アークナイツ シナリオ集

洪炉示歳・参

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洪炉示歳・壱

年(ニェン)に奪われたエリアを奪還するため、ロドスと龍門は協力して最後の賭けに出る。戦いがクライマックスを迎えようというところで……監督のカットがかかる。

第三章 年礼

子の矛を以て、子の盾を陥さん。子の盾を以て、子の矛を拒がん。じゃあ左手と右手を喧嘩させたらどうなるんだ?結果なんて出ねぇ。仮にどっちかが勝ったとして、どうにかなんのか?どうにもなんねぇ。あーあ……けど利き腕がやっぱり有利なのかな?

a.m.4:21 天気/曇天 龍門郊外 近衛局が21号エリアの管制権を失ってから三日後

アーミヤ「チェンさん、こちらにいらっしゃったんですか。」

チェン「ああ……敵の手に落ちたエリアを見ていた。」

アーミヤ「外周エリアの都市ブロックを移動させて、外壁を組み換えて年を阻むなんて。ウェイ長官は思い切った決断をされましたね。」

チェン「だがまさか、その防衛線の向こう側も龍門の土地だとはな。……馬鹿げている。」

アーミヤ「それは年があのエリアにいる以上、仕方のない……」

チェン「あちらには、私がよく行くショッピングモールがある。友人たちの家も、いくつもある。」

アーミヤ「……すみません、チェンさん。一都市がたった一人の敵に、ここまで劣勢を強いられるなんて……」

ラヴァ「兵士を一人鍛え上げるのと、あいつが戦士を一人鋳造するのにかかる時間を比べてみればいい。当然の結果だ。」

ラヴァ、ロドス所属エリートオペレーター、アーツマスター、災害専門家。彼女はアーツを使い、当然のように空間の制限を超越してのける。
アーミヤ「ラヴァさん!無事でしたか!」

ラヴァ「すまない。軽い気持ちで奴に接触するべきではなかった。」

チェン「その言葉は今起き上がれなくなっているオペレーターに言ってやることだな。君を援護するために、我々が払った対価は少なくない。付け加えるなら、我々が必要なのは君の知識と技術であって、そのように士気を削ぐ言葉ではない。」

ラヴァ「「士気」?士気なんかで理解の及ばない相手に対抗しようとするのは、怪我人を増やし、死に急ぐようなものだぞ。奴を倒して龍門を奪還したいなら、はるか昔から今に至るまで、アタシたちを悩ませ続けてきた謎の答えを——「奴の弱点」を知る必要がある。」

チェン「それを探ることがまさに君の任務だと思っていたが。」

ラヴァ「想定外の良いニュースとして、あの「年」は割と話のできる人格を有していた。悪いニュースは、あまりにもひどい性格ってことだが。」

チェン「君には期待していたのだが、まさか収穫はそれだけとは言わないだろうな。」

ラヴァ「もちろんこれだけじゃない。だが海のように広大な史学資料からは、少しのヒントを得られた程度だ。」

アーミヤ「ラヴァさん、単独行動は控えてくださいね。年は天の邪鬼です。たとえ話せる相手だったとしても、気が変わったら……」

ラヴァ「ああ。だから、流れるのはアタシの血だけで十分だ。」

近衛局隊員「チェン隊長、緊急連絡です。「年」本人の足取りを捉えました。防衛線へ向けて進行しているようです。」

チェン「……各隊共に彼女と正面から接触することは避けるように。そして例の「熱心な市民たち」にも手出し無用と伝えろ。これは子供の遊びではないのでな。」

近衛局隊員「了解しました。ですが、相手はそれほどの兵力を有しているとは思えません。数で攻めれば……」

ラヴァ「奴からすれば、人数は意味を持たない。アタシたちはせいぜい足止めをすることしかできないだろう。」

チェン「年の弱点を推察したと言ったな。なんだ?」

ラヴァ「爆竹だ。」

チェン「……爆竹?」

ラヴァ「ああ。過去の記録からは、奴の正体は把握しきれなかった。弱点なんてもっての外さ。だがアタシは炎国に旅したときに、ある発見をしたんだ。近代になってから捏造されたものや、真相が煙に巻かれている場合も多いが、歴史上長く伝わる風習にはたいてい、何かしらの起源とそれに伴う伝説がある。爆竹も然りだ。一部の学説によると、爆竹は現代の源石爆薬の起源とされ、ある種の祈祷の意味を持つ風習に用いられると語られているが……」

アーミヤ「それはみんな知っていますよ。爆発に平安を祈り、邪崇を退ける……」

ラヴァ「ではその古い風習で言われている「邪崇」とは一体何のことだ?」

アーミヤ「あっ……」

チェン「ちょっと待て、近衛局はそんな爆発の十万倍以上の火力を用意できるぞ。君が言う通り爆竹が弱点なら、年はそもそも我々の敵じゃなかったはずだ。話の筋が通らん。」

ラヴァ「「爆鳴を畏れ、火光を畏れる。」もし年の役割が本当に「鍛冶」であるなら、爆竹は奴の脅威にはならないだろう。奴は……自らを鍛冶師と名乗った。それならば本来、火光も爆鳴も奴を脅かすものではないはずだ。少なくとも、然るべき存在が奴に投影した身分とは、切っても切り離せないものだからな。」

アーミヤ「然るべき存在?そんなものが後ろについてるんですか?」

ラヴァ「アーツに頼らない常識はずれの能力を説明するための仮説だ。」

チェン「……だが奴は火光と爆鳴を畏れている。ということは、自らを畏れているとでも言うのか?荒唐無稽に聞こえるが……」

ラヴァ「アタシもはじめはそう思っていたが……試してみる価値がありそうなんだ。実際奴は、大きな音と炎のアーツを前にして、確かに後ずさりしたからな。」

チェン「……ならば、君の仮説は正しいのかもしれないな。そもそも私たちには、それを疑う時間すら残されていないが。彼女は既に目前に迫ってきている。全ての可能性を試そう。」

ラヴァ「では最後に四つ提言させてくれ。まず一つ、奴は強い。万が一正面からねじ伏せられることができたとしても、おびただしい血が流れることになるだろう。」

チェン「——近衛局がそうはさせないさ。」

ラヴァ「そうだとしても、正面からの衝突は避けろということだ。それに、奴自身も殺戮は好まないようだった。二つ目、奴は能力を行使しても、消耗している様子がなかった。このまま戦いを続ければ、我々は後手に回るだけだ。戦法を変える必要がある。三つ目、理由は不明だが、奴は現代の生産物に大きな興味があるようだ。」

チェン「……それが何か戦闘の役に立つのか?」

ラヴァ「性格を暴けば、隠れた本能が見える。そしてハンターは獣の本能を利用して罠にかける。奴にも同じことが言える。最後に、奴の剣と盾には気をつけろ。あれは我々には解析できない正体不明の創造物だ。」

チェン「剣と盾か、分かった。」

ラヴァ「奴の弱点を突くのはアタシに任せてくれ。そのチャンスを作り出すための足止めを、近衛局とアーミヤにお願いしたい。」

チェン「了解だ。レユニオンの幻影を作り出し龍門を混乱に陥れた対価を、その身をもって奴に知ってもらおう。」

アーミヤ「ですが、チェンさんが前衛に出るとなると近衛局の指揮は誰が……」

チェン「ウェイ長官とロドスのドクターがいれば問題ない。」

アーミヤ「では私もチェンさんと共に行動します。」

ラヴァ「アーミヤ……」

アーミヤ「大丈夫です、自分の身は自分で守れますから。ロドスと近衛局の皆さんが奮戦しているんです。私も自分にできることをやらないと……足止めをするくらいなら、私も力になれるはずです!」

チェン「分かった。ではアーミヤ、急ぐぞ。」

アーミヤ「はい!」

ニェン「この壁、高ぇーーなぁ。おーい、上の兵士、聞こえるかーー?うんともすんとも言わねぇのかよ。つれねーな。おっ……この壁、ツヤツヤだな、叩いてみるか。……こりゃ何かの合金だな。レンガを積んだ壁よりも多少はすごそうだ。剣でぶっ叩いたら刃が欠けんじゃねぇか?それは面白くねぇな。この剣は結構気に入ってんだけどな……まぁいい、もう抜き身だ、後は野となれ山となれってな。」

アーミヤ「ほ、歩哨所の防護壁を切り裂いた?」

チェン「もしあのオペレーターが「剣」に気をつけろと言わなければ、あれが「剣」だと思わなかっただろうな。あの強靭さは、普通の剣じゃありえない。」

ニェン「どうした、三日も休みをやったってのに、なんだこの気の抜けた布陣は。ラヴァを見てお前たちにも期待してたんだけどな。……なんだよ。」

チェン「今日はまやかしは使わないのか?一人で敵陣のど真ん中にいるんだ、無傷で逃げられると思うなよ。」

ニェン「お前たちには私一人で十分だと思っただけだ……いや、ここは「お前たちなど私が手を下すまでもない」って言ったほうがかっこいいか?そうだそうだ!そうしよう!「お前たちなど私が手を下すまでもない!」」

幻影兵「——」

アーミヤ「チェンさん、囲まれました!」

チェン「こんなもの、数が多いだけだ!」

チェン「なにっ——」

ニェン「あー、そうだ。言うの忘れてた。この三日間暇だったからよ、「レユニオン」ってやつを研究してみたんだ。お前らと「レユニオン」、同類同士だってのによく戦うよなあ。鉱石病ってやつはそんなに気に食わねぇか?ま、それよりも、私が記録通りに「レユニオン」を鋳造したのに変な感じがした原因がやっとわかったんだ。理由はまさにその鉱石病にあったってわけさ。」

アーミヤ「チェンさん!危ない!」

チェン「チッ!」

幻影兵「————」

アーミヤ「幻影たちがアーツを?……そんな、あり得ません……」

ニェン「もう少し頭を使えば、あの都市ブロックごと巨大な構造体のバケモンにもしちまえるぜ。見てみたいか?あーいや、やっぱやめとく。面倒臭そうだ。でも感染者の人形を創るくらいならそこまで面倒じゃないぜ、工程が一つ増えるだけだ。」

アーミヤ「そ……そんなこと、冗談でも言っていいことではありません……感染者に対するその態度……不愉快です!」

ニェン「不愉快?私からすれば、感染者だ何だなんてマジでどうでもいーんだよ。お前たちは普段、同じように源石ってやつに汚染されたオリジムシのことも気にかけんのか?かけねぇだろ?」

チェン「撃て!」

ニェン「はぁ、それにしてもヘタレた矢だな。今から私は、一歩ずつお前たちの大本営へ向けて進む。もちろん、着いたらぶっ潰すぜ。まぁ頑張って止めてみろ。」

ラヴァ「スノーズント。」

スノーズント「あわわすみませんわざとじゃ——あれ、私、何もしてませんよね……あ、あなたはロドスの方ですか?」

ラヴァ「オペレーターのラヴァだ。インフラエリアの構造図が欲しい。地下のあの部分だ、どうやって探せばいい?」

スノーズント「えっと、それはエンジニア部の機密情報になりますから、見るだけの手続きもすごく面倒ですよ……何に使われるんですか?」

ラヴァ「とんでもない爆竹を一つ用意しようと思ってな。」

スノーズント「ば、爆竹ですか?」

ラヴァ「年に対抗するには、古来から今に至るまでの毎秒の進歩をぶつけてやる必要がある。」

スノーズント「ニニニニニニェン——?や、やっぱり巨人なんですか?爆薬を使いますか?そそそそれとも都市防衛砲で?」

ラヴァ「いや、あのバカでかい都市防衛砲は発射角度の制限もあるし……自分の都市に向けて撃つわけにもいかないだろ…………いや待て……都市防衛砲か……防衛砲……」

スノーズント「ラヴァさん?」

ラヴァ「防衛砲は……言ってみれば巨大な爆竹みたいなもんだろ?打ち上げ式の。」

スノーズント「えっ、違いますよ!全然違います!」

ラヴァ「爆竹と同じように工業源石加工を基にしていて……爆発で砲弾を撃ち出し……空中で……まさに打ち上げ式爆竹だろ!」

スノーズント「本当に全然違うものですよ……と、と言うかどうして爆竹にこだわるんですか?」

ラヴァ「……そうすれば或いは……だが市街地にどれだけの被害が出るかは……」

スノーズント「ラ、ラヴァさん?聞いてらっしゃいますか?あの、いろいろ考えているようですが、本当にそんな簡単な原理じゃありませんよ?使いこなすにはそれなりの————大丈夫だ、最終的にはアタシが責任を持って判断する。信じてくれ。」

スノーズント「……で、ではとりあえず構造図閲覧の申請を出します……」

フミヅキ「それでは遅いでしょう、スノーズントさん。申請は後でも構いませんから。敵を前に、規則に足を引っ張られては本末転倒ですからね。」

ラヴァ「感謝します、ウェイ長官。」

スノーズント「で、ですが各部署でファイルを整理してから印刷するのにも時間が……あ、そうだ!私が簡単な構造図を描いてお渡しします。」

ラヴァ「何だって?」

スノーズント「少し待っていてください、手頃な図面制作道具を探してきます……」

ラヴァ「……ウェイ長官、龍門の構造はそんなに簡単なんですか?」

フミヅキ「もちろんとても複雑ですよ。地表の設備の給電システムと源石エンジンだけでもかなり膨大な量になりますから。ですがスノーズントさんがああ言ったなら、本当に描けてしまうのかもしれません。」

スノーズント「私、新しい職場の環境に慣れるために、把握できる範囲の構造図を全部覚えたんです!あ、安心してください、ただ覚えたものをそのまま描くだけです。そのくらい、私にもできますよ!」

ラヴァ「……「そのくらい」だと?」

アーミヤ「このレユニオンたち……本当にキリがありません……」

チェン「お前たちは先に行け。次の交差点で陣地を築くんだ。少なくともあの幻影兵の侵攻は止めてくれ。」

近衛局隊員「了解!」

ニェン「じゃあ私はどうすんだ?だーれも止めないのか?おっと、言ったそばから……血気盛んなことで。」

チェン(この盾、やはり何かがおかしい——)

アーミヤ「チェンさん、私も加勢します——!」

ニェン「おい、お前!役に立ちそうな兵器をぶら下げてるくせにそんな鉄くずで戦うなんて、私を舐めてんのか?それとそっちのお前!なかなか制御が効かないとんでもねぇ力を隠してるみたいだな。ちょっと披露してくれてもいいんじゃねぇ?」

チェン「挑発に乗るな!」

アーミヤ「はい!」

ニェン「なんだよ。今の奴らはなんだってみんなこんなに冷静なんだよ。これが現代社会によって抑圧された人間性ってやつか?全力で戦えない奴らと喧嘩してもつまらねぇな。私の剣と盾が気になんなら、ほら、好きに攻撃してみろ。」

チェン「——では遠慮せずにいかせてもらう!」

アーミヤ「——!盾が砕けました!」

ニェン「おーおー、おめでとう。——ほら、もう一枚あるぞ。新品みてぇだろ。」

チェン「チッ、そう来ると思ってた……」

近衛局隊員「チェン隊長!敵がこちらの防衛線に突撃を繰り返しています、もう持ちません!」

チェン「……近衛局ビルに撤退しろ。ゲートを閉めて防衛設備を起動せよ。できるだけ時間を稼ぐよ。ラヴァが何か策を見つけていることを祈るしかないな。」

ニェン「なんだよ、もう逃げんのか?もうすぐゴールだってのによ……ああ、あのでっけービルだな。高ぇなぁー。馬鹿みたいに高いだけだけどな。」

チェン「戻ったぞ。人員の散開は済んだか?」

近衛局隊員「他部署のメンバーは全員、近衛局ビルを離れました。各小隊は計画通り、ビル周辺を包囲しています。」

チェン「一匹足りとも逃すな。龍門の損失を最小限に留めるためにも。」

近衛局隊員「了解。」

アーミヤ「すみません、ラヴァさんがどちらにいるか分かりますか?」

近衛局隊員「ラヴァさんはスノーズントさんから、地下インフラエリアの構造図を受け取ったようですが、その後は分かりません。」

チェン「……」

アーミヤ「ラヴァさんを信じましょう、チェンさん。」

チェン「「信じるしかない」だろう。」

真面目な近衛局隊員「年が防衛システムを突破しました!ゲートも破られました!」

軽薄な近衛局隊員「モニターシステムはまだ動くか?年の動向を確認しろ!」

チェン「交戦は避けろ、ビルが潰れるまで戦ってもこちらが被害を受けるだけだ。」

アーミヤ「ラヴァさんの言う通りです。おそらく年の正体と能力の真相を掴めない限り、有効なダメージを与えることはできません——」

ラヴァ「根絶やしにするなどもっての外だな。」

アーミヤ「ラヴァさん!」

チェン「戻ってきたか。問題が解決できていると良いのだがな。」

ラヴァ「都市防衛砲のコアを爆発させて、奴を巻き込む。そこまではアタシが誘い出す。」

チェン「どうやって?奴は対等に話せる相手だとは思えないが。」

ラヴァ「奴の性格を十分に理解したみたいだな。……とにかく、あとはアタシに任せてくれ。」

ニェン「人っ子一人いやしねぇ、変だな。急に難易度を上げすぎたか?弱っちいったらありゃしねぇな、あいつら。あん?なんだ?どこにいる?」

ラヴァ「ここだ。」

ニェン「おーっと、前回やりすぎたんじゃないかって心配してたんだ。まだピンピンしてるみたいで安心したぜ、ラヴァ。その杖で力を溜めて、地面をちょこっと突っついただけで、こんなデケェ穴ができるとはな——ここ数日で見てきた奴らを基準にしたら、お前ってほんっと、相当つえーよなぁ?」

ラヴァ「……ここは都市の中枢エリアだ。」

ニェン「知ってるよ。この三日で近代の知識をある程度詰め込んだんだ。都市ネットワークってやつは便利なもんだよなあ。いつか大陸全体に広がると良いんだけどな。」

ラヴァ「お前の学習速度には驚かされる。」

ニェン「大したことねぇよ。まあまあってとこだろ。まあ寝てない間の貴重な時間を無駄にしたくないしな。」

ラヴァ「お前の兄弟姉妹たちが待ちきれないからか?」

ニェン「……あれから考えたんだが、いくらお前だってそんなに正確な情報を把握してるはずねぇよな。この間はカマかけてやがったのか?」

ラヴァ「そうか、気付いたか。」

ニェン「じゃあ私も聞こう。お前の姉ちゃんはどうしたんだ?今どこにいんだ?」

ラヴァ「なぜそれを————お前には関係ない。」

ニェン「へぇー、そういうことか。わかったぞ。羨ましいもんだな。殺し合わなくても、普通に互いのことを意識しあえるなんて。炎がうねってるぜ、怒ったのか?」

ラヴァ「……殺し合いと言ったか?やはりお前は……」

ニェン「十二人。私を含めて、十二人だ。つまり、私と十一人の兄弟姉妹たちは、お前には理解できないほどの長い年月の間、殺し合いを続けてるってことだ。だが本当にバカバカしい話だ、左手と右手が喧嘩して決着がつくと思うか?自分で自分から略奪しても合計の数は変わらねぇだろ?マジで、馬鹿みてぇに無駄だよな。」

ラヴァ「どうやらお前たちの仲はそれほど良くないみたいだな。」

ニェン「……またカマかけようってのか?」

ラヴァ「さあな。」

ニェン「——」

ラヴァ「黙って攻撃を仕掛けてきたのは初めてだな。だがいつでも優位に立っていられると思うな!」

ニェン「ぐっ!何するつもりだ……この場所ごとぶっ壊す気か?うぐっ。」

ラヴァ「一騎打ちでは勝ち目はない、それははっきりと理解している。」

ニェン「直接「だが」の先を言えよ、まだ何か隠してんだろ。ああもう、面倒臭ぇな。暗くて嫌なところだし、衝車でも創ってぶち抜くか。」

ラヴァ「止めておいたほうがいいぞ。」

ニェン「なんで——待て、こりゃ何だ?コア?溶炉……いや、兵器か?攻城兵器だな?このエネルギー……これはお前たちが造ったのか?」
ラヴァ「現代知識の勉強がまだ足りないみたいだな、年。だがこいつの構造はだいたい想像がつくだろ。お前のために用意した巨大都市防衛砲のコアを使った爆竹だ、鳴らしてみるか?」

ニェン「ハッ、この程度で私を退かせるなんて無理な話だ。」

ラヴァ「——まだ同じことが言えるか?」

ニェン「お前……威力が足りねぇのはよく分かってるってか。周囲の空間を圧縮することで、自分ごと私を高密度の爆発の中に閉じ込めるつもりだな。」

ラヴァ「これでアタシが意識を失うまでは、お前はどこへも逃げられない。」

ニェン「そうなりゃ内も外も大爆発だ、私たちはその圧縮された空間事、まさに砲弾みたいにぶっとばされるだろうな。まったく、お前はすごいなぁ。逸材だよ、ラヴァ。」

ラヴァ「忘れてないか?爆発源はもう一つある。私だ。」

ニェン「へぇ、撃ち出された後にお得意のアーツで自爆するつもりか?正に超特大の打ち上げ爆竹ってところだな?」

ラヴァ「呑気に話しているようだが、内心はもう気が気じゃないんだろ?」

ニェン「お前はどうなんだ?都市防衛砲の爆発から身を守りながらアーツを放つなんて器用なこと、お前にゃできねぇだろ。お前の限界はもう分かってんだ。圧縮した空間を自分の棺桶にするようなもんだ、死ぬぞ。」

ラヴァ「そうとは限らない。」

ニェン「でも私は絶対死なないぜ。」

ラヴァ「お前に傷を負わせられるだけでも悪くないさ。」

ニェン「強情な奴だな……褒めてやるよ。」

ラヴァ「次はこちらが質問する番だ、お前たちの目的はなんだ?」

ニェン「……この身体に宿る意思の記憶が残ってる年代よりも前から、私たちは殺し合ってた。そして、私が思い出せる一番古い記憶の頃から、私たちはそんな殺し合いに疲弊を感じ出したんだ。」

ラヴァ「だから街を襲うようになったのか?」

ニェン「お前も言っていたが、みんなこの大地で生を求めてんだ、命ってやつはそうやって続いてきたんだよ。私たちも同じだ。」

ラヴァ「自分の悲惨でうさんくさい身の上を語ったからって、これまでの行いを正当化できると思うな。」

ニェン「あー……まぁそこまで悲惨ってわけじゃねぇよ。どれほど前かは忘れちまったが、人間たちから面白ぇゲームを学んだんだ。それからは殺し合いの代わりによくそいつで戦ってた。グーチョキパーがどうたらってやつだ。」

ラヴァ「——」

ニェン「ぐっ!クソっ!マジで私を道連れにするつもりか!?」

ラヴァ「お前は自分は絶対死なないと言ってただろ。」

ニェン「いや、言ってみたかっただけだって。」

ラヴァ「……アタシの計算通りなら、お前に残された時間はもう多くない。賭けてみる価値はある。」

ニェン「へぇ、そうか。じゃあ三、二、一って数えて、一緒にここを爆発させてみるのはどうだ?三——」

近衛局隊員「爆発を確認!二号予備都市防衛砲のコアの反応が消失!」

アーミヤ「ラヴァさんは確認できましたか!?」

近衛局隊員「いえ、できていません。爆発の煙が大きすぎます、我々は——いや待ってください!動きがあります、何かが煙の中から飛び出してきました!」

ニェン「アハハ、やるねぇ。こんな大爆発は久しぶりだ!あの毎日似たような騒ぎを起こすクソガキを思い出したぜ!」

ラヴァ「ぐっ——は、放せ!うわっ、放り投げることはないだろ!」

ニェン「お前が放せって言ったんだろ。」

近衛局隊員「ロドスのオペレーターラヴァとターゲットを確認!」

チェン「取り囲め。」

ラヴァ「あの瞬間に何をしたんだ……どうしてアタシを助けた?」

ニェン「あの音が嫌いなのは本当だが、お前を助けたのは反射的にだ。飛びかかってきて来て逆に命拾いしたな。しかしあの状況下でまだ私を殺そうとするとは……お前も肝が据わってんなぁ。だが今ので力を使いすぎちまった。あーあ、手の感覚がなくなってきた。はぁ、もうダメだ、これ以上は戦えねぇ。殺れよ。思い切りよくな。」

ラヴァ「お前……」

ニェン「早くしろよ、こちとら大人しく降参してんのに、何をまごまごしてんだ?」

ラヴァ(なぜ急にここまであっさり投降するんだ……)

ラヴァ「……お前が何を企んでいるかは知らないが、トドメは刺さない。ここでお前を殺したところで、何にもならないからな。それよりこちらの質問に答えてもらった方が有意義だ。お前をロドスに連行する。」

ニェン「いや。今殺ってくれ。お前がダメなら、隣のそいつらに頼んでもいい。というかそいつらはハナっからそのつもりみたいだけどな。」

チェン「撃て!」

ラヴァ「待て!」

ニェン「グッ、はぁ、これでやっと解放される……真相を知りたいんだったな、ラヴァ。それじゃ耳かっぽじってよく聞け、私がこの都市を襲った理由は——龍門の……花椒があまりにも……味気ねぇからだ……」

ラヴァ「……」

ニェン「意味が分からねぇか?そりゃ残念だ……じゃあな……お前に会えて……面白かったぜ……」

アーミヤ「気をつけてください、まだ余力を残している可能性があります。」

ラヴァ「いや、大丈夫だ。クソっ——一杯食わされた。」

チェン「何だと?奴の身体が、消えた?」

ラヴァ「爆発の膨大なエネルギーを利用して自分の幻影を創り出したんだ、まんまと——逃げられた。これだけの努力と犠牲を払っておいて、奴を逃がすなんて!」

ニェン「うーん、でもなぁ、ここで私が逃げておしまいってんじゃ、あまりにもつまらねぇな。」

ラヴァ「えっ?」

ニェン「面白ぇことを思いついたんだ。ほら、さっき言っただろ、都市を巨大なバケモンにするって。」

アーミヤ「あ、あれは一体?」

チェン「都市が隆起している……何をするつもりだ!?」

ニェン「ここ数日、私はただ暇潰ししてたわけじゃねぇんだ。満足のいくバケモンを創る仕込みをしてたんだよ。ああ……そういえばな、ラヴァ、あの程度で私に命を救われてるようじゃ、何か成し遂げるには程遠いぞ。このバケモンを倒してみろ。もしそれができれば、お前たちにもあの狂気を封じ込められるだけの可能性があるってことだ。よーし、こいつは「玄極巨兵」と名付ける。都市全体の物質とエネルギーを煉化したバケモンだ。このくらい辛口じゃねぇと満足できねーだろ。もしお前らがこいつすら片付けられねぇなら……遅かれ早かれ、他の奴にやられるだけだ。私の兄弟姉妹たちは手加減なんて知らねぇからな。残念だなぁ、ラヴァ。もう火鍋が食えなくなるかもしれねぇな。「空霊を振盪させ、八音響き渡らせる——」」

ラヴァ「まっ、待て待て!急に詠唱を始めるな!違うだろ!」

ニェン「何が?」

ラヴァ「こんな展開をどうやってまとめるんだ!?」

ニェン「なんだよ、私はラスボスだろ。ここぞとばかりに凄さをアピールしないと、客は満足しねぇぞ?」

ラヴァ「ダメだ!!」

ラヴァ「……年、お願いだから頼むよ。あと、中盤から変なセリフが増えたのは何なんだ?何を言ってるか全然分からなかったぞ。屍の群れが龍門を襲うって台本はどこに行ったんだ?」

ニェン「私を信じろって。私は毎年こういうクルビアのB級映画を百本以上見てんだ。どれも儲かってるらしいぞ。」

ラヴァ「だとしてもめちゃくちゃ過ぎるだろう……後半はほとんどお前の独り芝居じゃないか。他の出演者はどうするんだ?」

ニェン「どーでもいいだろ、主役は私だぜ?」

ラヴァ「それを言うならアタシも主役だろ、それに監督はこのアタシだ!」

ニェン「ああん?ラヴァ、私たちはダチだろ?まさか……お前が監督に決まったからって、権力を振り回して私をいじめるのか?」

ラヴァ「いやいやいやそういうつもりじゃないけど————でも打ち上げ爆竹?なんでそんなものを出すんだ?」

ニェン「あーそれか、私はマジで爆竹の音が嫌いなんだよ。嫌なことばっかり思い出すからな。例えば昨日スポットの野郎に驚かされて、炭酸飲料を身体にぶちまけたこととかさ。」

ラヴァ「じゃああの最後の巨大な怪物は何だ?あんなの出したら経費はどうするんだ?」

ニェン「あれがかっけぇんじゃねーか。」

ラヴァ「カッコよくない!」

ニェン「チッ、チッ、チッ。ラヴァ、よーく考えてみろ、私たちはどんな映画を撮ってんだ?巨大な怪物、つまり社会性と理性を剥がした純粋な野蛮——。私が見た限り、現代の奴らに一番欠けてるのは、そんな本能の叫びなんだ。これが都市派のロマンってやつだろ!それとな、お前が選んだ役者はどれもこれも話になんねぇぞ、大根役者ばっかりじゃねぇか。こいつらなんか悪くねぇんじゃねーか?……ほら、この資料に書いてある……ブレイズ?あとこいつだ、エンペラー?おい!このエフイーターって奴はムービースターじゃねーか!舞台が龍門だからって龍門の奴らだけを使う必要ねぇだろ?こういう奴連れて来いよ!なに?新現実主義?」

ラヴァ「ああもう、ちょっと黙れよ!……それより、私もお前のペースに流されながら演じてたが、よく見てみたらこれ、劇中に権限記録でしか知りえない情報が入ってるんじゃないか……?絶対に姉ち——あの医者にバレんなよ!バレたら終わるぞ!」

ニェン「あの医者になんでそこまでビビってんだよ?まぁいいや、じゃあラストシーンを変えてみるか——」

???「我々に残された時間はもうあまりない。にも関わらずお前は、まだ人間を育てることに執着しているのか?もしや、我々を止める者に鍛え上げようとでも?……待て。年、何をしている?気息が膨張し、意識が揺らいでいる……一体何と出会った?……まさか、彼らが本当にあのようなものを作り出したと言うのか……何?私に問うているのか?私が知るものか。私はただ遠い遠い昔、炎国に遊びに行った時、ついでに面白い噂を流しただけだ。人間如きに弱点を知られただけで苦戦するとは……まったく、余計なトラウマをいつまでも引きずっているからそうなる。ああ?爆竹?お前は爆竹なんかにやられたのか?ハハハハ!この目で見られなくて残念だ。お前が負けを認める姿をこの素晴らしい筆使いで記録してやりたかった——お前が辛酸を舐めさせられたなら、それもいいだろう。……龍門。私はこの都市が好きだ。紙の上からも無秩序な争いが生き生きと見て取れる。捕食には最適だ。だが、お前に次はない。何度も目覚め、何度も眠りにつく。その輪廻には、もううんざりしているんだ。そろそろ、大地の火種を消し去る時だ。」

——ANCIENT FORGE 2——
——COMING SOON——

……

ラヴァ「待て待て待て待て!!」

ニェン「なんだよまた!」

ラヴァ「ありゃ誰だよ!?捕食ってなんだよ!あとなんで続編があるみたいな終わり方なんだ!」

ニェン「人を喰らう巨大な怪物と弱小な人間が戦うってのは、かなりのウリになると思わねぇのか?」

ラヴァ「ま、まぁそれはそうかもしれないが……」

ニェン「それで「火種」とか「惨殺」とか「輪廻」みたいなキーワードを散りばめて、暗くて重―いシーンを合わせてよ、照明は暗めに、カメラを少し揺らしながら血糊をぶち撒いて……完成だ!これが壮観ってやつだ。テラで一番儲かるエンタメ作品を創んぞ!」

ラヴァ「違うだろ!アタシが最初にお前に言ったのは「新年を祝うショートムービー」だろ!しかもよく見たらあいつはお前の妹じゃないか!自分の妹を怪物にして壮観を演出するなんて感心できないな!」

ニェン「気にするな。あいつはこないだ私の火鍋にアイスクリームをぶち込んで、激辛ソースも全部捨てやがったんだ。お互い様さ。」

ラヴァ「お前たち姉妹のことは理解できない……」

ニェン「こっちも一緒だ、私もお前たち姉妹がよく分かんねぇ。お前は結局姉ちゃんが好きなのか?嫌いなのか?」

ラヴァ「おい!!それは今関係ないだろ!とにかく、セリフを片っ端から直してくる!それとな、アーミヤにバレる前に資料を戻しとけ!というかどこからこんなに資料を持ってきたんだ?」

ニェン「前にこっそり盗み見たついでに複製しといたんだよ。分かるだろ、私の能力はこういう時に役立つんだよ。」

ラヴァ「はぁ……とにかく今はアタシの言うことを聞いとけ。そうしないと……どうなるか恐ろしくて想像もしたくない。忘れるなよ!アタシが戻ってくるまでに絶対に戻しとくんだぞ!」

ニェン「あーあ、わーったよ。じゃあどうか頑張ってくれよ。次の台本をお待ちしてまーす、監督さん!はぁ。なんだよ、みんなあの医者にビビってんのか?」

クロージャ「「権限記録は一般のオペレーターに見せるべきものではない。」うーん、あの喋り方は真似しても全然似ないね。まぁそれは置いといて、権限記録をそのままコピーするのはやりすぎでしょ?」

ニェン「機密情報だったのか。なるほどな、道理でこんなに面白ぇわけだ。まぁ別にいいだろ。どうせ短い命、あれこれ言いっこなしだ。ところでラヴァの奴、悩んだ末にあいつの思う「良い龍門」を台本にしたみたいだが、どう思う?私はやっぱり龍門を巨大メカにして、ガーン、ドーン!って方が気持ちいいと思うけどな。」

クロージャ「文句は直接監督に言ってよ。でも君が本当に都市全体を巨大メカに変身させられるなら、絶対あたしにも見せてね!」

ニェン「ちょっと話を盛っただけだ。もしホントにそんなことができるってんなら、とっくにそいつに乗ってドライブしに行ってるっつーの。こういう台本を書くには、ラヴァは甘すぎるんだよなー、私には分かる。でもせっかくやるなら、やっぱり派手にやんねぇと。難しいけどな。あー、でもこの私が協力してやってる以上、クルビアのあの映画会社どもだってマジで乗ってくるかもしれねぇよな?」

クロージャ「あーどうかなあ……うーん……なんと言うか……ちょっと情報量が多すぎるんじゃないの?それにB級映画要素も盛り盛りだし。」
ニェン「監督は別になんにも言ってなかったぜ。それに情報量は多いかもしんねぇけど、どの部分がそうじゃないかなんて、お前くらいしかわかんねぇよ。」

クロージャ「えっ?そうじゃない情報ってのはどれくらいあるの?」

ニェン「時間の洗礼を受けるなり、口伝いに伝承されるなりした昔話は、絶対に元の内容からは多少なりとも変化してるんだよ。そういうのは、恐ろしければ恐ろしいほど、非現実的であればあるほどみんな興味を持つんだ。映画も似たようなもんだ。」

クロージャ「昔話ねぇ……」

ニェン「さっきの脚本は、その「昔話」と同じようなもんだよ。ラヴァも気づいてると思うけどな。」

クロージャ「あー、君たちっていつもそんな感じだよね。掴みどころがないっていうか。前回もそうだったし。」

ニェン「ああん?君たち?前回?」

クロージャ「ケルシーが教えてくれるまで、あの人が来たなんて知らなくてさ。もし知ってたらサインを貰いに行ったのに、あーあ……」

ニェン「ああ……海のあいつらか?バンドをやってる奴らだな?」

クロージャ「そうそう!知ってるんだね。君たちみたいな同族同士ってお互いに興味ないと思ってたよ。」

ニェン「誰がそんな事言ってんだよ!名誉棄損だ!訴えてやる!」

クロージャ「ケルシーだよ。」

ニェン「あーあいつが言ってんのか……じゃあいいや。私もラヴァもあいつらの曲は好きなんだ!まぁ、どのアルバムが一番かって話になるとウマが合わねぇけどな。でも初めてあいつらを見て、あの旋律を聴いた瞬間から、あいつらの正体が何かは確信してた。悪くねぇよな、悠々自適に生きれてんだからさ。他の海の奴らより——」

クロージャ「まぁね、でもどうして君は彼女がロドスに来たことを知ってるの?」

ニェン「あっ。」

クロージャ「艦内のモニターシステムに無理やりクラックされた痕跡があったんだけど。」

ニェン「あ、あはは、なんだよ私を疑ってんのか?そんなはずねぇだろ、新しい技術に興味があるからってあれをいじくり回したりはしねぇよ!絶対しねぇ!私は嘘はつかねぇぞ!」

クロージャ「ちょっと!直すの大変だったんだから!記録をいじるにしてももう少し頭のいい方法でやってよ!もし君がちゃんと真面目に働いて、いつもサボってこんなことばかりしてなきゃ、炎国の辛口料理を食堂に加える申請権だってとっくに得られてたはずだよ。」

ニェン「サボりじゃねぇって!『龍門末日防衛紀』で歴史を広めようとしてんだよ、それに何よりも——」

クロージャ「……何よりも?」

ニェン「というか、『龍門末日防衛紀』って名前、ちょっとダセェか?」

クロージャ「最近オペレーターたちが装備を登録する時、ラテラーノっぽい名前で登録するようになってきたのは、君たちが発端?やっぱりタイトルは『洪炉示歳(エンシェント・フォージ)』にしようよ!」

ニェン「じゃあなんとかこいつらを私たちの演劇事業に引き込めねぇか?一番大事なことだ。」

クロージャ「ありえないね。君たちが選んだ役者候補はちょっと無理を言い過ぎだよ。」

ニェン「努力はしてみてくれよ!せっかくの貴重なロドスの年越しを祝う映画なんだぞ!」

クロージャ「これだけのメンバーが揃った時点でもう努力の余地はないでしょ!本気で言ってるの?」

ニェン「チッ、じゃあいいよ!こちとら優秀な映画愛好家だからな。私の表現と思いは映画を通じて観客に伝わるはずだ。ああ、絶対に伝わるさ!あ、そしたら「実話を元にした映画です」って付け加えといたほうがいいか?みんなビビっちまうかな?ラヴァもテンパるか?」

クロージャ「心配しないで。ラヴァちゃんはもう昔みたいな子供じゃない。あの子の成長は誰の目にも明らかでしょ。」

ニェン「……子供?お前らの歳は大して変わんねぇだろ?サルカズは歳がわかりにくいが、私は騙せねぇぞ。」

クロージャ「コ、コホン!と・に・か・く!あの子はロドスの中堅!みんなの信頼を勝ち得たオペレーターなの!」

ニェン「それもそうだな。あいつはあいつが思い描いてたように、マジでかっけぇことをやりながら、かっけぇ戦士になった。」

クロージャ「でしょでしょ?」

ニェン「そう考えたら、ホントに心配いらねぇな。多少知ったからってどうにもなんねぇし。よし、じゃあやっぱり言うべきことはハッキリ言おう!私はどっかの医者みたいに、いつでもミステリアスを装うつもりはねぇ!それにどうせいずれは知ることだからな。大丈夫だって。」

クロージャ「……うーん。いずれは知る……そうだね!その通り!でもどうしてラヴァちゃんからなの?」

ニェン「あいつのことをめちゃくちゃ気に入ってるからだな。あいつの努力、あいつの考え、あいつの成長……ロドスはいつもそんなサプライズを見せてくれるんだ。会ったときからバケモンみてぇに強いオペレーターより、一歩一歩前に進んでる奴のほうが好感が持てるだろ?だからこそ私もここに残ってやってんだ、ついでに人間をそこまで敵視してない兄弟姉妹たちにも宣伝してやってる。」

クロージャ「……宣伝ってどうやって?テラの大地で一番居候に向いてる移動艦船とか?」

ニェン「そうだ!ロドスの比類なき包容力ってやつがあれば、どれほど食の好みが合わなくても平和的に共存できるからな!」

クロージャ「こらこら……」

ニェン「それにここは、今どき珍しくそれなりに楽しみが見つかる場所でもあるからな。だってな、互いに仲良く過ごすことも、喧嘩をすることも、二日酔いの後に昇る太陽を一緒に見ることだってできるんだぞ。私からすれば、「明日」ってやつは当たり前のものじゃねぇんだ……お前ならわかるだろ。だから私は、このロドスって場所がマジで好きなんだ。」

クロージャ「え……うん……うう……お褒めに預かり光栄ですって顔を赤らめるべき?それとも急に真面目なことを言わないでってツッコむべき?」

ニェン「いやお前もマジになんなよ、ただの新年の挨拶だって!それより今夜の食いもんはなんだ?」

ロドスオペレーター「ラヴァさん?新年のアレ……スタッフと撮影準備はもう全部……」

ラヴァ「……ちょっとだけ時間をくれ。どこかの頭のぶっ飛んだ主役のせいで、若干間に合わなくなるかもしれない。」

ロドスオペレーター「えっ?どういう……」

ラヴァ「はぁ……この新しい脚本は読んだか?」

ロドスオペレーター「……読みましたが、これは……どうすれば?」

ラヴァ「……まぁいい。アドリブでやろう。」

ラヴァ「……まったく。こんな回りくどいやり方で、何を伝えようって言うんだ。お前が何を考えてるかなんて、アタシは最初から分かってるぞ。何か残したいなら、わざわざ引っ掻き回すなよ……こちとらそもそもお前の為にこんな映画を……「龍門の花椒はあまりにも味気ない」……か。あのふざけた性格は、いつまでも変わらないな。フッ、本当にとんでもない悪役だ。」


文字数:15,927文字 原稿用紙40枚分
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