ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0939 ゆっくりが残すもの
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ankoss
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最近、ゆファリパークとか書いてた奴の作品です。ゆファリオチじゃないよ。
長編は苦手だけど、挑戦してみました。(長編得意な大物作家のD.Oさん、余白さん、お説教さんが羨ましいです)
むらむらパートとヒャッハーパートのバランスはきっと悪いです。愛で描写が多いです…。虐待描写は修行中です。
最近は、素晴らしい作品が多いので読むのが苦痛になったらごめんなさい。
あと、オチ(分かりやすいですが…)の都合上、タグは最小限しかチェックしませんでしたので、苦手がある方はご注意下さい。
「ゆっくりが残すもの」
れいむは捨てられた。
捨てられた理由は簡潔に言えば、ただ飼い主が飽きたから。それだけだ。
ただ、小心な男だったのでわざわざ近くの山にまで捨てに行った。
そのため、れいむは野良と言っても野生として生きることになった。
このれいむは生まれたときからの生粋の飼いゆっくり。
この時点でそのゆん生は詰んでしまったともいえる。
「どうしたらいいかわからないよ…」
途方に暮れていたれいむは、あてもなくトボトボと進んでいく。
これまで、あんよを傷つけることもなく生きてきたれいむにとって、山道を跳ねるだけでも大変だった。
しかし、何が幸運を呼ぶかわからないのもまたゆん生の面白さか。
飼いゆっくりであったことで、生きる場所を見つけられることを、れいむはまだ知らない。
その幸運を運んでくるものが現れる。
1匹のゆっくりまりさだ。
このまりさ、群れの食べ物を探して狩りに出ていたまりさであった。
ひとゆん物であったので、身軽に行動できるため遠くまで来ていたのだった。
そのとき、見慣れないれいむを見て足を止めた。見とれたのだ。
(ゆゆ!とっても、びゆっくりなれいむなのぜ!)
捨てられたばかりなので、野生のゆっくりに比べればはるかにきれいであった。
れいむの方はといえば、初めて別のゆっくりと接する事になるのでどうしたらいいのか戸惑っているようだった。
(とりあえず、ごあいさつをするよ)
「ゆっくりしていってね!」
れいむが笑顔でご挨拶すると、まりさも
「ゆっくりしていってね!」
饅頭皮を真っ赤にさせて、返事をする。どうやら一目惚れしたらしい。
「れ、れいむはどうしてこんなところにひとゆんでいるのぜ?」
「れいむは、かいぬしさんにすてられたんだよ…」
「ゆゆ…?」
まりさには、飼い主という概念はあまりないようだ。
まりさは生粋の野生であり、人間を群れのゆっくりたちはその歴史の中で酷く恐ろしいものとして恐れていたので近づいたことさえ無かったのだ。
れいむの説明を一通り聞き終わると、
「にんげんさんは、こわいのぜ。だからむしろよかったのぜ」
「でも、れいむいくところもなにもないよ…」
不安に震えるれいむを見る。そのとき、まりさのなかに使命感と下心が半分ずつ芽生える。
(ふるえるれいむもかわいいのぜ。このれいむは、まりさのおよめさんにするのぜ)
「まりさのおうちにくるといいのぜ。ちょうど、おへやにはすぺーすさんがあるのぜ。むれのみんなにも、れいむをしょうかいするのぜ」
「ゆう…」
れいむは考えた。しかし考えるまでも無く、まりさを頼るしかないと。
「むれ?」
れいむには群れという、ゆっくりのコロニーに対する知識は無い。
「そうなのぜ。たくさんのゆっくりが、たすけあってせいかつしてるのぜ。まりさもむれのいちいんなのぜ」
まりさが、ゆっくりの群れはとてもゆっくりしていると、れいむに説明する。
誇張表現なのはまりさも分かっていたが、どうしてもこのれいむを自分のおうちへ連れ帰りたかったのだ。
「ゆ!れいむも、まりさのいるむれでせいかつするよ!」
「そ、それがいいのぜ!」
笑顔のまりさの後を、不安げなれいむが追いかけていった。
「というわけなのぜ」
まりさがれいむと共に訪れたのが、長のぱちゅりーの所だった。
長の番のちぇん、まりさの姉まりさと、その番のありすもそこに集まっていた。
まりさは、れいむと出会ったいきさつを話す。
「むっきゅりいきさつはわかったわ」
長が口を開く。
「ゆっくりしていくといいわ。ここは、とかいはなむれよ」
ありすがにこやかに、れいむを歓迎する。
「でも、れいむなにもわからないよ。ごはんさんのとりかたも、ぜんぶ…」
れいむが申し訳なさそうに言う。
「そんなのまりさが、ゆっくりおしえるのぜ!まりささまは、むれいちばんのかりのめいじんなのぜ!」
まりさが、れいむの気を引こうとおさげで自分の胸(?)を叩きながら「ゆふん」と自信満々に言う。
そんな様子を見て、一同は苦笑する。
「そうだ、かいゆっくりだったなら、にんげんのさんのことがわかるんじゃない?」
長が思い出したように言う。
「あ、それはちょうどいいんだねー。わかるよー」
ちぇんも、にっこりと笑う。
「れいむは、かいぬしさんのことならすこしわかるよ。でも、そんなのやくにたつのかな?」
長が、神妙な面持ちになると、
「むきゅ、じつはすてきなゆっくりぷれいすをはっけんしたのよ」
「すてきなゆっくりぷれいす?」
「そう。でも、それはにんげんさんのつくったおうちなの。にんげんさんがいないのは、かくにんずみだけれど、つかいかたがいまいちわからないのよ」
この群れのゆっくりたちは、数日前に台風で多くのおうちと仲間を失っていた。
まりさの親もそうだ。それで、群れの新しい住居を探していたら、人間の造った建物がたくさんあったのだ。
最初は警戒していたが、全く人の気配も無く、人間さんを一人もみない為、自分たちのゆっくりプレイスにしようと思っていたのだ。
「れいむにわかることなら、なんでもきょうりょくするよ!」
「むきゅ!それはたすかるわ」
「これでれいむも、むれのせいしきないちいんなのぜ!」
まりさがそう宣言して、ひとゆんではしゃぎだす。
「ゆふふ」
れいむは、そんな少し間抜けな、でも憎めないまりさを見て、捨てられてから初めての笑みをこぼすのだった。
翌日、群れは長の号令のもと全ゆんが集まり、移動を開始した。
れいむの元飼いゆっくりであるという、野生としては詰みな条件も、
人に関わらずに生きてきた群れの中で役割を得るという事になるのだから、いやはやゆん生はこれだから分からない。
群れの一団は、家族十数単位で、成体25匹、子・赤ゆが合わせて50匹ほどだろうか。
子ゆ・赤ゆが少なめなのは台風の影響をうけての事であった。
長とちぇん、姉まりさとありすにも子供はいた。
まりさはその子たちの面倒を見つつも、常に羨ましいと思っていたのだ。
まりさは、移動の最中にちらりとれいむを横目で見る。
(れいむとかわいいおちびちゃんをつくりたいのぜ)
「どうしたの、まりさ?」
「ゆ!な、なんでもないのぜ!」
じっと見過ぎてしまったらしく、れいむに急に声をかけられて慌ててしまった。
おさげで頭をかきながら、ゆへへと照れ笑いをする。
だがそんなこと一つとっても、まりさには嬉しかった。
群れの一団は目的のゆっくりプレイスに到着する。
といっても、広い敷地に点々と無数の人間さんのおうちがあることを考えれば、ここはゆっくりプレイスの一つということになるだろう。
「むきゅ、このようなおうちがいくつかあるのよ」
「すごいね。たしかににんげんさんのおうちにまちがいないよ」
れいむも感心する。でも、れいむには一つ気がかりがあった。
「れいむは、にんげんさんのおうちのことは、ぜんぶはわからないよ。でも、はいるにはかぎさんがいるんだよ」
「むきゅう?かぎさん?それはなんなの?」
れいむは鍵の事は実は良く知らない。でも、飼い主がそれで戸締りをしていたことは覚えていた。
「それなら、しんぱいないのぜ」
まりさが、家の庭にまわり壊れた窓を皆に見せる。
「ここから、はいれるのぜ」
「だいたいこんなかんじで、ほかもはいれるよー。わかるよー」
ちぇんも、いくつかの家を見てきたのだろう。
「ごめんね…。れいむは、やくにたたないね…」
「そんなことないのぜ!なかのことで、きっとやくにたつのぜ!」
まりさが落ち込むれいむを慌ててフォローする。
一同は、長と例のメンバーで家に一応入ってみる。
「とかいはね、といいたいところだけれど、どうもかってがわからないわね…」
ゆっくりにとって何が必要で何が危険かは、群れの物にはいまいち分からない。
「おそらく、にんげんさんのものは、にんげんさんがいないとつかえないよ。でも…」
そう言って、れいむは壁に向かって跳ねていく。いや、壁ではなく押し入れだ。
「れいむ?そのかべさんがどうかしたのぜ?」
れいむは、押し入れの扉をもみあげをつかって横に懸命に動かしていく。
「まりさも、てつだうのぜ!」
2匹で、う~んう~んと唸りながら動かしていく。
(これは、もしかしてまりさとれいむの、はつのきょうどうさぎょうなのぜ!)
と雑念が混じったりもしたが、扉は無事に開かれた。
「むきゅ!かべさんがうごいたわ!」
中から、布団が出てきた。そして、それを見てゆっくりたちは歓声をあげる。
「ふかふかさんだよー!れいむはすごいよー!わかるよー!」
「とかいはなねどこだわ!すばらしいわ、れいむ!」
それを見て、れいむはホッとしたような笑顔をうかべる。
「れいむのまえのおうちでも、うごくかべさんのなかに、おふとんさんがあったよ。れいむ、みんなのやくにたててうれしいよ!」
まりさは、感動のあまりれいむにすーりすーりしながら、
「すごいのぜ、れいむ!やっぱり、れいむがいてくれてよかったのぜ!」
「ゆふふ、まりさ、くすぐったいよ」
そんな2匹を、ほほえましく見つめていた長たち。
「むきゅ!こんなかんじでむれのみんなのおうちをきめてしまいましょう!」
「えい、えい、ゆー!」
そんなこんなで、群れのゆっくりたちはおうちを分配して住むことにした。
その日のうちに分配を済ますと、各々自分の新しいおうちへ帰っていった。
そんな中、れいむはまりさと同じおうちに住むことにした。
「れいむは、むれにしあわせをはこんでくれたのぜ」
「いいすぎだよ、まりさ」
「そんなことないのぜ!それに、れいむといるだけでまりさはしあわせなのぜ…」
まりさが、真っ赤になっておさげをもじもじさせながらうつむく。
このまま、ゆで饅頭になりそうな勢いだ。
そんなまりさを、れいむは愛おしく見つめる。
「まりさのおかげだよ。ゆっくりありがとう」
そう言うと、れいむはまりさにふぁーすとちゅっちゅっをささげた。
「れ、れいむ?!」
「れいむは、まりさがだいすきだよ!」
「まりさもなのぜ!あいしてるのぜ、れいむ!」
2匹は見つめあうと、そのまま甘い2匹だけの夜を過ごした。
愛の巣からは、愛し合う若いゆっくりの情熱的な声が響いていた。
「「すっきりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーーーー!!!」」
群れのゆっくりが新しいゆっくりプレイスに移動してから2週間ほど経ち、生活にも慣れてきたころ、
れいむとまりさの間には、3匹の赤れいむと2匹の赤まりさが誕生し、ゆっくりした毎日を送っていた。
「ゆっきゅりころがりゅよ!」
「ゆっきゅりまわりゅよ!」
「ゆっきゅりのーびのーびしゅりゅよ!」
赤ゆたちが思い思いに遊んでいると、
「れいむ、おちびちゃんたち、いまかえったのぜ!」
「ゆっくりおかえり、まりさ」
「おとーしゃん、ゆっきゅりおきゃえり!」×5
まりさが、帽子の中に餌を詰めて帰ってくる。
「むれのみんなも、ゆっくりぷれいすがゆっくりできるから、しあわせーなのぜ」
そうなのだ。
しっかりとしたおうちがあるので、子供の安全が確保できることもあり、群れの赤ゆの数は倍以上に増えていた。
「まりさのおねーさんや、おさのところも、あたらしいおちびちゃんがうまれたんだよね」
「そうなのぜ、みんなはりきっているのぜ」
2匹で笑いあい、ゆっくりした世間話をする。
「おにゃかしゅいたよ!ゆっきゅりごはんしゃんにちてね!」
子れいむがご飯を待ち切れずに催促する。
「いまよういするのぜ」
いつもと変わらない、ゆっくりとした食事を今まさにしようとした時、突然の来客が現れた。
そのゆっくりれいむは身体に傷をいくつか負っていた。
大したものでは無いので、生死にかかわるものではないのだが。
その足元には、2匹の子れいむもいる。
「ゆゆ!たすけてね!れいむは、げすからにげてきたんだよ!」
「どういうことなのぜ?」
突然の来客に面食らうも、まりさは事情を聞いてみることにした。
「れいむはあるむれにいたんだよ。いままではうまくいっていたのに、むれがれいぱーにおそわれたんだよ!」
元飼いゆであるれいむも、レイパーという独特のゆっくりについては聞いたことがある。
震えながらも、おちびちゃんが不安にならないように顔には出さない。
「それで、れいむのはにーがえいえんにゆっくりさせられて、むれもおさがやられてめちゃくちゃになったよ!」
来客のれいむ(いや、しんぐるまざーと言った方がわかりやすいか)は非常に興奮している。
「むれのとうせいがとれなくなって、げすがはばをきかせはじめて、れいむはいじめられたからにげてきたんだよ!」
そこまで一気にまくしたてたしんぐるまざー。
「それは、たいへんだったね…」
れいむが気遣う。
「しんぐるまざーで、むれもおわれて、れいむはとってもかわいそうなんだよ!だから、たすけてね!」
まりさとれいむは顔を見合わせる。
「うちのむれのいちいんになるのぜ?なるなら、おさのところへあんないするのぜ」
そう言って、まりさが救いの手を差し伸べる。
「みゃみゃ!おにゃかしゅいちゃよ!」×2
「ゆゆ!?そうだね!れいむも、がんばってはねたから、おなかすいたよ!ごはんさんをちょうだいね!」
まりさの提案には返事をせず、空腹を訴え、ご飯を要求するしんぐるまざー一家。
その勢いにあっけにとられるまりさとれいむ。
「このどんぐりしゃんはれいみゅが、たべるにぇ!」
「こっちのいもむししゃんは、れいみゅのだよ!」
しんぐるまざーの子れいむが、ご飯直前のままになっているまりさ一家の食卓の前に行き、勝手に食べ始める。
「ゆゆ!れいむもたべるよ!」
しんぐるまざーも注意はせずに、自分も勝手に食べ始める。
「む~しゃ、む~しゃ、うめ!これ、めっちゃうめ!」
それを見て、お腹を空かせたまりさたちの赤ゆが騒ぎ出す。
「おちょーしゃん!まりちゃもたべちゃいよ!」
「ゆんやぁ!れーみゅのいもむちしゃんがー!」
慌ててまりさが、子供たちの傍に行く。
「おちびちゃんたちも、ゆっくりたべるのぜ」
よっぽど酷い目に遭って、お腹が空いていたんだろうと好意的に解釈したれいむとまりさは、
しんぐるまざー一家を放っておき、ぐずるおちびちゃんたちに餌を与える。
れいむとまりさは、この日はろくに食べることは出来なかった。
翌日、しんぐるまざー一家を長の所へ連れていくことにする。
しんぐるまざーは口を開けば自分が可哀そう可哀そうと言うだけで、長も非常にゲンナリしていた。
「むきゅ、ひとつだけもんだいがあるわ…」
しんぐるまざーの無意味な講釈が一段落ついたところで、長が口を開いた。
まわりにいる群れの中心のゆっくりたちは、このしんぐるまざー自身が問題があるのだと思ったが違うようだ。
「あなた、げすにおわれているっていったわよね?ということは、げすがここにくるかもしれないわ」
その長の一言に、みんながハッとなる。
「そうなんだねー。たくさんでこられたらたいへんだよー。わかるよー」
ちぇんの相槌に、皆一様に頷く。
「れいぱーは、だいじょうぶかしら…?」
ありすが心配そうに呟く。れいぱーでないありすにとって、れいぱーは最大の憎むべき相手でもある。
「あなたがおわれてるげすのことと、むれをおそったれいぱーについて、はなしをむっきゅりきかせてちょうだい」
長が、しんぐるまざーに言う。しかし…
「れいむは、こむずかしいことはわからないよ!それより、かわいそうなれいむをむれにいれてゆっくりさせてね!」
「みゃみゃのいうこちょをきけぇー!」
「れいみゅ、かわいきゅっちぇごみぇんにぇ!」
まるでお話にならない。
「これじゃ、たいさくのたてようもないのぜ…」
まりさがあきれて、おさげで顔を覆う。
「おさ、どうするの?このいなかもの…」
ありすが、長に耳打ちする。
長は群れを守る義務がある。そう考えれば、判断は一つだった。
「あなたたちはざんねんだけど、むれにむかえられないわ…」
その判断は至極もっともであると、その場のすべてのゆっくりが思った…いや、3匹は違った。
この決定に激怒するしんぐるまざー。
「ゆぎぎぎ!!ふざけないでね!!れいむはしんぐるまざーで、いたわるのはあたりまでしょお”お”お”お”!!!」
「ふじゃけりゅにゃ!くじゅ!ぷきゅうううううう!!!」
「れいみゅに、しゃっしゃっとあみゃあみゃよこちぇええええええ!!!」
それを見て、あきれる群れの面々。
「むれでくらすには、たすけあうのがとうぜんなのぜ。そのきのないやつはだめなのぜ」
まりさがそう言うと、
「ではこれで、かいぎはかいっさんよ。あなたたちはむれから、むっきゅりでていってちょうだい」
長の宣言と共に、みな帰途につく。
「れいむは、ぜったいにここからうごかないよ!」
しかし、しんぐるまざーはそのまま群れの集会所となっている建物に居座ってしまうのだった。
あれから数日が過ぎたが、ゲスやれいぱーはやってくることはなかった。
しかし、しんぐるまざーの被害に群れは悩まされていた。
他ゆんのおうちを勝手に荒す。
それだけならまだしも、成体の目を盗み、増えた群れの赤ゆや子ゆの物を横取りすることもあった。
れいむやまりさのおうちは、集会所に近く恨みもあるからか特に被害が酷かった。
ずっと飼いゆっくりだったれいむは、初めて見るゲスにとても心を痛めていた。
「なんでおなじゆっくりで、きずつけようとするのかわからないよ…」
「げすというれんちゅうは、ざんねんながらいるのぜ…」
まりさも子ゆの頃、群れのゲスに酷く脅えていた時期があったのだ。
「まりさのだぜことばは、げすになめられないようにはじめたから、うまれつきじゃないのぜ」
「そうだったんだね。ゆっくりりかいしたよ」
れいむは、まりさ種の子供たちが「だぜ」と言わないのを不思議に思っていたのだ。
「あいつらはたいさくがひつようなのぜ」
まりさが言う。れいむも深いため息をつくと、
「でも、できることならおんびんにゆっくりかいけつするといいよ…」
と呟いた。
「ほんとうに、ちもなみだもないげすどもだよ!まえのむれのやつらとおんなじだね!」
「くじゅどりぇいどもは、れいみゅたちのいうことをきいてればいいんだにぇ!」
「しょーだにぇ!あいちゅら、ちゅかえにぇいにぇ!」
ここまで読んでくれているとしあきたちは、ほとんど気づいているとは思うのだが、
しんぐるまざー一家は、まごうことなき筋金入りのゲスたちだ。
こいつらは、近くの群れに住んでいたが好き放題して、集会所の洞窟で糾弾され追放されたのだった。
最大の禁忌である、ゆっくり殺しや子殺し(自分と違うまりさ種のみ)もしているので、生かして追放した前の群れは優しすぎたともいえる。
ここへ来た時のれいぱー云々も、もちろん嘘である。
「このむれのまりさは、れいむのゆっくりとしたきゅうこんをことわった、まえのむれのどくしんまりさをおもいだしてむかつくよ!」
しかし、ゲス特有の天上天下唯我独尊思考で、すっかり被害者意識バリバリである。
「かわいいれいむとおちびちゃんをゆっくりさせないげすどもは、せいっさいしてやるよ!」
「せいっしゃいだにぇええ!」×2
もう少し早く追い出すなりしていれば良かったのだが、元来野生のゆっくりは非常にゆっくりしているので危機感に欠けていた。
こいつらの魔の手が迫っていることを群れのゆっくりたちは知らない。
新しい集会所では、長を中心にしんぐるまざー対策が話し合われていた。
メンバーは、長、長の番のちぇん、れいむの番のまりさ、まりさの姉の番のありすの4匹だ。
「このままじゃ、みんなゆっくりできないのぜ。おいだすなりしないといけないのぜ」
まりさが言う。
「じつりょくこうししかないんだねー。わかるよー」
ちぇんも乗り気だ。
「ぼうりょくは、とかいはじゃないわ…」
ありすは微妙に消極的だ。
「おさ、どうするのぜ?」
「たしかに、これいじょうはゆるせないわ。むっきゅりおいだしましょう」
方針は固まったようだ。しかし、この判断は少し遅かったのだ。
「ゆんやああああああああああーーー!!!!!」
「わぎゃらないよおおおおおおーーー!!!!!」
子ゆっくりの悲痛な悲鳴が響き渡る。
長のおうちは、長のぱちゅりーと番のちぇん両名が会議に参加しているため両親不在だ。
これを、しんぐるまざーは知っていた。そして、この日に会議が行われていることも。
長には全部で8匹の子供がいたが、すでにしんぐるまざーに6匹も潰されていた。
残るは、生まれて間もない小さなぱちゅりー種とちぇん種が1匹ずつ。
「おまえらは、ゆんじちだよ!」
しんぐるまざーは2匹が逃げないように痛めつけ、頭の髪の毛の中にしまいこむと長のおうちを離れた。
長たちがしんぐるまざーの所に行こうと新しい集会所を出ると、そこにはすでにしんぐるまざーがいた。
突然の登場にとまどう長たち。
ニヤニヤ下卑た笑いをうかべるしんぐるまざーの足元には6つの潰れ饅頭。
「むきゅ?む…きゅ…?むきゃあああああ!!!!!ぱちぇのけんじゃなおちびちゃんたちがあ”あ”あ”!!!」
「わがらないよお”お”お”お”お”!!!」
我が子の変わり果てた姿に号泣する長とちぇん。
「ゆぎぎぎ…げすにもほどがあるのぜ!」
怒り心頭のまりさが、しんぐるまざーを睨みつる。
「うごいたらだめだよ!れいむのいうことをきかないとこいつらもつぶすよ!」
しんぐるまざーは、ゆん質の2匹を見せてけん制する。
「むきゅ!おちびちゃん!」
「かえしてね!おねがいだよー!」
まだ生きている我が子を返して欲しい一心で、我を忘れて懇願する。
(まずいのぜ。このままだと、おさたちがげすのいいなりになるのぜ…)
まりさの心配は当たる。もうすでに何をおいてもおちびちゃんという感じに長たち2匹はなっている。
「まずは、いままでのおわびのしるしにあまあまもってきてね!たくさんでいいよ!」
「あみゃあみゃよこちぇー!」×2
増長するしんぐるまざー。悔しさで歯ぎしりしながらも言うことをきく、長とちぇん。
「むきゅううう…わかったわ…」
「わかったから、おちびちゃんにひどいことしないでねー…」
ありすとまりさは顔を見合わせる。
「まりさが、もってくるのぜ!」
「ありすも、とかいはなあまあまもってるわ!」
「ゆゆ?へんなきをおこしたら、ゆるさないよ!あまあまだけをもってくるんだよ!くそどれい!」
2匹は糞奴隷呼ばわりされるも、一時的にしんぐるまざーの元を放れられる口実を得たことになる。
まりさとありすはお互いにこのチャンスで何とかしなければならないと思っていた。
「れいむ!おはなしがあるのぜ!」
ありすと別れた後、おうちに直行したまりさ。
「まりさ?あわててどうしたの?」
「ゆっきゅりおきゃえり!」×5
赤ゆたちは父親が普通に帰ってきたと思い、のんきに出迎える。
まりさは、今日あったことをれいむに話す。
「おさたちの、ゆっくりしたおちびちゃんたちがかわいそうだよ…」
れいむはゲスの所業にショックを受け、涙を流す。
「れいむ、いまからいうことをしっかりきくのぜ」
まりさが言うには、ありすは何匹かの成体ゆっくりに応援を頼み、子供たちも2、3匹の成体の保護のもと一か所に避難させるらしい。
ただ、このまりさとれいむのおうちは場所的に、今しんぐるまざーのいる所に近くて身動きが取りづらいのだ。
「やつのことだから、つぎはさかうらみできっとここにこようとするのぜ…」
「おちびちゃんは、れいむがまもるよ!」
涙目でれいむが言う。
しかし、まりさは分かっていた。元飼いゆで野生の何たるかも知らないれいむに戦うことはできないと。
そして、何よりれいむは優しすぎる。まりさとしてはそんなれいむに、凄惨な場面そのものを見せたくない気持ちもあった。
「とおくににげるのぜ。あっちのほうは、ゆっくりがふだんいかないのぜ」
「れいむは、まりさたちだけにきけんなことをさせられないよ!れいむもむれのいちいんだよ!」
「れいむ!はなしは、さいごまできくのぜ!」
大声でれいむの反論を遮ると、今度はつとめて優しくれいむに語りかける。
「おちびちゃんをまもるのがれいむの、ははおやのつとめなのぜ。こっちはたくさんだから、ぜったいまけないのぜ」
「まりさ…」
「れいむに、まりさがうそをついたことがあるのぜ?」
「ううん…ないよ…まりさ、ぜったいぶじにかえるとやくそくしてね!」
「かならずかって、むかえにいくのぜ」
2匹はお互い見つめあい、ちゅっちゅをして再会を約束する。
そして、まりさはしんぐるまざーの所へ、れいむはまりさの言う方角へ、それぞれ向かって行った。
「ありす!おねーちゃん!みんな!またせたのぜ!」
「おそいわよ、まりさ」
しんぐるまざー駆逐部隊は揃っているようだ。
「みんなのおちびちゃんはぶじなのぜ?」
「だいじょうぶよ。いっかしょで、おとなりのぱちゅりーとむかいのぱちゅりーがみてるわ」
やはり子守役は、戦闘に著しく向かないぱちゅりーたちが担当するようだ。
「まりさのれいむたちは?」
「とりあえず、にげるようにいったのぜ」
それにありすたちが頷くと、しんぐるまざーの方へ向かう。
問題はゆん質の件だ。戦力は圧倒的に群れ優位。いかにゆん質を取り返すか、それに尽きる。
しかし、しんぐるまざーはゆっくり殺しもためらわない筋金入りのゲス。ようするに場馴れしているのだ。
おそらく修羅場は、しんぐるまざーの方がくぐっているだろう。
数で勝る、まりさたちのとる方法は…。失敗は許されない。
れいむは5匹の赤ゆを頭に乗せ、もみあげで落ちないように押さえながら懸命に走るように跳ねる。
結構な登りになっている山道を進んでいく。自堕落なしんぐるまざーは登りを嫌うので、苦しい道の方が来ないということを本能的に分かっていたのだろうか。
それなりの距離を跳ねただろうか、人間さんの道路に出る。
ここは、山の中の道路で温泉街へと続いている。車はそれなりに通るが、人が歩いていることはまず無い。
しかし、れいむは道の脇のスペースに停まっている車を発見する。
(ゆゆ?!)
れいむは、その車の方へ向かう。これは賭けだ。しかし、普通なら絶対しない賭け。
「ゆっくりしていってね!」
「んん?」
車を止めて、外で後ろのトランクの荷物を整理している人間さんに声をかける。
れいむがこの人間さんに声をかけたのには訳があった。車の中に4匹もの成体れいむが乗っていたからだ。
(きっとこのにんげんさんは、ゆっくりできるにんげんさんなんだよ)
そう信じて、震えながら人間さんの返事を待つ。
「なんだ?野良ゆっくりか?」
「ゆゆ!そうだよ!でも、むれがげすにおそわれて…」
れいむは必死に説明した。人間さんの表情はいまいち読めない。
「おちびちゃんを、あずかってほしいよ!」
「なんでそんなことを…といいたいとこだが、少し早く来すぎて時間もあるし預かってやってもいい」
成功の望みが低いと思っていたが、あっさり受諾してくれたのでれいむもビックリする。
「ゆっくりありがとう!」
しかし、車で山に捨てられたトラウマがあるれいむは、車の中を見て人間さんに質問する。
「あのれいむたちは、おにいさんのかいゆっくり?」
「なんで、そんなことを聞く?」
「れいむは、かいぬしさんにやまにすてられたよ…」
「ふうん…元飼いゆっくりだったのか」
男は興味無さそうに呟くと、車の扉を開けた。
「れいむ!こいつがおまえに話があるんだとよ」
『ゆゆ?おにいさんどうしたの?』
助手席に乗っていたれいむは突然のことに、状況が良く分かってないようだ。
そのお飾りには飼いゆっくりの証である銅バッチがキラキラと光っていた。
「ゆっくりしていってね!」
『ゆっくりしていってね!』
まずはお互いご挨拶。ゆっくりの基本だ。
『おにいさんはとってもやさしいんだよ!れいむは、だいすきだよ!』
『れいむたちはおにいさんと、はじめてぴくにっくさんにいくんだよ!』
れいむは、飼いれいむに状況を話したり、どこへ行くのか聞いたりした。
飼いれいむの言い分を聞くと、お兄さんは飼いれいむを心から愛して愛でているらしい。
これから、ピクニックに行くと言う。捨てられるわけではないようだ。
これなら間違いない。おちびちゃんを預けられる。安心だ。
と同時に、飼い主に恵まれている4匹の飼いれいむたちを羨ましく思うも、まりさの顔を思い出しすぐに現実に戻る。
「じゃあ、おねがいするよ。れいむはまりさをたすけにいくよ!」
『ゆ!おちびちゃんのことはまかせてね!げすにまけないでね!』
れいむは、おちびちゃんを”何を盛り上がってるんだろうなあ”という顔をした人間さんに渡す。
「おちびちゃん、よくきいてね。おかあさんはおとうさんをたすけにいくよ!すぐもどってるから、ここでうごかないでいいこにゆっくりまっててね!」
「おきゃーしゃん!ゆっきゅりまちゅよ!」×5
寂しさを堪えて涙目なものの、キリっとした顔で返事をする赤ゆたち。
「いいか、1時間以内に戻ってこいよ。それ以上は待たないぞ。……………」
れいむは、丸っこい身体でお辞儀のようなしぐさをすると、山へ戻っていった。
人間さんは、おちびちゃんたちをボンネットに置くとドアを閉めて外で一人呟く。
「1時間がおそらくタイムリミットだろうな」
「おそすぎるよ!くずどれいども!」
あまあまを取りにいったきり、なかなか戻らないまりさとありすにしびれをきらして怒鳴るしんぐるまざー。
元来、このゲス野郎は気が短い。怒りにまかせて、もみあげで子ちぇんを折檻する。
「いぢゃいよお”お”!!わぎゃらにゃい”い”い”!!!」
「むきゅう!おねがいだからやめてえええ!!」
「おぢびじゃあああんん!!わがらないよおおお!!!」
痛みで悲痛な声をあげる我が子に、泣き続ける長とちぇん。
するとそこへ塀の陰から、ありすとその番のまりさが現れる。
「あまあまをもってきたわ!」
「ゆゆ?おそすぎるよ!むのうなありすだね!ばかなの?しぬの?」
しかし、ありすはあまあまを持っているようには見えない。
「どこにもあまあまがないよ!」
「たくさんあるっていったでしょう。もちきれないので、はにーのまりさのおぼうしにつまっているわ!」
「さっさともってくるんだよ!」
「うごいてなかみをだすとこぼれるわ。あなたが、とりにきてちょうだい!」
何だか強引な理屈である。それもそのはず、お帽子には何も入ってなどいない。
塀の脇には、小枝などで武装したまりさたちが構えている。
この誘いにしんぐるまざーが乗ってくるだろうか?
「しょうがないぐずだね!かわいいれいむが、じきじきにいってやるよ!」
しんぐるまざーは、見え見えの誘いに引っかかったようだ。
「おまえらは、うごくんじゃないよ!」
長とちぇんに一喝すると、ゆん質と子れいむを連れて、ありすたちの方へ向かう。
(はやくくるのぜ)
塀の脇で、まりさたちが構える。このままノコノコやってきたら、ハイパーフルボッコタイムだ。
しかし、しんぐるまざーはありすの手前で止まる。
そして、口の中にゆん質を詰め始める。
「そんなことしたら、あまあまがたべられないわよ?」
不安になったありすが尋ねるが、ニヤリとしんぐるまざーは笑い、
「ばかなれんちゅうだよ!れいむは、そのては、まえにけいけんずみだよ!」
と叫ぶと、ぼよんと跳ね、ありすの番のまりさの上からストンピングをお見舞いする。
でいぶ丸出しの巨漢が、ありすの番のまりさを潰す。
「ゆぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」
重みで、口とあにゃるから餡子が漏れ出る。そして、痛みで転げまわる。
塀の横のまりさたちは、しんぐるまざーに手が出せない。
口の中に、ゆん質がいるので下手に攻撃したら潰されてしまう。
「まりさああああああああああああああ!!!」
ありすが番のまりさに駆け寄る。いや、駆け寄る前にしんぐるまざーの無慈悲な一撃がありすの番のまりさを襲う。
顔面へのストンピングが炸裂し、あにゃるから大量の餡子を噴射して永遠にゆっくりした。
顔面は無残に潰され、ぐちゃぐちゃで顔のパーツはバラバラになっていた。
「つぎは、おまえだよ」
しんぐるまざーがニヤリと笑い、振り返ってありすを見る。
ありすは、悲しみで一瞬茫然としていたが、すぐに怒りで満たされていく。
「あんなにゆっくりしたまりさだったのに…」
歯ぎしりして凄まじい形相で、しんぐるまざーを睨みつける。
それを見下した表情で受け流す、しんぐるまざー。
そのときである。
「こいつらをかえしてほしければ、おさたちのこをはなすのぜ!」
「ゆんやあ”あ”あ”!!!みゃみゃー、げしゅがいじめりゅうううう!!」
「このくじゅどりぇいを、しぇーしゃいしちぇにぇ!」
しんぐるまざーの子れいむを、ゆん質に取り返したのだ。
ゆん質の交換に成功すれば、あとはもう多勢に無勢。子れいむ奪取は会心の一手だ。
「まりさの、ゆっくりしたおねえちゃんをころしたこと、ぜったいにゆるさないのぜ!はやく、おさのこをかえすのぜ!」
(ゆんじちなんて、ひきょうなやりかたはゆっくりできないけど、しかたないのぜ)
ゆん質交換終了それはすなわち、しんぐるまざーにとっての死刑宣告。
しんぐるまざーの子供たちはここでは潰されないかもしれないが、群れ追放は確実で生きてはいけないだろう。
狡猾なしんぐるまざーには全て分かっていた。何をすべきかを。
ふうと息を吐くと、ニヤニヤ笑い始め、そして、
「しかたないね。おちびちゃんは、もうおわりだね。れいむがころされたらどうせしぬから、たすけてもいみないね」
子れいむたちを見捨てることを宣言した。
その薄情さに絶句する群れのゆっくりたち。おちびちゃんを捨てる?どうして、そんな非情な決断を下せるのか?
想定外のしんぐるまざーの返事に、唖然とする群れのゆっくりたち。そんな隙を見せては、しんぐるまざーの思うつぼなのに。
「みゃみゃあああああああああ!!!!!みしゅちぇないでええええええええええ!!!!!」
しんぐるまざーの子れいむの絶叫が響く中、しんぐるまざーの巨体が宙を舞う。
豚のように舞い、豚のように潰す。
しんぐるまざーの会心の一撃が、番を潰されたありすに炸裂した。
”ぶちょっ”という不快な音と共に、ありすの身体が楕円に歪む。口とあにゃるからカスタードが噴き出す。
「ごの…いながものお”お”お”!!!」
憤怒に満ちた表情で、しんぐるまざーを睨みつけるありす。しかし、ありすには反撃する体力はもう残っていなかった。
「ありずううううう!!!ゆっぐり!ゆっぐりじでね!!!」
まりさが、だぜ言葉を忘れて、幼なじみのありすの惨状に涙を流し叫ぶ。
元々、幼なじみとして赤ゆっくりのころから一緒に遊んでいたありす。
まりさの初恋の相手でもあったが、ありすは姉を愛した。大好きなお姉ちゃんと大好きなありす。
2匹の結婚を喜ぶも、なかなか自分が好きになるゆっくりが現れず、れいむと出会うまでゆっくりにしては晩婚だったのだ。
「おお、ぶざまぶざま!げらげらげら!みにくいありすは、とっととしんでね!」
しんぐるまざーの嘲笑が、その場に響き渡る。
もう、まりさは怒りが限界に達していた。
「もう…ぜったいに…ゆるさないのぜ…」
その不穏な空気に、しんぐるまざーが気づく。
「ゆゆ?れいむにさからうと、こいつらつぶすよ?」
器用に頬に詰めた、ゆん質2匹を口を開いて見せつける。
それに対し、群れのゆっくりたちが悔しそうにうつむく。しかし、まりさにはもうその言葉は、動きを止める魔法の言葉では無くなっていた。
「おさ、ちぇん、ごめんなのぜ。もし、このけんのかたがついたら、まりさをせいっさいしてほしいのぜ」
そう言うと、しんぐるまざーに向き直る。
「おねえちゃんのかたき!!ありすにしたひどいことのむくい!!あとたくさんのわるいことへのせいっさい!!おまえだけはぜったいゆるさないんだぜ!!!」
修羅道に堕ちることを覚悟したまりさ。覚悟を見せつけるように、跳ねるとしんぐるまざーの子れいむを潰して見せた。
「ゆんぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!!がわ”い”い”れ”い”み”ゅを”おおおうべっえええええええええ!!!」
「れ”い”み”ゅじにだぎゅないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!げぼおおおおおおおおお!!!!」
子れいむ2匹は弾け飛び、永遠にゆっくりした。返り餡が、まりさのあんよにベッタリと付く。
「おまえも、ゆっくりごろしだね」
しんぐるまざー(もう違うのだが、変えるのも面倒なので)が冷めた目で、まりさに言い放った。
その様子を、見て唖然とする群れのゆっくりたち。
あの、ひょうきんで憎めないいつものまりさの姿はそこには無く、怒りに満ちた鬼のようなゆっくりの姿がそこにはあった。
それを見て、潰れかけて今にも死にそうなありすが涙を流す。まりさに全ての業を背負わせてしまった己の不甲斐なさに。
ありすの傍に、駆け寄りぺーろぺーろする長のぱちゅりーに対して、
「おねがい…おさ…どんなけっかになっても、まりさはゆるしてあげて…」
まりさのこれからの行動が何を意味するかを分かって、ありすは長に最期の力を振り絞って懇願する。
「あんしんして、ありす。そもそも、おさとしてちからぶそくのぱちぇのせきにんなのよ。まりさにだけ、おしつけたりはしないわ」
泣きながら笑顔で、ありすに語りかける。それに安心したありすは、
「まりさに、ありがとうってつたえてね」
というと、永遠にゆっくりしてしまった。
そのありすの最期を見て、ぱちゅりーは覚悟を決めた。自分は長だ。守るべきは群れなのだ。
「ちぇん、ぱちぇをむっきゅりうらんでもいいわ。みんな、あいつをたおすのよ!」
ちぇんも顔を上げる。
「わかるよー。ちぇんも、かくごをきめたんだよー!」
おろおろしていた群れのゆっくりたちの顔つきが変わる。
まりさを先頭にしんぐるまざーに向き直り、攻撃態勢をとる群れのゆっくりたち。
それを見て、しんぐるまざーは思い切り口の中のゆん質を噛み砕く。
顔を背けずに、それを凝視する長とちぇん。我が子の最期を確かめるかのように。
悲鳴をあげることなく、永遠にゆっくりしたゆん質の2匹。しんぐるまざーは、口の中から2匹のお飾りをプッと吐きだす。
冷静な様子のしんぐるまざーは、もう諦めたのだろうか?
否。生き汚いしんぐるまざーがこんなことで諦めるわけは無い。今もまさに、逃亡できるチャンスをうかがっていた。
「なにか、いいのこすことはあるのぜ?」
まりさがじりじりと距離を詰めながら、しんぐるまざーに話しかける。口には鋭利な木の枝を咥えている。
周りにも、武器を咥えたゆっくりたちがいる。
しんぐるまざーはニヤリと笑うと、口に残るゆん質たちの中身をまりさたちに向けて毒霧のように噴射する。
「うわあああああああああ!!!」
「めがみえないよー!!!わからないよー!!!」
眼潰しのような状態に、まりさたちは視界を奪われる。ただし、すぐに見えるようになることは分かっていたしんぐるまざーは逃走を開始する。
「かわいいれいむは、さっさとにげるよ!」
しんぐるまざーは振り返ると、誰もいない方角へ逃げようとする。
「ばかなれんちゅうだよ!やっぱりれいむはかしこいね!」
このままおめおめと、しんぐるまざーの逃亡を許してしまうのか?
「おめめさん!はやくあくんだぜ!げすが、にげちゃうんだぜえええええ!!!」
ドカッ!!!
ようやく見えるようになったまりさの目に最初に映ったのは、愛するれいむと、のたうちまわるしんぐるまざーの姿だった。
「ゆぎゃああああああ!!!がわいいでいぶのおめ”め”がああああああああああああああああああ!!!!!」
目が片方、小枝に貫かれ悶絶するしんぐるまざー。
「れ、れいむ!なんでもどってきたんだぜ!」
慌ててれいむに駆け寄るまりさ。
「れいむも、むれのいちいんだよ!やっぱり、れいむだけあんぜんなところにはいられないよ!」
「でも、れいむには…」
そう言おうとするまりさに、あの時は逆に今度はれいむが大きな声で反論を遮る。
「まりさ!まりさのきもちはうれしいよ。でも、れいむはむれの…ううん、まりさのつまなんだよ!」
「れいむ…」
「れいむもたたかうよ!おじょうさんあつかいしなくてもへいきだよ!れいむそんなにやわじゃないよ!」
れいむはキリっとした笑顔で、もみあげをまりさの前に出す。それをおさげでガッチリ握るまりさ。
「れいむはさいっこうのれいむなのぜ」
2匹はしんぐるまざーに向き直ると、すでにしんぐるまざーは長やちぇんによってハイパーフルボッコタイムの真っ最中だった。
「むきゅううう!!!おちびちゃんのかたきいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「おまえだけはぜったいにゆるさないよおおおおおお!!!!!わかるよおおおおおお!!!!!」
「ありすの、おねえちゃんのいたみをおもいしるのぜえええええええええええええええ!!!!!」
「じぶんのこどもまでみすてるなんて、ははおやじゃないよおおおおおおおおおおおお!!!!!」
グサッ!!!しんぐるまざーは枝を刺された。
グシャ!!!しんぐるまざーは踏みつぶされた。
ガリッ!!!しんぐるまざーはかじられた。
「で、でいぶば、まだじにだぐない”い”い”い”!!!!!」
ボロボロになりながら恨み節を撒き散らすしんぐるまざー。
まりさは、ちらりとありすの亡骸に目をやった。
「ありす、かたきはとるのぜ…」
まりさが跳ねる。ぱちゅりーも跳ねる。ちぇんも跳ねる。れいむも跳ねる。
4匹の渾身のストンピングが、姿も中身も醜いしんぐるまざーのぶよぶよの巨体を踏みつぶす。
グッシャアアアアアアアアア!!!!!
粉々に弾け飛んだしんぐるまざー。ついに、決着はついたのだ。
「ありす…おねえちゃん…」
まりさとれいむは、ありすとまりさの姉だったものの前に立つ。
涙がとめどなく溢れ出てくる。ぱちゅりーは、そっとまりさに
「ありすが、ありがとうっていってたわ」
それを黙って聞くまりさ。ありすとの数々の思い出が餡子脳裏に浮かぶ。
「れいむ、おちびちゃんはどうしたのぜ?」
悲しみを振り切り、我が子の安否についてれいむに尋ねるまりさ。
「ゆ、それなら…ゆゆゆゆゆ!!!!!?????」
れいむのただ事ならぬ様子に、そこにいたすべてのゆっくりがれいむの見る方角を向いた。
そこには絶望があった。
凄まじい勢いで、凄まじい量の水がこっちに向かって来ていた。
逃れられないのは、ゆっくりの餡子脳でもすぐに分かった。
「むきゅ、せっかくげすをたおしたのに、すごいひにくね。おちびちゃん、すぐいくわ」
長が、フッと乾いた笑いを洩らすと観念したように呟く。
「でも、じぶんのてでおちびちゃんのかたきをとれてよかったよー。わかるよー」
そう言うと、ちぇんは自分の番の長と肌を寄せ合った。
この群れのゆっくりは全滅するだろう。あの水は避難した子ゆや赤ゆも飲み込む。いや、このゆっくりプレイスそのものを飲み込む。
全滅?
いや、まりさのおちびちゃんはもしかしたら平気な場所にいるかもしれない。れいむに教えた方角ならここよりもかなり高い所にあるはずだ。
期待を込めて、まりさはれいむに聞いた。
「そういえば、おちびちゃんたちはどこにいるのぜ?」
「にんげんさんのどうろで、にんげんさんにあずかってもらったよ」
「なら、たすかるのぜ?」
「そうだね…ゆゆ!!れいむたち、もうむかえにいけないよ!!!」
激しく狼狽するれいむ。
「もう、まりさたちはむりなのぜ…でも、おちびちゃんがぶじなら…」
悲痛な表情でれいむが叫ぶ。
「ちがうの!ごめんねぇ!まりさぁ!」
れいむが思い出す。人間さんの別れ際の言葉。
「いいか、1時間以内に戻ってこいよ。それ以上は待たないぞ」
そのあとに続く言葉。
「でないと、処分するからな」
そのときのお兄さんの顔は、れいむを捨てるときの飼い主さんの顔より数倍も恐かった。
そう、まるで飼い主さんに動画で見せてもらった虐待鬼意山のように。
「ゆあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!おちびちゃんんんんんんん!!!!!!ごめんねええええええええ!!!!!!!」
泣き叫ぶれいむ。茫然と立ち尽くすまりさ。
「なかないで…れいむ…」
まりさがおさげを伸ばし、れいむに差し伸べた瞬間
世界は水に覆われた。
水に流され、溶けていく中でれいむは思う。
自分は群れに厄災を運んだだけだったの?
まりさは、自分と一緒にならない方が良かったの?
おちびちゃんたちを産まなければ良かったの?
答えは出ることは無い。
れいむは、後悔と懺悔の思いに包まれながら永遠にゆっくりと消滅した。
れいむからおちびちゃんを預かった人間さんは、ぼんやりと放水するダムを眺めていた。
今日は、飼いゆとのピクニックに行く前に、ついでに新しく出来たダムの初めての放水を見に来たのだ。
渋滞を予測したがそんなことも無く、待っているときにれいむに声をかけられた訳だが。
「今はすべて水の底か」
そう呟く。
沈んだ村の関係者だろうか、この場にはたくさんの人と重い空気が流れていた。
「さて行くか」
そういうと人間さんは、車へと戻る。
あの赤ゆは、どうしたのだろうか?今はもう彼の手元にはいない。
人間さんは手元にある”何か”が入ったビニール袋を、ゴミを回収していたおじさんに手渡した。
少し時間を巻き戻そう。
「時間だな」
そう言うと、人間さんはボンネットの上に乗る赤ゆ5匹に向き直る。
そして人間さんは、コンビニのビニール袋に赤ゆを詰める。
「おしょらをとんでりゅみちゃい!」
詰め終わると、ビニール袋の口を縛って塞ぐと下に落とす。
「ゆぴいいいい!!!いちゃいよう!!!ゆっきゅりたしゅけちぇにぇ!」
(あの親ゆも、もうすぐ水の底。こいつらを飼う気はもちろん俺には無い)
「おきゃーしゃーん!おとーしゃーん!はやくかえっちぇきちぇにぇ!あんよがいちゃいよううう!!」
(このまま放置しても、他の人間の迷惑だ。どうせ死ぬだろうが、仮に生き残っても、ダム付近で間抜けな声で騒いだりしたら不謹慎だ)
「おにぇがい!おにーしゃん!ここからだしちぇにぇ!くらいくらいで、きょわいよううう!!」
(なら、俺がここで潰すのが一番だよな)
グチャ
「ゆぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
人間さんの振り下ろされた足元で、不快な音がする。足で感触を確かめるようにしながら、人間さんは潰していく。
逆光でその表情は見えないが、人間さんはどんな顔で赤ゆを潰しているのだろうか?
中身がぐちゃぐちゃになった袋をトランクに放り込むと、運転席へ行き、ドアを開ける。
中では、ピクニックについて嬉しそうに語るれいむが4匹。車内は潰す前につけた暖房とCDで、外の音は一切聞こえない。
「出発だ」
「ゆゆ?おにいさん!さっきのれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」
「今しがた来て、帰っていったよ」
「ゆ!ぶじだったんだね!よかったね!れいむうれしいよ!」
トランクのなかでは、もうしゃべることが出来なくて餡子がはみ出しながらも生きている赤れいむが1匹いた。
しかし、もう長くはないだろう。
身体中に激痛が走る。痛い。痛い。れいみゅがどうして?
おかーさんに会いたいよ。おとーさんに会いたいよ。
すーりすーりしたいよ。ぺーろぺーろしたいよ。
そう思うのもつかの間、痛みで思考が停止する。
(おきゃーしゃん…あいちゃいよぅ…)
赤れいむの思考は闇に沈んでいき、やがて永遠にゆっくりした。
そうして最後の赤ゆが、苦しみぬいた末に息絶えた瞬間にダムの底に沈んだゆっくりの事を知るものはこの世から消えたのだ。
このダムに沈んだ村の事は、これから多くの人によって語り継がれていくだろう。
だが、この沈んだ村にいたゆっくりの事を語り継ぐものは誰もいない。
勇敢なまりさがいたこと。とかいはなありすがいたこと。心優しいれいむがいたこと。
虎は死して皮を残し 人は死して名を残す ゆっくりは死して何も残さない
長編は苦手だけど、挑戦してみました。(長編得意な大物作家のD.Oさん、余白さん、お説教さんが羨ましいです)
むらむらパートとヒャッハーパートのバランスはきっと悪いです。愛で描写が多いです…。虐待描写は修行中です。
最近は、素晴らしい作品が多いので読むのが苦痛になったらごめんなさい。
あと、オチ(分かりやすいですが…)の都合上、タグは最小限しかチェックしませんでしたので、苦手がある方はご注意下さい。
「ゆっくりが残すもの」
れいむは捨てられた。
捨てられた理由は簡潔に言えば、ただ飼い主が飽きたから。それだけだ。
ただ、小心な男だったのでわざわざ近くの山にまで捨てに行った。
そのため、れいむは野良と言っても野生として生きることになった。
このれいむは生まれたときからの生粋の飼いゆっくり。
この時点でそのゆん生は詰んでしまったともいえる。
「どうしたらいいかわからないよ…」
途方に暮れていたれいむは、あてもなくトボトボと進んでいく。
これまで、あんよを傷つけることもなく生きてきたれいむにとって、山道を跳ねるだけでも大変だった。
しかし、何が幸運を呼ぶかわからないのもまたゆん生の面白さか。
飼いゆっくりであったことで、生きる場所を見つけられることを、れいむはまだ知らない。
その幸運を運んでくるものが現れる。
1匹のゆっくりまりさだ。
このまりさ、群れの食べ物を探して狩りに出ていたまりさであった。
ひとゆん物であったので、身軽に行動できるため遠くまで来ていたのだった。
そのとき、見慣れないれいむを見て足を止めた。見とれたのだ。
(ゆゆ!とっても、びゆっくりなれいむなのぜ!)
捨てられたばかりなので、野生のゆっくりに比べればはるかにきれいであった。
れいむの方はといえば、初めて別のゆっくりと接する事になるのでどうしたらいいのか戸惑っているようだった。
(とりあえず、ごあいさつをするよ)
「ゆっくりしていってね!」
れいむが笑顔でご挨拶すると、まりさも
「ゆっくりしていってね!」
饅頭皮を真っ赤にさせて、返事をする。どうやら一目惚れしたらしい。
「れ、れいむはどうしてこんなところにひとゆんでいるのぜ?」
「れいむは、かいぬしさんにすてられたんだよ…」
「ゆゆ…?」
まりさには、飼い主という概念はあまりないようだ。
まりさは生粋の野生であり、人間を群れのゆっくりたちはその歴史の中で酷く恐ろしいものとして恐れていたので近づいたことさえ無かったのだ。
れいむの説明を一通り聞き終わると、
「にんげんさんは、こわいのぜ。だからむしろよかったのぜ」
「でも、れいむいくところもなにもないよ…」
不安に震えるれいむを見る。そのとき、まりさのなかに使命感と下心が半分ずつ芽生える。
(ふるえるれいむもかわいいのぜ。このれいむは、まりさのおよめさんにするのぜ)
「まりさのおうちにくるといいのぜ。ちょうど、おへやにはすぺーすさんがあるのぜ。むれのみんなにも、れいむをしょうかいするのぜ」
「ゆう…」
れいむは考えた。しかし考えるまでも無く、まりさを頼るしかないと。
「むれ?」
れいむには群れという、ゆっくりのコロニーに対する知識は無い。
「そうなのぜ。たくさんのゆっくりが、たすけあってせいかつしてるのぜ。まりさもむれのいちいんなのぜ」
まりさが、ゆっくりの群れはとてもゆっくりしていると、れいむに説明する。
誇張表現なのはまりさも分かっていたが、どうしてもこのれいむを自分のおうちへ連れ帰りたかったのだ。
「ゆ!れいむも、まりさのいるむれでせいかつするよ!」
「そ、それがいいのぜ!」
笑顔のまりさの後を、不安げなれいむが追いかけていった。
「というわけなのぜ」
まりさがれいむと共に訪れたのが、長のぱちゅりーの所だった。
長の番のちぇん、まりさの姉まりさと、その番のありすもそこに集まっていた。
まりさは、れいむと出会ったいきさつを話す。
「むっきゅりいきさつはわかったわ」
長が口を開く。
「ゆっくりしていくといいわ。ここは、とかいはなむれよ」
ありすがにこやかに、れいむを歓迎する。
「でも、れいむなにもわからないよ。ごはんさんのとりかたも、ぜんぶ…」
れいむが申し訳なさそうに言う。
「そんなのまりさが、ゆっくりおしえるのぜ!まりささまは、むれいちばんのかりのめいじんなのぜ!」
まりさが、れいむの気を引こうとおさげで自分の胸(?)を叩きながら「ゆふん」と自信満々に言う。
そんな様子を見て、一同は苦笑する。
「そうだ、かいゆっくりだったなら、にんげんのさんのことがわかるんじゃない?」
長が思い出したように言う。
「あ、それはちょうどいいんだねー。わかるよー」
ちぇんも、にっこりと笑う。
「れいむは、かいぬしさんのことならすこしわかるよ。でも、そんなのやくにたつのかな?」
長が、神妙な面持ちになると、
「むきゅ、じつはすてきなゆっくりぷれいすをはっけんしたのよ」
「すてきなゆっくりぷれいす?」
「そう。でも、それはにんげんさんのつくったおうちなの。にんげんさんがいないのは、かくにんずみだけれど、つかいかたがいまいちわからないのよ」
この群れのゆっくりたちは、数日前に台風で多くのおうちと仲間を失っていた。
まりさの親もそうだ。それで、群れの新しい住居を探していたら、人間の造った建物がたくさんあったのだ。
最初は警戒していたが、全く人の気配も無く、人間さんを一人もみない為、自分たちのゆっくりプレイスにしようと思っていたのだ。
「れいむにわかることなら、なんでもきょうりょくするよ!」
「むきゅ!それはたすかるわ」
「これでれいむも、むれのせいしきないちいんなのぜ!」
まりさがそう宣言して、ひとゆんではしゃぎだす。
「ゆふふ」
れいむは、そんな少し間抜けな、でも憎めないまりさを見て、捨てられてから初めての笑みをこぼすのだった。
翌日、群れは長の号令のもと全ゆんが集まり、移動を開始した。
れいむの元飼いゆっくりであるという、野生としては詰みな条件も、
人に関わらずに生きてきた群れの中で役割を得るという事になるのだから、いやはやゆん生はこれだから分からない。
群れの一団は、家族十数単位で、成体25匹、子・赤ゆが合わせて50匹ほどだろうか。
子ゆ・赤ゆが少なめなのは台風の影響をうけての事であった。
長とちぇん、姉まりさとありすにも子供はいた。
まりさはその子たちの面倒を見つつも、常に羨ましいと思っていたのだ。
まりさは、移動の最中にちらりとれいむを横目で見る。
(れいむとかわいいおちびちゃんをつくりたいのぜ)
「どうしたの、まりさ?」
「ゆ!な、なんでもないのぜ!」
じっと見過ぎてしまったらしく、れいむに急に声をかけられて慌ててしまった。
おさげで頭をかきながら、ゆへへと照れ笑いをする。
だがそんなこと一つとっても、まりさには嬉しかった。
群れの一団は目的のゆっくりプレイスに到着する。
といっても、広い敷地に点々と無数の人間さんのおうちがあることを考えれば、ここはゆっくりプレイスの一つということになるだろう。
「むきゅ、このようなおうちがいくつかあるのよ」
「すごいね。たしかににんげんさんのおうちにまちがいないよ」
れいむも感心する。でも、れいむには一つ気がかりがあった。
「れいむは、にんげんさんのおうちのことは、ぜんぶはわからないよ。でも、はいるにはかぎさんがいるんだよ」
「むきゅう?かぎさん?それはなんなの?」
れいむは鍵の事は実は良く知らない。でも、飼い主がそれで戸締りをしていたことは覚えていた。
「それなら、しんぱいないのぜ」
まりさが、家の庭にまわり壊れた窓を皆に見せる。
「ここから、はいれるのぜ」
「だいたいこんなかんじで、ほかもはいれるよー。わかるよー」
ちぇんも、いくつかの家を見てきたのだろう。
「ごめんね…。れいむは、やくにたたないね…」
「そんなことないのぜ!なかのことで、きっとやくにたつのぜ!」
まりさが落ち込むれいむを慌ててフォローする。
一同は、長と例のメンバーで家に一応入ってみる。
「とかいはね、といいたいところだけれど、どうもかってがわからないわね…」
ゆっくりにとって何が必要で何が危険かは、群れの物にはいまいち分からない。
「おそらく、にんげんさんのものは、にんげんさんがいないとつかえないよ。でも…」
そう言って、れいむは壁に向かって跳ねていく。いや、壁ではなく押し入れだ。
「れいむ?そのかべさんがどうかしたのぜ?」
れいむは、押し入れの扉をもみあげをつかって横に懸命に動かしていく。
「まりさも、てつだうのぜ!」
2匹で、う~んう~んと唸りながら動かしていく。
(これは、もしかしてまりさとれいむの、はつのきょうどうさぎょうなのぜ!)
と雑念が混じったりもしたが、扉は無事に開かれた。
「むきゅ!かべさんがうごいたわ!」
中から、布団が出てきた。そして、それを見てゆっくりたちは歓声をあげる。
「ふかふかさんだよー!れいむはすごいよー!わかるよー!」
「とかいはなねどこだわ!すばらしいわ、れいむ!」
それを見て、れいむはホッとしたような笑顔をうかべる。
「れいむのまえのおうちでも、うごくかべさんのなかに、おふとんさんがあったよ。れいむ、みんなのやくにたててうれしいよ!」
まりさは、感動のあまりれいむにすーりすーりしながら、
「すごいのぜ、れいむ!やっぱり、れいむがいてくれてよかったのぜ!」
「ゆふふ、まりさ、くすぐったいよ」
そんな2匹を、ほほえましく見つめていた長たち。
「むきゅ!こんなかんじでむれのみんなのおうちをきめてしまいましょう!」
「えい、えい、ゆー!」
そんなこんなで、群れのゆっくりたちはおうちを分配して住むことにした。
その日のうちに分配を済ますと、各々自分の新しいおうちへ帰っていった。
そんな中、れいむはまりさと同じおうちに住むことにした。
「れいむは、むれにしあわせをはこんでくれたのぜ」
「いいすぎだよ、まりさ」
「そんなことないのぜ!それに、れいむといるだけでまりさはしあわせなのぜ…」
まりさが、真っ赤になっておさげをもじもじさせながらうつむく。
このまま、ゆで饅頭になりそうな勢いだ。
そんなまりさを、れいむは愛おしく見つめる。
「まりさのおかげだよ。ゆっくりありがとう」
そう言うと、れいむはまりさにふぁーすとちゅっちゅっをささげた。
「れ、れいむ?!」
「れいむは、まりさがだいすきだよ!」
「まりさもなのぜ!あいしてるのぜ、れいむ!」
2匹は見つめあうと、そのまま甘い2匹だけの夜を過ごした。
愛の巣からは、愛し合う若いゆっくりの情熱的な声が響いていた。
「「すっきりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーーーー!!!」」
群れのゆっくりが新しいゆっくりプレイスに移動してから2週間ほど経ち、生活にも慣れてきたころ、
れいむとまりさの間には、3匹の赤れいむと2匹の赤まりさが誕生し、ゆっくりした毎日を送っていた。
「ゆっきゅりころがりゅよ!」
「ゆっきゅりまわりゅよ!」
「ゆっきゅりのーびのーびしゅりゅよ!」
赤ゆたちが思い思いに遊んでいると、
「れいむ、おちびちゃんたち、いまかえったのぜ!」
「ゆっくりおかえり、まりさ」
「おとーしゃん、ゆっきゅりおきゃえり!」×5
まりさが、帽子の中に餌を詰めて帰ってくる。
「むれのみんなも、ゆっくりぷれいすがゆっくりできるから、しあわせーなのぜ」
そうなのだ。
しっかりとしたおうちがあるので、子供の安全が確保できることもあり、群れの赤ゆの数は倍以上に増えていた。
「まりさのおねーさんや、おさのところも、あたらしいおちびちゃんがうまれたんだよね」
「そうなのぜ、みんなはりきっているのぜ」
2匹で笑いあい、ゆっくりした世間話をする。
「おにゃかしゅいたよ!ゆっきゅりごはんしゃんにちてね!」
子れいむがご飯を待ち切れずに催促する。
「いまよういするのぜ」
いつもと変わらない、ゆっくりとした食事を今まさにしようとした時、突然の来客が現れた。
そのゆっくりれいむは身体に傷をいくつか負っていた。
大したものでは無いので、生死にかかわるものではないのだが。
その足元には、2匹の子れいむもいる。
「ゆゆ!たすけてね!れいむは、げすからにげてきたんだよ!」
「どういうことなのぜ?」
突然の来客に面食らうも、まりさは事情を聞いてみることにした。
「れいむはあるむれにいたんだよ。いままではうまくいっていたのに、むれがれいぱーにおそわれたんだよ!」
元飼いゆであるれいむも、レイパーという独特のゆっくりについては聞いたことがある。
震えながらも、おちびちゃんが不安にならないように顔には出さない。
「それで、れいむのはにーがえいえんにゆっくりさせられて、むれもおさがやられてめちゃくちゃになったよ!」
来客のれいむ(いや、しんぐるまざーと言った方がわかりやすいか)は非常に興奮している。
「むれのとうせいがとれなくなって、げすがはばをきかせはじめて、れいむはいじめられたからにげてきたんだよ!」
そこまで一気にまくしたてたしんぐるまざー。
「それは、たいへんだったね…」
れいむが気遣う。
「しんぐるまざーで、むれもおわれて、れいむはとってもかわいそうなんだよ!だから、たすけてね!」
まりさとれいむは顔を見合わせる。
「うちのむれのいちいんになるのぜ?なるなら、おさのところへあんないするのぜ」
そう言って、まりさが救いの手を差し伸べる。
「みゃみゃ!おにゃかしゅいちゃよ!」×2
「ゆゆ!?そうだね!れいむも、がんばってはねたから、おなかすいたよ!ごはんさんをちょうだいね!」
まりさの提案には返事をせず、空腹を訴え、ご飯を要求するしんぐるまざー一家。
その勢いにあっけにとられるまりさとれいむ。
「このどんぐりしゃんはれいみゅが、たべるにぇ!」
「こっちのいもむししゃんは、れいみゅのだよ!」
しんぐるまざーの子れいむが、ご飯直前のままになっているまりさ一家の食卓の前に行き、勝手に食べ始める。
「ゆゆ!れいむもたべるよ!」
しんぐるまざーも注意はせずに、自分も勝手に食べ始める。
「む~しゃ、む~しゃ、うめ!これ、めっちゃうめ!」
それを見て、お腹を空かせたまりさたちの赤ゆが騒ぎ出す。
「おちょーしゃん!まりちゃもたべちゃいよ!」
「ゆんやぁ!れーみゅのいもむちしゃんがー!」
慌ててまりさが、子供たちの傍に行く。
「おちびちゃんたちも、ゆっくりたべるのぜ」
よっぽど酷い目に遭って、お腹が空いていたんだろうと好意的に解釈したれいむとまりさは、
しんぐるまざー一家を放っておき、ぐずるおちびちゃんたちに餌を与える。
れいむとまりさは、この日はろくに食べることは出来なかった。
翌日、しんぐるまざー一家を長の所へ連れていくことにする。
しんぐるまざーは口を開けば自分が可哀そう可哀そうと言うだけで、長も非常にゲンナリしていた。
「むきゅ、ひとつだけもんだいがあるわ…」
しんぐるまざーの無意味な講釈が一段落ついたところで、長が口を開いた。
まわりにいる群れの中心のゆっくりたちは、このしんぐるまざー自身が問題があるのだと思ったが違うようだ。
「あなた、げすにおわれているっていったわよね?ということは、げすがここにくるかもしれないわ」
その長の一言に、みんながハッとなる。
「そうなんだねー。たくさんでこられたらたいへんだよー。わかるよー」
ちぇんの相槌に、皆一様に頷く。
「れいぱーは、だいじょうぶかしら…?」
ありすが心配そうに呟く。れいぱーでないありすにとって、れいぱーは最大の憎むべき相手でもある。
「あなたがおわれてるげすのことと、むれをおそったれいぱーについて、はなしをむっきゅりきかせてちょうだい」
長が、しんぐるまざーに言う。しかし…
「れいむは、こむずかしいことはわからないよ!それより、かわいそうなれいむをむれにいれてゆっくりさせてね!」
「みゃみゃのいうこちょをきけぇー!」
「れいみゅ、かわいきゅっちぇごみぇんにぇ!」
まるでお話にならない。
「これじゃ、たいさくのたてようもないのぜ…」
まりさがあきれて、おさげで顔を覆う。
「おさ、どうするの?このいなかもの…」
ありすが、長に耳打ちする。
長は群れを守る義務がある。そう考えれば、判断は一つだった。
「あなたたちはざんねんだけど、むれにむかえられないわ…」
その判断は至極もっともであると、その場のすべてのゆっくりが思った…いや、3匹は違った。
この決定に激怒するしんぐるまざー。
「ゆぎぎぎ!!ふざけないでね!!れいむはしんぐるまざーで、いたわるのはあたりまでしょお”お”お”お”!!!」
「ふじゃけりゅにゃ!くじゅ!ぷきゅうううううう!!!」
「れいみゅに、しゃっしゃっとあみゃあみゃよこちぇええええええ!!!」
それを見て、あきれる群れの面々。
「むれでくらすには、たすけあうのがとうぜんなのぜ。そのきのないやつはだめなのぜ」
まりさがそう言うと、
「ではこれで、かいぎはかいっさんよ。あなたたちはむれから、むっきゅりでていってちょうだい」
長の宣言と共に、みな帰途につく。
「れいむは、ぜったいにここからうごかないよ!」
しかし、しんぐるまざーはそのまま群れの集会所となっている建物に居座ってしまうのだった。
あれから数日が過ぎたが、ゲスやれいぱーはやってくることはなかった。
しかし、しんぐるまざーの被害に群れは悩まされていた。
他ゆんのおうちを勝手に荒す。
それだけならまだしも、成体の目を盗み、増えた群れの赤ゆや子ゆの物を横取りすることもあった。
れいむやまりさのおうちは、集会所に近く恨みもあるからか特に被害が酷かった。
ずっと飼いゆっくりだったれいむは、初めて見るゲスにとても心を痛めていた。
「なんでおなじゆっくりで、きずつけようとするのかわからないよ…」
「げすというれんちゅうは、ざんねんながらいるのぜ…」
まりさも子ゆの頃、群れのゲスに酷く脅えていた時期があったのだ。
「まりさのだぜことばは、げすになめられないようにはじめたから、うまれつきじゃないのぜ」
「そうだったんだね。ゆっくりりかいしたよ」
れいむは、まりさ種の子供たちが「だぜ」と言わないのを不思議に思っていたのだ。
「あいつらはたいさくがひつようなのぜ」
まりさが言う。れいむも深いため息をつくと、
「でも、できることならおんびんにゆっくりかいけつするといいよ…」
と呟いた。
「ほんとうに、ちもなみだもないげすどもだよ!まえのむれのやつらとおんなじだね!」
「くじゅどりぇいどもは、れいみゅたちのいうことをきいてればいいんだにぇ!」
「しょーだにぇ!あいちゅら、ちゅかえにぇいにぇ!」
ここまで読んでくれているとしあきたちは、ほとんど気づいているとは思うのだが、
しんぐるまざー一家は、まごうことなき筋金入りのゲスたちだ。
こいつらは、近くの群れに住んでいたが好き放題して、集会所の洞窟で糾弾され追放されたのだった。
最大の禁忌である、ゆっくり殺しや子殺し(自分と違うまりさ種のみ)もしているので、生かして追放した前の群れは優しすぎたともいえる。
ここへ来た時のれいぱー云々も、もちろん嘘である。
「このむれのまりさは、れいむのゆっくりとしたきゅうこんをことわった、まえのむれのどくしんまりさをおもいだしてむかつくよ!」
しかし、ゲス特有の天上天下唯我独尊思考で、すっかり被害者意識バリバリである。
「かわいいれいむとおちびちゃんをゆっくりさせないげすどもは、せいっさいしてやるよ!」
「せいっしゃいだにぇええ!」×2
もう少し早く追い出すなりしていれば良かったのだが、元来野生のゆっくりは非常にゆっくりしているので危機感に欠けていた。
こいつらの魔の手が迫っていることを群れのゆっくりたちは知らない。
新しい集会所では、長を中心にしんぐるまざー対策が話し合われていた。
メンバーは、長、長の番のちぇん、れいむの番のまりさ、まりさの姉の番のありすの4匹だ。
「このままじゃ、みんなゆっくりできないのぜ。おいだすなりしないといけないのぜ」
まりさが言う。
「じつりょくこうししかないんだねー。わかるよー」
ちぇんも乗り気だ。
「ぼうりょくは、とかいはじゃないわ…」
ありすは微妙に消極的だ。
「おさ、どうするのぜ?」
「たしかに、これいじょうはゆるせないわ。むっきゅりおいだしましょう」
方針は固まったようだ。しかし、この判断は少し遅かったのだ。
「ゆんやああああああああああーーー!!!!!」
「わぎゃらないよおおおおおおーーー!!!!!」
子ゆっくりの悲痛な悲鳴が響き渡る。
長のおうちは、長のぱちゅりーと番のちぇん両名が会議に参加しているため両親不在だ。
これを、しんぐるまざーは知っていた。そして、この日に会議が行われていることも。
長には全部で8匹の子供がいたが、すでにしんぐるまざーに6匹も潰されていた。
残るは、生まれて間もない小さなぱちゅりー種とちぇん種が1匹ずつ。
「おまえらは、ゆんじちだよ!」
しんぐるまざーは2匹が逃げないように痛めつけ、頭の髪の毛の中にしまいこむと長のおうちを離れた。
長たちがしんぐるまざーの所に行こうと新しい集会所を出ると、そこにはすでにしんぐるまざーがいた。
突然の登場にとまどう長たち。
ニヤニヤ下卑た笑いをうかべるしんぐるまざーの足元には6つの潰れ饅頭。
「むきゅ?む…きゅ…?むきゃあああああ!!!!!ぱちぇのけんじゃなおちびちゃんたちがあ”あ”あ”!!!」
「わがらないよお”お”お”お”お”!!!」
我が子の変わり果てた姿に号泣する長とちぇん。
「ゆぎぎぎ…げすにもほどがあるのぜ!」
怒り心頭のまりさが、しんぐるまざーを睨みつる。
「うごいたらだめだよ!れいむのいうことをきかないとこいつらもつぶすよ!」
しんぐるまざーは、ゆん質の2匹を見せてけん制する。
「むきゅ!おちびちゃん!」
「かえしてね!おねがいだよー!」
まだ生きている我が子を返して欲しい一心で、我を忘れて懇願する。
(まずいのぜ。このままだと、おさたちがげすのいいなりになるのぜ…)
まりさの心配は当たる。もうすでに何をおいてもおちびちゃんという感じに長たち2匹はなっている。
「まずは、いままでのおわびのしるしにあまあまもってきてね!たくさんでいいよ!」
「あみゃあみゃよこちぇー!」×2
増長するしんぐるまざー。悔しさで歯ぎしりしながらも言うことをきく、長とちぇん。
「むきゅううう…わかったわ…」
「わかったから、おちびちゃんにひどいことしないでねー…」
ありすとまりさは顔を見合わせる。
「まりさが、もってくるのぜ!」
「ありすも、とかいはなあまあまもってるわ!」
「ゆゆ?へんなきをおこしたら、ゆるさないよ!あまあまだけをもってくるんだよ!くそどれい!」
2匹は糞奴隷呼ばわりされるも、一時的にしんぐるまざーの元を放れられる口実を得たことになる。
まりさとありすはお互いにこのチャンスで何とかしなければならないと思っていた。
「れいむ!おはなしがあるのぜ!」
ありすと別れた後、おうちに直行したまりさ。
「まりさ?あわててどうしたの?」
「ゆっきゅりおきゃえり!」×5
赤ゆたちは父親が普通に帰ってきたと思い、のんきに出迎える。
まりさは、今日あったことをれいむに話す。
「おさたちの、ゆっくりしたおちびちゃんたちがかわいそうだよ…」
れいむはゲスの所業にショックを受け、涙を流す。
「れいむ、いまからいうことをしっかりきくのぜ」
まりさが言うには、ありすは何匹かの成体ゆっくりに応援を頼み、子供たちも2、3匹の成体の保護のもと一か所に避難させるらしい。
ただ、このまりさとれいむのおうちは場所的に、今しんぐるまざーのいる所に近くて身動きが取りづらいのだ。
「やつのことだから、つぎはさかうらみできっとここにこようとするのぜ…」
「おちびちゃんは、れいむがまもるよ!」
涙目でれいむが言う。
しかし、まりさは分かっていた。元飼いゆで野生の何たるかも知らないれいむに戦うことはできないと。
そして、何よりれいむは優しすぎる。まりさとしてはそんなれいむに、凄惨な場面そのものを見せたくない気持ちもあった。
「とおくににげるのぜ。あっちのほうは、ゆっくりがふだんいかないのぜ」
「れいむは、まりさたちだけにきけんなことをさせられないよ!れいむもむれのいちいんだよ!」
「れいむ!はなしは、さいごまできくのぜ!」
大声でれいむの反論を遮ると、今度はつとめて優しくれいむに語りかける。
「おちびちゃんをまもるのがれいむの、ははおやのつとめなのぜ。こっちはたくさんだから、ぜったいまけないのぜ」
「まりさ…」
「れいむに、まりさがうそをついたことがあるのぜ?」
「ううん…ないよ…まりさ、ぜったいぶじにかえるとやくそくしてね!」
「かならずかって、むかえにいくのぜ」
2匹はお互い見つめあい、ちゅっちゅをして再会を約束する。
そして、まりさはしんぐるまざーの所へ、れいむはまりさの言う方角へ、それぞれ向かって行った。
「ありす!おねーちゃん!みんな!またせたのぜ!」
「おそいわよ、まりさ」
しんぐるまざー駆逐部隊は揃っているようだ。
「みんなのおちびちゃんはぶじなのぜ?」
「だいじょうぶよ。いっかしょで、おとなりのぱちゅりーとむかいのぱちゅりーがみてるわ」
やはり子守役は、戦闘に著しく向かないぱちゅりーたちが担当するようだ。
「まりさのれいむたちは?」
「とりあえず、にげるようにいったのぜ」
それにありすたちが頷くと、しんぐるまざーの方へ向かう。
問題はゆん質の件だ。戦力は圧倒的に群れ優位。いかにゆん質を取り返すか、それに尽きる。
しかし、しんぐるまざーはゆっくり殺しもためらわない筋金入りのゲス。ようするに場馴れしているのだ。
おそらく修羅場は、しんぐるまざーの方がくぐっているだろう。
数で勝る、まりさたちのとる方法は…。失敗は許されない。
れいむは5匹の赤ゆを頭に乗せ、もみあげで落ちないように押さえながら懸命に走るように跳ねる。
結構な登りになっている山道を進んでいく。自堕落なしんぐるまざーは登りを嫌うので、苦しい道の方が来ないということを本能的に分かっていたのだろうか。
それなりの距離を跳ねただろうか、人間さんの道路に出る。
ここは、山の中の道路で温泉街へと続いている。車はそれなりに通るが、人が歩いていることはまず無い。
しかし、れいむは道の脇のスペースに停まっている車を発見する。
(ゆゆ?!)
れいむは、その車の方へ向かう。これは賭けだ。しかし、普通なら絶対しない賭け。
「ゆっくりしていってね!」
「んん?」
車を止めて、外で後ろのトランクの荷物を整理している人間さんに声をかける。
れいむがこの人間さんに声をかけたのには訳があった。車の中に4匹もの成体れいむが乗っていたからだ。
(きっとこのにんげんさんは、ゆっくりできるにんげんさんなんだよ)
そう信じて、震えながら人間さんの返事を待つ。
「なんだ?野良ゆっくりか?」
「ゆゆ!そうだよ!でも、むれがげすにおそわれて…」
れいむは必死に説明した。人間さんの表情はいまいち読めない。
「おちびちゃんを、あずかってほしいよ!」
「なんでそんなことを…といいたいとこだが、少し早く来すぎて時間もあるし預かってやってもいい」
成功の望みが低いと思っていたが、あっさり受諾してくれたのでれいむもビックリする。
「ゆっくりありがとう!」
しかし、車で山に捨てられたトラウマがあるれいむは、車の中を見て人間さんに質問する。
「あのれいむたちは、おにいさんのかいゆっくり?」
「なんで、そんなことを聞く?」
「れいむは、かいぬしさんにやまにすてられたよ…」
「ふうん…元飼いゆっくりだったのか」
男は興味無さそうに呟くと、車の扉を開けた。
「れいむ!こいつがおまえに話があるんだとよ」
『ゆゆ?おにいさんどうしたの?』
助手席に乗っていたれいむは突然のことに、状況が良く分かってないようだ。
そのお飾りには飼いゆっくりの証である銅バッチがキラキラと光っていた。
「ゆっくりしていってね!」
『ゆっくりしていってね!』
まずはお互いご挨拶。ゆっくりの基本だ。
『おにいさんはとってもやさしいんだよ!れいむは、だいすきだよ!』
『れいむたちはおにいさんと、はじめてぴくにっくさんにいくんだよ!』
れいむは、飼いれいむに状況を話したり、どこへ行くのか聞いたりした。
飼いれいむの言い分を聞くと、お兄さんは飼いれいむを心から愛して愛でているらしい。
これから、ピクニックに行くと言う。捨てられるわけではないようだ。
これなら間違いない。おちびちゃんを預けられる。安心だ。
と同時に、飼い主に恵まれている4匹の飼いれいむたちを羨ましく思うも、まりさの顔を思い出しすぐに現実に戻る。
「じゃあ、おねがいするよ。れいむはまりさをたすけにいくよ!」
『ゆ!おちびちゃんのことはまかせてね!げすにまけないでね!』
れいむは、おちびちゃんを”何を盛り上がってるんだろうなあ”という顔をした人間さんに渡す。
「おちびちゃん、よくきいてね。おかあさんはおとうさんをたすけにいくよ!すぐもどってるから、ここでうごかないでいいこにゆっくりまっててね!」
「おきゃーしゃん!ゆっきゅりまちゅよ!」×5
寂しさを堪えて涙目なものの、キリっとした顔で返事をする赤ゆたち。
「いいか、1時間以内に戻ってこいよ。それ以上は待たないぞ。……………」
れいむは、丸っこい身体でお辞儀のようなしぐさをすると、山へ戻っていった。
人間さんは、おちびちゃんたちをボンネットに置くとドアを閉めて外で一人呟く。
「1時間がおそらくタイムリミットだろうな」
「おそすぎるよ!くずどれいども!」
あまあまを取りにいったきり、なかなか戻らないまりさとありすにしびれをきらして怒鳴るしんぐるまざー。
元来、このゲス野郎は気が短い。怒りにまかせて、もみあげで子ちぇんを折檻する。
「いぢゃいよお”お”!!わぎゃらにゃい”い”い”!!!」
「むきゅう!おねがいだからやめてえええ!!」
「おぢびじゃあああんん!!わがらないよおおお!!!」
痛みで悲痛な声をあげる我が子に、泣き続ける長とちぇん。
するとそこへ塀の陰から、ありすとその番のまりさが現れる。
「あまあまをもってきたわ!」
「ゆゆ?おそすぎるよ!むのうなありすだね!ばかなの?しぬの?」
しかし、ありすはあまあまを持っているようには見えない。
「どこにもあまあまがないよ!」
「たくさんあるっていったでしょう。もちきれないので、はにーのまりさのおぼうしにつまっているわ!」
「さっさともってくるんだよ!」
「うごいてなかみをだすとこぼれるわ。あなたが、とりにきてちょうだい!」
何だか強引な理屈である。それもそのはず、お帽子には何も入ってなどいない。
塀の脇には、小枝などで武装したまりさたちが構えている。
この誘いにしんぐるまざーが乗ってくるだろうか?
「しょうがないぐずだね!かわいいれいむが、じきじきにいってやるよ!」
しんぐるまざーは、見え見えの誘いに引っかかったようだ。
「おまえらは、うごくんじゃないよ!」
長とちぇんに一喝すると、ゆん質と子れいむを連れて、ありすたちの方へ向かう。
(はやくくるのぜ)
塀の脇で、まりさたちが構える。このままノコノコやってきたら、ハイパーフルボッコタイムだ。
しかし、しんぐるまざーはありすの手前で止まる。
そして、口の中にゆん質を詰め始める。
「そんなことしたら、あまあまがたべられないわよ?」
不安になったありすが尋ねるが、ニヤリとしんぐるまざーは笑い、
「ばかなれんちゅうだよ!れいむは、そのては、まえにけいけんずみだよ!」
と叫ぶと、ぼよんと跳ね、ありすの番のまりさの上からストンピングをお見舞いする。
でいぶ丸出しの巨漢が、ありすの番のまりさを潰す。
「ゆぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」
重みで、口とあにゃるから餡子が漏れ出る。そして、痛みで転げまわる。
塀の横のまりさたちは、しんぐるまざーに手が出せない。
口の中に、ゆん質がいるので下手に攻撃したら潰されてしまう。
「まりさああああああああああああああ!!!」
ありすが番のまりさに駆け寄る。いや、駆け寄る前にしんぐるまざーの無慈悲な一撃がありすの番のまりさを襲う。
顔面へのストンピングが炸裂し、あにゃるから大量の餡子を噴射して永遠にゆっくりした。
顔面は無残に潰され、ぐちゃぐちゃで顔のパーツはバラバラになっていた。
「つぎは、おまえだよ」
しんぐるまざーがニヤリと笑い、振り返ってありすを見る。
ありすは、悲しみで一瞬茫然としていたが、すぐに怒りで満たされていく。
「あんなにゆっくりしたまりさだったのに…」
歯ぎしりして凄まじい形相で、しんぐるまざーを睨みつける。
それを見下した表情で受け流す、しんぐるまざー。
そのときである。
「こいつらをかえしてほしければ、おさたちのこをはなすのぜ!」
「ゆんやあ”あ”あ”!!!みゃみゃー、げしゅがいじめりゅうううう!!」
「このくじゅどりぇいを、しぇーしゃいしちぇにぇ!」
しんぐるまざーの子れいむを、ゆん質に取り返したのだ。
ゆん質の交換に成功すれば、あとはもう多勢に無勢。子れいむ奪取は会心の一手だ。
「まりさの、ゆっくりしたおねえちゃんをころしたこと、ぜったいにゆるさないのぜ!はやく、おさのこをかえすのぜ!」
(ゆんじちなんて、ひきょうなやりかたはゆっくりできないけど、しかたないのぜ)
ゆん質交換終了それはすなわち、しんぐるまざーにとっての死刑宣告。
しんぐるまざーの子供たちはここでは潰されないかもしれないが、群れ追放は確実で生きてはいけないだろう。
狡猾なしんぐるまざーには全て分かっていた。何をすべきかを。
ふうと息を吐くと、ニヤニヤ笑い始め、そして、
「しかたないね。おちびちゃんは、もうおわりだね。れいむがころされたらどうせしぬから、たすけてもいみないね」
子れいむたちを見捨てることを宣言した。
その薄情さに絶句する群れのゆっくりたち。おちびちゃんを捨てる?どうして、そんな非情な決断を下せるのか?
想定外のしんぐるまざーの返事に、唖然とする群れのゆっくりたち。そんな隙を見せては、しんぐるまざーの思うつぼなのに。
「みゃみゃあああああああああ!!!!!みしゅちぇないでええええええええええ!!!!!」
しんぐるまざーの子れいむの絶叫が響く中、しんぐるまざーの巨体が宙を舞う。
豚のように舞い、豚のように潰す。
しんぐるまざーの会心の一撃が、番を潰されたありすに炸裂した。
”ぶちょっ”という不快な音と共に、ありすの身体が楕円に歪む。口とあにゃるからカスタードが噴き出す。
「ごの…いながものお”お”お”!!!」
憤怒に満ちた表情で、しんぐるまざーを睨みつけるありす。しかし、ありすには反撃する体力はもう残っていなかった。
「ありずううううう!!!ゆっぐり!ゆっぐりじでね!!!」
まりさが、だぜ言葉を忘れて、幼なじみのありすの惨状に涙を流し叫ぶ。
元々、幼なじみとして赤ゆっくりのころから一緒に遊んでいたありす。
まりさの初恋の相手でもあったが、ありすは姉を愛した。大好きなお姉ちゃんと大好きなありす。
2匹の結婚を喜ぶも、なかなか自分が好きになるゆっくりが現れず、れいむと出会うまでゆっくりにしては晩婚だったのだ。
「おお、ぶざまぶざま!げらげらげら!みにくいありすは、とっととしんでね!」
しんぐるまざーの嘲笑が、その場に響き渡る。
もう、まりさは怒りが限界に達していた。
「もう…ぜったいに…ゆるさないのぜ…」
その不穏な空気に、しんぐるまざーが気づく。
「ゆゆ?れいむにさからうと、こいつらつぶすよ?」
器用に頬に詰めた、ゆん質2匹を口を開いて見せつける。
それに対し、群れのゆっくりたちが悔しそうにうつむく。しかし、まりさにはもうその言葉は、動きを止める魔法の言葉では無くなっていた。
「おさ、ちぇん、ごめんなのぜ。もし、このけんのかたがついたら、まりさをせいっさいしてほしいのぜ」
そう言うと、しんぐるまざーに向き直る。
「おねえちゃんのかたき!!ありすにしたひどいことのむくい!!あとたくさんのわるいことへのせいっさい!!おまえだけはぜったいゆるさないんだぜ!!!」
修羅道に堕ちることを覚悟したまりさ。覚悟を見せつけるように、跳ねるとしんぐるまざーの子れいむを潰して見せた。
「ゆんぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!!がわ”い”い”れ”い”み”ゅを”おおおうべっえええええええええ!!!」
「れ”い”み”ゅじにだぎゅないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!げぼおおおおおおおおお!!!!」
子れいむ2匹は弾け飛び、永遠にゆっくりした。返り餡が、まりさのあんよにベッタリと付く。
「おまえも、ゆっくりごろしだね」
しんぐるまざー(もう違うのだが、変えるのも面倒なので)が冷めた目で、まりさに言い放った。
その様子を、見て唖然とする群れのゆっくりたち。
あの、ひょうきんで憎めないいつものまりさの姿はそこには無く、怒りに満ちた鬼のようなゆっくりの姿がそこにはあった。
それを見て、潰れかけて今にも死にそうなありすが涙を流す。まりさに全ての業を背負わせてしまった己の不甲斐なさに。
ありすの傍に、駆け寄りぺーろぺーろする長のぱちゅりーに対して、
「おねがい…おさ…どんなけっかになっても、まりさはゆるしてあげて…」
まりさのこれからの行動が何を意味するかを分かって、ありすは長に最期の力を振り絞って懇願する。
「あんしんして、ありす。そもそも、おさとしてちからぶそくのぱちぇのせきにんなのよ。まりさにだけ、おしつけたりはしないわ」
泣きながら笑顔で、ありすに語りかける。それに安心したありすは、
「まりさに、ありがとうってつたえてね」
というと、永遠にゆっくりしてしまった。
そのありすの最期を見て、ぱちゅりーは覚悟を決めた。自分は長だ。守るべきは群れなのだ。
「ちぇん、ぱちぇをむっきゅりうらんでもいいわ。みんな、あいつをたおすのよ!」
ちぇんも顔を上げる。
「わかるよー。ちぇんも、かくごをきめたんだよー!」
おろおろしていた群れのゆっくりたちの顔つきが変わる。
まりさを先頭にしんぐるまざーに向き直り、攻撃態勢をとる群れのゆっくりたち。
それを見て、しんぐるまざーは思い切り口の中のゆん質を噛み砕く。
顔を背けずに、それを凝視する長とちぇん。我が子の最期を確かめるかのように。
悲鳴をあげることなく、永遠にゆっくりしたゆん質の2匹。しんぐるまざーは、口の中から2匹のお飾りをプッと吐きだす。
冷静な様子のしんぐるまざーは、もう諦めたのだろうか?
否。生き汚いしんぐるまざーがこんなことで諦めるわけは無い。今もまさに、逃亡できるチャンスをうかがっていた。
「なにか、いいのこすことはあるのぜ?」
まりさがじりじりと距離を詰めながら、しんぐるまざーに話しかける。口には鋭利な木の枝を咥えている。
周りにも、武器を咥えたゆっくりたちがいる。
しんぐるまざーはニヤリと笑うと、口に残るゆん質たちの中身をまりさたちに向けて毒霧のように噴射する。
「うわあああああああああ!!!」
「めがみえないよー!!!わからないよー!!!」
眼潰しのような状態に、まりさたちは視界を奪われる。ただし、すぐに見えるようになることは分かっていたしんぐるまざーは逃走を開始する。
「かわいいれいむは、さっさとにげるよ!」
しんぐるまざーは振り返ると、誰もいない方角へ逃げようとする。
「ばかなれんちゅうだよ!やっぱりれいむはかしこいね!」
このままおめおめと、しんぐるまざーの逃亡を許してしまうのか?
「おめめさん!はやくあくんだぜ!げすが、にげちゃうんだぜえええええ!!!」
ドカッ!!!
ようやく見えるようになったまりさの目に最初に映ったのは、愛するれいむと、のたうちまわるしんぐるまざーの姿だった。
「ゆぎゃああああああ!!!がわいいでいぶのおめ”め”がああああああああああああああああああ!!!!!」
目が片方、小枝に貫かれ悶絶するしんぐるまざー。
「れ、れいむ!なんでもどってきたんだぜ!」
慌ててれいむに駆け寄るまりさ。
「れいむも、むれのいちいんだよ!やっぱり、れいむだけあんぜんなところにはいられないよ!」
「でも、れいむには…」
そう言おうとするまりさに、あの時は逆に今度はれいむが大きな声で反論を遮る。
「まりさ!まりさのきもちはうれしいよ。でも、れいむはむれの…ううん、まりさのつまなんだよ!」
「れいむ…」
「れいむもたたかうよ!おじょうさんあつかいしなくてもへいきだよ!れいむそんなにやわじゃないよ!」
れいむはキリっとした笑顔で、もみあげをまりさの前に出す。それをおさげでガッチリ握るまりさ。
「れいむはさいっこうのれいむなのぜ」
2匹はしんぐるまざーに向き直ると、すでにしんぐるまざーは長やちぇんによってハイパーフルボッコタイムの真っ最中だった。
「むきゅううう!!!おちびちゃんのかたきいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「おまえだけはぜったいにゆるさないよおおおおおお!!!!!わかるよおおおおおお!!!!!」
「ありすの、おねえちゃんのいたみをおもいしるのぜえええええええええええええええ!!!!!」
「じぶんのこどもまでみすてるなんて、ははおやじゃないよおおおおおおおおおおおお!!!!!」
グサッ!!!しんぐるまざーは枝を刺された。
グシャ!!!しんぐるまざーは踏みつぶされた。
ガリッ!!!しんぐるまざーはかじられた。
「で、でいぶば、まだじにだぐない”い”い”い”!!!!!」
ボロボロになりながら恨み節を撒き散らすしんぐるまざー。
まりさは、ちらりとありすの亡骸に目をやった。
「ありす、かたきはとるのぜ…」
まりさが跳ねる。ぱちゅりーも跳ねる。ちぇんも跳ねる。れいむも跳ねる。
4匹の渾身のストンピングが、姿も中身も醜いしんぐるまざーのぶよぶよの巨体を踏みつぶす。
グッシャアアアアアアアアア!!!!!
粉々に弾け飛んだしんぐるまざー。ついに、決着はついたのだ。
「ありす…おねえちゃん…」
まりさとれいむは、ありすとまりさの姉だったものの前に立つ。
涙がとめどなく溢れ出てくる。ぱちゅりーは、そっとまりさに
「ありすが、ありがとうっていってたわ」
それを黙って聞くまりさ。ありすとの数々の思い出が餡子脳裏に浮かぶ。
「れいむ、おちびちゃんはどうしたのぜ?」
悲しみを振り切り、我が子の安否についてれいむに尋ねるまりさ。
「ゆ、それなら…ゆゆゆゆゆ!!!!!?????」
れいむのただ事ならぬ様子に、そこにいたすべてのゆっくりがれいむの見る方角を向いた。
そこには絶望があった。
凄まじい勢いで、凄まじい量の水がこっちに向かって来ていた。
逃れられないのは、ゆっくりの餡子脳でもすぐに分かった。
「むきゅ、せっかくげすをたおしたのに、すごいひにくね。おちびちゃん、すぐいくわ」
長が、フッと乾いた笑いを洩らすと観念したように呟く。
「でも、じぶんのてでおちびちゃんのかたきをとれてよかったよー。わかるよー」
そう言うと、ちぇんは自分の番の長と肌を寄せ合った。
この群れのゆっくりは全滅するだろう。あの水は避難した子ゆや赤ゆも飲み込む。いや、このゆっくりプレイスそのものを飲み込む。
全滅?
いや、まりさのおちびちゃんはもしかしたら平気な場所にいるかもしれない。れいむに教えた方角ならここよりもかなり高い所にあるはずだ。
期待を込めて、まりさはれいむに聞いた。
「そういえば、おちびちゃんたちはどこにいるのぜ?」
「にんげんさんのどうろで、にんげんさんにあずかってもらったよ」
「なら、たすかるのぜ?」
「そうだね…ゆゆ!!れいむたち、もうむかえにいけないよ!!!」
激しく狼狽するれいむ。
「もう、まりさたちはむりなのぜ…でも、おちびちゃんがぶじなら…」
悲痛な表情でれいむが叫ぶ。
「ちがうの!ごめんねぇ!まりさぁ!」
れいむが思い出す。人間さんの別れ際の言葉。
「いいか、1時間以内に戻ってこいよ。それ以上は待たないぞ」
そのあとに続く言葉。
「でないと、処分するからな」
そのときのお兄さんの顔は、れいむを捨てるときの飼い主さんの顔より数倍も恐かった。
そう、まるで飼い主さんに動画で見せてもらった虐待鬼意山のように。
「ゆあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!おちびちゃんんんんんんん!!!!!!ごめんねええええええええ!!!!!!!」
泣き叫ぶれいむ。茫然と立ち尽くすまりさ。
「なかないで…れいむ…」
まりさがおさげを伸ばし、れいむに差し伸べた瞬間
世界は水に覆われた。
水に流され、溶けていく中でれいむは思う。
自分は群れに厄災を運んだだけだったの?
まりさは、自分と一緒にならない方が良かったの?
おちびちゃんたちを産まなければ良かったの?
答えは出ることは無い。
れいむは、後悔と懺悔の思いに包まれながら永遠にゆっくりと消滅した。
れいむからおちびちゃんを預かった人間さんは、ぼんやりと放水するダムを眺めていた。
今日は、飼いゆとのピクニックに行く前に、ついでに新しく出来たダムの初めての放水を見に来たのだ。
渋滞を予測したがそんなことも無く、待っているときにれいむに声をかけられた訳だが。
「今はすべて水の底か」
そう呟く。
沈んだ村の関係者だろうか、この場にはたくさんの人と重い空気が流れていた。
「さて行くか」
そういうと人間さんは、車へと戻る。
あの赤ゆは、どうしたのだろうか?今はもう彼の手元にはいない。
人間さんは手元にある”何か”が入ったビニール袋を、ゴミを回収していたおじさんに手渡した。
少し時間を巻き戻そう。
「時間だな」
そう言うと、人間さんはボンネットの上に乗る赤ゆ5匹に向き直る。
そして人間さんは、コンビニのビニール袋に赤ゆを詰める。
「おしょらをとんでりゅみちゃい!」
詰め終わると、ビニール袋の口を縛って塞ぐと下に落とす。
「ゆぴいいいい!!!いちゃいよう!!!ゆっきゅりたしゅけちぇにぇ!」
(あの親ゆも、もうすぐ水の底。こいつらを飼う気はもちろん俺には無い)
「おきゃーしゃーん!おとーしゃーん!はやくかえっちぇきちぇにぇ!あんよがいちゃいよううう!!」
(このまま放置しても、他の人間の迷惑だ。どうせ死ぬだろうが、仮に生き残っても、ダム付近で間抜けな声で騒いだりしたら不謹慎だ)
「おにぇがい!おにーしゃん!ここからだしちぇにぇ!くらいくらいで、きょわいよううう!!」
(なら、俺がここで潰すのが一番だよな)
グチャ
「ゆぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
人間さんの振り下ろされた足元で、不快な音がする。足で感触を確かめるようにしながら、人間さんは潰していく。
逆光でその表情は見えないが、人間さんはどんな顔で赤ゆを潰しているのだろうか?
中身がぐちゃぐちゃになった袋をトランクに放り込むと、運転席へ行き、ドアを開ける。
中では、ピクニックについて嬉しそうに語るれいむが4匹。車内は潰す前につけた暖房とCDで、外の音は一切聞こえない。
「出発だ」
「ゆゆ?おにいさん!さっきのれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」
「今しがた来て、帰っていったよ」
「ゆ!ぶじだったんだね!よかったね!れいむうれしいよ!」
トランクのなかでは、もうしゃべることが出来なくて餡子がはみ出しながらも生きている赤れいむが1匹いた。
しかし、もう長くはないだろう。
身体中に激痛が走る。痛い。痛い。れいみゅがどうして?
おかーさんに会いたいよ。おとーさんに会いたいよ。
すーりすーりしたいよ。ぺーろぺーろしたいよ。
そう思うのもつかの間、痛みで思考が停止する。
(おきゃーしゃん…あいちゃいよぅ…)
赤れいむの思考は闇に沈んでいき、やがて永遠にゆっくりした。
そうして最後の赤ゆが、苦しみぬいた末に息絶えた瞬間にダムの底に沈んだゆっくりの事を知るものはこの世から消えたのだ。
このダムに沈んだ村の事は、これから多くの人によって語り継がれていくだろう。
だが、この沈んだ村にいたゆっくりの事を語り継ぐものは誰もいない。
勇敢なまりさがいたこと。とかいはなありすがいたこと。心優しいれいむがいたこと。
虎は死して皮を残し 人は死して名を残す ゆっくりは死して何も残さない