時は戦国。
長きに渡る戦乱の世は、さらに混迷の色を増していた。
跡取りの男子を得ぬまま戦に散ってゆく武将が数多く出現し、
そしてその跡を継いだのは例外なく、彼らの娘達だった。
…そんなこんなで、全国各地の武将の半数が若い娘だという
けしからん時代になったのだった。
長きに渡る戦乱の世は、さらに混迷の色を増していた。
跡取りの男子を得ぬまま戦に散ってゆく武将が数多く出現し、
そしてその跡を継いだのは例外なく、彼らの娘達だった。
…そんなこんなで、全国各地の武将の半数が若い娘だという
けしからん時代になったのだった。
そんな時代の奥州。
泣く子も黙る奥州筆頭・伊達政宗は米沢城の縁側でくつろいでいた。
泣く子も黙る奥州筆頭・伊達政宗は米沢城の縁側でくつろいでいた。
「あー…やっぱりずんだ餅は日の本で一番デリシャスだぜ…」
茶をすすりながら呟くその声は若い娘のものだ。
戦中でもないのに弦月の兜を目深に被り、
蒼い陣羽織と武者鎧に包まれたその身体は、若い娘らしくたおやかなのか
どうしても羽織や鎧に「着られている」感じが否めない。
そのうえ湯飲みを握る手のひらに至るまで黒い革手袋と手甲に覆われ、
その身体で唯一外気に触れているのは顔の左半分だけという有様だった。
戦中でもないのに弦月の兜を目深に被り、
蒼い陣羽織と武者鎧に包まれたその身体は、若い娘らしくたおやかなのか
どうしても羽織や鎧に「着られている」感じが否めない。
そのうえ湯飲みを握る手のひらに至るまで黒い革手袋と手甲に覆われ、
その身体で唯一外気に触れているのは顔の左半分だけという有様だった。
「それにしても退屈だな…どっか攻めて来ねぇかなー」
「何を物騒な事を仰られます。」
政宗の独り言に答えたのは、彼女の腹心で、兄的存在でもある片倉小十郎である。
政宗が幼い頃から四六時中鎧を着て生活するように躾たのは、この小十郎だ。
幼くして亡き父親の跡目を継いだ隻眼の姫の毎日は、常に命の危険と背中合わせだった。
小十郎は守り役である自らの命に変えても幼い主君を守る覚悟だったが、
万が一の不測の事態に備えて政宗にこのような防備をさせ、
自ら剣術を教え込む事でその命を危険から遠ざけて来たのだが、
それは同時に政宗から娘らしい幸せを決定的に奪ってしまう事となっていた。
政宗が幼い頃から四六時中鎧を着て生活するように躾たのは、この小十郎だ。
幼くして亡き父親の跡目を継いだ隻眼の姫の毎日は、常に命の危険と背中合わせだった。
小十郎は守り役である自らの命に変えても幼い主君を守る覚悟だったが、
万が一の不測の事態に備えて政宗にこのような防備をさせ、
自ら剣術を教え込む事でその命を危険から遠ざけて来たのだが、
それは同時に政宗から娘らしい幸せを決定的に奪ってしまう事となっていた。
「政宗様。生け花の先生がいらっしゃいましたよ。」
「HA!やだね。そんなのやりたくねー。」
「お嫁に行かれた先で恥をかきますぞ。」
「…こんな片目で、四六時中鎧着てて
腰に六本も刀差してる女を誰が貰うってんだよ!FUCK!!」
腰に六本も刀差してる女を誰が貰うってんだよ!FUCK!!」
桜色の唇をつんと尖らせてそっぽを向く政宗に、
小十郎は尚も辛抱強く語りかける。
小十郎は尚も辛抱強く語りかける。
「この小十郎が貰って差し上げます。ですからお稽古に行って下さい。」
「ぜっってーヤダ!!面白くねぇ。遠乗り行ってくる!」
「お待ちなさい政宗様!生け花の先生はどうなさいます!」
「お前が稽古すればいいだろ!
そんで誰かの嫁にしてもらえー!じゃあな!」
そんで誰かの嫁にしてもらえー!じゃあな!」
「政宗様!」
政宗はひらりと愛馬に跨がると、風のような速さで逃げ去った。
残された小十郎はただ溜め息をつくのだった。
残された小十郎はただ溜め息をつくのだった。
まだ赤子の頃から見守り続けて来た
娘のように妹のように大切な主君。
しかし時代は、彼女に少女らしい幸せを味わう事など
許してはくれないのだ。
娘のように妹のように大切な主君。
しかし時代は、彼女に少女らしい幸せを味わう事など
許してはくれないのだ。
その頃の甲斐では…
「ぅおやかたさばあぁぁぁぁぁぁ!!」
素肌に赤いジャケット1枚を羽織っただけの少女が、
豊満な胸を揺らしながら槍の習練を積んでいたのだった…。
豊満な胸を揺らしながら槍の習練を積んでいたのだった…。
二人の少女が出会うのは、もう少し先のお話。
(つづく)