政宗の元に、幸村の遺髪が届けられたのは、それから一月後のことであった。
佐助からことの次第を聞いた政宗は、意外にも取り乱したりはせず
少し微笑みすら見せてそれを大事そうに受け取った。
少し微笑みすら見せてそれを大事そうに受け取った。
「……Coolじゃないぜ、幸村。また会おうって約束しただろが」
けれども、そう呟いた言葉には、確かに隠し切れない哀しみが込められていた。
けれども、そう呟いた言葉には、確かに隠し切れない哀しみが込められていた。
一人にしてくれと願った政宗を気遣い、小十郎と佐助は共に庭に出ていた。
「……俺さ。旦那が死んだってのに、泣けないんだよ。薄情かな」
「嘆き哀しむだけが弔いじゃねえだろ」
「うん、それはそうなんだけどね」
「嘆き哀しむだけが弔いじゃねえだろ」
「うん、それはそうなんだけどね」
抱きかかえていた身体が、どんどんと重くなるのを感じた。
自らの腕の中で、大切だった主の命が消えていくのを、目の当たりにしたというのに。
自らの腕の中で、大切だった主の命が消えていくのを、目の当たりにしたというのに。
「あんたはいいね。きっと泣けるんだろうし、後を追うことも、許されるかもしれないし」
かたや自分は忍だ。主が死んだならば、次の主の元へ行く。
後を追うことなど、出来るはずもない。
幸村がくれた「佐助」という名も、いずれは使わなくなるだろう。
かたや自分は忍だ。主が死んだならば、次の主の元へ行く。
後を追うことなど、出来るはずもない。
幸村がくれた「佐助」という名も、いずれは使わなくなるだろう。
「……ちょっと淋しいなあ」
ぽつりと呟いて俯いた細い身体を、そっと抱きしめた。
ぽつりと呟いて俯いた細い身体を、そっと抱きしめた。
「次はもう決まったのか?」
「まだ。でも武田には、もういられないだろうね」
「……そうか」
風の便りに、武田信玄が病であると、聞いていた。
真田幸村を失い、徳川にも負けた今、恐らく武田に未来はないのだろう。
未来のない家に、しがみつくようでは忍ではないのだ。
「まだ。でも武田には、もういられないだろうね」
「……そうか」
風の便りに、武田信玄が病であると、聞いていた。
真田幸村を失い、徳川にも負けた今、恐らく武田に未来はないのだろう。
未来のない家に、しがみつくようでは忍ではないのだ。
「……俺はさ、生まれ変わりとか、本当は信じちゃいないんだよ」
「ああ」
「けどさあ。旦那には、やっぱりもう一度会ってみたいんだよね」
「……ああ」
「…………本当、なんで先に逝っちゃったかなあ…………」
「ああ」
「けどさあ。旦那には、やっぱりもう一度会ってみたいんだよね」
「……ああ」
「…………本当、なんで先に逝っちゃったかなあ…………」
俯いたまま服を掴んだ佐助の頭をなでて胸に抱く。
「……うぁ、あ、あ……ああ!!」
「……うぁ、あ、あ……ああ!!」
小十郎の胸に顔をうずめ、佐助は生まれて初めて、心の底からの慟哭の涙を流した。
いずれ生まれ来る日の為に14
いずれ生まれ来る日の為に14




