「ちょっと待てよー。いや、やっぱりって言うべきなのかな」
自問自答しながら、へなへなと佐助は崩れ落ちた。軒の柱に身を預け、佐助は上目遣いでかすがを窺った。
「かすが、本当に覚えてないの」
「何度も同じことを言わせるな」
「冗談きついよ。慶二と飲んだ時に話したろ」
「私がそんな下種な約束をするわけがないだろう。覚えていないものは覚えていない」
「け、慶次に確認してみてたりしない?」
「確認してもいいが、私が覚えていない約束は果たして有効なのか?」
佐助は口をつぐんだ。やがて天を仰ぐ。声にならない溜息が雨空に洩れた。
自問自答しながら、へなへなと佐助は崩れ落ちた。軒の柱に身を預け、佐助は上目遣いでかすがを窺った。
「かすが、本当に覚えてないの」
「何度も同じことを言わせるな」
「冗談きついよ。慶二と飲んだ時に話したろ」
「私がそんな下種な約束をするわけがないだろう。覚えていないものは覚えていない」
「け、慶次に確認してみてたりしない?」
「確認してもいいが、私が覚えていない約束は果たして有効なのか?」
佐助は口をつぐんだ。やがて天を仰ぐ。声にならない溜息が雨空に洩れた。
「用は済んだようだな。これは受け取っておこう」
かすがは紅い唇を歪め、佐助の手から小さな紙切れを奪い取った。
「おい、ちょっと。ただで持っていく気か」
紙切れを握ったかすがの左手を佐助がつかんだ。佐助が身を伸ばす。互いの視線が絡んだ。
佐助が目を細め、距離を縮めた。顔が見上げる距離にある。身の丈が追いつかなくなってから、どれほどの時が経ったのだろう。かすがは臍をかんだ。
「離せ!」
かすがの金色の髪が揺れた。黒い手甲がはめられた手はかすがの手首を掴んで離さない。
触れそうなほどに、抱きとめられそうなほどに近づいた若草色の衣の肩を意識して、なぜかかすがは顔をそらした。
「俺様がどういうつもりでいつもあんたを手助けしてきたと思ってる」
「そんなこと知るか」
「かすが、少しでも考えてみたことある」
「……ない」
「ないの? 相変わらずひどいなー」
「勝手にしろ。離せ。気は済んだろう」
かすがは紅い唇を歪め、佐助の手から小さな紙切れを奪い取った。
「おい、ちょっと。ただで持っていく気か」
紙切れを握ったかすがの左手を佐助がつかんだ。佐助が身を伸ばす。互いの視線が絡んだ。
佐助が目を細め、距離を縮めた。顔が見上げる距離にある。身の丈が追いつかなくなってから、どれほどの時が経ったのだろう。かすがは臍をかんだ。
「離せ!」
かすがの金色の髪が揺れた。黒い手甲がはめられた手はかすがの手首を掴んで離さない。
触れそうなほどに、抱きとめられそうなほどに近づいた若草色の衣の肩を意識して、なぜかかすがは顔をそらした。
「俺様がどういうつもりでいつもあんたを手助けしてきたと思ってる」
「そんなこと知るか」
「かすが、少しでも考えてみたことある」
「……ない」
「ないの? 相変わらずひどいなー」
「勝手にしろ。離せ。気は済んだろう」