一方、四国では。
「あー!」
握力に耐えかねて、手の中の米がぐしゃりと潰れる。
「そ、そんなに落ち込む事ないっスよ。はじめは誰もが初心者です」
長曾我部の若い見習いが、厨房で肩を落とす元親を慰めていた。
今まで、つまみ食い以外にはろくに厨房に寄り付かなかった元親は、ここ最近炊事係の青年を講師役に、料理の特訓を続けているのである。
「そもそも、お嬢はご飯を炊く事は出来るし、魚も捌けるじゃないですか。俺なんか、それこそ最初は何も出来なかったんですよ?それだけでも、出発点は段違いっスよ」
「でも…握り飯ひとつにこの体たらくじゃ、まともなモン作れるのは、いつの事か…」
「失敗は成功の母、って言いますから。焦らずにいきましょうや」
その後、果敢に挑戦を繰り返したものの、料理など全くした事のなかった元親の拵えたおむすびは、三角でも俵型でもなく、いびつで不揃いなものであった。
「…どうやったら、こんなに上手に出来んだろ」
お手本用に青年が作った形良い握り飯を、元親はしげしげと見つめる。
こんな事なら、奥州にいた時に、『アイツ』に教えて貰うべきだったか。
「だ…ダメだダメだ!こんな事知られたら、絶対からかわれるに決まってる!」
初めて、好きな男の為に料理を覚えたい、と思ったのだ。
弱みを見せたくない訳ではないが、気恥ずかしさもあるので、『アイツ』だけには知られたくない。
「みてろ。今度こそ、今度こそきっと……」
握り飯をパクつきながら、元親は新たな決意を胸に固める。
「あー!」
握力に耐えかねて、手の中の米がぐしゃりと潰れる。
「そ、そんなに落ち込む事ないっスよ。はじめは誰もが初心者です」
長曾我部の若い見習いが、厨房で肩を落とす元親を慰めていた。
今まで、つまみ食い以外にはろくに厨房に寄り付かなかった元親は、ここ最近炊事係の青年を講師役に、料理の特訓を続けているのである。
「そもそも、お嬢はご飯を炊く事は出来るし、魚も捌けるじゃないですか。俺なんか、それこそ最初は何も出来なかったんですよ?それだけでも、出発点は段違いっスよ」
「でも…握り飯ひとつにこの体たらくじゃ、まともなモン作れるのは、いつの事か…」
「失敗は成功の母、って言いますから。焦らずにいきましょうや」
その後、果敢に挑戦を繰り返したものの、料理など全くした事のなかった元親の拵えたおむすびは、三角でも俵型でもなく、いびつで不揃いなものであった。
「…どうやったら、こんなに上手に出来んだろ」
お手本用に青年が作った形良い握り飯を、元親はしげしげと見つめる。
こんな事なら、奥州にいた時に、『アイツ』に教えて貰うべきだったか。
「だ…ダメだダメだ!こんな事知られたら、絶対からかわれるに決まってる!」
初めて、好きな男の為に料理を覚えたい、と思ったのだ。
弱みを見せたくない訳ではないが、気恥ずかしさもあるので、『アイツ』だけには知られたくない。
「みてろ。今度こそ、今度こそきっと……」
握り飯をパクつきながら、元親は新たな決意を胸に固める。
「「今度会う時までには、絶対アイツの事を、羨ましがったりしないんだから!!」」
隣の庭に咲いている花が赤く見えて仕方ない、似たもの同士の姉貴達は、今日も互いを越えんと自身の為に、そして愛する男の為に、試行錯誤を繰り返している
のであった。
のであった。
─了─




