戦国BASARA/エロパロ保管庫

sadness jealousy

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bsr_e

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夜になっても冷めない熱気の中、笛の音が細く響く。
主の思考を妨げぬように、けれどささくれ立った神経を落ち着かせるように、
優しい音が政宗の居室近くの廊下に吹き渡る。
「せっかくのchanceだったっていうのに、猿飛のヤツが出てきやがって。
今度見たら叩きのめしてやる」
政宗は機嫌の悪さを隠そうともせずに、煙管をふかす。機嫌が悪すぎて加減を見誤り、
いつもより煙草の量が増えている。長寿の薬ということだが、煙を吸うという行為が
体にいいとも思えない。
「水は不足するし、糧秣は奪われるし、兵站は伸びるし、いいことが一っつもねぇ戦だったぜ」
煙を吐き出し、灰を盆に落とす。カン、とやたらいい音が寝所に響く。
さわ、と涼しげな風が吹く。ほんの少しだけもたらされる涼に、
小十郎は笛を吹くのを止め、髪を嬲る風に目を細めた。
「止めるな」
冷たい声に、小十郎は軽く頭を下げた。そして笛を吹く。
楽は、奏者によって調子を変える。
小十郎の笛の音は、どこか超然とした深い音をしている。そして、政宗の前で
吹かれるときの音はとびきり優しい。
初めて聞いたときは涙が止まらなかった。悲しくないのに流れる涙に、
政宗はもちろん、小十郎も慌てた。
「相変わらず、いい女だったな。槍もまた冴えた。具足も新調していたけどよ……
まさか、俺のためか?」
柱に凭れ、政宗は笑う。凄みのある笑みに、向かいに座って笛を吹く小十郎は
思わず目を伏せた。笛の調子がわずかに狂うが、政宗は気づかない振りをする。
「……子が生まれる前に、決着をつけてやりてぇところだ」
腹が膨れたら戦どころではなくなる、と言いたいのだろうか。
奥州という土地を治めているせいか、政宗は年相応の「若さ」が存在しない。
「若さ」や「青さ」より、「老獪」さが顕著だ。そのくせ思考が物騒なのは、
彼が若いという証なのだろうか。
だが、真田幸村に対してだけはそういった「計算」を一切感じない。
相手を倒したい、打ち負かしたいという思いが、こちらにも伝わってくる。
一度、彼女を正室に迎えてはどうか、と進言したことがある。
甲斐と奥州の縁を組むのも悪くないが、信玄には政宗に嫁がせる「娘」がいない。
ならば幸村を信玄の養女にして、それから武田と伊達で縁を組めばいい。
「そんなことしたら、あいつとヤリ合えねぇじゃねぇか」
「なんでそんなことを考えなきゃいけないんだ」と顔に書かれていた。
本当に、ただただ単純に、宿敵として相対するのが楽しい、らしい。
男と女が互いに興味を覚えたら縁を組んだりするものだ、と思い込んでいた
こっちの方が、呆気に取られた。
「俺と幸村が、閨に入ってみろ。どっちが勝つかで一晩中大乱闘だ」
つまり、「そういう」関係になる気はまったくないらしい。
笛の音を止めた。政宗は今度は何も言わず、脚を崩し、両手を後頭部で組んで柱に
凭れかかった。顔を向ける先には、紅く染まった月がある。
「すごい色だな。……ったく、月まで俺の敵かよ」
何もかもが腹立たしい、と言いたげに政宗は顔をしかめる。
「少し、酒(ささ)でも召し上がられますか? 苛立ちも少しは収まるかと」
政宗は軽く目を見張った。小十郎から酒を申し出るのは珍しいからだろう。
「ああ、……いや、いい」
政宗は手招きをして、小十郎を近くに寄せる。傍に腰を下ろすと、政宗は当然のように
胸に顔を埋めた。着物を乱し、肌を探る。
「お前が慰めろ」
「はい」
着物の中をまさぐる手は、熱く燃えていた。

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