ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0249 ゆっくり繁殖していってね!
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ankoss
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【注意】
* 俺設定多数含みます。
* 虐待成分薄め
* ネタかぶりはご容赦を。
「お邪魔するよ、室長」
「どうした、鬼意」
室長と呼ばれた私は、とある加工所で研究室長をしている。
日々、ゆっくりについて研究をする研究室の管理職で、私自身が研究をすることは無い。
その私の居室の扉を開けて入ってきたのは、研究員の鬼意だ。
立場は上司と部下になっているが、この加工所では同期だ。
たまたま私が管理職に、鬼意が研究職に向いていた結果に過ぎない。
「ちょっと、抱えてるレポートの内容で相談があってね」
「…今度は何をやったんだ?」
趣味の虐待が高じて研究の道に踏み込んだ鬼意は、時折変なテンションのスイッチが入ってしまい、与えられたテーマから研究内容が逸脱することがある。
もちろん、それを無かったことにして、正しい方向に軌道修正するくらいの常識を、鬼意は持ち合わせている。
が、まれに、闇に葬るのが惜しい成果が出ることがある。
そういう時、鬼意はこうやって私の部屋にやってくるのだ。
今度はどんな面白い結果が出たんだ?
これまでの経験から、どうしても期待が湧き上がってしまう。
厳しい口調とは裏腹に、私の目は笑っていた。
「ゆっくり繁殖していってね!」
「今抱えてるテーマは『ゆっくりの効率的な繁殖方法について』なんだがね」
「ああ、れいぱーをけしかけても、母体と同種のゆっくりを回収したいっていうあれか」
ゆっくりの繁殖には、主に植物型と動物型の2種類があるが、これらに共通した、大量生産にかかるある問題がある。
生まれてくる子ゆっくりの種類を選べないことだ。
例えば、れいむ種とまりさ種を番にして繁殖させれば、子は当然、れいむ種かまりさ種が生まれてくる。
だが、その比率は調整することが出来ない。
統計的に見ればおおむね半々なのだが、時に緊急生産として、特定の種だけを繁殖させたい場合がある。
現在は、増やしたい種に特殊な調教を施してれいぱー化させ、必要に応じて同種の母体にけしかけるという方法をとっている。
れいぱー化調教とは、長期間発情状態を維持させつつすっきりさせないというもので、完全なれいぱーになるにはおよそ2ヶ月はかかる。
そうしてれいぱーになったゆっくりは、その後1ヶ月ほどで衰弱して死んでしまう。
れいぱーになる前も、なった後も、自由にすっきり出来ることなく欲求だけが高ぶっていくストレスが原因だ。
緊急生産は念に2,3回程度しかない。そのために、手間のかかる人工れいぱーを常時50匹ほど用意している。
何故50匹も? 加工所で扱うれいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇんの5種すべてについて、10匹ずつ用意しているからだ。
何故5種も? 問題はそこだ。
れいぱーに襲われて出来た子は、れいぱーと同じ種になることが非常に多い。
10匹以上も生った子全てがれいぱーと同じ種ということも珍しくは無い。
今のやり方では、生産したい種のれいぱーが必要なのだ。
「それについては、仕組みだけは大体わかったよ」
手にした紙束を丸めて肩を叩きつつ、鬼意が言う。
資料を広げるそぶりを見せないところを見ると、ここはそれほど面白い部分ではないようだ。
「結局のところ、ゆっくり同士のやる気の問題さ」
「簡単にまとめすぎだ」
鬼意は肩をすくめて見せると、癖のついた資料の中から数枚を取り出した。
それは、ありす種との交尾直後に解体されたれいむ種の記録だった。
植物型と動物型と、交尾の終了からの経過時間を1秒おきに。割られたれいむ種の写真は100枚を超えていた。
どちらの繁殖型にも共通しているのは、時間の経過に沿って体内のカスタード部分が増加していることだ。
植物型の場合は、カスタード部分が母体の皮に沿って額に移動し、そこから押し出されて茎となり、子を生らせた。
動物型の場合は、母体の皮が体内に伸びてカスタード部分を包み、その後に一部を残して二重になるように剥離して、子宮に相当する部分と子を形成した。
子の中身は最初こし餡とカスタードが混じってマーブル模様になっていたが、徐々にどちらか一方だけに変わっていった。
なるほど、ゆっくりの繁殖について研究したものは過去にもいたが、ここまで実証的に、徹底して解体記録したものは無かった。
無かっただけに、何故今まで誰もやらなかったのかが不思議に思える。
ゆっくりの不思議能力のひとつに、食べたものを餡子にしてしまう、餡子変換能力というものがある。
曰く、ゆっくりの生殖とは、生殖相手の体内に自身と同じ種の餡を生成することらしい。
生殖行為で生殖子が体内に侵入することにより、例えばありす種の生殖子がれいむ種の餡に触れれば、こし餡をカスタードに変換してしまうという。
鬼意のレポートによれば、この変換された餡を母体が異物として認識することで、にんっしんのプロセスが始まるという。
ゆっくりの体内に異物を埋め込むと、餡子に変換されることが知られている。
他の個体の生殖子が侵入した場合、相互に変換しあうことで餡が交じり合う。
これを仮に混合餡と呼ぶ。
植物型の場合は母体の皮を材料にして額に茎を形成し、そこに混合餡を追いやる。
動物型の場合は母体の皮で混合餡を丸ごと体内で包んでしまう。
隔離された先で双方の餡の変換合戦が行われ、いずれかの餡が他方をすべて変換しつくすと、それが子の中枢餡となる。
勝利した餡と同種のゆっくりが生まれるという寸法だ。
どちらが勝るかは、親となる個体の状態次第。
健康状態のいい方の、子供を望む気持ちの強い方の餡が活発になる傾向にあり、その分優勢になるという。
「母体の健康状態を良くして、子供がほしいと思わせればいいということになるのか」
「そう。つまり、事実上無理ということだよ」
鬼意の言うとおりだ。いかにゆっくりといえども、自分がレイプされている最中に、子供がほしいと思えるものではないだろう。
対してれいぱーは生殖行為にすさまじいまでの情熱を注いでいる。
変換合戦でどちらが優位に立つかは自明と言うものだろう。
「かつて本物のほうの魔理沙が、幻覚剤を使ってゆっくりに無性生殖をさせたことがあるらしい。今はそっちの方向からやり直しているよ」
そう言って、鬼意は来客用のソファに、疲れたようにもたれかかる。
他人の真似をするということが気に入らないようだ。
「それで、相談はどうした?」
繁殖に関するレポートはなかなか興味深かった。
誰もがおよそそうだろうとは思っていても、誰も調べなかったことだからだ。
だが、鬼意はレポート内容の相談があると言った。
つまり、一通りの体裁を整えたこのレポートに書かれていない、別の面白いことがあるということだ。
「ああ。繁殖の研究をしていたら、前から気になっていたことを思い出してね」
そういって鬼意はベータのビデオテープを取り出し、横手にあるビデオデッキに入れて再生ボタンを押した。
これらは外界から流れ着いたものを、河童の技術で修復したものだ。
録画再生機械はそこそこの数があるものの、テープは消耗品の上、流れ着く数が少ない。
何度も重ね録りされたテープの画像は、正直汚い。
だが、それだけ貴重なものを使って記録された研究に、私の胸は高鳴った。
画面には植物型にんっしんをしたれいむ種が映されていた。
そのれいむ種は、顔にあたる部分がすべて潰されており、さながらのっぺらぼうとなっていた。
動けないように、足は焼かれているようだ。
画面内にほかにめぼしいものは無い。
薄汚れた壁は鬼意の研究室なのだろう。
中に誰も入れたがらないのだから、掃除くらい自分でしろと何度言えば。
というか、明らかにゆっくりを投げつけて潰した跡は何なんだ。
そうこうしているうちに、生っていた赤ゆっくりたちがプルプルと震えだす。
出産が始まったのだ。
徐々に赤ゆっくりの動きが大きくなり、やがて1匹が茎から落ちる。
ぺたり、と床の上に潰れた赤ゆっくりは、ゆっくりと体を起こすと母親に向き直ると、満面の笑顔で口を開いた。
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
生まれて初めての挨拶を母親にする。
だが、いくら待っても期待した返事が母親から返ってくることは無い。
『ゆ? おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
当然だろう、母親には口どころか顔さえない、返事が出来るはずも無い。
それでも我が子に何か伝えたいのだろう、動けない体を必死に揺すっている。
『ゆーん! おきゃーしゃん! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
『ゆえーん! ゆえーん!!』
次々と赤ゆっくりが生まれては挨拶をするが、誰も母親からの返事をもらえない。
終いには赤ゆっくりたちは母親に体を擦り付けて泣き始めた。
『やあみんな! ゆっくりしていってね!』
そこに鬼意の声が入る。
やけに生き生きしているが、そこはスルーすべきだろう。
『ゆ? おじしゃんだれ?』
『れいみゅたちはおかーしゃんとゆっくちしゅりゅんだよ!』
『じゃまだかりゃあっちいっちぇにぇ!』
画面に映らない鬼意はカメラを構えているのだろう。
鬼意の声に反応した赤ゆっくりたちは、こちらを向いている。
『そんなこと言わないでよみんな! おじさんと一緒に加工所でゆっくりしていってね!』
『『『ゆ゛!?』』』
鬼意の台詞に赤ゆっくりが硬直する。
『あれー? どうしたのかなみんな! ここは加工所だよ! 好きなだけゆっくりしていってね!』
『…ゆ…ゆわ……』
『ゆわーーーん! かこうじょいやああああああああ!!!』
『かこうじょはゆっくちれきにゃいいいいいいい!!!』
そこで画面は止まった。
見れば鬼意が一時停止をしたらしい。
「ま、野生の子供はこんな感じだね」
「あいつら、どこで加工所なんて覚えてくるんだろうな」
生まれたての赤ゆっくりでさえ、加工所と言えば泣き叫ぶ。
ゆっくり発生当初、ゆっくり達は換金目当ての人間達に乱獲され、加工所に売られていた。
その頃のトラウマが本能に根ざしてしまった、ということなのだろうか。
鬼意がビデオデッキを操作している。
画面に映る映像は目まぐるしく変化していき、ある場面で唐突に止まる。
映っているのは、先ほどと同じ、顔を潰され植物型にんっしんをしたれいむ種だ。
だが、最初のれいむ種とは別の個体らしい。
「これは、さっきの場面で生まれた子供の1匹でね」
言いながら、鬼意はビデオの一時停止を解く。
「加工所はゆっくり出来ると思うように散々甘やかせて育てたんだ。
近年の加工所ゆっくりで、これほどゆっくり出来たやつはいないんじゃないかと思うほどにね」
「随分な手間をかけるんだな」
「それに見合った結果は出たよ」
鬼意に促されて画面を見ると、ちょうど1匹が生まれたところだった。
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! …ゆぅ、おきゃーしゃん?』
『やあ、ゆっくりしていってね!』
『ゆ! おじしゃんだりぇ?』
『おじさんは加工所の人だよ! 君も加工所でゆっくりしていってね!』
赤ゆっくりの反応は、また泣き叫ぶのだろうなと思いこんでいた私には、予想外だった。
『ゆわーい! かこうじょはゆっくちれきりゅよ!!』
なんと、加工所と聞いて喜び始めたのだ。
『ゆっくちー! かこうじょかこうじょ!!』
『とってもゆっくちしちぇりゅよ!!』
次々に生まれる赤ゆっくり達も喜ぶばかりだ。
親が生まれたときのように泣き叫ぶものは、1匹もいない。
「ちなみに、この赤ゆっくりに『加工所は恐ろしい場所だ』と教え込んで同じことをすると、生まれた子供は加工所と聞くと泣き喚いたよ」
「つまり、親の知識が子に継承されると?」
鬼意は私の回答に、満足したようにうなづいた。
「記憶の継承には諸説ある。
継承を肯定する論文もあるが、大半は継承が行われなかった実例をもって反駁されている。
反駁の根拠は、ゆっくりは誕生のある程度前には知性が発現し、外部刺激によって教育が可能だという事実だね」
画面を一時停止させ、鬼意は映っている母体を指差す。
「親による教育の可能性を排除するため、母体からは口を取り除いた。
生まれる前の赤ゆっくりに傷をつけないよう、母体の足は焼いてある。
加工所に対する認識に影響を与えないよう、目を取り除いた。
同じ理由で、これらの処置は母体が睡眠薬で眠っている間に実施している」
興が乗ってきたのか、鬼意は立ち上がり、身振りを交えて話し始めている。
「ゆっくりさせた次代には恐怖、恐怖させた時代にはゆっくりと。
世代毎に逆のことを繰り返しても、子は正確に親の知識を基準にして判断している。
間違いないんだ、子は親の記憶を継承する。
問題は!」
ビッ!と音が立つような勢いで、鬼意は右手の人差し指を私の鼻先に突きつけた。
人を指差すとは失礼なヤツだ、お返しにその指先で鼻の脂を擦り付けてやったら、鬼意はしかめ面をして手を引っ込めた。
「問題は、それがどのような仕組みで為されているかだ」
ビデオテープが入れ替えられ、画面にはありす種が映っている。
『どがいばっ!!』
再生されるや否や、あっという間にありす種は縦に真っ二つにされた。
びくびくと痙攣する2つの塊の一方の断面が上に向けられ、そこに褐色の液体がかけられていく。
すると、カスタードの断面が青く変色していく。
色の濃い部分は頭頂部に集中し、足に向かうにつれ色は薄まっている。
「今かけたのはヨードチンキでね、デンプンに触れると青く変色するんだ」
「ヨードチンキって、擦り傷に塗るアレのことか?」
「そうさ。きっかけは外界から流れてきた本でね、外界の寺子屋で使われている教本らしい」
「寺子屋? 外界の子供はこんな高度なことを勉強しているのか?」
「なんとも恐ろしいところだよ、外界は。読み書きそろばんだけでは生きていけないらしいよ。ともあれ」
鬼意から資料を何枚か手渡される。
そこには、今画面で見たばかりのものと同じ有様のありす種の写真がたくさん並んでいる。
それぞれの写真の横には数字が添えてあるが、どうやら数字が大きいほど青色が濃くなっているようだ。
「横の数字は、それぞれの個体の記憶力テストの成績だよ。見てのとおり、出来が良いほどデンプンの反応が強い」
「頭が良い個体ほどデンプンを多く含むと?」
「その発想は逆だよ」
鬼意はソファに深々と座り直し、顔の前で指先をいじりながら、勿体つけるようにこちらを見た。
「学習したからデンプンが出来た、とは考えられないかい?」
そこから続いた鬼意の説明はこうだ。
ゆっくりの皮の成分を調べる研究で廃棄された個体を、たまたま見つけた。
皮に大きな青い染みを作って泣きじゃくるありす種を二つに割ってみたのも、ただの思い付きだった。
そこで目にしたのは、変色した皮の内側で、同様にわずかに変色したカスタードだった。
外界から流れ着いた教本で、青い染みに心当たりのあった鬼意は、ありす種を廃棄した研究者に確認を取り、ますます興味を深めた。
当初は餡の成分を調べているはずだった。
一体どこからデンプンのような不純物が紛れ込んできたのかと。
このときは、基礎データの収集のつもりで数多く実験をこなすことに重点を置いていたため、その結果の分析までは手が回っていなかった。
そして今回、効率的な繁殖方法について研究することとなり、れいむ種とありす種を大量に掛け合わせた。
中にはありす種が母体となるケースもあったが、最終的にはれいむ種が母体となるケースが大半を占めた。
同条件の大量の比較が必要な今回の実験では、少数のケースは最初から除外される。
今回の研究では不要になった真っ二つのありす種だが、自身の研究には役立つかもしれないと、ヨードチンキをかけてみた。
何かの役に立てば、その程度の軽い気持ちだったが、データの量が増えてきたときに、あることに気付いた。
ひとつは、種が確定する前の赤ゆっくりには、デンプンの反応がまったくないこと。
ひとつは、種が確定した赤ゆっくりは、時間の経過とともにデンプン反応が強くなること。
ひとつは、親よりも強いデンプン反応を示す赤ゆっくりはいないこと。
これらの意味を調べるために過去のデータを分析した鬼意は、ある仮説を立てた。
ゆっくりはデンプンを、あるいはデンプンを含む多糖類を記憶に用いているのではないか、と。
「また随分と面白い話だな」
額面通りの意味と、突拍子のなさを揶揄する意図を込めて私は言った。
デンプンとは、つまりは片栗粉だ。
その程度のものが記憶を司るなどと、どうして考えられる?
「試薬の関係でデンプンでしか検証を行えなかったが、他の多糖類も記憶に関連している可能性はある。
そうなれば、組み合わせで複雑な記憶を形成することも不可能ではない。
それと、この仮説に組み合わせるべき仮説がもうひとつあるんだ。これを見てくれ」
早送りされた画面には、ぱちゅりー種が映っている。
『むぎゅっ! ぱちぇのけんじゃなおつむになにするの!!』
いきなり脳天に突き立てられた大きな注射…いや、あれは浣腸器だな…それに不平を言うぱちゅりーだが、そんなことはお構い無しに生クリームを吸い上げる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ぱちぇのなかみをすわないでえええええええええ!!!』
元が大きな個体である上に、吸われた生クリームは大さじ2~3倍程度だから、傷は大したものではない。
それからぱちゅりーは、
『むきゅっ! ぱちぇは! ひとあじ! ちがう! けんじゃ! だから! うんどう! だって! できる! のよ!』
研究室内に作られた坂路を上り下りする運動をしばらくさせられ、
『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! すわないでえええええええええ!!』
中身を吸われ、
『ゆべっ! ゆびっ!! や、やべでっ!! ゆぶぇっ!! ゆびゅううう!!!』
ハエ叩きで何度も弄られ、
『む゛ぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?』
中身を吸われた。
「左から順に、ゆっくりさせた後に採取したもの、運動後に採取したもの、虐待後に採取したものだよ」
そういって鬼意はテーブルに3つの器を並べた。
画面のぱちゅりー種から吸い出したのだろう生クリームには、ヨードチンキとはまた別な試薬がかけられている。
鬼意の言うとおりの順に、赤色が濃くなっていく。
左と真ん中の差はわずかだが、右の赤みは際立っている。
「赤みが強いほど、ブドウ糖が多く含まれるということさ」
「つまり?」
「つまり、単糖類もしくは二糖類が、神経伝達物質として働いているのではないか?ということだよ。
やはりこれも試薬の関係でブドウ糖でしか検証できていないがね」
鬼意はソファから立ち上がると、その場をうろうろと歩きながら話し始めた。
「ゆっくりは長く生きた個体ほど、餡がパサパサしてまずくなる。
これは、多くの記憶を蓄積した結果、餡に含まれる多糖類が過剰になり、味に影響したと考えられる。
ゆっくりは通常、記憶力に乏しい。
これは、神経伝達物質に用いるため、体内の多糖類が単糖類あるいは二糖類に分解されてしまうからだ。
ゆっくりは苦痛を味わうと、甘みを増す。
これは、生命の危機にあたり生存本能が刺激され、体内活動が活発になるに当たり、単糖類あるいは二糖類が大量に生産されるからだ。
ゆっくりに学習をさせるには虐待を加えることが最も効率が良い。
これは、苦痛により多糖類が分解されるに際し、生存に必要な記憶を優先して残すため、他を忘れてしまうからだ。」
仮説を元に推論を進める鬼意の話は、なるほど、筋が通っているように聞こえる。
だが、今日最初の話題の記憶とあいまって、私はふと思いついたことを口にした。
「それでは、母体の記憶が子に引き継がれる仕組みは?」
単に多糖類を摂取して記憶を引き継いでいるというのなら、何故共食いをした個体は記憶の混濁を起こさないのか?
自分で思い浮かべた疑問にもかかわらず、この時点で私は鬼意の回答に予想がついていた。
鬼意ならば、それを実験しないはずが無い。
「重要なのは消化というプロセスだよ」
ああ、やはり。
「ゆっくりにとって口というのは実に重要な器官だ。
手足の無い彼らにとって、移動以外に起こせる行動の大部分が口に依存する。
そして、食事という行為。
これはゆっくりの餡子変換能力を活性化する意味がある。
口を通して体内に入ったものは、ゆっくりが食物と認識した時点で餡子変換能力にさらされる。
すなわち、記憶を含んだ多糖類さえも餡子にされてしまうのだよ」
再び鬼意がビデオテープを入れ替える。
『やべでええええええ!! ゆるじでえええええええ!! いやあああああああああ!!!』
映ったのは虐待されるありす種である。
『あでぃずのどがいばなおかざりがあああああああ!!!』
カチューシャをへし折られ、
『ああああああああ!! がみざんぬがないでえええええええええ!!!』
髪を引きちぎられ、
『い゛ぢゃっ!! い゛ぢゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』
次々と竹串を突き刺されていく。
『お次はどこに刺そうかなっ♪ ここかなっ? こっちかなっ?』
『い゛っ! い゛だい゛っ! や゛べでっ!! や゛べえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』
『嫌がって見せるなんて、ありすはツンデレだね!』
『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』
それにしてもこの鬼意、ノリノリである。
『ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ…』
もはや痙攣するタワシにしか見えなくなった頃、画面の中の鬼意はありすを二つに割り、中のカスタードを掻き出した。
一瞬画面が乱れたあと場面が切り替わり、画面の中央にはまりさ種が映っている。
期待に目を輝かせたまりさ種の前に鬼意の手が伸び、カスタードが山と盛られた皿が置かれた。
『おじさん! これ、ほんとうにたべていいのぜ?』
『ああ、遠慮しないで好きなだけ食べるといい』
『ゆゆっ! ありがたくいただくのぜ!
うっめ! これめっちゃうっめ!! がーつがーつ!!』
返事をするや否や、まりさは顔をカスタードに埋めて貪っている。
『なあ、まりさ。ちょっといいか?』
瞬く間にカスタードを切り崩し、半分ほどに減ったところで鬼意の声がまりさの食事をとめた。
『なんなんだぜおじさん! しょくじのじゃまなんだぜ!!』
『あまあまはおいしいか?』
『あまあまさん! すっごくうまいんだぜ!!』
『何か変なところは無いか?』
『ゆ? あまあまさんはあまあまさんなんだぜ! へんなわけないんだぜ!!』
『というように、経口摂取した場合はただのカスタードであり、被検体には何の影響も無い』
突然、鬼意の声がゆっくりから、視聴者であるこちらに向けられる。
『?? おじさんがわけのわからないことをいってるんだぜ! ばかなんだぜ!!』
『ご想像のとおり、このカスタードは、先刻虐待を施したありす種の内容物だ。
私の仮説どおりならば、これには苦痛を伝える単糖類もしくは二糖類と、苦痛の記憶を蓄えた多糖類が含まれている』
『おじさん! まりさはあまあまをたべたいんだぜ!! じゃまだからあっちにいくんだぜ!』
『それらが経口摂取の場合、本来の役割を為さず、ただの餡子に変換される。
では、こうしたらどうだろう?』
『ゆぎぎぎぎ… じじい! むししないではなしをきくんだじぇっ?!』
無造作に鬼意の左手がまりさに伸び、顔面を鷲づかみにして引き寄せる。
『ゆがああああ!! はなせじじい!! はなすんべぶぅっ!!』
そのまままりさを床に叩きつけると、顔が下になるように足で踏みつける。
『ふぁなふぇええええ!! ふふぉふぃふぃいいいいい!!!』
空いた手で取り出した大きな浣腸器を使い、皿の上のカスタードを残らず吸い上げると、
『ゆぴぃっ!?』
まりさ種の後頭部に突き刺し、
『ゆががががががががががが……』
そのままカスタードを全てまりさの中に注ぎ込む。
浣腸器が空になったところでまりさは解放される。
が、まりさはうつぶせのまま震えており、起き上がる気配を見せない。
『……ゆ………ゆ…ゆ……』
変化の少ない画面を見つめていると、突然、
『ゆぎゃあああああああああああああああ!!!』
絶叫を上げてまりさが飛び起きった。
『ゆぎゃっ!! やべっ! やべでっ!!! ばりざをざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』
あらん限りに血走った目を見開き、涙とよだれを撒き散らしながら、苦悶の表情ででたらめに跳ね回っている。
『いぢゃっ!! いぢゃいっ!! やぢゃっ!!! ざざないで!!! もうざざないでっ!! いぢゃああああああああ!!!』
念のために言うが、まりさについた外傷は、浣腸器を刺された穴以外にない。
それでもまりさは四方八方から突き飛ばされているかのように、身をよじって跳ね、転がり、のたうつのをやめない。
『今、まりさの中では虐待されたありすの記憶が再生されている。
いや、再生などと生易しいものではない。
まさに今、まりさの体は苦痛を体験しているはずだ』
『ゆひっ!! ゆひぃっ!! だぢゅげっ!! だぢゅぶっ!! ぶるぁあぁぁぁぁぁぁ!!!』
そのとき、まりさの体に変化が現れた。
鬼意はまったく手を出していない、なのにまりさの体に、ひとりでに無数の穴が開き始めた。
穴、穴、穴…まりさの体を隙間無く埋め尽くした穴は、それぞれは小さなものだ。
そう、ちょうど竹串を刺したら開く程度の。
『…ぼっ……ぼっど…ゆっぐり……じだがっ……』
全身から餡をにじませ、まりさが力尽きた。
ゆっくりは本来、中枢餡を破壊されるか大量に餡を失うかしないと死なない。
このまりさは再現されるありすの記憶の、死の瞬間までを体験して精神が死んだのだろう。
見れば、顔面を縦に貫くようにうっすらと亀裂が走っている。
ありすが最期に真っ二つにされたのを、ここまで再現したのだ。
鬼意の手がまりさの死体に伸び、亀裂に沿って二つに割る。
断面を見る限り、カスタードが残っているようには見えない。
バットにまりさの餡を掻き出し、細かく見ていくが、やはり出てくるのはつぶ餡だけだ。
『ご覧のように、体内に注入されたカスタードは全てつぶ餡に変換された。
ゆっくりは体内に侵入した異物を、餡に変換する能力を持っているからだ。
だが、他の個体の体験と記憶を移植できたことから、糖類が餡に変換されなかったことは明らかだ。
推論は簡単だ。
糖類は通常ゆっくりの体内に存在するものであるから、外部から混入されても異物と認識されなかったのだ』
「ここで疑問がいくつかある」
画面の言葉を引き継ぐように、鬼意が同じ声を上げる。
画面から鬼意に向き直り先を待つ私に、鬼意は言葉の代わりに箱を取り出した。
「疑問があるなら実験すればいい。
これがその結果だよ」
「はじめまして、室長! ゆっくりしていってくださいね!」
箱の中から出てきたのはありす種だ。
お辞儀のつもりなのか、顔を軽く伏せながら、大きすぎない声で挨拶をし、その後は笑顔でこちらを見たまま、特に何かをする様子も見せない。
礼儀正しい言葉遣い、落ち着いた所作、金バッジの個体かと思い髪飾りを見るが、金どころかバッジ自体が見当たらない。
「それは先週拾ってきた野生の個体でね」
「なんだと!?」
鬼意の言葉にはさすがに驚いた。
野生にもごくまれに知能の高い個体がいるが、それは知能の話であって、躾がなっているかとは別の話である。
金バッジ級の躾ともなると、餡統の良い個体でも数週間から数ヶ月を要するのが普通であり、野生の個体では時間を掛けるだけ無駄であることのほうが圧倒的に多い。
それが、たかだか1週間とは、にわかには信じがたい。
だが、鬼意が言う以上は真実に違いない。
「こいつは餡に片栗粉を混ぜたヤツでね。
最初の1日は痙攣しているだけだったが、それが治まると知能が急上昇していたんだ」
「簡単に言うが、これはすごいぞ…」
「ゆゆっ♪ 都会派のありすには当然のことよ♪」
言うまでも無く、金バッジ取得は飼いゆっくりのとって最高の栄誉であり、最大の難関だ。
金に物を言わせて調教を施したところで素質の無い個体には到達できず、素質に恵まれた固体であっても厳しい調教を乗り切らなければ辿り着けない。
それが、その辺で拾ってきた個体に片栗粉を混ぜただけでたったの1週間とは、裏技にしても法外すぎる。
「でも、すごいだけで何の意味も無いよね」
「ゆべしっ!?」
言うなり鬼意は拳を振り下ろし、ありすを叩き潰した。
「…ど……どぼちて……」
「こんな方法が知れ渡ったら、金バッジの価値が大暴落だからな」
「餡統商法は出来なくなるし、加工所的には損をするだけだよ」
「ゆがーん……」
「そろそろ時間だから、もうひとつも見てくれ」
「時間?」
いぶかしむ私の前にもうひとつ箱が置かれる。
今度の箱は、先ほどの箱より倍くらい大きい。
中にいるのは四つ目のゆっくり…いや、2匹のゆっくりだ。
左側3分の1を切り落とされたまりさ種と、右側3分の1を切り落とされたれいむ種が、その断面でつなぎあわされている。
防音の箱だったのだろう、ふたを外すと一気に部屋が騒がしくなった。
「いやぢゃあああああああああ!!! じにだぐないいいいいいいいいいい!!!」
「だぢゅげで!! おでがいじばず!! でいぶをだぢゅげでくだざい!!!」
「でいぶはどうなっでもいいがらばりざをだずげでね!!!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおお!?」
軽く阿鼻叫喚だ。
「2匹の境目には仕切りが作ってあってね、今頃どんどん餡子に変換されていってるはずだよ。
それが無くなって2匹の餡子が混じるのが、もうすぐのはずなんだが」
淡々とした鬼意の声と、汁という汁を撒き散らして箱の壁にすがりつく2匹の温度差がすさまじい。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
ばでぃざをだずげろ゛ぐぞじじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
「い゛や゛っ!! い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
じぬ゛の゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「「ゆぎっ?!!」」
突然、2匹同時に声を上げて動きが止まる。
2匹ともひびが入るほどに歯を食いしばり、自身の体内から来る破滅の呼び声に身を震わせている。
そして、
「「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」
致命的な変化が始まった。
「ゆげろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
まりさの頭からは茎が束になり、すさまじい勢いで伸びていく。
ご自慢の帽子を幹に吹き飛ばされても、嘆く余裕はまりさには無い。
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………」
くすんだ金髪の全てが化けたかのように、次から次へと隙間無く茎が生えていくが、どれひとつとして実は生っていない。
そして、増える茎とは反対に、まりさはどんどんと縮んでいく。
「……ぉ…………ぉ………………」
やがて茎の勢いが収まった頃には、そこにはまりさを思わせる痕跡は何も残されていなかった。
「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!」
方やれいむは、必死に口を閉じていた。
れいむのあごの下、腹にあたる部分が恐ろしい勢いで膨らんでいく。
その一方で、頭頂にあたる部分は逆にしぼんでいく。
パースが狂ったような形になっていくれいむの皮は、目でわかるほどに薄くなっていく。
透けるほどに薄くなった皮の下には、小さな黒い玉が無数に見え、なお数を増やしている。
「………………!!!」
そうしているうちに限界を迎えた皮は静かに破れ、黒い玉が箱の中にこぼれ広がった。
これだけの変化に、おそらく1分もかかっていない。
今この目の前の光景だけを見せられたら、ここに2匹のゆっくりがいたなどとは、にわかには信じられないだろう。
「どうだった?」
「どうというか……何だったんだ、これは?」
意識の混濁でも起こして、狂うか互いの区別がつかなくなるかだと思っていた私は、あまりに予想外の展開に言葉が無い。
そして、私の問いに答えた鬼意の言葉はなお予想外だった。
「生殖だよ、ゆっくりの」
「これがか!?
ちょっとまて、ゆっくりの生殖は、精子餡を相手に突っ込んで起こるものじゃないのか?
それともこいつらは精子餡だらけの絶倫饅頭だったとでも言うのか?」
「俺は精子餡なんて言葉を使って説明した覚えは無いが?」
唖然とする私に鬼意が続ける。
「通常の生殖では、体内の餡を生殖子として用いるんだ。
生殖子なんて言葉を使っているが、これは餡餡いってたら区別がつきにくくなるからで、実質はただのゆっくりの中身だ」
つまり、精子餡という概念から間違っていたと?
本当に、言葉が無い。
餡子変換能力は死んだ餡には無く、逆に生きた餡にはある。
だから、生きたままのゆっくりの中身同士が混ざれば、そこでは生殖反応が始まる。
通常ならば体内に送り込まれる他の個体の餡など、量は高が知れている。
だが、つなぎ合わされた2匹のゆっくりは、ひとつの体で2匹の餡が混ざったのと同じ状態になったのだろう。
結果、体内の全ての餡を生殖に使い尽くし、ご覧の有様となった。
2つの繁殖型が同時に起きたのは、2匹の中枢餡が別々の方法を選択したというだけのことだろう。
常識外のナマモノについての、常識を叩き壊されて呆然とする私の口元に、鬼意が何か差し出した。
見れば、まりさから生えた茎の一本だ。
「……食べられるのか、これ?」
「食べられないはずが無いだろう?」
味の良し悪しはあれど、ゆっくりの体で食べられない部分は無い。
だから、異常な生殖を行った結果の、この通常に比べて随分と太い茎も、食べられるはずだ。
とはいえ先の光景を簡単にはぬぐえず、恐る恐ると茎の端をかじる。
「…うまい」
「だろ?」
驚いたことに、実にうまい。
赤ゆっくりの最初の餌となる茎は、野生で生きるための味の基準となるべく、苦味も酸味もある。
有り体に言えば、人間には大してうまいものではない。
が、今食べたこれには、中に餡がぎっしり詰まっている。
餡の甘さに、それに合う苦味と酸味が組み合わされて、まるで果物のような味わいになっているのだ。
歯ごたえさえも、饅頭よりは果物のそれに近い。
「こっちも食べてみろ」
そう言って、今度はれいむの腹からあふれ出した黒い小玉を、片手にはこぼれそうなほど渡してきた。
一見すると餡子玉にしか見えないが、これがまた違う味わいになっている。
まずその触り心地なのだが、ふわふわと柔らかい。
押し返すような弾力が無いため、触っていることを忘れそうにすらなる。
それを口に含むと、はらりと解けていく。
表面を包む極薄の皮は、唾液に触れるとさっと無くなってしまう。
中からは赤ゆっくりに比べてもさらにゆるい、半ば液状の餡があふれてくる。
この餡の甘さ加減が上品で、甘さを感じたと思った次の瞬間には消え失せている。
「おお……」
舌触りも味も霞のように消えていく、初めて味わう感覚に、知らずにため息が漏れる。
もうひとつ、もうひとつと口に運んでいるうちに、鬼意から渡されたものはあっという間に食べつくしてしまった。
「これは…売れる」
「そう思うだろう?」
これほど売れると確信できる商品にめぐり合えることは数少ない。
それが今、2つも目の前にある。
しかも2つとも同じ生産方法とは願ったり叶ったりだ。
なのに、鬼意の顔はいまひとつ浮かない。
「何だ、問題でもあるのか?」
「レポートとしてどうまとめたものかと」
「そんなものはいい!!」
鬼意の両肩をがっしと掴む。
「さっきの資料とビデオと合体ゆっくりをもって営業部に行くぞ!」
「お、おい?」
「所長と社長も呼んだほうがいいな、この商材なら勝てる!」
「まてまてちょっとまて。さっきの結合ゆっくりなら作らないと無いぞ?」
「だったら今すぐ作れ! 5分で支度しろ!」
「ちょ、ま、5分っておい!?」
「見てろよ商品開発室め、いつもいつもうちの研究をナメた目で見やがって!
今日という今日は思い知らせてやる!
ヒャア! プレゼンだー!!」
2ヵ月後、幻想郷では新商品のゆっくり菓子がブームを巻き起こしていた。
加工所直営の店舗には今日も長蛇の列が並び、運よく買えた者は袋を大事そうに抱え、笑顔で帰っていく。
甘味が幻想郷にもたらす幸せ、それは研究者達の日夜やまない情熱が支えているのである。
(完)
ちょっと長かったかもしれませんね?
* 俺設定多数含みます。
* 虐待成分薄め
* ネタかぶりはご容赦を。
「お邪魔するよ、室長」
「どうした、鬼意」
室長と呼ばれた私は、とある加工所で研究室長をしている。
日々、ゆっくりについて研究をする研究室の管理職で、私自身が研究をすることは無い。
その私の居室の扉を開けて入ってきたのは、研究員の鬼意だ。
立場は上司と部下になっているが、この加工所では同期だ。
たまたま私が管理職に、鬼意が研究職に向いていた結果に過ぎない。
「ちょっと、抱えてるレポートの内容で相談があってね」
「…今度は何をやったんだ?」
趣味の虐待が高じて研究の道に踏み込んだ鬼意は、時折変なテンションのスイッチが入ってしまい、与えられたテーマから研究内容が逸脱することがある。
もちろん、それを無かったことにして、正しい方向に軌道修正するくらいの常識を、鬼意は持ち合わせている。
が、まれに、闇に葬るのが惜しい成果が出ることがある。
そういう時、鬼意はこうやって私の部屋にやってくるのだ。
今度はどんな面白い結果が出たんだ?
これまでの経験から、どうしても期待が湧き上がってしまう。
厳しい口調とは裏腹に、私の目は笑っていた。
「ゆっくり繁殖していってね!」
「今抱えてるテーマは『ゆっくりの効率的な繁殖方法について』なんだがね」
「ああ、れいぱーをけしかけても、母体と同種のゆっくりを回収したいっていうあれか」
ゆっくりの繁殖には、主に植物型と動物型の2種類があるが、これらに共通した、大量生産にかかるある問題がある。
生まれてくる子ゆっくりの種類を選べないことだ。
例えば、れいむ種とまりさ種を番にして繁殖させれば、子は当然、れいむ種かまりさ種が生まれてくる。
だが、その比率は調整することが出来ない。
統計的に見ればおおむね半々なのだが、時に緊急生産として、特定の種だけを繁殖させたい場合がある。
現在は、増やしたい種に特殊な調教を施してれいぱー化させ、必要に応じて同種の母体にけしかけるという方法をとっている。
れいぱー化調教とは、長期間発情状態を維持させつつすっきりさせないというもので、完全なれいぱーになるにはおよそ2ヶ月はかかる。
そうしてれいぱーになったゆっくりは、その後1ヶ月ほどで衰弱して死んでしまう。
れいぱーになる前も、なった後も、自由にすっきり出来ることなく欲求だけが高ぶっていくストレスが原因だ。
緊急生産は念に2,3回程度しかない。そのために、手間のかかる人工れいぱーを常時50匹ほど用意している。
何故50匹も? 加工所で扱うれいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇんの5種すべてについて、10匹ずつ用意しているからだ。
何故5種も? 問題はそこだ。
れいぱーに襲われて出来た子は、れいぱーと同じ種になることが非常に多い。
10匹以上も生った子全てがれいぱーと同じ種ということも珍しくは無い。
今のやり方では、生産したい種のれいぱーが必要なのだ。
「それについては、仕組みだけは大体わかったよ」
手にした紙束を丸めて肩を叩きつつ、鬼意が言う。
資料を広げるそぶりを見せないところを見ると、ここはそれほど面白い部分ではないようだ。
「結局のところ、ゆっくり同士のやる気の問題さ」
「簡単にまとめすぎだ」
鬼意は肩をすくめて見せると、癖のついた資料の中から数枚を取り出した。
それは、ありす種との交尾直後に解体されたれいむ種の記録だった。
植物型と動物型と、交尾の終了からの経過時間を1秒おきに。割られたれいむ種の写真は100枚を超えていた。
どちらの繁殖型にも共通しているのは、時間の経過に沿って体内のカスタード部分が増加していることだ。
植物型の場合は、カスタード部分が母体の皮に沿って額に移動し、そこから押し出されて茎となり、子を生らせた。
動物型の場合は、母体の皮が体内に伸びてカスタード部分を包み、その後に一部を残して二重になるように剥離して、子宮に相当する部分と子を形成した。
子の中身は最初こし餡とカスタードが混じってマーブル模様になっていたが、徐々にどちらか一方だけに変わっていった。
なるほど、ゆっくりの繁殖について研究したものは過去にもいたが、ここまで実証的に、徹底して解体記録したものは無かった。
無かっただけに、何故今まで誰もやらなかったのかが不思議に思える。
ゆっくりの不思議能力のひとつに、食べたものを餡子にしてしまう、餡子変換能力というものがある。
曰く、ゆっくりの生殖とは、生殖相手の体内に自身と同じ種の餡を生成することらしい。
生殖行為で生殖子が体内に侵入することにより、例えばありす種の生殖子がれいむ種の餡に触れれば、こし餡をカスタードに変換してしまうという。
鬼意のレポートによれば、この変換された餡を母体が異物として認識することで、にんっしんのプロセスが始まるという。
ゆっくりの体内に異物を埋め込むと、餡子に変換されることが知られている。
他の個体の生殖子が侵入した場合、相互に変換しあうことで餡が交じり合う。
これを仮に混合餡と呼ぶ。
植物型の場合は母体の皮を材料にして額に茎を形成し、そこに混合餡を追いやる。
動物型の場合は母体の皮で混合餡を丸ごと体内で包んでしまう。
隔離された先で双方の餡の変換合戦が行われ、いずれかの餡が他方をすべて変換しつくすと、それが子の中枢餡となる。
勝利した餡と同種のゆっくりが生まれるという寸法だ。
どちらが勝るかは、親となる個体の状態次第。
健康状態のいい方の、子供を望む気持ちの強い方の餡が活発になる傾向にあり、その分優勢になるという。
「母体の健康状態を良くして、子供がほしいと思わせればいいということになるのか」
「そう。つまり、事実上無理ということだよ」
鬼意の言うとおりだ。いかにゆっくりといえども、自分がレイプされている最中に、子供がほしいと思えるものではないだろう。
対してれいぱーは生殖行為にすさまじいまでの情熱を注いでいる。
変換合戦でどちらが優位に立つかは自明と言うものだろう。
「かつて本物のほうの魔理沙が、幻覚剤を使ってゆっくりに無性生殖をさせたことがあるらしい。今はそっちの方向からやり直しているよ」
そう言って、鬼意は来客用のソファに、疲れたようにもたれかかる。
他人の真似をするということが気に入らないようだ。
「それで、相談はどうした?」
繁殖に関するレポートはなかなか興味深かった。
誰もがおよそそうだろうとは思っていても、誰も調べなかったことだからだ。
だが、鬼意はレポート内容の相談があると言った。
つまり、一通りの体裁を整えたこのレポートに書かれていない、別の面白いことがあるということだ。
「ああ。繁殖の研究をしていたら、前から気になっていたことを思い出してね」
そういって鬼意はベータのビデオテープを取り出し、横手にあるビデオデッキに入れて再生ボタンを押した。
これらは外界から流れ着いたものを、河童の技術で修復したものだ。
録画再生機械はそこそこの数があるものの、テープは消耗品の上、流れ着く数が少ない。
何度も重ね録りされたテープの画像は、正直汚い。
だが、それだけ貴重なものを使って記録された研究に、私の胸は高鳴った。
画面には植物型にんっしんをしたれいむ種が映されていた。
そのれいむ種は、顔にあたる部分がすべて潰されており、さながらのっぺらぼうとなっていた。
動けないように、足は焼かれているようだ。
画面内にほかにめぼしいものは無い。
薄汚れた壁は鬼意の研究室なのだろう。
中に誰も入れたがらないのだから、掃除くらい自分でしろと何度言えば。
というか、明らかにゆっくりを投げつけて潰した跡は何なんだ。
そうこうしているうちに、生っていた赤ゆっくりたちがプルプルと震えだす。
出産が始まったのだ。
徐々に赤ゆっくりの動きが大きくなり、やがて1匹が茎から落ちる。
ぺたり、と床の上に潰れた赤ゆっくりは、ゆっくりと体を起こすと母親に向き直ると、満面の笑顔で口を開いた。
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
生まれて初めての挨拶を母親にする。
だが、いくら待っても期待した返事が母親から返ってくることは無い。
『ゆ? おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
当然だろう、母親には口どころか顔さえない、返事が出来るはずも無い。
それでも我が子に何か伝えたいのだろう、動けない体を必死に揺すっている。
『ゆーん! おきゃーしゃん! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!』
『ゆえーん! ゆえーん!!』
次々と赤ゆっくりが生まれては挨拶をするが、誰も母親からの返事をもらえない。
終いには赤ゆっくりたちは母親に体を擦り付けて泣き始めた。
『やあみんな! ゆっくりしていってね!』
そこに鬼意の声が入る。
やけに生き生きしているが、そこはスルーすべきだろう。
『ゆ? おじしゃんだれ?』
『れいみゅたちはおかーしゃんとゆっくちしゅりゅんだよ!』
『じゃまだかりゃあっちいっちぇにぇ!』
画面に映らない鬼意はカメラを構えているのだろう。
鬼意の声に反応した赤ゆっくりたちは、こちらを向いている。
『そんなこと言わないでよみんな! おじさんと一緒に加工所でゆっくりしていってね!』
『『『ゆ゛!?』』』
鬼意の台詞に赤ゆっくりが硬直する。
『あれー? どうしたのかなみんな! ここは加工所だよ! 好きなだけゆっくりしていってね!』
『…ゆ…ゆわ……』
『ゆわーーーん! かこうじょいやああああああああ!!!』
『かこうじょはゆっくちれきにゃいいいいいいい!!!』
そこで画面は止まった。
見れば鬼意が一時停止をしたらしい。
「ま、野生の子供はこんな感じだね」
「あいつら、どこで加工所なんて覚えてくるんだろうな」
生まれたての赤ゆっくりでさえ、加工所と言えば泣き叫ぶ。
ゆっくり発生当初、ゆっくり達は換金目当ての人間達に乱獲され、加工所に売られていた。
その頃のトラウマが本能に根ざしてしまった、ということなのだろうか。
鬼意がビデオデッキを操作している。
画面に映る映像は目まぐるしく変化していき、ある場面で唐突に止まる。
映っているのは、先ほどと同じ、顔を潰され植物型にんっしんをしたれいむ種だ。
だが、最初のれいむ種とは別の個体らしい。
「これは、さっきの場面で生まれた子供の1匹でね」
言いながら、鬼意はビデオの一時停止を解く。
「加工所はゆっくり出来ると思うように散々甘やかせて育てたんだ。
近年の加工所ゆっくりで、これほどゆっくり出来たやつはいないんじゃないかと思うほどにね」
「随分な手間をかけるんだな」
「それに見合った結果は出たよ」
鬼意に促されて画面を見ると、ちょうど1匹が生まれたところだった。
『ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!! …ゆぅ、おきゃーしゃん?』
『やあ、ゆっくりしていってね!』
『ゆ! おじしゃんだりぇ?』
『おじさんは加工所の人だよ! 君も加工所でゆっくりしていってね!』
赤ゆっくりの反応は、また泣き叫ぶのだろうなと思いこんでいた私には、予想外だった。
『ゆわーい! かこうじょはゆっくちれきりゅよ!!』
なんと、加工所と聞いて喜び始めたのだ。
『ゆっくちー! かこうじょかこうじょ!!』
『とってもゆっくちしちぇりゅよ!!』
次々に生まれる赤ゆっくり達も喜ぶばかりだ。
親が生まれたときのように泣き叫ぶものは、1匹もいない。
「ちなみに、この赤ゆっくりに『加工所は恐ろしい場所だ』と教え込んで同じことをすると、生まれた子供は加工所と聞くと泣き喚いたよ」
「つまり、親の知識が子に継承されると?」
鬼意は私の回答に、満足したようにうなづいた。
「記憶の継承には諸説ある。
継承を肯定する論文もあるが、大半は継承が行われなかった実例をもって反駁されている。
反駁の根拠は、ゆっくりは誕生のある程度前には知性が発現し、外部刺激によって教育が可能だという事実だね」
画面を一時停止させ、鬼意は映っている母体を指差す。
「親による教育の可能性を排除するため、母体からは口を取り除いた。
生まれる前の赤ゆっくりに傷をつけないよう、母体の足は焼いてある。
加工所に対する認識に影響を与えないよう、目を取り除いた。
同じ理由で、これらの処置は母体が睡眠薬で眠っている間に実施している」
興が乗ってきたのか、鬼意は立ち上がり、身振りを交えて話し始めている。
「ゆっくりさせた次代には恐怖、恐怖させた時代にはゆっくりと。
世代毎に逆のことを繰り返しても、子は正確に親の知識を基準にして判断している。
間違いないんだ、子は親の記憶を継承する。
問題は!」
ビッ!と音が立つような勢いで、鬼意は右手の人差し指を私の鼻先に突きつけた。
人を指差すとは失礼なヤツだ、お返しにその指先で鼻の脂を擦り付けてやったら、鬼意はしかめ面をして手を引っ込めた。
「問題は、それがどのような仕組みで為されているかだ」
ビデオテープが入れ替えられ、画面にはありす種が映っている。
『どがいばっ!!』
再生されるや否や、あっという間にありす種は縦に真っ二つにされた。
びくびくと痙攣する2つの塊の一方の断面が上に向けられ、そこに褐色の液体がかけられていく。
すると、カスタードの断面が青く変色していく。
色の濃い部分は頭頂部に集中し、足に向かうにつれ色は薄まっている。
「今かけたのはヨードチンキでね、デンプンに触れると青く変色するんだ」
「ヨードチンキって、擦り傷に塗るアレのことか?」
「そうさ。きっかけは外界から流れてきた本でね、外界の寺子屋で使われている教本らしい」
「寺子屋? 外界の子供はこんな高度なことを勉強しているのか?」
「なんとも恐ろしいところだよ、外界は。読み書きそろばんだけでは生きていけないらしいよ。ともあれ」
鬼意から資料を何枚か手渡される。
そこには、今画面で見たばかりのものと同じ有様のありす種の写真がたくさん並んでいる。
それぞれの写真の横には数字が添えてあるが、どうやら数字が大きいほど青色が濃くなっているようだ。
「横の数字は、それぞれの個体の記憶力テストの成績だよ。見てのとおり、出来が良いほどデンプンの反応が強い」
「頭が良い個体ほどデンプンを多く含むと?」
「その発想は逆だよ」
鬼意はソファに深々と座り直し、顔の前で指先をいじりながら、勿体つけるようにこちらを見た。
「学習したからデンプンが出来た、とは考えられないかい?」
そこから続いた鬼意の説明はこうだ。
ゆっくりの皮の成分を調べる研究で廃棄された個体を、たまたま見つけた。
皮に大きな青い染みを作って泣きじゃくるありす種を二つに割ってみたのも、ただの思い付きだった。
そこで目にしたのは、変色した皮の内側で、同様にわずかに変色したカスタードだった。
外界から流れ着いた教本で、青い染みに心当たりのあった鬼意は、ありす種を廃棄した研究者に確認を取り、ますます興味を深めた。
当初は餡の成分を調べているはずだった。
一体どこからデンプンのような不純物が紛れ込んできたのかと。
このときは、基礎データの収集のつもりで数多く実験をこなすことに重点を置いていたため、その結果の分析までは手が回っていなかった。
そして今回、効率的な繁殖方法について研究することとなり、れいむ種とありす種を大量に掛け合わせた。
中にはありす種が母体となるケースもあったが、最終的にはれいむ種が母体となるケースが大半を占めた。
同条件の大量の比較が必要な今回の実験では、少数のケースは最初から除外される。
今回の研究では不要になった真っ二つのありす種だが、自身の研究には役立つかもしれないと、ヨードチンキをかけてみた。
何かの役に立てば、その程度の軽い気持ちだったが、データの量が増えてきたときに、あることに気付いた。
ひとつは、種が確定する前の赤ゆっくりには、デンプンの反応がまったくないこと。
ひとつは、種が確定した赤ゆっくりは、時間の経過とともにデンプン反応が強くなること。
ひとつは、親よりも強いデンプン反応を示す赤ゆっくりはいないこと。
これらの意味を調べるために過去のデータを分析した鬼意は、ある仮説を立てた。
ゆっくりはデンプンを、あるいはデンプンを含む多糖類を記憶に用いているのではないか、と。
「また随分と面白い話だな」
額面通りの意味と、突拍子のなさを揶揄する意図を込めて私は言った。
デンプンとは、つまりは片栗粉だ。
その程度のものが記憶を司るなどと、どうして考えられる?
「試薬の関係でデンプンでしか検証を行えなかったが、他の多糖類も記憶に関連している可能性はある。
そうなれば、組み合わせで複雑な記憶を形成することも不可能ではない。
それと、この仮説に組み合わせるべき仮説がもうひとつあるんだ。これを見てくれ」
早送りされた画面には、ぱちゅりー種が映っている。
『むぎゅっ! ぱちぇのけんじゃなおつむになにするの!!』
いきなり脳天に突き立てられた大きな注射…いや、あれは浣腸器だな…それに不平を言うぱちゅりーだが、そんなことはお構い無しに生クリームを吸い上げる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ぱちぇのなかみをすわないでえええええええええ!!!』
元が大きな個体である上に、吸われた生クリームは大さじ2~3倍程度だから、傷は大したものではない。
それからぱちゅりーは、
『むきゅっ! ぱちぇは! ひとあじ! ちがう! けんじゃ! だから! うんどう! だって! できる! のよ!』
研究室内に作られた坂路を上り下りする運動をしばらくさせられ、
『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! すわないでえええええええええ!!』
中身を吸われ、
『ゆべっ! ゆびっ!! や、やべでっ!! ゆぶぇっ!! ゆびゅううう!!!』
ハエ叩きで何度も弄られ、
『む゛ぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?』
中身を吸われた。
「左から順に、ゆっくりさせた後に採取したもの、運動後に採取したもの、虐待後に採取したものだよ」
そういって鬼意はテーブルに3つの器を並べた。
画面のぱちゅりー種から吸い出したのだろう生クリームには、ヨードチンキとはまた別な試薬がかけられている。
鬼意の言うとおりの順に、赤色が濃くなっていく。
左と真ん中の差はわずかだが、右の赤みは際立っている。
「赤みが強いほど、ブドウ糖が多く含まれるということさ」
「つまり?」
「つまり、単糖類もしくは二糖類が、神経伝達物質として働いているのではないか?ということだよ。
やはりこれも試薬の関係でブドウ糖でしか検証できていないがね」
鬼意はソファから立ち上がると、その場をうろうろと歩きながら話し始めた。
「ゆっくりは長く生きた個体ほど、餡がパサパサしてまずくなる。
これは、多くの記憶を蓄積した結果、餡に含まれる多糖類が過剰になり、味に影響したと考えられる。
ゆっくりは通常、記憶力に乏しい。
これは、神経伝達物質に用いるため、体内の多糖類が単糖類あるいは二糖類に分解されてしまうからだ。
ゆっくりは苦痛を味わうと、甘みを増す。
これは、生命の危機にあたり生存本能が刺激され、体内活動が活発になるに当たり、単糖類あるいは二糖類が大量に生産されるからだ。
ゆっくりに学習をさせるには虐待を加えることが最も効率が良い。
これは、苦痛により多糖類が分解されるに際し、生存に必要な記憶を優先して残すため、他を忘れてしまうからだ。」
仮説を元に推論を進める鬼意の話は、なるほど、筋が通っているように聞こえる。
だが、今日最初の話題の記憶とあいまって、私はふと思いついたことを口にした。
「それでは、母体の記憶が子に引き継がれる仕組みは?」
単に多糖類を摂取して記憶を引き継いでいるというのなら、何故共食いをした個体は記憶の混濁を起こさないのか?
自分で思い浮かべた疑問にもかかわらず、この時点で私は鬼意の回答に予想がついていた。
鬼意ならば、それを実験しないはずが無い。
「重要なのは消化というプロセスだよ」
ああ、やはり。
「ゆっくりにとって口というのは実に重要な器官だ。
手足の無い彼らにとって、移動以外に起こせる行動の大部分が口に依存する。
そして、食事という行為。
これはゆっくりの餡子変換能力を活性化する意味がある。
口を通して体内に入ったものは、ゆっくりが食物と認識した時点で餡子変換能力にさらされる。
すなわち、記憶を含んだ多糖類さえも餡子にされてしまうのだよ」
再び鬼意がビデオテープを入れ替える。
『やべでええええええ!! ゆるじでえええええええ!! いやあああああああああ!!!』
映ったのは虐待されるありす種である。
『あでぃずのどがいばなおかざりがあああああああ!!!』
カチューシャをへし折られ、
『ああああああああ!! がみざんぬがないでえええええええええ!!!』
髪を引きちぎられ、
『い゛ぢゃっ!! い゛ぢゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』
次々と竹串を突き刺されていく。
『お次はどこに刺そうかなっ♪ ここかなっ? こっちかなっ?』
『い゛っ! い゛だい゛っ! や゛べでっ!! や゛べえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』
『嫌がって見せるなんて、ありすはツンデレだね!』
『い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』
それにしてもこの鬼意、ノリノリである。
『ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ…』
もはや痙攣するタワシにしか見えなくなった頃、画面の中の鬼意はありすを二つに割り、中のカスタードを掻き出した。
一瞬画面が乱れたあと場面が切り替わり、画面の中央にはまりさ種が映っている。
期待に目を輝かせたまりさ種の前に鬼意の手が伸び、カスタードが山と盛られた皿が置かれた。
『おじさん! これ、ほんとうにたべていいのぜ?』
『ああ、遠慮しないで好きなだけ食べるといい』
『ゆゆっ! ありがたくいただくのぜ!
うっめ! これめっちゃうっめ!! がーつがーつ!!』
返事をするや否や、まりさは顔をカスタードに埋めて貪っている。
『なあ、まりさ。ちょっといいか?』
瞬く間にカスタードを切り崩し、半分ほどに減ったところで鬼意の声がまりさの食事をとめた。
『なんなんだぜおじさん! しょくじのじゃまなんだぜ!!』
『あまあまはおいしいか?』
『あまあまさん! すっごくうまいんだぜ!!』
『何か変なところは無いか?』
『ゆ? あまあまさんはあまあまさんなんだぜ! へんなわけないんだぜ!!』
『というように、経口摂取した場合はただのカスタードであり、被検体には何の影響も無い』
突然、鬼意の声がゆっくりから、視聴者であるこちらに向けられる。
『?? おじさんがわけのわからないことをいってるんだぜ! ばかなんだぜ!!』
『ご想像のとおり、このカスタードは、先刻虐待を施したありす種の内容物だ。
私の仮説どおりならば、これには苦痛を伝える単糖類もしくは二糖類と、苦痛の記憶を蓄えた多糖類が含まれている』
『おじさん! まりさはあまあまをたべたいんだぜ!! じゃまだからあっちにいくんだぜ!』
『それらが経口摂取の場合、本来の役割を為さず、ただの餡子に変換される。
では、こうしたらどうだろう?』
『ゆぎぎぎぎ… じじい! むししないではなしをきくんだじぇっ?!』
無造作に鬼意の左手がまりさに伸び、顔面を鷲づかみにして引き寄せる。
『ゆがああああ!! はなせじじい!! はなすんべぶぅっ!!』
そのまままりさを床に叩きつけると、顔が下になるように足で踏みつける。
『ふぁなふぇええええ!! ふふぉふぃふぃいいいいい!!!』
空いた手で取り出した大きな浣腸器を使い、皿の上のカスタードを残らず吸い上げると、
『ゆぴぃっ!?』
まりさ種の後頭部に突き刺し、
『ゆががががががががががが……』
そのままカスタードを全てまりさの中に注ぎ込む。
浣腸器が空になったところでまりさは解放される。
が、まりさはうつぶせのまま震えており、起き上がる気配を見せない。
『……ゆ………ゆ…ゆ……』
変化の少ない画面を見つめていると、突然、
『ゆぎゃあああああああああああああああ!!!』
絶叫を上げてまりさが飛び起きった。
『ゆぎゃっ!! やべっ! やべでっ!!! ばりざをざざな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』
あらん限りに血走った目を見開き、涙とよだれを撒き散らしながら、苦悶の表情ででたらめに跳ね回っている。
『いぢゃっ!! いぢゃいっ!! やぢゃっ!!! ざざないで!!! もうざざないでっ!! いぢゃああああああああ!!!』
念のために言うが、まりさについた外傷は、浣腸器を刺された穴以外にない。
それでもまりさは四方八方から突き飛ばされているかのように、身をよじって跳ね、転がり、のたうつのをやめない。
『今、まりさの中では虐待されたありすの記憶が再生されている。
いや、再生などと生易しいものではない。
まさに今、まりさの体は苦痛を体験しているはずだ』
『ゆひっ!! ゆひぃっ!! だぢゅげっ!! だぢゅぶっ!! ぶるぁあぁぁぁぁぁぁ!!!』
そのとき、まりさの体に変化が現れた。
鬼意はまったく手を出していない、なのにまりさの体に、ひとりでに無数の穴が開き始めた。
穴、穴、穴…まりさの体を隙間無く埋め尽くした穴は、それぞれは小さなものだ。
そう、ちょうど竹串を刺したら開く程度の。
『…ぼっ……ぼっど…ゆっぐり……じだがっ……』
全身から餡をにじませ、まりさが力尽きた。
ゆっくりは本来、中枢餡を破壊されるか大量に餡を失うかしないと死なない。
このまりさは再現されるありすの記憶の、死の瞬間までを体験して精神が死んだのだろう。
見れば、顔面を縦に貫くようにうっすらと亀裂が走っている。
ありすが最期に真っ二つにされたのを、ここまで再現したのだ。
鬼意の手がまりさの死体に伸び、亀裂に沿って二つに割る。
断面を見る限り、カスタードが残っているようには見えない。
バットにまりさの餡を掻き出し、細かく見ていくが、やはり出てくるのはつぶ餡だけだ。
『ご覧のように、体内に注入されたカスタードは全てつぶ餡に変換された。
ゆっくりは体内に侵入した異物を、餡に変換する能力を持っているからだ。
だが、他の個体の体験と記憶を移植できたことから、糖類が餡に変換されなかったことは明らかだ。
推論は簡単だ。
糖類は通常ゆっくりの体内に存在するものであるから、外部から混入されても異物と認識されなかったのだ』
「ここで疑問がいくつかある」
画面の言葉を引き継ぐように、鬼意が同じ声を上げる。
画面から鬼意に向き直り先を待つ私に、鬼意は言葉の代わりに箱を取り出した。
「疑問があるなら実験すればいい。
これがその結果だよ」
「はじめまして、室長! ゆっくりしていってくださいね!」
箱の中から出てきたのはありす種だ。
お辞儀のつもりなのか、顔を軽く伏せながら、大きすぎない声で挨拶をし、その後は笑顔でこちらを見たまま、特に何かをする様子も見せない。
礼儀正しい言葉遣い、落ち着いた所作、金バッジの個体かと思い髪飾りを見るが、金どころかバッジ自体が見当たらない。
「それは先週拾ってきた野生の個体でね」
「なんだと!?」
鬼意の言葉にはさすがに驚いた。
野生にもごくまれに知能の高い個体がいるが、それは知能の話であって、躾がなっているかとは別の話である。
金バッジ級の躾ともなると、餡統の良い個体でも数週間から数ヶ月を要するのが普通であり、野生の個体では時間を掛けるだけ無駄であることのほうが圧倒的に多い。
それが、たかだか1週間とは、にわかには信じがたい。
だが、鬼意が言う以上は真実に違いない。
「こいつは餡に片栗粉を混ぜたヤツでね。
最初の1日は痙攣しているだけだったが、それが治まると知能が急上昇していたんだ」
「簡単に言うが、これはすごいぞ…」
「ゆゆっ♪ 都会派のありすには当然のことよ♪」
言うまでも無く、金バッジ取得は飼いゆっくりのとって最高の栄誉であり、最大の難関だ。
金に物を言わせて調教を施したところで素質の無い個体には到達できず、素質に恵まれた固体であっても厳しい調教を乗り切らなければ辿り着けない。
それが、その辺で拾ってきた個体に片栗粉を混ぜただけでたったの1週間とは、裏技にしても法外すぎる。
「でも、すごいだけで何の意味も無いよね」
「ゆべしっ!?」
言うなり鬼意は拳を振り下ろし、ありすを叩き潰した。
「…ど……どぼちて……」
「こんな方法が知れ渡ったら、金バッジの価値が大暴落だからな」
「餡統商法は出来なくなるし、加工所的には損をするだけだよ」
「ゆがーん……」
「そろそろ時間だから、もうひとつも見てくれ」
「時間?」
いぶかしむ私の前にもうひとつ箱が置かれる。
今度の箱は、先ほどの箱より倍くらい大きい。
中にいるのは四つ目のゆっくり…いや、2匹のゆっくりだ。
左側3分の1を切り落とされたまりさ種と、右側3分の1を切り落とされたれいむ種が、その断面でつなぎあわされている。
防音の箱だったのだろう、ふたを外すと一気に部屋が騒がしくなった。
「いやぢゃあああああああああ!!! じにだぐないいいいいいいいいいい!!!」
「だぢゅげで!! おでがいじばず!! でいぶをだぢゅげでくだざい!!!」
「でいぶはどうなっでもいいがらばりざをだずげでね!!!」
「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおお!?」
軽く阿鼻叫喚だ。
「2匹の境目には仕切りが作ってあってね、今頃どんどん餡子に変換されていってるはずだよ。
それが無くなって2匹の餡子が混じるのが、もうすぐのはずなんだが」
淡々とした鬼意の声と、汁という汁を撒き散らして箱の壁にすがりつく2匹の温度差がすさまじい。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
ばでぃざをだずげろ゛ぐぞじじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
「い゛や゛っ!! い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
じぬ゛の゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「「ゆぎっ?!!」」
突然、2匹同時に声を上げて動きが止まる。
2匹ともひびが入るほどに歯を食いしばり、自身の体内から来る破滅の呼び声に身を震わせている。
そして、
「「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」
致命的な変化が始まった。
「ゆげろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
まりさの頭からは茎が束になり、すさまじい勢いで伸びていく。
ご自慢の帽子を幹に吹き飛ばされても、嘆く余裕はまりさには無い。
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………」
くすんだ金髪の全てが化けたかのように、次から次へと隙間無く茎が生えていくが、どれひとつとして実は生っていない。
そして、増える茎とは反対に、まりさはどんどんと縮んでいく。
「……ぉ…………ぉ………………」
やがて茎の勢いが収まった頃には、そこにはまりさを思わせる痕跡は何も残されていなかった。
「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!」
方やれいむは、必死に口を閉じていた。
れいむのあごの下、腹にあたる部分が恐ろしい勢いで膨らんでいく。
その一方で、頭頂にあたる部分は逆にしぼんでいく。
パースが狂ったような形になっていくれいむの皮は、目でわかるほどに薄くなっていく。
透けるほどに薄くなった皮の下には、小さな黒い玉が無数に見え、なお数を増やしている。
「………………!!!」
そうしているうちに限界を迎えた皮は静かに破れ、黒い玉が箱の中にこぼれ広がった。
これだけの変化に、おそらく1分もかかっていない。
今この目の前の光景だけを見せられたら、ここに2匹のゆっくりがいたなどとは、にわかには信じられないだろう。
「どうだった?」
「どうというか……何だったんだ、これは?」
意識の混濁でも起こして、狂うか互いの区別がつかなくなるかだと思っていた私は、あまりに予想外の展開に言葉が無い。
そして、私の問いに答えた鬼意の言葉はなお予想外だった。
「生殖だよ、ゆっくりの」
「これがか!?
ちょっとまて、ゆっくりの生殖は、精子餡を相手に突っ込んで起こるものじゃないのか?
それともこいつらは精子餡だらけの絶倫饅頭だったとでも言うのか?」
「俺は精子餡なんて言葉を使って説明した覚えは無いが?」
唖然とする私に鬼意が続ける。
「通常の生殖では、体内の餡を生殖子として用いるんだ。
生殖子なんて言葉を使っているが、これは餡餡いってたら区別がつきにくくなるからで、実質はただのゆっくりの中身だ」
つまり、精子餡という概念から間違っていたと?
本当に、言葉が無い。
餡子変換能力は死んだ餡には無く、逆に生きた餡にはある。
だから、生きたままのゆっくりの中身同士が混ざれば、そこでは生殖反応が始まる。
通常ならば体内に送り込まれる他の個体の餡など、量は高が知れている。
だが、つなぎ合わされた2匹のゆっくりは、ひとつの体で2匹の餡が混ざったのと同じ状態になったのだろう。
結果、体内の全ての餡を生殖に使い尽くし、ご覧の有様となった。
2つの繁殖型が同時に起きたのは、2匹の中枢餡が別々の方法を選択したというだけのことだろう。
常識外のナマモノについての、常識を叩き壊されて呆然とする私の口元に、鬼意が何か差し出した。
見れば、まりさから生えた茎の一本だ。
「……食べられるのか、これ?」
「食べられないはずが無いだろう?」
味の良し悪しはあれど、ゆっくりの体で食べられない部分は無い。
だから、異常な生殖を行った結果の、この通常に比べて随分と太い茎も、食べられるはずだ。
とはいえ先の光景を簡単にはぬぐえず、恐る恐ると茎の端をかじる。
「…うまい」
「だろ?」
驚いたことに、実にうまい。
赤ゆっくりの最初の餌となる茎は、野生で生きるための味の基準となるべく、苦味も酸味もある。
有り体に言えば、人間には大してうまいものではない。
が、今食べたこれには、中に餡がぎっしり詰まっている。
餡の甘さに、それに合う苦味と酸味が組み合わされて、まるで果物のような味わいになっているのだ。
歯ごたえさえも、饅頭よりは果物のそれに近い。
「こっちも食べてみろ」
そう言って、今度はれいむの腹からあふれ出した黒い小玉を、片手にはこぼれそうなほど渡してきた。
一見すると餡子玉にしか見えないが、これがまた違う味わいになっている。
まずその触り心地なのだが、ふわふわと柔らかい。
押し返すような弾力が無いため、触っていることを忘れそうにすらなる。
それを口に含むと、はらりと解けていく。
表面を包む極薄の皮は、唾液に触れるとさっと無くなってしまう。
中からは赤ゆっくりに比べてもさらにゆるい、半ば液状の餡があふれてくる。
この餡の甘さ加減が上品で、甘さを感じたと思った次の瞬間には消え失せている。
「おお……」
舌触りも味も霞のように消えていく、初めて味わう感覚に、知らずにため息が漏れる。
もうひとつ、もうひとつと口に運んでいるうちに、鬼意から渡されたものはあっという間に食べつくしてしまった。
「これは…売れる」
「そう思うだろう?」
これほど売れると確信できる商品にめぐり合えることは数少ない。
それが今、2つも目の前にある。
しかも2つとも同じ生産方法とは願ったり叶ったりだ。
なのに、鬼意の顔はいまひとつ浮かない。
「何だ、問題でもあるのか?」
「レポートとしてどうまとめたものかと」
「そんなものはいい!!」
鬼意の両肩をがっしと掴む。
「さっきの資料とビデオと合体ゆっくりをもって営業部に行くぞ!」
「お、おい?」
「所長と社長も呼んだほうがいいな、この商材なら勝てる!」
「まてまてちょっとまて。さっきの結合ゆっくりなら作らないと無いぞ?」
「だったら今すぐ作れ! 5分で支度しろ!」
「ちょ、ま、5分っておい!?」
「見てろよ商品開発室め、いつもいつもうちの研究をナメた目で見やがって!
今日という今日は思い知らせてやる!
ヒャア! プレゼンだー!!」
2ヵ月後、幻想郷では新商品のゆっくり菓子がブームを巻き起こしていた。
加工所直営の店舗には今日も長蛇の列が並び、運よく買えた者は袋を大事そうに抱え、笑顔で帰っていく。
甘味が幻想郷にもたらす幸せ、それは研究者達の日夜やまない情熱が支えているのである。
(完)
ちょっと長かったかもしれませんね?