アークナイツ シナリオ集

破局せし者

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破局せし者

Wはチームを率いて、傭兵部隊から抜けた裏切り者を抑えた。対立の末、エンカクはレユニオンの包囲を突き破る。そして、ロドスにやってきたエンカクを、もう一人の知り合いが待っていた。

レユニオン術師「W、面倒なことになったわ。」

W「へぇ~……あなた達がこのチャンネルで私に連絡してくる程のことなのね。どうしたの?何か面白いものでも見つけた?」

レユニオン術師「面白くはないわ。あなたがあのサルカズの傭兵たちを立て直してる時に、そのうちの部隊の一つが裏切ったの。戦場の後処理をする支援部隊みたいだったから、特に脅威ではないと踏んで私たちはすぐに追撃に出た。しかも相手はちょっと攻撃したら散り散りになって都市外へ逃げ始めたわ。そこまでは予想通り。」

W「そう、それは良かったわね。」

レユニオン術師「でも程なくして、想定外の状況になった……追撃に送った部隊との連絡が急に途絶えたの。傭兵たちの新たなリーダーとなったあなたから、納得のいく説明をもらえるかしら?私たちの追撃部隊は、どうして突然消えることになったの?」

p.m.01:13 天気/晴天 チェルノボーグ、郊外、荒野
W「説明をしろと言われても無理ね。そもそもあなたの今の説明自体が私にとっては訳が分からないもの。」

レユニオン術師「でも言葉通り、追撃部隊は何の前触れもなく突然消えたの。調査に当たった部隊も待ち伏せやトラップは発見できていない。分かっているのは敵がサルカズということだけ。」

W「そうね。サルカズなのは当たり前だわ。私の傭兵に他の種族がいると思ってるの?でも、面白い話ね、続けて。」
レユニオン術師「最初の接触ですぐに目標は制圧できた。だけど、あくまで慎重に対応するために、しばらく泳がせてたの。とにかく相手は強敵なんかじゃなかった。その後しばらくして、急に通信が途絶したの。」

W「……ふーん。本物の野獣ってやつは、あなたたちなんかよりずっと牙を隠すのが得意なのよ。油断しすぎじゃない?」

レユニオン術師「じゃあ、どうしろというのよ?」

W「そのサルカズの特徴は?」

レユニオン術師「……詳しくは分からない。目撃者はほとんど連絡が取れなくなっているの。遠くから見た限りだと、敵中への切り込みが得意な戦士のようだった。」

W「それなら、まずは正面からその戦士に当たるのは避けるべきね。それと相手をできるだけ足止めしておいて。とりあえず、また後で会いましょう。」

レユニオン刀兵「何があった?」

W「何にも。間抜けな小隊が罠にかかったってだけ。」

レユニオン刀兵「では我々も支援に向かうのか?」

W「あらあら、みんな自分の仕事があるって言うのに。どうして自分の持ち場をきっちり守れないのかしらね?うーん……でもまぁ今回はいいわ。私もあの可哀想な元リーダーがどんなサルカズを連れていたか気になるしね。」

レユニオン刀兵「了解。全小隊に伝えろ、臨戦態勢、都市郊外へ向かえ。」

レユニオン術師「チッ、この……また速くなったわ!まだ本気じゃないの?」

???「……弱すぎる。レユニオンとはこの程度なのか?」

レユニオン術師「このっ!私たちを甘く見て——」

W「フッ……。何人か昔馴染みがいるんじゃないかと思ってたけど、まさかあなたとはね。」

レユニオン術師「W、我々は——」

W「死にたくなければ撤退しなさい。あら、そんな恨みがましい顔をしないで。こいつはまだ全然本気じゃないわよ。あ、もちろん死にたいのなら止めないけど?」

レユニオン術師「……撤退。」

W「久しぶりね、傭兵刀術師。」

???「お前——」

W「今はWと呼んで。あなたのことはなんて呼べばいい?」

エンカク「エンカクと呼べ。知らないとは言わせん、名乗り合いが俺にとってどんな意味を持つかを。」

W「あら~、怖い怖い。でもあいつらに刀を振るったときも、お互いに名前を名乗ったのかしら?」

エンカク「依頼と果し合いは別だ。」

W「あの戦争を経験したサルカズが急にいなくなったなんて聞いたら、心配するじゃない。傭兵……リーダーが変わったからすぐ抜けようなんて、寂しいじゃない?」

エンカク「それは全く関係ないことだ。だがお前の部下たちが、俺が名乗る価値すらないと思えるほど、愚図だとは思わなかった。」

W「それは光栄だ……まあ、彼らが私の部下になったのはつい最近のことだけどね。あ、それともなに、挑発?私に殺してくれって言ってるの?」

エンカク「いや、お前の物に頼る戦い方には少しも興味が湧かないのでな。とは言え戦術も一つの技巧だ。お前の戦術が以前よりも鋭さを増しているというのなら、一つご指導いただきたいものだな。」

W「……不思議なものね、昔のあなたは「ターゲットを殺せばあとは何でも良い」ってタイプじゃなかったかしら?」

レユニオン刀兵「W、各小隊の指定ポイントへの布陣が完了した。敵の退路は全て断たれた、もう逃しはしない。」

エンカク「お前がまさかこんな奴らのリーダーになるとはな……。時間の流れとは、かくも残酷なものだな。」

W「こんな奴ら?えーっと、レユニオンのこと?それとも……サルカズたち?」

レユニオン刀兵「ハッ——!」

エンカク「ほう。」

レユニオン刀兵「俺はお前を見くびりはしない、サルカズ人。お前のことはずっと気になって目をつけていた。残念だが、お前につけいるスキはもうない。」

エンカク「そうか、お前も……。なんか面白くなってきたじゃないか。ちょうどいい、お前を砥石代わりにしてやろう。俺の刀も幾分か鈍ってきたのでな。」

レユニオン刀兵「挑発か?偉そうなことを言っていられるのも今のうちだ。」

エンカク「ああ、来い。」

レユニオン刀兵「ぐわっ!くそっ!お前はどうして——ぐっ——!」

エンカク「お喋りしている余裕があるのか?」

W「……思った通り、強くなってるわね。」

レユニオン術師「W!どうして突っ立って見ているの!?あなたが総攻撃の命令を下せば、あんなヤツ一瞬で灰にしてしまえるのに!」

W「つまり今は、私があなたにも命令を下せるってわけ?」

レユニオン術師「こんな時に揚げ足取りはやめて!」

W「でも私があなたたちの指揮官じゃないのは事実でしょ。じゃあアドバイスをしてあげるわ。いいから今すぐアイツから手を引きなさい。これ以上アイツを刺激しないほうが良いわ。どうしても面倒を起こしたいなら別の機会でやって欲しいの。」

レユニオン刀兵「……クソッ。」

W「あらどういうつもり?あなた一人でアイツをどうにかできるとでも言いたいの?変な見栄は自分の首を締めるだけよ。」

レユニオン刀兵「チッ。」

エンカク「次はどいつだ?」

W「そんなに慌てて、デートの待ち合わせでもあるのかしら?」

エンカク「包囲網を突破した経験は一度や二度じゃない。」

W「あらそうなのね。きっと内戦の時の話でしょ?興味あるわ、言ってみなさいよ。」

エンカク「別になんてことない話だ。待ち伏せを受け、包囲されて俺以外の者が死んだ。ただそれだけだ。どうする?まだ続けるか?俺からすれば、さっきの戦闘じゃ、まだまだ物足りないのだがな。」

W「いいえ……それより、私たちの仲間になるつもりはない?」

レユニオン術師「W!?こいつは裏切り者よ、こんなに沢山のレユニオンの仲間を殺して——」

W「私の傭兵として彼を雇うと言ってるの。レユニオンに必要な力よ。それをあなたなんかが意見するつもり?」

レユニオン術師「お前っ!」

エンカク「……。」

W「どう考えたって、私たちといる方が面白いでしょ?戦争に流血、そしてサルカズの仲間たち……。あなたが追い求めるものは、全部ここに揃っていて、しかも叩き売り状態ってわけ。こうやって勧誘しているのは、私個人の好奇心を満たすためでもあるけどね。私たちには、たーくさん共通の話題があるはずよ。」

エンカク「俺はそうは思わない。」

W「あなたも感染者でしょ?レユニオンに入って何か都合が悪いことでもあるの?」

エンカク「無秩序な破壊、私利私欲を満たすための集団暴行、そんな組織から何か得られるとは思えん。もしかして戦争をしているとでも言いたいか?今のお前たちは摩擦で生まれた小さな火種に過ぎん。お前なら本当の戦争がどんなものか知っているだろう。」

W「そんな風に言わないでよ、私たちだって頑張って働いているの。それにレユニオンだからってみんな同じじゃないわ。それに、私の前の上官はもっと純粋なものが好みだったみたいだけどね。まぁ何はどうあれ私は楽しめてたわ。」

エンカク「どうしてもと言うのなら……そうだな、タルラの剣術をお目にかかりたいものだ。」

W「あの龍女?あいつを褒めるつもりはないけど、勝ち目は少しもないわよ。しかも彼女のあれ、剣術って呼べるの?近づく前に消し炭にされるわよ?」

エンカク「分かっている。そして、俺がお前の要求を断れば、包囲網を突破することも難しくなることも分かっている。だが、それがどうした?窒息するほど締め付けられた枷を堂々と断ち切ってこそ、次の一歩を踏み出せるというものだ。」

W「あなた…いつの間にそんな風情のあることを言うようになったの?」

エンカク「俺は自分の生きる意味を探しているだけだ。」

W「まあ、それは好きにすればいいわ。とりあえず、あの龍女のことは置いといて、単純に傭兵部隊に加入するってのはどうかしら?いつもの仕事なら手慣れたものでしょ。それに、あなたの嫌いな上官はもう死んだわ。」

エンカク「お前は信ずるに値しないな。互いに隠し事が多すぎる。……フッ、だがレユニオンよりは刀を研ぐのに適した場所だ、とだけは言っておこう。先刻、お前とあの外から来たサルカズが取引しているのを見た。そしてその後の戦いぶりは、なかなか心躍るものだったな。」

W「へーえ、そんなことがあったの!?」

エンカク「そして、その取引相手を最後にはお前が消していたな。だが取引は存在していた、その秘密は未だあそこに眠っているのだろう。隠そうとしても無駄だ。」

W「ふーん。あーもう負け負け!そうよ、たしかに彼とは取引をしたわ。その代わりとして、私の上官を殺して私が動きやすくなるようにしてってお願いしたわ。みんな顔見知りだし、恩を売っておくのも大事でしょ。」

エンカク「だがお前は奴らを見逃してやらなかった。」

W「彼が守りたいって言ってた人は見逃してあげたわ。ロドスの救援部隊の手助けをする。それは承諾した——でも、それと彼を殺すことは、別に矛盾してないでしょ?それに、私にだって自分のやり方があるの。釣り糸は長くして待つのが基本だけど、手の内にある獲物を逃す理由はない。」

エンカク「だが何はどうあれ、奴はお前が苦心して手に入れた精鋭たちをことごとく射殺した。」

W「もういいわ!思い出すだけでイライラする!もう、せっかく昔なじみに会えて、少しは仲良くやれると思ったのに結局殺し合いなんてね、ああ悲しいわ。」

レユニオン刀兵「……W、次の行動まで時間がないぞ。長引けば作戦のスケジュールに影響が出る。」

W「そうね、時間がないのくらい分かっているわ……。あなた、本当に考えを変えるつもりはないの?」

エンカク「無論だ。」

W「最後に一つ聞かせて。あなたの今の雇い主は誰?あら、ごめんなさい。どっちにしろあなたなら言わないわね。でも大体の予想はできるわ。」

エンカク「そうか。奴らはそこまで有名でないと思っていたが。」

W「あそこには昔なじみがたくさんいるから。というより、私の昔なじみはそこら中にいるって言った方が良いかしら、あなたもその内の一人よ。」

エンカク「お前、一体何が言いたいんだ?」

W「いえ、私が言いたいのは、あなたの前任の傭兵部隊が消された件の黒幕を、私が知ってるかもしれないってこと。刀術師隊長さん、あの時の陰謀を企て、あなたを今のようにした張本人が、あなたの行く先にいるかもしれないわよ?」

エンカク「ほう、そうか?なるほど。そうか……。それは面白い。」

W「アハハ、あなたも知らなかったのね!当然ね、私だってさっき初めて知ったんだから。すぐに思い知るでしょうね。この事態はあなたが思うほど簡単じゃないってことをね。あなたがどう動くか楽しみだわ。フフッ、あなたが黙って見ているなんてあり得ないものね。」

レユニオン術師「W!いつまで待たせるんだ!?」

エンカク「……。」

W「ハァ……私のサルカズたちにやらせるつもりはないわ。そんなに急ぐのならあなたたちが自分でやりなさい。刀術師——いや、今はエンカクだったわね。ここから先の戦いで、あなたはきっと命を落とすわ。」

エンカク「ああ、久方ぶりの死線だ。俺も昂ぶっている。」

W「久方ぶり?そう言われてみれば、あなたの傭兵隊は全滅したっていうのに、まるでそれを楽しんでるかのように見えるわね。」

エンカク「俺はお前とは違う。W、単なる愉悦なんぞ追い求める価値はない。「前回」俺は多くのものを失った。だがいま眼前に広がる道は、よりハッキリとこの目に映るようになった。今回こそ俺を失望させてくれるなよ。」

W「あら、笑ってるの?もし今回はあなたを見逃すって言ったら、信じる?」

エンカク「俺も、同じことを言おうと思っていたさ。」

ドーベルマン「契約内容には、ロドスの到着前に、レユニオンと正面衝突しろとは書いてないが。」

エンカク「単なる一身上の都合だ。気にするな。」

ドーベルマン「感染者と感染者問題を解決する志のある人材は歓迎するが、規則や秩序に違反する者を引き取るつもりはない。具体的な事情がわからない以上、今回の件は査定からは除くがな。次はないと心得ておけ。」

エンカク「今回の件はお前たちが好きなように解釈すればいい。」

ドーベルマン「すでにそうさせてもらっている。元より君の動機や個人的な事情は査定に含めていない——というよりも。もしロドスに相応しくない者と判断されるなら、君がどれほど高尚で正直な者であっても、その加入を許すことはなかっただろう。」

エンカク「そうだろうな。あくまで個人的な事情というやつだ。」

ドーベルマン「フンッ、とにかく、ロドスは君を歓迎する。一つ言っておこう。君の行動は常に周囲のオペレーターたちに影響を与える。そして周囲のオペレーターたちもそれに対応した行動を取ることになる。ともあれ君が規則に従ってさえいれば、我々は君に対して寛容だ。君の過去がどうあれな。だが、覚えておけ。オペレーターエンカク、君が少しでも規則を破るというのなら……。」

エンカク「ああ、異存はない。」

ドーベルマン「では、まずは医療部門を案内しよう。君に会いたいと言っている者がいるからな。」

【——あなたは?】

エンカク「……。お前……。」

【すみません、通してください。】

エンカク「……フッ。なるほど、そういうことか。W、お前も誠実なところがあるじゃないか……。長生きをすると、少しは得るものがあるということか。」

文字数:5,922文字 原稿用紙15枚分
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