女毛利と女長政でタチネコ入り乱れた百合エロ。
牢獄物で拘束・道具が基本スタイル。
薄暗い話。後味も良いとは言えない。
牢獄物で拘束・道具が基本スタイル。
薄暗い話。後味も良いとは言えない。
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無造作に投げ込まれた部屋の床は柔らかく、質の悪い石造りを想定していた私はすぐに転げてしまった。
ここまでの案内をした兵に無礼を咎める声を投げようとして、次の刹那には詮無い事と口を噤む。
私の両の手首は嫌になるほど頑丈な枷で固定されているので肩と肘で上体を起こすしかない。
視線の先に女がいた。
胡桃色の髪の女。生成りの一重をしどけなくまとい、積まれた寝具にもたれて眠っていた。
私が来た事で目を覚ましたのか、ゆるりと起き上がり面をこちらに向ける。
無言のまま状況が掴みかねる様に薄く唇を開いているのは視界が閉ざされているからだろう。
女は、私の手首を拘束する忌まわしい枷と同じ、黒い革で出来た目隠しを着けていた。
一人ではなかったのか。牢獄に一人きりにされ、分かたれた妻と家臣を想いながら処刑を待つものとばかり思っていた。
「誰ぞ」
女が私の疑問を先に発した。
兵は答えない。ただ黙って牢の鍵をかけ、去っていった。
ここまでの案内をした兵に無礼を咎める声を投げようとして、次の刹那には詮無い事と口を噤む。
私の両の手首は嫌になるほど頑丈な枷で固定されているので肩と肘で上体を起こすしかない。
視線の先に女がいた。
胡桃色の髪の女。生成りの一重をしどけなくまとい、積まれた寝具にもたれて眠っていた。
私が来た事で目を覚ましたのか、ゆるりと起き上がり面をこちらに向ける。
無言のまま状況が掴みかねる様に薄く唇を開いているのは視界が閉ざされているからだろう。
女は、私の手首を拘束する忌まわしい枷と同じ、黒い革で出来た目隠しを着けていた。
一人ではなかったのか。牢獄に一人きりにされ、分かたれた妻と家臣を想いながら処刑を待つものとばかり思っていた。
「誰ぞ」
女が私の疑問を先に発した。
兵は答えない。ただ黙って牢の鍵をかけ、去っていった。
女が軽く唸って座り直す。目隠しの他に両腕を後ろ手に固定されていた。やはり、黒革と鈍色に反射する金具で出来た拘束具だ。
肘から手首までを覆われ、両手は袋に包まれて肌の露出は完全に許されていない。これではあまりに不自由だろう。
私は目の前に己の拘束具をかざし見た。指は十本、どれも自由に動く。
「貴殿、名は」
女はすこしためらう仕草を見せ、「必要がない」と応えた。
「ここには我とそなたしかおらぬのだから、名に何の意味があろう」
薄い唇が無彩色の声を落とす。きっと、黒に覆われた腕もふやけた魚の目の色なのだろう。
柔らかいのは床だけではなく、四方の壁も同じ仕様だった。綿やら藁やらを、薄汚れた白い布で覆っている。
何のためにと呟けば、女が「自害をせぬように」と。
天井は流石に石が剥き出しのままだったが、あちらこちらに滑車の仕掛けがあった。
これは私にもすぐに察しがついた。女がここで今までどんな扱いを受けていたのか、そしてこれからの我が身をも。
肘から手首までを覆われ、両手は袋に包まれて肌の露出は完全に許されていない。これではあまりに不自由だろう。
私は目の前に己の拘束具をかざし見た。指は十本、どれも自由に動く。
「貴殿、名は」
女はすこしためらう仕草を見せ、「必要がない」と応えた。
「ここには我とそなたしかおらぬのだから、名に何の意味があろう」
薄い唇が無彩色の声を落とす。きっと、黒に覆われた腕もふやけた魚の目の色なのだろう。
柔らかいのは床だけではなく、四方の壁も同じ仕様だった。綿やら藁やらを、薄汚れた白い布で覆っている。
何のためにと呟けば、女が「自害をせぬように」と。
天井は流石に石が剥き出しのままだったが、あちらこちらに滑車の仕掛けがあった。
これは私にもすぐに察しがついた。女がここで今までどんな扱いを受けていたのか、そしてこれからの我が身をも。
しばらく放って置かれ、次に扉が開いたのは監視兵が食事を持ってきた時だった。
平たい瀬戸物に飯とおからと幾欠けかの煮物が乗っている。虜囚の身には上等すぎると言えるかもしれぬ、が。
私は憤懣遣る方無い声で兵に「これでは喰えぬ」と縛られたままの両手首をかざす。
兵は無言で顎を動かし、私の後方を示した。女が、這いつくばって皿に口付けていた。私の眉が物思う前にひそめられる。
やはり黙って消えた兵を確認して、私は女に膝をすり近づいた。
「女、お前」
ついと上げられた白い頬に飯粒。童のような様子も今は笑えない。肩を押し体を起こして、自由の利く指で女の目隠しを取った。
鍵でも付いていたら、と危惧したが、幸い二本の帯状の革と細い金具で固定されているだけだった。簡単に解ける。
仄暗い室内の明かりでも刺激が強いのか、女はぎゅうと瞼を閉じ身を屈めた。ゆるゆると起き上がって見えたものは長い睫毛に縁取られた切
平たい瀬戸物に飯とおからと幾欠けかの煮物が乗っている。虜囚の身には上等すぎると言えるかもしれぬ、が。
私は憤懣遣る方無い声で兵に「これでは喰えぬ」と縛られたままの両手首をかざす。
兵は無言で顎を動かし、私の後方を示した。女が、這いつくばって皿に口付けていた。私の眉が物思う前にひそめられる。
やはり黙って消えた兵を確認して、私は女に膝をすり近づいた。
「女、お前」
ついと上げられた白い頬に飯粒。童のような様子も今は笑えない。肩を押し体を起こして、自由の利く指で女の目隠しを取った。
鍵でも付いていたら、と危惧したが、幸い二本の帯状の革と細い金具で固定されているだけだった。簡単に解ける。
仄暗い室内の明かりでも刺激が強いのか、女はぎゅうと瞼を閉じ身を屈めた。ゆるゆると起き上がって見えたものは長い睫毛に縁取られた切
れ長の双眸。
髪の胡桃色の陰影を更に濃くして磨き艶を出したような琥珀の瞳があった。
「……貴殿も、こんな処とはいえ生きながらえているという事は、何処か名のある家の出であろう」
言いながら乱れた髪を梳いて、女の皿から一欠けの芋を取り口に入れてやった。
「このような扱い、いくら敗国の将といえどもあまりに礼を欠いた愚かな所業。許せたものではない。私は、」
「それで?」
女が私の声に割って入った。
「我は、今度はそなたを主人と呼べばよいと?」
整った顔をやんわり、けれど生気の感じられない微笑で彩って言う。
真っ白な喉元を下れば嫌になるほど深い鎖骨の影。あばらの浮いた胸元に赤や青の痣があった。
女の舌が、私の指を舐めた。びくりとすればますます造り物の笑みを深めて、爪に歯を当てた。
室内を覆う布と同じ、生者の気配を削ぎ落とした枯れた白だった。
髪の胡桃色の陰影を更に濃くして磨き艶を出したような琥珀の瞳があった。
「……貴殿も、こんな処とはいえ生きながらえているという事は、何処か名のある家の出であろう」
言いながら乱れた髪を梳いて、女の皿から一欠けの芋を取り口に入れてやった。
「このような扱い、いくら敗国の将といえどもあまりに礼を欠いた愚かな所業。許せたものではない。私は、」
「それで?」
女が私の声に割って入った。
「我は、今度はそなたを主人と呼べばよいと?」
整った顔をやんわり、けれど生気の感じられない微笑で彩って言う。
真っ白な喉元を下れば嫌になるほど深い鎖骨の影。あばらの浮いた胸元に赤や青の痣があった。
女の舌が、私の指を舐めた。びくりとすればますます造り物の笑みを深めて、爪に歯を当てた。
室内を覆う布と同じ、生者の気配を削ぎ落とした枯れた白だった。