「……不覚を取った」
一体いつから、どれほどの血を流したのだろう。
いつでも血色のよい肌が、やや青白く変化していた。
布を切り裂いて止血したが、その布すらもすぐに血が滲んできて。
きっと長くは持たないだろうと、こんなときでもどこか冷静な考えに
佐助は初めて、忍という仕事に嫌気が差した。
一体いつから、どれほどの血を流したのだろう。
いつでも血色のよい肌が、やや青白く変化していた。
布を切り裂いて止血したが、その布すらもすぐに血が滲んできて。
きっと長くは持たないだろうと、こんなときでもどこか冷静な考えに
佐助は初めて、忍という仕事に嫌気が差した。
すみません、大将。約束は、守れない。
「佐助。頼みがある」
「……何?」
「髪を……この髪を、政宗殿に届けてはくれまいか」
少しだけ身を起こし、不恰好な尻尾のようなその髪を、ざっくりと結び目から切った。
「……何?」
「髪を……この髪を、政宗殿に届けてはくれまいか」
少しだけ身を起こし、不恰好な尻尾のようなその髪を、ざっくりと結び目から切った。
ああ、主は死を受け入れたのだ。
だからこそ、一番大切な人に、髪を届けたいのだ。
だからこそ、一番大切な人に、髪を届けたいのだ。
全く。忍ってのはつくづく嫌な仕事だ。
「旦那ぁ。俺旦那がいなくなったらどうしたらいいのさ」
「おかしなことを言う。次の主を、宛がわれるのだろう」
「そうだよ。でもさあ、あんた最初のときに言ったじゃん」
「おかしなことを言う。次の主を、宛がわれるのだろう」
「そうだよ。でもさあ、あんた最初のときに言ったじゃん」
『お主とは主従を越えて、友や、家族のようになりたい』
忍にあるまじき感情だが。しかしまさしく佐助にとって、幸村や信玄は家族のようであった。
「だからさあ。あんたが何度生まれ変わっても、俺はずっとずっと傍にいるよ」
「それは頼もしい限り。なればこの幸村。佐助に会う為に何度でも生まれてこようぞ」
誓うように握られた手は、いつものような力強さはなかったけれど。
その事実を認めたくなくて、大事に握り返した。
「それは頼もしい限り。なればこの幸村。佐助に会う為に何度でも生まれてこようぞ」
誓うように握られた手は、いつものような力強さはなかったけれど。
その事実を認めたくなくて、大事に握り返した。
「佐助。もう一つ頼まれてくれるか?」
「今度は何?」
「政宗殿に、伝言を」
「今度は何?」
「政宗殿に、伝言を」
最期の最期でまた「政宗殿」だ。妬けるね。と笑いながら続きを促した。
「……私は。政宗殿を、心よりお慕い……」
「だんな……っ」
「だんな……っ」
握りしめていた手が、するりと滑り落ちた。
「旦那、旦那ぁあああっっ!!」
抱きかかえたまま叫んだ悲痛の声は、今にも降りだしそうな鈍色の空に消えていった。




