動]
0:殺し合いに乗り優勝する。
1:バイロンさんは放置。アドレイド、クローイちゃんは敵いそうなので会ったら始末する。
[備考]
※知人はバイロン、アドレイド、クローイの三人です。
※久木山忠則、深谷春那から離れた場所にいます。
【久木山忠則】
[状態]健康
[装備]クナイ
[持物]基本支給品一式、クナイ(2)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。凌河を捜す。
1:深谷さんと行動。
[備考]
※コーディを危険人物と認識しました。
【深谷春那】
[状態]健康
[装備]日本刀
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:圭ちゃんを捜す。
1:久木山さんと行動。
[備考]
※特に無し。
≪支給品紹介≫
【S&Wスコフィールド】
沖元実沙に支給。予備弾12発とセット。
1870年にS&W社が開発されたモデルNo.3リボルバーを1875年に改良したモデル。
ジョージ・W・スコフィールド少佐のアイデアを取り入れ.45スコフィールド弾を使用出来るようにした。
【金槌】
萩野美祐に支給。
物を打ち付けたり、潰したりする工具。
最終更新:2012年05月07日 18:13