「アホか!あのまま風邪でも引きたかったのか、ろくに力もはいらねえ癖してなあ!」
「つつつ……た、体調はどうと言うこともなく……」
「嘘付け!顔も赤けりゃ体も熱いんだよ、長湯はすんな、暖まったらすぐ寝てろ!」
政宗は問題にならないとでも言いたげに言い捨て、そのまま背を向け湯殿から出て行った。
「つつつ……た、体調はどうと言うこともなく……」
「嘘付け!顔も赤けりゃ体も熱いんだよ、長湯はすんな、暖まったらすぐ寝てろ!」
政宗は問題にならないとでも言いたげに言い捨て、そのまま背を向け湯殿から出て行った。
「………な、なんだったのでござろうか……」
とりあえず、熱くてけだるい事は確かなようだった。確かに足も萎えている。
ううむと唸りながら、湯殿を出て新しい夜着に着替えた。
濁りのない朱の薄絹の上に、朝霧のように透ける練り絹の紗を羽織る。
先ほどまで着ていた夜着とそう大差はない。
何でもかんでも褒める伊達の女中によく似合うと言われ、
政宗も悪くないと言っていた組み合わせ。
幸村自身は紅白で、この上なくめでたそうだと思っている。
戦場での赤備えが許されて以来、鮮やかな赤はもっとも好きな色にもなっていた。
ううむと唸りながら、湯殿を出て新しい夜着に着替えた。
濁りのない朱の薄絹の上に、朝霧のように透ける練り絹の紗を羽織る。
先ほどまで着ていた夜着とそう大差はない。
何でもかんでも褒める伊達の女中によく似合うと言われ、
政宗も悪くないと言っていた組み合わせ。
幸村自身は紅白で、この上なくめでたそうだと思っている。
戦場での赤備えが許されて以来、鮮やかな赤はもっとも好きな色にもなっていた。
そのまま言われたとおり寝室に赴くと、
「………アンタなぁぁ………寝てろって言ったろが………」
政宗が顎を落としそうな勢いで大口を開けた後、喉奥から声を絞り出した。
「うむ、確かに。それ故寄り道もせずに来たのでござるが」
「熱あるんだろてめ、うつす気か!」
「さて、燃えている気はしまするが……某風邪を引いたことなどありませぬぞ!」
胸を張ると政宗が一瞬視線を逸らして言いよどんだ。
それからぐっとたくましい腕が伸びて、幸村の額に当てられる。その筋張った手のひらがいつもより冷えている。
そうだ、自分は湯で暖まったが、政宗は頭から井戸水を被った幸村を担いで、それでも彼自身は暖まらなかったのだ。
額の手に、自分の手を重ねる。
「政宗殿こそ冷えておりまするぞ」
「自分が熱い自覚もねぇのか」
幸村は素直に頷いた。
「湯を使ったばかりにござれば、暖まっているも道理にござろう」
はあ、と政宗が溜息をつく。
「……わかった、一緒に風邪引いて小十郎に怒られてやる。来な、baby」
最後の一言はよく解らなかったものの、促されるまま側による。
政宗の腕が最後の距離分を引き寄せて布団の中に招いた。
「っとに熱ぃな……何度あるんだ」
「それほど熱があれば具合が悪くなっているものにござろう。むしろ心地ようござるが」
抱きしめられているのがどうにもならないほど嬉しい。なんだかふわふわする。
腕を回し返して体を寄せ、頬を寄せる。政宗の好んで使う香が微かに香る。
いつも使う寝所にいつの間にか染みついたものなのか。
くん、と鼻を鳴らすと政宗も幸村の髪に顔を埋めていた。
「なんか、幸村すげえいい香りがするな…毛利が香を焚きしめてたのかと思ってたんだが、
アンタが匂い袋でも忍ばせてたのか?」
「そんなことはござらぬが……毛利殿も、別に香など焚きしめておられなかったはず」
幸村は鼻の良さには自信がある。
政宗は聞いているのかいないのか、チ、やべえと小さく呟いた。
「………アンタなぁぁ………寝てろって言ったろが………」
政宗が顎を落としそうな勢いで大口を開けた後、喉奥から声を絞り出した。
「うむ、確かに。それ故寄り道もせずに来たのでござるが」
「熱あるんだろてめ、うつす気か!」
「さて、燃えている気はしまするが……某風邪を引いたことなどありませぬぞ!」
胸を張ると政宗が一瞬視線を逸らして言いよどんだ。
それからぐっとたくましい腕が伸びて、幸村の額に当てられる。その筋張った手のひらがいつもより冷えている。
そうだ、自分は湯で暖まったが、政宗は頭から井戸水を被った幸村を担いで、それでも彼自身は暖まらなかったのだ。
額の手に、自分の手を重ねる。
「政宗殿こそ冷えておりまするぞ」
「自分が熱い自覚もねぇのか」
幸村は素直に頷いた。
「湯を使ったばかりにござれば、暖まっているも道理にござろう」
はあ、と政宗が溜息をつく。
「……わかった、一緒に風邪引いて小十郎に怒られてやる。来な、baby」
最後の一言はよく解らなかったものの、促されるまま側による。
政宗の腕が最後の距離分を引き寄せて布団の中に招いた。
「っとに熱ぃな……何度あるんだ」
「それほど熱があれば具合が悪くなっているものにござろう。むしろ心地ようござるが」
抱きしめられているのがどうにもならないほど嬉しい。なんだかふわふわする。
腕を回し返して体を寄せ、頬を寄せる。政宗の好んで使う香が微かに香る。
いつも使う寝所にいつの間にか染みついたものなのか。
くん、と鼻を鳴らすと政宗も幸村の髪に顔を埋めていた。
「なんか、幸村すげえいい香りがするな…毛利が香を焚きしめてたのかと思ってたんだが、
アンタが匂い袋でも忍ばせてたのか?」
「そんなことはござらぬが……毛利殿も、別に香など焚きしめておられなかったはず」
幸村は鼻の良さには自信がある。
政宗は聞いているのかいないのか、チ、やべえと小さく呟いた。
その声音が少し掠れている。
脳裏に響く、愛しい声だ。
脳裏に響く、愛しい声だ。
幸村は一つ頷いて、普段ならそれだけで十分なはずだと言うのに一層体を寄せた。
なんだか解らないが、もっと強くしがみつきたい。ぴったりと体を寄せて甘えたい気がする。
解らない。だが、確かに何かが違う。解らない。
解るのはやっぱり一つだけ、出来るだけしがみついていたい気がすることだけだ。
「こら、テメ具合悪いんだろ、無理すんなって……こっちにだって都合がな……」
政宗が代わりに僅か体を離す。
「何度も言っておりまするぞ。具合は悪くござらぬ」
「嘘付けあちーっての、すぐに悪寒とか来るぜ?」
ううむ、と幸村は小首をかしげた。悪寒はしない。だが、確かにくらくらしている気がする。
気合いを緩めれば、幸村を足元から飲み込むような何かの予感が体中に満ちている。
何のこれしき。風邪など気合いが満ちていれば寄りつかぬ。
なんだか解らないが、もっと強くしがみつきたい。ぴったりと体を寄せて甘えたい気がする。
解らない。だが、確かに何かが違う。解らない。
解るのはやっぱり一つだけ、出来るだけしがみついていたい気がすることだけだ。
「こら、テメ具合悪いんだろ、無理すんなって……こっちにだって都合がな……」
政宗が代わりに僅か体を離す。
「何度も言っておりまするぞ。具合は悪くござらぬ」
「嘘付けあちーっての、すぐに悪寒とか来るぜ?」
ううむ、と幸村は小首をかしげた。悪寒はしない。だが、確かにくらくらしている気がする。
気合いを緩めれば、幸村を足元から飲み込むような何かの予感が体中に満ちている。
何のこれしき。風邪など気合いが満ちていれば寄りつかぬ。
指先がいくらか、じんじんと痺れているような心地。




