毛利は怯えを隠したきつい目で元親を見る。
「無責任な。貴様こそ自分が長曾我部を継ぐものという自覚はあるのか」
「へ、男なら自分一人で立ててんのが当たり前だろ。誰かのために命預けてんのは家柄じゃねえ、
そいつにそんだけの価値があるからだ。それが解ってんのか?」
死んだって悔いなんかない、それだけの人物に出会えたなら自分の全てを尽くす。
それが悪いなんて思いやしない。むしろ命を燃やす相手が見いだせるのは幸福だ。
それがヘンな宗教でも、毛利にとってそれだけの価値があるならいい。
「無責任な。貴様こそ自分が長曾我部を継ぐものという自覚はあるのか」
「へ、男なら自分一人で立ててんのが当たり前だろ。誰かのために命預けてんのは家柄じゃねえ、
そいつにそんだけの価値があるからだ。それが解ってんのか?」
死んだって悔いなんかない、それだけの人物に出会えたなら自分の全てを尽くす。
それが悪いなんて思いやしない。むしろ命を燃やす相手が見いだせるのは幸福だ。
それがヘンな宗教でも、毛利にとってそれだけの価値があるならいい。
そう、あの時囮となって死んでいった奴らは、毛利に価値を見いだしていた。
そう言う事を、言って倒れた。
そう言う事を、言って倒れた。
「何が言いたい?」
冷ややかな怒りを真っ向から受け止める。嵐も時化もこんなモンじゃねぇ。
鬼に打ち勝つ気なら、理屈でなくもっと激しい怒りを向けるがいい。
「自分を大切にしな。誰かを使うなら自分自身が駒になるんじゃねえ」
「……つまらぬことを」
毛利の声から怒りが抜け落ち、気力さえ抜け落ちていた。
口論が面倒になったように、気抜けした声で呟く。
そんな声では、一生かけても勝てやしない。
「でないと亡くしてくぜ、いろんなモンをな。
気づいた時にはその愛も中身が空っぽになっちまってたらどうするんだ」
「おのれ貴様、この愛も愚弄するか」
流石にまなじりをつり上げた毛利に、元親は頷いた。
怒ることが出来るならまだいい。南蛮の教えがいくらかでも欠けた物を補っていくならまだいい。
「そうなる前に何とかしろって言ってんだ、解らねぇか元就」
「我にどうしろと言うのだ」
「紅をさしてみな、毎日」
毛利は瞬間目を見開いた。
「どの紅が自分に似合うか、どの衣装に映えるか考えて、装ってみな」
「……無駄なことを。誰に見せる」
元親は笑った。やっと毛利が人の言葉を受け入れた。
夜明けの時刻が近づいている。
「はっは!見せなくたって良いだろ、自分のためにやるんだよ。
帰りの船旅が気に入ったら、船で当てもねぇような旅に出てみたっていい、海は広いぜ、陸地よかずっとな!」
「ならば貴様が我に見せよ。我は毛利の海軍をその様なことのためには使わぬ」
「はっはぁ!いいぜ、何だ俺に惚れたかぁ?」
毛利もほんの少し笑いかけ、途中から鼻で笑いなおした。
「ふん。初めからそう言っている物を、貴様は頭だけでなく耳も飾りか。
それとも海の広さばかり眺め、目の前にある物すら見えぬようになったか」
ぽかんと間抜けに口を開くと、毛利は誇り高く顔をもたげた。
「愛では解らぬのであれば、貴様の程度に合わせ解りやすく言い直してやろう。
好きぞ、長曾我部元親。かならず貴様を我が手におさめてくれるわ」
高らかなその言葉は、宣戦布告の如く元親の心に響いた。
冷ややかな怒りを真っ向から受け止める。嵐も時化もこんなモンじゃねぇ。
鬼に打ち勝つ気なら、理屈でなくもっと激しい怒りを向けるがいい。
「自分を大切にしな。誰かを使うなら自分自身が駒になるんじゃねえ」
「……つまらぬことを」
毛利の声から怒りが抜け落ち、気力さえ抜け落ちていた。
口論が面倒になったように、気抜けした声で呟く。
そんな声では、一生かけても勝てやしない。
「でないと亡くしてくぜ、いろんなモンをな。
気づいた時にはその愛も中身が空っぽになっちまってたらどうするんだ」
「おのれ貴様、この愛も愚弄するか」
流石にまなじりをつり上げた毛利に、元親は頷いた。
怒ることが出来るならまだいい。南蛮の教えがいくらかでも欠けた物を補っていくならまだいい。
「そうなる前に何とかしろって言ってんだ、解らねぇか元就」
「我にどうしろと言うのだ」
「紅をさしてみな、毎日」
毛利は瞬間目を見開いた。
「どの紅が自分に似合うか、どの衣装に映えるか考えて、装ってみな」
「……無駄なことを。誰に見せる」
元親は笑った。やっと毛利が人の言葉を受け入れた。
夜明けの時刻が近づいている。
「はっは!見せなくたって良いだろ、自分のためにやるんだよ。
帰りの船旅が気に入ったら、船で当てもねぇような旅に出てみたっていい、海は広いぜ、陸地よかずっとな!」
「ならば貴様が我に見せよ。我は毛利の海軍をその様なことのためには使わぬ」
「はっはぁ!いいぜ、何だ俺に惚れたかぁ?」
毛利もほんの少し笑いかけ、途中から鼻で笑いなおした。
「ふん。初めからそう言っている物を、貴様は頭だけでなく耳も飾りか。
それとも海の広さばかり眺め、目の前にある物すら見えぬようになったか」
ぽかんと間抜けに口を開くと、毛利は誇り高く顔をもたげた。
「愛では解らぬのであれば、貴様の程度に合わせ解りやすく言い直してやろう。
好きぞ、長曾我部元親。かならず貴様を我が手におさめてくれるわ」
高らかなその言葉は、宣戦布告の如く元親の心に響いた。
元就が昇りゆく日輪を拝む間、元親も見よう見まねの手つきで同じように拝んでいた。
それから眺めの良い場所に元就を座らせ、独眼竜には俺が話を付けとくぜと言い置いて身軽に駆けた。
それから眺めの良い場所に元就を座らせ、独眼竜には俺が話を付けとくぜと言い置いて身軽に駆けた。
――長曾我部元親、愚かな男よ。
血が出れば全てが処女か。元就は小さく嘲笑した。
男どもの処女に対する拘りなど下らぬ。
一度目と二度目で成すことに何の差があるものか。
だが、そこに拘りがあれば利用するまで。
元親よ、貴様の動きなどすべて我が手の裡ぞ。
男どもの処女に対する拘りなど下らぬ。
一度目と二度目で成すことに何の差があるものか。
だが、そこに拘りがあれば利用するまで。
元親よ、貴様の動きなどすべて我が手の裡ぞ。




