「元就…」
「何だ」
「こういうのって卑怯…なんだろうけどよ…俺は今すげぇ幸せだ。
だからその幸せをくれた大切な奴を、どっちも失いたくねぇ」
そう話しながら静かに起き上がり、ずっと傍に居てくれた元就と向き合うように正座して、元親は膝の上で拳を握り締めた。
泣いていた目の周りは、赤く腫れていた。
「…だから……俺が何を選択しても…嫌いに、ならないでくれ…」
頼む…そう真っ直ぐ元就の目を見て言い終わると、元親はゆっくり頭を下に傾けた。
一切の事情を知らない元就には、其れがどういう意味かは分からない。
しかし普段自分の前にて平気で胡坐をかく女が、自ら正座をし、込み上げている感情を抑えるように拳を握り締めている姿から、余程の事があったのだろうと容易く推測できる。
だからといって詮索しても、これは彼女自身の問題…、その事に寂しさすら感じれど、
元就は閉ざしていた唇をゆっくりと開いた。
「…昔、我の中に土足で入り込んで来た、無粋な女が居た」
その言葉に驚いて、元親は顔を上げる。
何故だろう…酷く身に覚えのある話な気がした。
「そやつは我が今まで築いて来たモノを根本から崩して行き、勝手に居場所を作り、そのまま居座った」
そこまで言われて、自分の事だと理解した元親は、気まずそうに視線を泳がせ、頬を赤らめる。
元就はそんな彼女の頬に手を伸ばし、優しく一撫でした。
「誰かに反対されようとも其れを行う力…実行したいという強い意志が有るから故に、貴様は今に至って居るのであろう」
やがて交わった視線を外す事無く、元就は言葉を続ける。
「そして貴様に、其れに伴う覚悟が有るというのなら、我が止める事など出来よう筈もあるまい…」
そう、止めた所で彼女はきっと行ってしまう。
なら彼女の望む通りさせて、己は帰ってくる場所になれば良い。
彼女が自分の元に帰って来るという自負はある。
だから…
「好きにしろ」
「ありが
「だが忘れるな」
礼を言おうとする元親の言葉を遮る一際強い口調。
そんな元就が見せる顔は酷く感情的で、でもそれ故にとても男らしい表情に、元親の胸が締め付けられる。
その痛みはとても心地良くて、やっぱ俺元就が好きだと元親に改めて感じさせた。
「何を選ぼうとも、貴様が我にとって既に決して手放さぬ存在で有るという事……忘れるでないぞ」
「おう!」
一段落付いて、やっと元親が笑った…と元就は陰ながら静かに安堵の息をつく。
己の好む日輪の様に眩しい元親の笑み
その笑みを絶やさぬ為なら、自分は何でも出来ると思ってしまう事に笑みが零れてしまう。
感情というものは厄介、だが…そんなに悪いものでもない。
それが今の元就の思う事だった。
「元就!!」
「なん…ッ?!」
元親からの突然の抱擁に不意をつかれ、元々背も彼女が高い事も加わって、元就は元親を支え切れず、二人はそのまま布団の上に雪崩れ込んだ。
自分の下敷きになって、打ち付けた背中の痛みと不覚からくる不愉快に、顔を顰めている元就を笑いながら、元親は彼の頬に唇を寄せる。
そして真正面から向き合って、ニッコリと笑みを見せた。
「愛してるぜ元就」
「…フン」
すると照れ隠しにも似、でもって半ば呆れたように鼻で笑われ、元親もそんな元就にまた笑いながら、彼の胸に頬を添えるのだった。
「何だ」
「こういうのって卑怯…なんだろうけどよ…俺は今すげぇ幸せだ。
だからその幸せをくれた大切な奴を、どっちも失いたくねぇ」
そう話しながら静かに起き上がり、ずっと傍に居てくれた元就と向き合うように正座して、元親は膝の上で拳を握り締めた。
泣いていた目の周りは、赤く腫れていた。
「…だから……俺が何を選択しても…嫌いに、ならないでくれ…」
頼む…そう真っ直ぐ元就の目を見て言い終わると、元親はゆっくり頭を下に傾けた。
一切の事情を知らない元就には、其れがどういう意味かは分からない。
しかし普段自分の前にて平気で胡坐をかく女が、自ら正座をし、込み上げている感情を抑えるように拳を握り締めている姿から、余程の事があったのだろうと容易く推測できる。
だからといって詮索しても、これは彼女自身の問題…、その事に寂しさすら感じれど、
元就は閉ざしていた唇をゆっくりと開いた。
「…昔、我の中に土足で入り込んで来た、無粋な女が居た」
その言葉に驚いて、元親は顔を上げる。
何故だろう…酷く身に覚えのある話な気がした。
「そやつは我が今まで築いて来たモノを根本から崩して行き、勝手に居場所を作り、そのまま居座った」
そこまで言われて、自分の事だと理解した元親は、気まずそうに視線を泳がせ、頬を赤らめる。
元就はそんな彼女の頬に手を伸ばし、優しく一撫でした。
「誰かに反対されようとも其れを行う力…実行したいという強い意志が有るから故に、貴様は今に至って居るのであろう」
やがて交わった視線を外す事無く、元就は言葉を続ける。
「そして貴様に、其れに伴う覚悟が有るというのなら、我が止める事など出来よう筈もあるまい…」
そう、止めた所で彼女はきっと行ってしまう。
なら彼女の望む通りさせて、己は帰ってくる場所になれば良い。
彼女が自分の元に帰って来るという自負はある。
だから…
「好きにしろ」
「ありが
「だが忘れるな」
礼を言おうとする元親の言葉を遮る一際強い口調。
そんな元就が見せる顔は酷く感情的で、でもそれ故にとても男らしい表情に、元親の胸が締め付けられる。
その痛みはとても心地良くて、やっぱ俺元就が好きだと元親に改めて感じさせた。
「何を選ぼうとも、貴様が我にとって既に決して手放さぬ存在で有るという事……忘れるでないぞ」
「おう!」
一段落付いて、やっと元親が笑った…と元就は陰ながら静かに安堵の息をつく。
己の好む日輪の様に眩しい元親の笑み
その笑みを絶やさぬ為なら、自分は何でも出来ると思ってしまう事に笑みが零れてしまう。
感情というものは厄介、だが…そんなに悪いものでもない。
それが今の元就の思う事だった。
「元就!!」
「なん…ッ?!」
元親からの突然の抱擁に不意をつかれ、元々背も彼女が高い事も加わって、元就は元親を支え切れず、二人はそのまま布団の上に雪崩れ込んだ。
自分の下敷きになって、打ち付けた背中の痛みと不覚からくる不愉快に、顔を顰めている元就を笑いながら、元親は彼の頬に唇を寄せる。
そして真正面から向き合って、ニッコリと笑みを見せた。
「愛してるぜ元就」
「…フン」
すると照れ隠しにも似、でもって半ば呆れたように鼻で笑われ、元親もそんな元就にまた笑いながら、彼の胸に頬を添えるのだった。




