どうして自分はこれほど不器用なのか。
どうして自分は少しこの結果に不満なのか。
政宗を苦しめ、傷つけているではないか。
何らかの技にかかった己の未熟さのせいだというのに、政宗はこちらを責めもせずに苦しんでいるではないか。
どうしてそれを上手に宥められないのか。
卑怯極まりなくとも己が身とひきかえに留まらせたというのに、政宗の心はこちらだけを向きはしない。
我が身の価値は、政宗にとっての己はその程度か。
どうして自分は少しこの結果に不満なのか。
政宗を苦しめ、傷つけているではないか。
何らかの技にかかった己の未熟さのせいだというのに、政宗はこちらを責めもせずに苦しんでいるではないか。
どうしてそれを上手に宥められないのか。
卑怯極まりなくとも己が身とひきかえに留まらせたというのに、政宗の心はこちらだけを向きはしない。
我が身の価値は、政宗にとっての己はその程度か。
「政宗殿。これが政宗殿の言われるとおり、なんらかの作為の結果であったと致す」
「ああ」
どこか傷ついて投げやりな声音に、必死に言葉を紡ぐ。
「この心地は、政宗殿とまみえて嬉しいと思う心地を増やし、寄り添いたいと思わせ、言葉を聞きたいと思わせ、
触れていればその存在が、いつもよりもよくよく解るのでござる。
凡て悪きものにあらずと、ただふわふわと心地良いと思うはおかしいことでござろうか」
間近で見る。政宗の睫毛は濃く長い。
「いつもならば朝靄のごとき雑多な何かに紛れ、直視せずにいた物事を、吹き散らし眼前に据え置くような、
見過ごしていたことに気付けて嬉しくて仕方がないような、そう言う心地になり申すぞ」
その目がしばたかれる。
「それは……アンタ色々鈍いからだろ」
ほんの僅か苦笑が混じり込んだ言葉。
「ならば、なおさら今気付くことが出来るは良きことでござったと、そう考えてはいただけぬか」
政宗はようやく頷いた。
「アンタに、こんな事しやがって、それが毛利にどんな利益になるのか一つもわからねえ。
気まぐれか面白半分か、その位しかないんじゃねぇかって思うが……それでも、幸村が構わないなら、 な」
「気まぐれ結構、気まぐれを起こしそうもない方の気まぐれ、ならば某一度くらいは受け止めまするぞ」
毛利はちいさいちいさい姫だった。
長曾我部は様子を窺っていた。複雑そうに、獣のように。毛利は長曾我部の前では静かな何かを全身に漲らせていた。
だから、長曾我部を前にしている毛利の国主は、計算で動くからくり仕掛けにあらず、とても幸福そうに見えた。
今、彼らはどうしているだろう。
「全く……Coolだね、オレよかずっと、アンタの方が」
「ありがとうござりまする」
深い色の眼差しが、波だった感情を無理矢理におさめて幸村を射る。
「幸村、オレを宥めな……そのくらいはして貰うぜ」
幸村は大きく頷いて手を伸ばした。固い政宗の髪。手櫛のようにさしのべて撫でる。
「よくぞ思いとどまって下された、褒美にござる」
「………………アタマ撫でんな、意味もわからねぇか?」
政宗はうんざりしたように首を振った。もちろん解っている。
「いえ。ですが某怒っておられる方に抱かれるのは勘弁して欲しゅうござる」
拗ねたような目が逸らされる。
「悪かったな」
削げた頬、感情を封じ隠した眼帯。少しだけ笑ってしまう。
「意地悪を言っているのでござる」
「そりゃカワイイ意地悪だ」
苦笑混じりに政宗は幸村を引き寄せ額に口づけた。じわじわと熱い。
「大人な割に子供みてぇだよな、……熱いのに血の気はねーんだな」
唇が掠る場所から離れずに語り、六爪を操る手のひらがわしわしと乱暴に幸村の頭をかき混ぜる。
「向こう見ずで猪突猛進とはよく言われたものにござるが」
「誰でも言うだろ。まあいいさ、奥州は暴走する軍だ、そのくらいじゃなきゃ付いて来れやしねぇ。
――なあ、幸村」
何気なく呼ばれて動きを止めると、政宗はつっと顔を寄せて唇を重ねた。
唇を割ってなま暖かな舌が滑り込む。口中を探る動きに思わず応えてしまうと、重なったままの唇が僅かに歪んだ。
気合いで押さえ込んでいた予感を掘り起こし植え付けるその動き。
慣れてはきたが、戦場の技量と違いこちらはどうにも敵わない。翻弄されるだけだ。
それが不意に途切れ離れる。
「本当に怒ったオレは厭か?」
悪戯っぽい眼差し。そんなわけがないだろうと、自信に溢れた奥州を率いる者の自負。
「………そ、その、某………ううううううぅあぁ、政宗殿はれんちにござる!」
「あーあー破廉恥だよ、悪いかアンタ、すげーいい香りしてんだよ。
アンタが耐える気なら付き合う方がCoolなんだろうがな、」
そしてまた重なる。しばしの時間をおいて離れる。
そのたび息が乱され、気合いがこもらなくなり、あの予感が、体中に染みこみはじめる。
「厭か?」
「何故いちいち聞かれるか!」
「ああ」
どこか傷ついて投げやりな声音に、必死に言葉を紡ぐ。
「この心地は、政宗殿とまみえて嬉しいと思う心地を増やし、寄り添いたいと思わせ、言葉を聞きたいと思わせ、
触れていればその存在が、いつもよりもよくよく解るのでござる。
凡て悪きものにあらずと、ただふわふわと心地良いと思うはおかしいことでござろうか」
間近で見る。政宗の睫毛は濃く長い。
「いつもならば朝靄のごとき雑多な何かに紛れ、直視せずにいた物事を、吹き散らし眼前に据え置くような、
見過ごしていたことに気付けて嬉しくて仕方がないような、そう言う心地になり申すぞ」
その目がしばたかれる。
「それは……アンタ色々鈍いからだろ」
ほんの僅か苦笑が混じり込んだ言葉。
「ならば、なおさら今気付くことが出来るは良きことでござったと、そう考えてはいただけぬか」
政宗はようやく頷いた。
「アンタに、こんな事しやがって、それが毛利にどんな利益になるのか一つもわからねえ。
気まぐれか面白半分か、その位しかないんじゃねぇかって思うが……それでも、幸村が構わないなら、 な」
「気まぐれ結構、気まぐれを起こしそうもない方の気まぐれ、ならば某一度くらいは受け止めまするぞ」
毛利はちいさいちいさい姫だった。
長曾我部は様子を窺っていた。複雑そうに、獣のように。毛利は長曾我部の前では静かな何かを全身に漲らせていた。
だから、長曾我部を前にしている毛利の国主は、計算で動くからくり仕掛けにあらず、とても幸福そうに見えた。
今、彼らはどうしているだろう。
「全く……Coolだね、オレよかずっと、アンタの方が」
「ありがとうござりまする」
深い色の眼差しが、波だった感情を無理矢理におさめて幸村を射る。
「幸村、オレを宥めな……そのくらいはして貰うぜ」
幸村は大きく頷いて手を伸ばした。固い政宗の髪。手櫛のようにさしのべて撫でる。
「よくぞ思いとどまって下された、褒美にござる」
「………………アタマ撫でんな、意味もわからねぇか?」
政宗はうんざりしたように首を振った。もちろん解っている。
「いえ。ですが某怒っておられる方に抱かれるのは勘弁して欲しゅうござる」
拗ねたような目が逸らされる。
「悪かったな」
削げた頬、感情を封じ隠した眼帯。少しだけ笑ってしまう。
「意地悪を言っているのでござる」
「そりゃカワイイ意地悪だ」
苦笑混じりに政宗は幸村を引き寄せ額に口づけた。じわじわと熱い。
「大人な割に子供みてぇだよな、……熱いのに血の気はねーんだな」
唇が掠る場所から離れずに語り、六爪を操る手のひらがわしわしと乱暴に幸村の頭をかき混ぜる。
「向こう見ずで猪突猛進とはよく言われたものにござるが」
「誰でも言うだろ。まあいいさ、奥州は暴走する軍だ、そのくらいじゃなきゃ付いて来れやしねぇ。
――なあ、幸村」
何気なく呼ばれて動きを止めると、政宗はつっと顔を寄せて唇を重ねた。
唇を割ってなま暖かな舌が滑り込む。口中を探る動きに思わず応えてしまうと、重なったままの唇が僅かに歪んだ。
気合いで押さえ込んでいた予感を掘り起こし植え付けるその動き。
慣れてはきたが、戦場の技量と違いこちらはどうにも敵わない。翻弄されるだけだ。
それが不意に途切れ離れる。
「本当に怒ったオレは厭か?」
悪戯っぽい眼差し。そんなわけがないだろうと、自信に溢れた奥州を率いる者の自負。
「………そ、その、某………ううううううぅあぁ、政宗殿はれんちにござる!」
「あーあー破廉恥だよ、悪いかアンタ、すげーいい香りしてんだよ。
アンタが耐える気なら付き合う方がCoolなんだろうがな、」
そしてまた重なる。しばしの時間をおいて離れる。
そのたび息が乱され、気合いがこもらなくなり、あの予感が、体中に染みこみはじめる。
「厭か?」
「何故いちいち聞かれるか!」




