佐助が身を屈めて、かすがと顔を近づけた。またくちびるを重ねるのかと幸村は思ったが、
そうではなかったらしい。かすがの耳元に口を寄せて、なにやら耳打ちした。
そう離れていないところに座っているのに男の声がまったく聞こえなかったのは、
彼がなんでもありの忍びだからである。
耳打ちされたかすがは、一瞬だけ佐助と目をあわせてフッと笑ったように見えた。
そして顔だけ幸村のほうを見遣り、静かに手招きした。解放してもらえるのだろうか、と、
どことなく名残惜しげに思いながら彼女に近づくと、伸ばされたかすがの手によって
口元の布と、腕を縛っていた縄が取り払われた。
「絶対に大声を出すなよ」
布を取ったその人さし指でくちびるをなぞられる。解放されるわけではないようだが、
幸村はさほど遺憾に思わずに「しょ、承知したっ!」と、わけも分からないまま返事をした。
そのとき佐助がのどの奥で笑ったことには気付かなかった。
かすがの手はするすると下に向かい、寝間着の合わせ目に辿りついた。手が寝間着のなかに
潜り込み、細い指の先がかたい肌に触れる。その感触がくすぐったくて気恥ずかしくて、
思わず大声をあげてしまいそうになったのだが、先ほどのかすがの言葉を思い出し、
くちびるを噛んで我慢する。と、寝間着の合わせ目を広げていたかすがの手がとまった。
なんだこれは、と、しかめられた彼女の顔が言っている。幸村も黙って視線を下へやると、
そこには彼が身につけている真っ赤な褌があった。武田の者がいくさの際に
着用している具足と同じ、真っ赤な褌。それに武田と真田、両家の家紋、
そして『真田源次郎幸村』と持ち主の名が刺繍されている。佐助もそれを視界にいれたのか、
ちいさく声を出して笑った。
「それがしの、しょ、勝負褌でござる」
沈黙に耐えきれずに口を開いてみたが、かすがは何の感慨もなく「ああ、そう」と
言っただけで、褌をゆるめる作業に戻った。佐助は笑いを押し殺そうとして変な声が出ていた。
幸村の顔が褌と同様に真っ赤に染まっていく。
「この褌はお館様が御上洛を果たされるまで、いや、果たされた後もお館様のため
勇んで参るという、それがしの決意の表れ! 常に武田菱と六文銭を身につけておくことで、
志気を高め、気を緩めずにいられるようにということだ! だ、だから笑うな、さす――」
部下の名を最後まで言えずに幸村は固まった。
「大声を出すなと言ったはずだ」
いつの間に取り出されたのか、幸村の陰茎がかすがに握られていた。白い手が揉むような動作で
刺激をあたえているが、そんなことをしなくても幸村の下腹部はもうずっと前から
熱を帯びていて、かすがが触れる前から先走り汁が垂れていたのだった。
「もうこんなにして……。ふふ、熱い……」
竿を握り、親指で先端を撫ぜる。頬擦りでもされるのはないかというほど顔の至近距離まで
近付けられ、じっくりと眺められる。味わったことのない快感に、腰が浮き上がりかけた。
しかし、幸村には幸村なりの葛藤があった。かすがの指の動きは、えも言われぬ快感を
生み出して腰部に疼くほどの熱が集まる。だが、よく知らない女子に己の急所を弄ばれるなど、
もののふとして面目ないのでは。様々な思いが入り乱れて収拾がつかないままの頭で、
幸村は口をひらいた。
「かっ、かすが殿! いい加減にしてくださらぬか! それがしは二人のことを口外などせぬ。
それに、こっ、こんな事をされても、それがしは快いわけではござらん!」
吠えるように一息に言うと、かすがは動かしていた指をとめた。ほっとした幸村の顔を
一瞥して、親指の腹についた体液を舐める。そしてそのまま幸村の男根と、
その先端から垂れる『汗』をベロンッと舐めて、凄みのある顔と声で言った。
「この味は! ……ウソをついている『味』だ……真田幸村!」
そうではなかったらしい。かすがの耳元に口を寄せて、なにやら耳打ちした。
そう離れていないところに座っているのに男の声がまったく聞こえなかったのは、
彼がなんでもありの忍びだからである。
耳打ちされたかすがは、一瞬だけ佐助と目をあわせてフッと笑ったように見えた。
そして顔だけ幸村のほうを見遣り、静かに手招きした。解放してもらえるのだろうか、と、
どことなく名残惜しげに思いながら彼女に近づくと、伸ばされたかすがの手によって
口元の布と、腕を縛っていた縄が取り払われた。
「絶対に大声を出すなよ」
布を取ったその人さし指でくちびるをなぞられる。解放されるわけではないようだが、
幸村はさほど遺憾に思わずに「しょ、承知したっ!」と、わけも分からないまま返事をした。
そのとき佐助がのどの奥で笑ったことには気付かなかった。
かすがの手はするすると下に向かい、寝間着の合わせ目に辿りついた。手が寝間着のなかに
潜り込み、細い指の先がかたい肌に触れる。その感触がくすぐったくて気恥ずかしくて、
思わず大声をあげてしまいそうになったのだが、先ほどのかすがの言葉を思い出し、
くちびるを噛んで我慢する。と、寝間着の合わせ目を広げていたかすがの手がとまった。
なんだこれは、と、しかめられた彼女の顔が言っている。幸村も黙って視線を下へやると、
そこには彼が身につけている真っ赤な褌があった。武田の者がいくさの際に
着用している具足と同じ、真っ赤な褌。それに武田と真田、両家の家紋、
そして『真田源次郎幸村』と持ち主の名が刺繍されている。佐助もそれを視界にいれたのか、
ちいさく声を出して笑った。
「それがしの、しょ、勝負褌でござる」
沈黙に耐えきれずに口を開いてみたが、かすがは何の感慨もなく「ああ、そう」と
言っただけで、褌をゆるめる作業に戻った。佐助は笑いを押し殺そうとして変な声が出ていた。
幸村の顔が褌と同様に真っ赤に染まっていく。
「この褌はお館様が御上洛を果たされるまで、いや、果たされた後もお館様のため
勇んで参るという、それがしの決意の表れ! 常に武田菱と六文銭を身につけておくことで、
志気を高め、気を緩めずにいられるようにということだ! だ、だから笑うな、さす――」
部下の名を最後まで言えずに幸村は固まった。
「大声を出すなと言ったはずだ」
いつの間に取り出されたのか、幸村の陰茎がかすがに握られていた。白い手が揉むような動作で
刺激をあたえているが、そんなことをしなくても幸村の下腹部はもうずっと前から
熱を帯びていて、かすがが触れる前から先走り汁が垂れていたのだった。
「もうこんなにして……。ふふ、熱い……」
竿を握り、親指で先端を撫ぜる。頬擦りでもされるのはないかというほど顔の至近距離まで
近付けられ、じっくりと眺められる。味わったことのない快感に、腰が浮き上がりかけた。
しかし、幸村には幸村なりの葛藤があった。かすがの指の動きは、えも言われぬ快感を
生み出して腰部に疼くほどの熱が集まる。だが、よく知らない女子に己の急所を弄ばれるなど、
もののふとして面目ないのでは。様々な思いが入り乱れて収拾がつかないままの頭で、
幸村は口をひらいた。
「かっ、かすが殿! いい加減にしてくださらぬか! それがしは二人のことを口外などせぬ。
それに、こっ、こんな事をされても、それがしは快いわけではござらん!」
吠えるように一息に言うと、かすがは動かしていた指をとめた。ほっとした幸村の顔を
一瞥して、親指の腹についた体液を舐める。そしてそのまま幸村の男根と、
その先端から垂れる『汗』をベロンッと舐めて、凄みのある顔と声で言った。
「この味は! ……ウソをついている『味』だ……真田幸村!」




