ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1632 親の脛かじり
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『親の脛かじり』
「ゆゆ~ん」
「ゆ~ん」
ゆっくりが公園にいた。
片方は成体のゆっくりれいむ、もう片方は赤ゆっくりから少しばかり成長したばかりの子ゆっくりれいむだ。
この二匹は親子のようである。
もう少し離れた所には、親れいむの視界内に入る程度に数匹の子ゆっくりが元気よく遊んでいた。
番の親まりさは今日も今日とて狩りへ出かけている。
「おひさまさんがぽかぽかできょうもゆっくりしてるよ~」
「ゆっきゅり~」
日差しの暖かくなってきた季節、ゆっくりでなくても眠くなるような陽気だ。
そんなとても眠る好条件の日に寝ないほどゆっくりは急かしく生きているわけではなかった。
「ゆぅ、おかあさんはねむいねむいだから、おちびちゃんたちあまりとおくへいっちゃだめだよ~」
親れいむは殆ど無い意識を振り絞り子供たちに注意だけした。
「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」」」
子供達は返事だけ元気よくして、数秒後にはそんな事忘れて思い思いに遊び始めた。
親れいむのすぐそばにいた子れいむも親れいむと同じように眠りに入るべく目を瞑った。
「ゆゆ」
と、眠る直前に尿意を覚え目が覚めてしまった。
「きゃわいいれいみゅがしーしーしゅるよ! しゅっきりー!」
そして、親れいむがすぐそばに寝ているのにもかかわらず、その場で用を足した。
砂糖水のしーしーが放物線を描き、地面を汚す。
数秒もかからず、放出し終えた子れいむはブルリと震え排せつした喜びに浸った。
「ゆゆ! にゃんだかくしゃいよ!」
と、喜びも束の間、自分のしーしーの匂いの臭さを感じたようだ。
「くしゃいとこりょはゆっくちできにゃいよ!」
そういうと、子れいむはその場から離れた。
人間の足で数十歩。
そんな距離で、主婦が会話をしていた。
「うちの息子が最近、部屋から出なくなってしまって」
「あら、体調でも崩されたんですか?」
心配された主婦が、弱々しく首を振る。
「いえ、その…… 体調は良いはずなんですけど、部屋に、その…… 引きこもっているという感じで……」
「あ、あら……」
心配していた主婦は、地雷を踏んでしまったかと、額に汗を浮かべる。
「学校で何があったのかって聞いても、教えてくれませんし、もうどうすればいいのかと……」
「そうねぇ、でもそのまま、お子さんを放っておいたら、今テレビでよくやってるニートになってしまうんじゃないかしら」
「……ニート」
「だったら、今すぐにでも悩みを打ち明けてもらって、学校へ復帰させるべきよ! せめて保健室通いとか、とにかく学校へ行かせるべきだわ
さあ、今から説得へ行った方がいいわ、そうした方がいいわ、そうしましょう、さあ、行って、話して、打ち解けて、頑張りって!」
心配していた主婦はこれ以上厄介事に巻き込まれてなるものかと、言った風に早口でまくし立て、心配された主婦を家へ帰した。
「……そんな状態で、公園で話に来ないでよ……」
心配された主婦が公園から出て行ったのを見送ると。
心配していて主婦は、とても疲れた顔でベンチに腰を下ろした。
そして、声が聞こえた。
「ゆっくちしていってにぇ!」
「あら、ゆっくりじゃない」
先ほどの子れいむだ。
「おねえさん、にゃんだかゆっくちしてにゃいよ?」
「お姉さん? あらー」
そう言われ、心配していた主婦は嬉しそうにほおを緩めた。
その先ほどまでの暗い顔から嬉しそう顔になったのをみて、子れいむは無邪気に喜んだ。
「ゆゆ? ゆっくちしてるにぇ!」
「ふふ、どういたしまして」
「おねえしゃん、にーとしゃんってにゃんにゃの?」
そして、今しがた聞こえてきた聞き覚えのない言葉に子れいむはいきなり質問してきた。
「二、ニートねぇ、難しい言葉知ってるわねぇ、ゆっくりちゃん……」
「ゆゆ! れいみゅきゃしきょいきゃしきょい」
言葉を知っているだけで、賢くなった気分になった子れいむ。
「ニートはねぇ、そうねぇ、私の勝手な印象なんだけれど、大人になってもお父さんやお母さんにお世話をずっとしてもらってることかしら?」
実際の意味は相当違うのだが。
詳しく調べてみようとしなければ、ニート=親の脛かじりや無職、といった印象はぬぐえないのが現状である。
「ゆっくちしてにゃいの?」
「そうねぇ、本人はゆっくりしてるんじゃないかしら、ずっと自分の部屋に引きこもって、親に食べモノをずっと持ってきてもらう生活なら」
そんな事は無いだろう、引きこもってる人だって、何かに悩み、何かに挫け、外へ出る切っ掛けを失ったまま、現状に苦しんでるものもいるだろう。
本当に親にずっと世話をしてもらってゆっくりできるのは、常人ではできない。
何も知らない小さい子供ならいざ知らずだ。
しかし、この子れいむにとってはとても魅力的なモノに聞こえた。
家の中にいれば、黙っていても親が餌を運んできてくれる。
子れいむは運動が苦手だ、だから他の子ゆっくりと遊ばず、親の近くで昼寝をしていたのだ。
外に出るのも煩わしい、家でみんなと喋ったり、もみあげをピコピコする程度で満足なのだ。
それが、大人になってもずっとしていられる。
子れいむの中で夢が生まれた。
「さあ、あんまり人に関わっていると、ゆっくりちゃん達にはあまり良いことじゃないって聞くわ、じゃあねゆっくりちゃん」
「ゆっくちしていっちぇね!」
思いっきり悪影響を残しつつ、心配していた主婦はその場を後にした。
一匹だけ残された、子れいむは誰もいなくなったその場で、決意を口にした。
「れいみゅは、りっぱなにーとしゃんになってみしぇるよ!!」
そして、親れいむの元へ戻っていった。
それからというモノ、子れいむは一歩も外へ出なくなった。
雨の日も風の日も晴れの日も。
家に引きこもり続けた。
最初は体調が悪くなってしまったのかと心配していた親ゆっくり達も、元気よくむ~しゃむ~しゃと食べ続ける子供が不思議でならなかったがゆっくりしているからいいかと放置し。
まったく外で遊ばなくなった姉妹に、不安そうしていた他の姉や妹の子れいむや子まりさ達も次第にそれが普通なのだと受け入れ始めた。
月日は巡り。
子ゆっくり達が成体になり、一人立ちを始めた頃。
「ゆゆ~ん、れいむはゆっくりしてるよ!」
そこには、元気にしているあられの無い姿となった子れいむが。
一歩も外に出なくなり運動をしなくなったせいで、下半身がでっぷりと太っていた。
体に傷一つなく、飾りにも汚れもない、一応美ゆっくりのカテゴリーに入りそうな物になってしまった。
「ゆゆぅ、おちびちゃん、もうみんなひとりだちをしていったんだよ」
「そうなんだぜ、おちびちゃん」
と、親ゆっくり達が、ダンボールハウスの外から説得かかる。
でっぷりと太った、でぶれいむという意味でのでいぶとなったれいむは、もはやダンボール一箱を殆ど占領するほど太っていた。
でいぶのように、下半身だけ太った感じではなく、下半身を中心に全体的に弛んだ様な印象を与える体型だ。
親ゆっくり達はは仕方がなく新たなダンボールを探し出し、生活している。
親の優秀さがうかがえる。
「なにいってるの! れいむはにーとさんなんだよ! にーとさんはおやがおせわしないとだめなんだよ!!」
しかし、間違った知識を得た子供の世話は失敗してしまったようだ。
れいむは威張るように、自分のことを正当であると主張する。
子ゆっくりの時から家に出なくなり繋がりは家族のみとなり、外部の刺激を物理的にも精神的にも全く受けなくなった今、れいむの精神はゆっくりから見ても驚くほど成長していなかった。
つまり自分でゆっくりをすることをする、あるいは他をゆっくりさせる、という意識はからっきしで、自分はまだゆっくりさせられる側だと思っているのだ。
「……ゆぅ」
「……おちびちゃん、あさのぶんのごはんさんをおいておくぜ」
「わかったよ! じゃあ、れいむはすーやすーやするからね!」
一口で朝の分の餌を食べきると、れいむは寝始めた。
少しご飯が足りないが、れいむは無茶は言わない、だって親にお世話になっているのだから。
親ゆっくり達も流石に危機感を覚えていた。
しかし、無茶は言えなかった、自分の子供がとてもゆっくりしているのだ。
自分の子供のゆっくりを壊すこともできず、もしかすると自分達よりゆっくりしているゆっくりをどうにかできる気がしなかったのだ。
実際、外に一歩も出なくなって痛みの耐性が全くないので、軽く体当たりするだけで泣き喚くだろう。
そんなこんなで、あの時の子れいむは夢を叶え、立派にニートになっていた。
まあ、思いっきり意味を履きちがえてはいるが。
しかし、そんなゆっくりした生活は終止符を打たれた。
ユビィ!
マリザァァァァ
マリザノオベベザンガァァァァァッァ
レイブノオリボンザンンンンン
マリザノオボウジザンガァァァァァァ
アアアアアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……ア゛、ア、……ア゛アァ゛ァァ……
そんな、ゆっくりできない声とともにれいむは目覚めた。
「ゆゆぅ、なんだかゆっくりできないよ」
そして、唐突に人間がれいむの目の前に現れた。
子ゆっくりの時に出会ったあの心配していた主婦から人間への印象が止まっているれいむは特に警戒しなかった。
「ゆゆ! ゆっくりしていってね!」
「なんだ、このデブ」
「れいぶはでぶじゃないぃぃぃぃ! ちょっとふくよかさんなだけだよぉぉぉぉぉぉ!!」
流石に幾らか太っていた自覚はあったのか、少しだけ謙虚に反論した。
「野良でここまでデブのは初めて見るな」
「ふくよかさんなんだよぉぉぉぉぉ!!」
「うるさいな」
そう言って人間が、れいむが入ったダンボールに蹴りを入れた。
「ぐぎゃぁぁぁっぁぁ、いだいぃぃぃぃぃぃ!!」
もちろん、痛みの耐性がないれいむにとってはたったそれだけで、体中の餡子が震えるほどの痛みだ。
「ははっ、こんな事でこんなに痛がるとか」
人間は笑みを濃くする。
存分に痛がり、口から目から汚らしく砂糖水を垂れ流すれいむ、そこでようやく人間が手に何かを持っていることに気づく。
「ぞれは、おどうざんどおがあざんのぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」
その手に持っていたのは、れいむの親のリボンと帽子だった。
「ん、さっきのはお前の親だったのか、なんかに使えると思ったから持ってきたけど」
「おどうざんどおがあざんをどうじだぁぁぁぁぁぁ!!」
「え、潰したよ、目を切り取って、飾りとってさ」
「うばぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!! れいぶのにーどぜいがづざんがぁぁぁあぁっぁぁ!!!」
「ニート?」
人間は訝しげにれいむを見る。
「れいぶはにーとさんだったんよ! おどうざんとおがあざんがいないと、おせわしてくれないでしょぉぉぉぉぉ!!」
「お前はニートを何だと思ってるんだ」
「ゆ゛! とってもゆっくりしたせいかつのことでしょ! れいぶいままでとってもゆっくりしてたよ!!」
そう、自信満々にれいむは眉をキリッとさせ答えた。
「でもなぁ、人間の間だとニートってかなり偏見持たれてるんだけど、悪い意味で」
「どぼゆうごどぉぉぉぉぉ!!」
「だってなぁ、親に迷惑かけるだろ」
「ゆ゛!」
「お前は餌も住む場所も排せつ物の処理も、全部親任せにしてたってことだろ、それ、親はゆっくりできないじゃん」
「ゆ゛ゆ゛!!」
れいむは、今までゆっくりしていた。
しかし、親達はどうだったろうか?
れいむは一度も狩りをしたことがない。
一度も排せつ物の処理なんてしたことがない。
一度も住む場所を探したことなんてない。
すべてどんな苦労か分からなかった。
しかし、餡子脳の片隅に置かれた小さい頃に外に出た記憶を探す。
れいむは、運動が苦手だ、だから外に出なかった、狩りに行くのはたくさん外に出なければならない。
うんうんやしーしーは臭い、それを処理するにはそれを入れた葉っぱやボトルキャップを臭い事を我慢して遠くに捨てなくてはならない。
ダンボールなどの住む場所も、れいむは他のゆっくりが所有している物しか見たことがない、普通に置かれているモノなんて見たことがないのだ。
れいむは親ゆっくり達がどれほど苦労していたか、徐々に理解し始めた。
「ん、その顔は心当たりがあるな。
オレも一時期、そうなりかけたが、父さん母さんの説得されててさぁ、そんなときにゆっくりが家に入ってきてさ、あまりにムカつくから潰してさ」
人間は、一拍置き、れいむににやりと笑いつける。
「それがものすごく楽しかったんだよね」
れいむはその笑みがとても自分にとってゆっくりできないものだと感じ取り震えた。
「家だと、ゆっくりなんて滅多に入ってこないし、こりゃ家でるしかないなって、外に出るようになって、まあ、ついでに学校も通うようになってさ
虐めが原因で登校拒否やってたんだけど、そいつらの眼の前でゆっくりを目茶苦茶にしてやったら、誰も寄り付かなくなったよ
まあ、それが縁でいろいろと友達も増えたんだけどさ……」
そこでふと我に返ったように黙る人間。
「っと、ゆっくり相手に何話してんだろ、まあいいや、お前さんのゆっくりできないことを思いついた」
れいむはカチカチと歯を鳴らす。
この人間は絶対に自分をゆっくりさせなくするつもりだ、潰されるのだろうか、親と同様に目を取られてしまうのだろうか。
自分の中のゆっくりできなくなる結末が浮かんでは沈み浮かんでは沈む。
れいむの貧相な発想では、3つほど浮かんだモノがずっと沈んだり浮かんだりするだけだが。
「お前さんは、こうする」
そう言って、人間はれいむのリボンを取った。
「れいぶのおりぼんざんんんん、ゆっぐりできないぃぃぃぃぃぃ!!」
「最後が見れないのは残念だが、大体想像できる、せいぜい足掻いてくれ」
そう言って人間は、何処かへ行ってしまった。
追いかけようにも、体は動かない、子供の頃の様に跳ねようとしても体を動かしても、体が少しばかり波打つだけ、しかも痛い。
ナメクジよりも遅い速度で這って動き出すが、それでも底部が削れるように痛い。
子供の頃飛んだり這ったりすれば、底部は痛くならない程度に固くなるが、まったく動かなくなったれいむの底部は薄く動けば痛みを発するほどだった。
進んでは休み進んでは休みを繰り返し、少し開けた場所に出た頃、そこには誰もいなかった。
そこから、れいむの苦痛に満ちた時間が始まった。
何が起こるか分からなかったため、自分の家から離れようとは思わなかった。
腹が減り、餌を探すが、虫を見つけても逃げられ、柔らかそうな草を見つけても、一つ食べ、もう一つ食べに行くために動いたら二倍腹が減った。
ダンボールハウスは、人間に蹴られたせいか、ぺしゃんこになっていた。
れいむは苦労して、立て直したが離れるとすぐに倒れた、ダンボールハウスが倒れる理由に気付かず、結局倒れたダンボールハウスの上を使うことにした。
食べたら排泄する、いつものように、このときだけはゆっくりできると思いながら、うんうんをする。
しかし、それは何時になっても片付けられることはなかった、れいむは涙を流しながらそれを処理した。
ああ、自分はこんなにゆっくりできないことを親に押し付けていたんだ。
れいむは涙ながらにそのことを感じた。
そして、れいむは緩やかに動かなくなっていく。
餌が足らない。
雨風を凌ぐ住居が無い。
そして何より、ゆっくりできない。
今までのゆっくりしてきた生活に、後悔を覚えながら。
れいむはゆっくりゆっくり、ゆっくりと動かなくなっていった。
今まで書いたモノ
anko964 サンプル
anko978 暗く湿った穴の中
anko1308 すろーりぃな作戦
anko1394 投げた!
anko1425 声
anko1477 さよなら生物
anko1503 山彦恋慕
8作目です。
さて、疑問に思った方はいるでしょう、ゆっくりに脛なんてない、と。
じゃあ、底部? 腹? 髪?
まあ、どうでもいいことですね。
しかしもっとこう凄惨というか、スカッとなるようなのを書きたいものです。
そんな話が思い浮かぶのが羨ましい。
では、最後まで読んでいただけたら幸いです。
「ゆゆ~ん」
「ゆ~ん」
ゆっくりが公園にいた。
片方は成体のゆっくりれいむ、もう片方は赤ゆっくりから少しばかり成長したばかりの子ゆっくりれいむだ。
この二匹は親子のようである。
もう少し離れた所には、親れいむの視界内に入る程度に数匹の子ゆっくりが元気よく遊んでいた。
番の親まりさは今日も今日とて狩りへ出かけている。
「おひさまさんがぽかぽかできょうもゆっくりしてるよ~」
「ゆっきゅり~」
日差しの暖かくなってきた季節、ゆっくりでなくても眠くなるような陽気だ。
そんなとても眠る好条件の日に寝ないほどゆっくりは急かしく生きているわけではなかった。
「ゆぅ、おかあさんはねむいねむいだから、おちびちゃんたちあまりとおくへいっちゃだめだよ~」
親れいむは殆ど無い意識を振り絞り子供たちに注意だけした。
「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」」」
子供達は返事だけ元気よくして、数秒後にはそんな事忘れて思い思いに遊び始めた。
親れいむのすぐそばにいた子れいむも親れいむと同じように眠りに入るべく目を瞑った。
「ゆゆ」
と、眠る直前に尿意を覚え目が覚めてしまった。
「きゃわいいれいみゅがしーしーしゅるよ! しゅっきりー!」
そして、親れいむがすぐそばに寝ているのにもかかわらず、その場で用を足した。
砂糖水のしーしーが放物線を描き、地面を汚す。
数秒もかからず、放出し終えた子れいむはブルリと震え排せつした喜びに浸った。
「ゆゆ! にゃんだかくしゃいよ!」
と、喜びも束の間、自分のしーしーの匂いの臭さを感じたようだ。
「くしゃいとこりょはゆっくちできにゃいよ!」
そういうと、子れいむはその場から離れた。
人間の足で数十歩。
そんな距離で、主婦が会話をしていた。
「うちの息子が最近、部屋から出なくなってしまって」
「あら、体調でも崩されたんですか?」
心配された主婦が、弱々しく首を振る。
「いえ、その…… 体調は良いはずなんですけど、部屋に、その…… 引きこもっているという感じで……」
「あ、あら……」
心配していた主婦は、地雷を踏んでしまったかと、額に汗を浮かべる。
「学校で何があったのかって聞いても、教えてくれませんし、もうどうすればいいのかと……」
「そうねぇ、でもそのまま、お子さんを放っておいたら、今テレビでよくやってるニートになってしまうんじゃないかしら」
「……ニート」
「だったら、今すぐにでも悩みを打ち明けてもらって、学校へ復帰させるべきよ! せめて保健室通いとか、とにかく学校へ行かせるべきだわ
さあ、今から説得へ行った方がいいわ、そうした方がいいわ、そうしましょう、さあ、行って、話して、打ち解けて、頑張りって!」
心配していた主婦はこれ以上厄介事に巻き込まれてなるものかと、言った風に早口でまくし立て、心配された主婦を家へ帰した。
「……そんな状態で、公園で話に来ないでよ……」
心配された主婦が公園から出て行ったのを見送ると。
心配していて主婦は、とても疲れた顔でベンチに腰を下ろした。
そして、声が聞こえた。
「ゆっくちしていってにぇ!」
「あら、ゆっくりじゃない」
先ほどの子れいむだ。
「おねえさん、にゃんだかゆっくちしてにゃいよ?」
「お姉さん? あらー」
そう言われ、心配していた主婦は嬉しそうにほおを緩めた。
その先ほどまでの暗い顔から嬉しそう顔になったのをみて、子れいむは無邪気に喜んだ。
「ゆゆ? ゆっくちしてるにぇ!」
「ふふ、どういたしまして」
「おねえしゃん、にーとしゃんってにゃんにゃの?」
そして、今しがた聞こえてきた聞き覚えのない言葉に子れいむはいきなり質問してきた。
「二、ニートねぇ、難しい言葉知ってるわねぇ、ゆっくりちゃん……」
「ゆゆ! れいみゅきゃしきょいきゃしきょい」
言葉を知っているだけで、賢くなった気分になった子れいむ。
「ニートはねぇ、そうねぇ、私の勝手な印象なんだけれど、大人になってもお父さんやお母さんにお世話をずっとしてもらってることかしら?」
実際の意味は相当違うのだが。
詳しく調べてみようとしなければ、ニート=親の脛かじりや無職、といった印象はぬぐえないのが現状である。
「ゆっくちしてにゃいの?」
「そうねぇ、本人はゆっくりしてるんじゃないかしら、ずっと自分の部屋に引きこもって、親に食べモノをずっと持ってきてもらう生活なら」
そんな事は無いだろう、引きこもってる人だって、何かに悩み、何かに挫け、外へ出る切っ掛けを失ったまま、現状に苦しんでるものもいるだろう。
本当に親にずっと世話をしてもらってゆっくりできるのは、常人ではできない。
何も知らない小さい子供ならいざ知らずだ。
しかし、この子れいむにとってはとても魅力的なモノに聞こえた。
家の中にいれば、黙っていても親が餌を運んできてくれる。
子れいむは運動が苦手だ、だから他の子ゆっくりと遊ばず、親の近くで昼寝をしていたのだ。
外に出るのも煩わしい、家でみんなと喋ったり、もみあげをピコピコする程度で満足なのだ。
それが、大人になってもずっとしていられる。
子れいむの中で夢が生まれた。
「さあ、あんまり人に関わっていると、ゆっくりちゃん達にはあまり良いことじゃないって聞くわ、じゃあねゆっくりちゃん」
「ゆっくちしていっちぇね!」
思いっきり悪影響を残しつつ、心配していた主婦はその場を後にした。
一匹だけ残された、子れいむは誰もいなくなったその場で、決意を口にした。
「れいみゅは、りっぱなにーとしゃんになってみしぇるよ!!」
そして、親れいむの元へ戻っていった。
それからというモノ、子れいむは一歩も外へ出なくなった。
雨の日も風の日も晴れの日も。
家に引きこもり続けた。
最初は体調が悪くなってしまったのかと心配していた親ゆっくり達も、元気よくむ~しゃむ~しゃと食べ続ける子供が不思議でならなかったがゆっくりしているからいいかと放置し。
まったく外で遊ばなくなった姉妹に、不安そうしていた他の姉や妹の子れいむや子まりさ達も次第にそれが普通なのだと受け入れ始めた。
月日は巡り。
子ゆっくり達が成体になり、一人立ちを始めた頃。
「ゆゆ~ん、れいむはゆっくりしてるよ!」
そこには、元気にしているあられの無い姿となった子れいむが。
一歩も外に出なくなり運動をしなくなったせいで、下半身がでっぷりと太っていた。
体に傷一つなく、飾りにも汚れもない、一応美ゆっくりのカテゴリーに入りそうな物になってしまった。
「ゆゆぅ、おちびちゃん、もうみんなひとりだちをしていったんだよ」
「そうなんだぜ、おちびちゃん」
と、親ゆっくり達が、ダンボールハウスの外から説得かかる。
でっぷりと太った、でぶれいむという意味でのでいぶとなったれいむは、もはやダンボール一箱を殆ど占領するほど太っていた。
でいぶのように、下半身だけ太った感じではなく、下半身を中心に全体的に弛んだ様な印象を与える体型だ。
親ゆっくり達はは仕方がなく新たなダンボールを探し出し、生活している。
親の優秀さがうかがえる。
「なにいってるの! れいむはにーとさんなんだよ! にーとさんはおやがおせわしないとだめなんだよ!!」
しかし、間違った知識を得た子供の世話は失敗してしまったようだ。
れいむは威張るように、自分のことを正当であると主張する。
子ゆっくりの時から家に出なくなり繋がりは家族のみとなり、外部の刺激を物理的にも精神的にも全く受けなくなった今、れいむの精神はゆっくりから見ても驚くほど成長していなかった。
つまり自分でゆっくりをすることをする、あるいは他をゆっくりさせる、という意識はからっきしで、自分はまだゆっくりさせられる側だと思っているのだ。
「……ゆぅ」
「……おちびちゃん、あさのぶんのごはんさんをおいておくぜ」
「わかったよ! じゃあ、れいむはすーやすーやするからね!」
一口で朝の分の餌を食べきると、れいむは寝始めた。
少しご飯が足りないが、れいむは無茶は言わない、だって親にお世話になっているのだから。
親ゆっくり達も流石に危機感を覚えていた。
しかし、無茶は言えなかった、自分の子供がとてもゆっくりしているのだ。
自分の子供のゆっくりを壊すこともできず、もしかすると自分達よりゆっくりしているゆっくりをどうにかできる気がしなかったのだ。
実際、外に一歩も出なくなって痛みの耐性が全くないので、軽く体当たりするだけで泣き喚くだろう。
そんなこんなで、あの時の子れいむは夢を叶え、立派にニートになっていた。
まあ、思いっきり意味を履きちがえてはいるが。
しかし、そんなゆっくりした生活は終止符を打たれた。
ユビィ!
マリザァァァァ
マリザノオベベザンガァァァァァッァ
レイブノオリボンザンンンンン
マリザノオボウジザンガァァァァァァ
アアアアアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……ア゛、ア、……ア゛アァ゛ァァ……
そんな、ゆっくりできない声とともにれいむは目覚めた。
「ゆゆぅ、なんだかゆっくりできないよ」
そして、唐突に人間がれいむの目の前に現れた。
子ゆっくりの時に出会ったあの心配していた主婦から人間への印象が止まっているれいむは特に警戒しなかった。
「ゆゆ! ゆっくりしていってね!」
「なんだ、このデブ」
「れいぶはでぶじゃないぃぃぃぃ! ちょっとふくよかさんなだけだよぉぉぉぉぉぉ!!」
流石に幾らか太っていた自覚はあったのか、少しだけ謙虚に反論した。
「野良でここまでデブのは初めて見るな」
「ふくよかさんなんだよぉぉぉぉぉ!!」
「うるさいな」
そう言って人間が、れいむが入ったダンボールに蹴りを入れた。
「ぐぎゃぁぁぁっぁぁ、いだいぃぃぃぃぃぃ!!」
もちろん、痛みの耐性がないれいむにとってはたったそれだけで、体中の餡子が震えるほどの痛みだ。
「ははっ、こんな事でこんなに痛がるとか」
人間は笑みを濃くする。
存分に痛がり、口から目から汚らしく砂糖水を垂れ流すれいむ、そこでようやく人間が手に何かを持っていることに気づく。
「ぞれは、おどうざんどおがあざんのぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!」
その手に持っていたのは、れいむの親のリボンと帽子だった。
「ん、さっきのはお前の親だったのか、なんかに使えると思ったから持ってきたけど」
「おどうざんどおがあざんをどうじだぁぁぁぁぁぁ!!」
「え、潰したよ、目を切り取って、飾りとってさ」
「うばぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!! れいぶのにーどぜいがづざんがぁぁぁあぁっぁぁ!!!」
「ニート?」
人間は訝しげにれいむを見る。
「れいぶはにーとさんだったんよ! おどうざんとおがあざんがいないと、おせわしてくれないでしょぉぉぉぉぉ!!」
「お前はニートを何だと思ってるんだ」
「ゆ゛! とってもゆっくりしたせいかつのことでしょ! れいぶいままでとってもゆっくりしてたよ!!」
そう、自信満々にれいむは眉をキリッとさせ答えた。
「でもなぁ、人間の間だとニートってかなり偏見持たれてるんだけど、悪い意味で」
「どぼゆうごどぉぉぉぉぉ!!」
「だってなぁ、親に迷惑かけるだろ」
「ゆ゛!」
「お前は餌も住む場所も排せつ物の処理も、全部親任せにしてたってことだろ、それ、親はゆっくりできないじゃん」
「ゆ゛ゆ゛!!」
れいむは、今までゆっくりしていた。
しかし、親達はどうだったろうか?
れいむは一度も狩りをしたことがない。
一度も排せつ物の処理なんてしたことがない。
一度も住む場所を探したことなんてない。
すべてどんな苦労か分からなかった。
しかし、餡子脳の片隅に置かれた小さい頃に外に出た記憶を探す。
れいむは、運動が苦手だ、だから外に出なかった、狩りに行くのはたくさん外に出なければならない。
うんうんやしーしーは臭い、それを処理するにはそれを入れた葉っぱやボトルキャップを臭い事を我慢して遠くに捨てなくてはならない。
ダンボールなどの住む場所も、れいむは他のゆっくりが所有している物しか見たことがない、普通に置かれているモノなんて見たことがないのだ。
れいむは親ゆっくり達がどれほど苦労していたか、徐々に理解し始めた。
「ん、その顔は心当たりがあるな。
オレも一時期、そうなりかけたが、父さん母さんの説得されててさぁ、そんなときにゆっくりが家に入ってきてさ、あまりにムカつくから潰してさ」
人間は、一拍置き、れいむににやりと笑いつける。
「それがものすごく楽しかったんだよね」
れいむはその笑みがとても自分にとってゆっくりできないものだと感じ取り震えた。
「家だと、ゆっくりなんて滅多に入ってこないし、こりゃ家でるしかないなって、外に出るようになって、まあ、ついでに学校も通うようになってさ
虐めが原因で登校拒否やってたんだけど、そいつらの眼の前でゆっくりを目茶苦茶にしてやったら、誰も寄り付かなくなったよ
まあ、それが縁でいろいろと友達も増えたんだけどさ……」
そこでふと我に返ったように黙る人間。
「っと、ゆっくり相手に何話してんだろ、まあいいや、お前さんのゆっくりできないことを思いついた」
れいむはカチカチと歯を鳴らす。
この人間は絶対に自分をゆっくりさせなくするつもりだ、潰されるのだろうか、親と同様に目を取られてしまうのだろうか。
自分の中のゆっくりできなくなる結末が浮かんでは沈み浮かんでは沈む。
れいむの貧相な発想では、3つほど浮かんだモノがずっと沈んだり浮かんだりするだけだが。
「お前さんは、こうする」
そう言って、人間はれいむのリボンを取った。
「れいぶのおりぼんざんんんん、ゆっぐりできないぃぃぃぃぃぃ!!」
「最後が見れないのは残念だが、大体想像できる、せいぜい足掻いてくれ」
そう言って人間は、何処かへ行ってしまった。
追いかけようにも、体は動かない、子供の頃の様に跳ねようとしても体を動かしても、体が少しばかり波打つだけ、しかも痛い。
ナメクジよりも遅い速度で這って動き出すが、それでも底部が削れるように痛い。
子供の頃飛んだり這ったりすれば、底部は痛くならない程度に固くなるが、まったく動かなくなったれいむの底部は薄く動けば痛みを発するほどだった。
進んでは休み進んでは休みを繰り返し、少し開けた場所に出た頃、そこには誰もいなかった。
そこから、れいむの苦痛に満ちた時間が始まった。
何が起こるか分からなかったため、自分の家から離れようとは思わなかった。
腹が減り、餌を探すが、虫を見つけても逃げられ、柔らかそうな草を見つけても、一つ食べ、もう一つ食べに行くために動いたら二倍腹が減った。
ダンボールハウスは、人間に蹴られたせいか、ぺしゃんこになっていた。
れいむは苦労して、立て直したが離れるとすぐに倒れた、ダンボールハウスが倒れる理由に気付かず、結局倒れたダンボールハウスの上を使うことにした。
食べたら排泄する、いつものように、このときだけはゆっくりできると思いながら、うんうんをする。
しかし、それは何時になっても片付けられることはなかった、れいむは涙を流しながらそれを処理した。
ああ、自分はこんなにゆっくりできないことを親に押し付けていたんだ。
れいむは涙ながらにそのことを感じた。
そして、れいむは緩やかに動かなくなっていく。
餌が足らない。
雨風を凌ぐ住居が無い。
そして何より、ゆっくりできない。
今までのゆっくりしてきた生活に、後悔を覚えながら。
れいむはゆっくりゆっくり、ゆっくりと動かなくなっていった。
今まで書いたモノ
anko964 サンプル
anko978 暗く湿った穴の中
anko1308 すろーりぃな作戦
anko1394 投げた!
anko1425 声
anko1477 さよなら生物
anko1503 山彦恋慕
8作目です。
さて、疑問に思った方はいるでしょう、ゆっくりに脛なんてない、と。
じゃあ、底部? 腹? 髪?
まあ、どうでもいいことですね。
しかしもっとこう凄惨というか、スカッとなるようなのを書きたいものです。
そんな話が思い浮かぶのが羨ましい。
では、最後まで読んでいただけたら幸いです。