鎮め火のケラーキ

しずめびのケラーキ

サラマンダーは身体が熱いから近くにいるとすぐ分かる。
でもあの姉ちゃんは全然体温を感じないんだ。
この前いつの間にか背後にいてびっくりしてたら、
二時間前から声かけようとして躊躇ってたとか言ってて二度びっくりだよ。

――ケラーキについて:鍛造職人バイスバイト


四大精霊族のひとつ、サラマンダーの女性。
熔鉄のように輝く赤熱色の髪と、高い体温を示すような赤みの差した肌。
容貌の派手さと対照的な淀んだ目と表情筋の死んだような陰鬱とした面持ちが特徴。
長身だが、常に猫背でうつむきがちの姿勢のため本来よりも小柄に見える。
プレイヤーからの愛称は『陰キャ精霊』、『おいやめろ馬鹿』、『俺のトラウマ』など。

フェルゼン公国の工業都市タウゼンプレタ魔装工廠の製鋼部門で三番高炉主任管理担当者を務めている。
専門は火を司るサラマンダーとしての特質を利用した炉内温度の調整。
製造品の表面加工仕上げにも携わる。

精霊族は往々にして司る要素のイメージに則った性向を持つが、
シルヴェストルの多くは屈託のない楽天家であるなど)
サラマンダーの火のイメージに反し、ケラーキは非常に陰気で消極的な性格。
静かな読書や思索を好み、他者と関わることに過大な緊張とエネルギー消費を要する。


4大属性を司り、世界の根幹を為す神代遺物を守護する四大精霊族は、
基本的に人里離れた未踏領域に拠点を構え、同族と身を寄せ合って暮らしている。
精霊であるゆえ生命活動に必要な活力の多くを環境中から摂取することができ、
種族自体の数も多くはないため狩猟採集や自分たちで育てる作物で十分に生活が回る。
生活圏が拠点周辺で完結しているため、ヒト社会とは隔絶した環境で生きている。

しかしながらそれはあくまで、神代遺物の守護という役目を果たすことのみを求めた場合の話。
それ以上の欲求、例えば美食や娯楽などを満たすには、ヒト社会からの供給に頼るほかない。
また、一部の精霊には種族のコミュニティから離れて生活しようとする者たちもいる。

彼らにとって最も必要なものは、閉鎖的な環境の『外』と関わり合うための、現金収入である。

こうした背景から、少数ながら精霊族にも人間社会に出稼ぎとして働く者がおり、
都市部でも郵便配達を行うシルヴェストルや漁業に携わるウンディーネの姿を
ごく一般的に見かけることができる。

とりわけノームサラマンダーは、それぞれ採掘と火を操る素養から、
工業に優れた適正を持っている。
そんな彼らの主要な出稼ぎ先となるのが多民族国家フェルゼンの魔装工廠である。
同地のブランドである高品質な鋼装(サーメット)の生産には精霊の技術力が欠かせない。

ケラーキもまた、そうした出稼ぎ精霊の一個体ではあるが、
コミュニティから出た理由はヒトの世に興味があったからではなく、
アットホームな村社会に耐えられなかったから

サラマンダーの拠点焔猛る太初の高嶺では、火精王の代替わりのシーズンになると、
素質を持つレクス・イグニスの候補者が複数個体出現する。
特別な一個体が生まれるシルヴェストルとは異なり、
候補者同士で競い合って最終的なレクス・イグニスを決定するのである。

そうして決まったレクス・イグニスは一本の蝋燭となり、
火精王の魂から聖火を移されて王の継承が行われる。
この儀式を「継ぎ火」と呼ぶ。

ケラーキは、「代々の火精王と一体化して四六時中一緒にいるのがホントにキツイ」という理由で
継ぎ火の儀式直前に太初の高嶺を出奔した、元レクス・イグニスの正統後継者である。

地元を脱出したケラーキは、タウゼンプレタに流れ着いてそのまま就職。
もう数十年と実家には帰っておらず、親族からは完全に勘当扱いを受けている。


勝手極まる理由で後継者の役目を放棄したケラーキであるが、
これは長年積み重なったコミュニケーションの苦痛に耐えかねてのことであり、
本来はむしろ気遣いのしすぎで疲弊してしまうタイプのコミュ障。

炉の温度は鉄鉱石の品質や量、工程進捗、製品の仕様等を考慮して決めるため、
営業部署や生産管理部署とも連携して調整しなければならないが、
「他の人忙しそうだから」と連絡相談のタイミングを逸し続ける。

同僚とも何を話して良いかわからず沈黙しがちな一方、
一旦話し始めると緊張のあまり会話の順序を一段二段とすっ飛ばすうえに早口過ぎて伝わらない。
そもそも喋り慣れていないため音量調整をミスってびっくりされる。

雑談が嫌で嫌で仕方ないので昼食は一人で摂りたいが、
「あの人また一人でご飯食べてる」という目で見られるのも嫌(被害妄想)なため、
工場内を歩きながらパンなどを食べることで多忙のあまり仕方なく移動中に食事してる感を出す

飲み会の誘いを断れずに毎回隅っこで沈黙しているため、
周りもいい加減断って欲しいが社交辞令で誘わないわけにもいかず、
本人は断って嫌われたくないため毎回来てしまう…

といったあまりに生々しいコミュ障工場勤務者の生態が描かれ、
プレイヤーの多くはファンタジー世界で一体何を見せられているのかと困惑した。

そのコミュニケーション能力の欠如は明らかに仕事に支障が出るレベルであるが、
それでも滞りなく完璧な火勢管理で高品質な製品を生産できてしまうのは、
ひとえにケラーキがサラマンダーとして非常に優れた能力の持ち主だからである。

特に彼女は火属性としては稀有な「燃やさない」能力に長けており、
たとえ燃え盛る火の中であっても必要な部分にだけ熱が通り、火入れが不要な部分には焦げひとつ付かない。
火を完全に制御下に置いているという証左である。
ミクロン単位で加熱箇所を精密に区分できるため、彼女が焼きを入れた金属は美しい刃紋の輝きと強靭な結晶構造を持つ。
こんなレクス・イグニスの面目躍如なんか誰も見たくはなかった。

ゲーム上では、タウゼンプレタ関連のサブクエや『カーノレ爺さんの空飛ぶ家』での気球素材集めで登場。
特に後者はメインクエストを進める上で前提になっているため、プレイヤーは必ず彼女と出会うことになる。
気球の外装に用いる高品質な鋼を入手するため工廠を訪ね、協力してくれる製鋼技術者を探す際、
工場長から優秀な技術者としてサラマンダーのケラーキを紹介される。

直接話をつけてこいと言われ、早速彼女のもとを訪れるわけだが、
前述の通り無意味に移動しながら飯食ってるためなかなか捕まらない。
さらにケラーキ本人も知らない人と会うのが怖いのか逃げ始めるので、
ただでさえだだっ広い工業都市の中を鬼ごっこのように追いかけ回すことになる。
工廠の中を巡り、同僚たちに話を聞きながら彼女のいそうな場所を絞り込む。

目を合わせて喋ってくれないしオドオドしていてやたらと自信がないため、
大丈夫かコイツと思わされる。

ようやく捕まえるとケラーキ本人からクエスト『ディスコミュニケーション』が発注され、
彼女のコミュ障を改善するために協力することになる。

首尾よく解決するとケラーキと少しだけ仲良くなり、鋼づくりに協力してもらえることになる。
ちょっと仲良くなった途端ものすごい長文で会話ログが流れはじめてまたしても大丈夫かコイツとなるが、
本職サラマンダーの技術力は本物で、恐ろしい速さで必要数の鋼を作ってくれるうえ、
材料が揃っていれば気球の組み上げまで全部やってくれる。仕事はめちゃくちゃ出来る。
さらに仲良くなると、揃っていない素材まで勝手に図面を引いて生産してくれる。ちょっと重い。

また彼女は鍛冶屋NPCとしての機能も持っており、素材を持ち込むと武器を作ってくれるが、
これも好感度を上げていると素材を節約してくれるため非常に便利な存在になる。
都合の良い女過ぎてもはや怖い。

プレイアブルキャラとしても実装されている。ガチャ産、レア度はスーパーレア。
群を抜いて高いDEX、そこそこ高いINTのおかげで魔法アタッカーに適正があるが、
何よりも彼女を特徴づけるのは、パッシブ型のユニークスキルである『鎮め火』。

その効果はフィールド単位での『火属性ダメージ99%カット』。
地形効果も含め、彼女が存在する限り敵味方のあらゆる火属性ダメージが99%軽減される。
永続するダメージカット能力としては破格の数値であるが、味方の火属性も大幅に弱体化してしまう。
そしてケラーキ本人も火属性魔法の使い手であるため、自身の攻撃能力も沈黙する。

ただし、1%だけはダメージが通るというこの特性を逆手にとることもできる。
爆弾系アイテムの中には『火属性ダメージをトリガーにダメージを発生させる』効果をもつものが多く存在し、
敵に投げつけた後にほんの僅かでも火属性ダメージを与えれば起爆して周囲に割合ダメージをばらまく。
多少ルピはかかるものの、アイテムをじゃぶじゃぶ突っ込める懐事情なら攻撃能力を確保できるのである。

燃やしたいところだけ燃やし、そうでないところは絶対に燃やさないという、
彼女のキャラとしての特質をよく再現したスキルと言えよう。

また、火属性ダメージを問答無用でカットするため、
多くのプレイヤーがメインウェポンにしているであろう聖杖アレフガルドに対するメタになり得る。
同様に、『聖灰の』マルグリットをアレフガルド装備状態で撃破する際にも有効。
というかコレ以外に聖杖持ちマルグリットの超火力を突破するにはウルトラレア級の防御スペルやタンクが必要なので、
よほど課金をしていない限りはほぼ唯一の回答となるだろう。

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最終更新:2022年11月09日 00:19