秋が深まると、政宗は寝込むことが多くなった。
年が明ける頃には、政宗は子を望むこともできぬほど弱り、日に日に病み衰えていくようになった。
政務や戦の合間を縫って、信玄は政宗を見舞った。
「どうも、そちと山に入った日より、弱っているように思うの」
「それがしのせいにございますか?」
「――そうなのか?」
脇息にもたれた信玄は声を低くした。幸村はぶんぶんと首を振り、頭を下げる。
「その、ご機嫌を損ね、まさ――伊達殿が、早う山を下りられたゆえ、
それがしの責ではないかと」
信玄は豪快に笑った。幸村が恐る恐る顔を上げると、信玄は幸村の傍に座った。
頭に手を置き、くしゃくしゃと撫でた。柔らかな茶色い髪が、指に絡んでは零れ落ちる。
一房だけ伸ばされた髪は、赤い小袖の背中を流れている。
一面に刺繍の散った、古着を仕立て直して作られた小袖だ。信玄の着ていた着物を、
政宗が見事に仕立て直した。
政宗は何度か信玄の着物を縫ったが、ここまで手の込んだものは仕立ててこない。
「そのように、気にするでないわ。あれは、気の病が大きい」
「気の病、ですか」
「左様。中々子ができぬゆえ、思いつめただけであろう。さりとて、
あそこまで弱った女子を抱く気にはなれん」
幸村は顔を伏せた。
幸村は、一度も政宗を見舞っていない。
政宗は、信玄以外にはけして寝ている姿を見せない。幸村が見舞えば、身なりを整え、
大した病ではないといった顔をして姿を見せるだろう。
それを見たくないのだろう。
「もうすぐすれば、春になる。一度、奥州に行くよう勧めておる。幸村、そなたも共に行くがよい」
「それがしが……ですか」
「左様。武田の家中で、政宗が気を使わずにすむのは、そなただけでじゃ」
「ご遠慮申し上げます」
信玄は目を丸くした。
年が明ける頃には、政宗は子を望むこともできぬほど弱り、日に日に病み衰えていくようになった。
政務や戦の合間を縫って、信玄は政宗を見舞った。
「どうも、そちと山に入った日より、弱っているように思うの」
「それがしのせいにございますか?」
「――そうなのか?」
脇息にもたれた信玄は声を低くした。幸村はぶんぶんと首を振り、頭を下げる。
「その、ご機嫌を損ね、まさ――伊達殿が、早う山を下りられたゆえ、
それがしの責ではないかと」
信玄は豪快に笑った。幸村が恐る恐る顔を上げると、信玄は幸村の傍に座った。
頭に手を置き、くしゃくしゃと撫でた。柔らかな茶色い髪が、指に絡んでは零れ落ちる。
一房だけ伸ばされた髪は、赤い小袖の背中を流れている。
一面に刺繍の散った、古着を仕立て直して作られた小袖だ。信玄の着ていた着物を、
政宗が見事に仕立て直した。
政宗は何度か信玄の着物を縫ったが、ここまで手の込んだものは仕立ててこない。
「そのように、気にするでないわ。あれは、気の病が大きい」
「気の病、ですか」
「左様。中々子ができぬゆえ、思いつめただけであろう。さりとて、
あそこまで弱った女子を抱く気にはなれん」
幸村は顔を伏せた。
幸村は、一度も政宗を見舞っていない。
政宗は、信玄以外にはけして寝ている姿を見せない。幸村が見舞えば、身なりを整え、
大した病ではないといった顔をして姿を見せるだろう。
それを見たくないのだろう。
「もうすぐすれば、春になる。一度、奥州に行くよう勧めておる。幸村、そなたも共に行くがよい」
「それがしが……ですか」
「左様。武田の家中で、政宗が気を使わずにすむのは、そなただけでじゃ」
「ご遠慮申し上げます」
信玄は目を丸くした。




