「なぁにボーッとしてんですか」
「……何か、用?」
「いいや。濃ちゃんに会いたくなっただけだ。だめかい?」
ちろちろ。蝋燭のように脆弱な、しかし消えることのないだろう炎。
慶次の瞳の奥に揺らぐ熱を例えるならば、それが一番近いように感じた。
濃姫にはそれが見えた。見えて、しまった。
それに動揺する暇もなく、濃姫の世界は慶次の手によって反転させられる。
漏れでたため息は、何を示すものだったのだろうか。
押し倒されたせいで着物と畳がこすれ合い、しゅるしゅると音をたてた。
着物の色は黒。濃姫の中の太陽が死んでしまった日から、彼女もまた闇に暮れた。
それを咎めることができる者などこの屋敷にはいない。もちろん、慶次も同様に。
慶次はそっと視線を外した。
「……何か、用?」
「いいや。濃ちゃんに会いたくなっただけだ。だめかい?」
ちろちろ。蝋燭のように脆弱な、しかし消えることのないだろう炎。
慶次の瞳の奥に揺らぐ熱を例えるならば、それが一番近いように感じた。
濃姫にはそれが見えた。見えて、しまった。
それに動揺する暇もなく、濃姫の世界は慶次の手によって反転させられる。
漏れでたため息は、何を示すものだったのだろうか。
押し倒されたせいで着物と畳がこすれ合い、しゅるしゅると音をたてた。
着物の色は黒。濃姫の中の太陽が死んでしまった日から、彼女もまた闇に暮れた。
それを咎めることができる者などこの屋敷にはいない。もちろん、慶次も同様に。
慶次はそっと視線を外した。
外の世界を照りつける太陽が明るすぎるためか、部屋はより薄暗く映った。
薄い闇が二人の横で不恰好な影絵を作る。
それを見つめていた濃姫の首筋を、慶次の舌が撫ぜた。
じっとりと湿度の高い空気に熱されたそこは汗ばんで、ひどく淫靡につやめいている。
快楽に耐えているのか、眉間に皺を寄せた濃姫の、その固い表情ですら慶次の欲を煽った。
しかし慶次は首筋から顔を引き離した。
濃姫の両手が、慶次を拒むかのように突き出されたからだ。
「まだ明るいわ」
「夜まで待てねぇ」
「利家殿やまつ殿に聞かれたら」
「こんな広い屋敷で音なんか聞こえるもんか」
「大体、今はそんな気分では……」
「帰蝶」
びくり。濃姫の肩が揺れる。
「その名で呼ばないで」
「アンタが呼べって言ったんだ。あの夜。なぁ、そうだろう? 帰蝶」
「……呼ばないで」
「帰蝶」
薄い闇が二人の横で不恰好な影絵を作る。
それを見つめていた濃姫の首筋を、慶次の舌が撫ぜた。
じっとりと湿度の高い空気に熱されたそこは汗ばんで、ひどく淫靡につやめいている。
快楽に耐えているのか、眉間に皺を寄せた濃姫の、その固い表情ですら慶次の欲を煽った。
しかし慶次は首筋から顔を引き離した。
濃姫の両手が、慶次を拒むかのように突き出されたからだ。
「まだ明るいわ」
「夜まで待てねぇ」
「利家殿やまつ殿に聞かれたら」
「こんな広い屋敷で音なんか聞こえるもんか」
「大体、今はそんな気分では……」
「帰蝶」
びくり。濃姫の肩が揺れる。
「その名で呼ばないで」
「アンタが呼べって言ったんだ。あの夜。なぁ、そうだろう? 帰蝶」
「……呼ばないで」
「帰蝶」




