固まっている元就を横目に、元親は肴にと盛られた味噌をつまんだ。
茶と白の二つの色が、無造作にどんぶりの中に盛られている。
元親は、くぅ、と、呻いた。
茶と白の二つの色が、無造作にどんぶりの中に盛られている。
元親は、くぅ、と、呻いた。
「辛ぇ」
「加賀の味噌だ」
「麦じゃねえな」
「加賀の味噌だ」
「麦じゃねえな」
元親は反射で答えている元就に杯を突きだした。
「あんたもどうだ」
元就は、いい、と、しおれた様子のまま答える。
「……甘いものが好みか」
「まあ、な。こうも長い間離れてると国の味が恋しくていけねえ」
「その隣に盛られているのは甘い。瀬戸内のものとは違うが」
「まあ、な。こうも長い間離れてると国の味が恋しくていけねえ」
「その隣に盛られているのは甘い。瀬戸内のものとは違うが」
元親の目が丸くなる。
「味噌を使い分けているのか、そいつは贅沢だ」
「………誠に贅沢なことよ」
「………誠に贅沢なことよ」
元就は、肩を落とした。
「我が、少々味噌が辛い、と、伝えたら、慶次殿が、京から取り寄せおった」
「へぇ」
「余計なことを」
「口に合わねえのか」
「へぇ」
「余計なことを」
「口に合わねえのか」
元就は力無く、首を横に振る。
「我の立場は人質ぞ。気を使う必要なぞどこにある」
元親は、味噌で汚れた指を舐めた。
「あんたが喜ぶと思ったんだろ。何が上手く行ってねえだ、大切にされてるじゃねえか」
「分からぬ」
「………あんたまさか、犯されたのか?」
「違う」
「じゃあ何………」
「我と寝た日から、前と、違って」
「分からぬ」
「………あんたまさか、犯されたのか?」
「違う」
「じゃあ何………」
「我と寝た日から、前と、違って」
悟られぬよう、感情を出来るだけ外に出すまいと思っていたのに、声が震えてどうしようもない。
「………何が」
「分からぬ」
「おい、落ち着け、心配すんなよ、俺が見た限りじゃあいつはあんたに岡惚れして」
「では何故あれから我に触れようとせぬ、
最近は目もろくに合わせてくれぬ、会いにすら、」
「分からぬ」
「おい、落ち着け、心配すんなよ、俺が見た限りじゃあいつはあんたに岡惚れして」
「では何故あれから我に触れようとせぬ、
最近は目もろくに合わせてくれぬ、会いにすら、」
元就は、自らの心が冷えていくのが分かった。
凍えそうに、寒い。
凍えそうに、寒い。
「会いにすら、来てくれぬ日もある」
元親は呆れ、目を細めた。




