最後の一言だけ低く、真剣だった。
「言えるわけが……」
「子供扱いするんじゃねえ、オレが幸村の年には奥州切り回しだしてんだ、あいつはガキっぽいがガキじゃねえよ。
いつまでも自分の傘の下に置くな、幸村を潰したくないなら、な。
言え、全部告げろ、言えないなら下郎、てめえは幸村の家臣じゃない。一番邪魔だ、逆臣より厄介なんだよ。
耳に痛いことを言えずに仕舞い込むヤツはな。でなきゃ手を回し気づかれないうちに全部状況変えて見せな、
それもできねえならハンパな真似すんじゃねえぞ」
ドスのきいた声。
軽い平手打ちを連打で見舞うような歯切れのいい言葉。
「オレは幸村に惚れる覚悟でいるんだ。……覚悟決めたからには半年経たずに惚れてみせる。
惚れたからにはあいつを立てる。下郎、てめえの覚悟を見せな。オレの戯言に翻弄されるか、オレの事を手駒にするか、
てめえの覚悟はどっちだ。覚悟決めずに幸村と仲良しこよし?……そりゃあ許されねえ」
強い目の色。
指先が震えた。今、なんの交渉を持ちかけられてる?俺様は忍びで下郎だ、命じられてこなすだけの、ただの下郎だ。
何の実権もないんだ。
「独眼竜……惚れてみせるって、何だ」
「オレは挑戦されりゃ受ける。全部を流して惚れろってなら、その気で幸村を見るさ。
男にゃ解らねぇか?戦国の武門に生まれた女は皆、家の事情はどうあろうと、
惚れて添う覚悟決めて、家の都合であっちこっち行かされてるんだ。オレはその覚悟もできない女に見えるか?」
独眼竜は片眼で笑った。確かに覚悟を決めた笑顔だった。
「惚れ方ってのは一目惚れ以外にもいろいろあるんだぜ」
にこりと笑った顔は多分作り笑顔で、不敵で挑戦的なくせに惚れ惚れするようなものだった。
旦那みたいな裏表ない表情なんか、期待する方が間違ってる。
そう、裏も表もないんだ旦那は。きっとこの笑み一つに騙されるよ。
「ったくよ……お前も思いこみ激しいよなあ……囚人の言葉なんかに騙されてんなよ。
図星に思えようがな、そう思わせただけ、あんなもん騙りだ」
この女ホントうるさい──俺様忍びで下郎で、姫の交渉相手じゃないでしょが?
話もちかけないでよ前みたいに無視しなよ、何?そんな必死な状況なの?
もう下がりたい俺を見て、独眼竜は鼻で笑った。
「いいか、幸村は奥州に領土を得る。奥州の中枢じゃねえが一応中央部、北に寄りすぎちゃいないが会津に近くもない。
ま、さして広くもないだろうが、あいつは一国一城の主になる。今までの覚悟じゃ足りねえ。──じゃあな下郎」
じゃあなと言われて足が止まった。聞き捨てる事が出来ない。
「ちょっ……と、何それ!?」
独眼竜は不敵で惚れ込むような笑みを深くする。
くつろぐように姿勢を崩し、脇息にもたれる。それがどことなく色っぽかった。
「やぁぁぁっと話聞く気になったか?お館様と交渉したのさ。
オレは勿体なくも恭順した武将扱い、幸村はオレをcontrol、それで済ませて貰う。
──側室?妾?オレを女扱いしやがれば奥州の皆は怒り狂って反抗するさ。首を晒せば絶望もするさ。
どちらも嫌なら……それなりの扱いをされれば温情に感謝し、反省し控える。そう言うモンだろ?
──それでも控えられないヤツはオレのトコに来るだろうから、きちんと叱りとばす。
この機に何かしたいヤツはぶちのめす。かなりhard……いや、キツいことになるぜ」
何の話だ、直で言えよ解らないっての。
上田城の虜79/今日のワンコ4
「言えるわけが……」
「子供扱いするんじゃねえ、オレが幸村の年には奥州切り回しだしてんだ、あいつはガキっぽいがガキじゃねえよ。
いつまでも自分の傘の下に置くな、幸村を潰したくないなら、な。
言え、全部告げろ、言えないなら下郎、てめえは幸村の家臣じゃない。一番邪魔だ、逆臣より厄介なんだよ。
耳に痛いことを言えずに仕舞い込むヤツはな。でなきゃ手を回し気づかれないうちに全部状況変えて見せな、
それもできねえならハンパな真似すんじゃねえぞ」
ドスのきいた声。
軽い平手打ちを連打で見舞うような歯切れのいい言葉。
「オレは幸村に惚れる覚悟でいるんだ。……覚悟決めたからには半年経たずに惚れてみせる。
惚れたからにはあいつを立てる。下郎、てめえの覚悟を見せな。オレの戯言に翻弄されるか、オレの事を手駒にするか、
てめえの覚悟はどっちだ。覚悟決めずに幸村と仲良しこよし?……そりゃあ許されねえ」
強い目の色。
指先が震えた。今、なんの交渉を持ちかけられてる?俺様は忍びで下郎だ、命じられてこなすだけの、ただの下郎だ。
何の実権もないんだ。
「独眼竜……惚れてみせるって、何だ」
「オレは挑戦されりゃ受ける。全部を流して惚れろってなら、その気で幸村を見るさ。
男にゃ解らねぇか?戦国の武門に生まれた女は皆、家の事情はどうあろうと、
惚れて添う覚悟決めて、家の都合であっちこっち行かされてるんだ。オレはその覚悟もできない女に見えるか?」
独眼竜は片眼で笑った。確かに覚悟を決めた笑顔だった。
「惚れ方ってのは一目惚れ以外にもいろいろあるんだぜ」
にこりと笑った顔は多分作り笑顔で、不敵で挑戦的なくせに惚れ惚れするようなものだった。
旦那みたいな裏表ない表情なんか、期待する方が間違ってる。
そう、裏も表もないんだ旦那は。きっとこの笑み一つに騙されるよ。
「ったくよ……お前も思いこみ激しいよなあ……囚人の言葉なんかに騙されてんなよ。
図星に思えようがな、そう思わせただけ、あんなもん騙りだ」
この女ホントうるさい──俺様忍びで下郎で、姫の交渉相手じゃないでしょが?
話もちかけないでよ前みたいに無視しなよ、何?そんな必死な状況なの?
もう下がりたい俺を見て、独眼竜は鼻で笑った。
「いいか、幸村は奥州に領土を得る。奥州の中枢じゃねえが一応中央部、北に寄りすぎちゃいないが会津に近くもない。
ま、さして広くもないだろうが、あいつは一国一城の主になる。今までの覚悟じゃ足りねえ。──じゃあな下郎」
じゃあなと言われて足が止まった。聞き捨てる事が出来ない。
「ちょっ……と、何それ!?」
独眼竜は不敵で惚れ込むような笑みを深くする。
くつろぐように姿勢を崩し、脇息にもたれる。それがどことなく色っぽかった。
「やぁぁぁっと話聞く気になったか?お館様と交渉したのさ。
オレは勿体なくも恭順した武将扱い、幸村はオレをcontrol、それで済ませて貰う。
──側室?妾?オレを女扱いしやがれば奥州の皆は怒り狂って反抗するさ。首を晒せば絶望もするさ。
どちらも嫌なら……それなりの扱いをされれば温情に感謝し、反省し控える。そう言うモンだろ?
──それでも控えられないヤツはオレのトコに来るだろうから、きちんと叱りとばす。
この機に何かしたいヤツはぶちのめす。かなりhard……いや、キツいことになるぜ」
何の話だ、直で言えよ解らないっての。
上田城の虜79/今日のワンコ4




