小太郎はそこで眼を覚ました。まだ真夜中だった。
…腕の中で寝息を立てる氏政を見つめながら、ぼんやりと思う。
「傀儡人形」だった頃…不幸でもなければ幸せでもなかった。
幸か不幸かなど感じる事もなかった。
幸か不幸かなど感じる事もなかった。
今はどうだろう。不安もある、切ないような、苦しいような、何処かもどかしい思いもある。
幸せかどうかはわからない。…ただ、この腕のぬくもりを離したくないと思った。
幸せかどうかはわからない。…ただ、この腕のぬくもりを離したくないと思った。
大切にしたいと思うのに、壊してしまいそうになる。
…この衝動は何なのだろう。
…この衝動は何なのだろう。
北条に仕える以前に雇われていた、松永軍の大将が言っていた言葉を思い出した。
「欲しがればよいのだ。どうせ人はすぐに死ぬ…」
その言葉通り、その男も欲望のままに欲しがり、自分の希望通りの方法で死んでいった。
欲望に従えば、楽になれるのだろうか。例え、行き着く先が破滅だったとしても…。
「ん…」
身体に感じる緩やかな刺激により、氏政がゆっくり覚醒する。
目覚めた氏政が最初に見たのは、まるで獲物に貪りつく獣の如き小太郎の姿だった。
目覚めた氏政が最初に見たのは、まるで獲物に貪りつく獣の如き小太郎の姿だった。
「ふ…風魔…!?や…ぁっ」
氏政の寝巻きは既に剥ぎ取られ、裸体を小太郎の前に晒している。
小太郎は氏政に覆いかぶさり、乳房にしゃぶりついている。
小太郎は氏政に覆いかぶさり、乳房にしゃぶりついている。
「んあっ…あ…はぁ…」
氏政の意思とは裏腹に、小太郎の愛撫で身体が熱く火照り出す。
あんなに嫌だと思っていた行為なのに……氏政はそんな自分に愕然とした。
あんなに嫌だと思っていた行為なのに……氏政はそんな自分に愕然とした。
幾度となく味わった、身を焼き切るほどの絶望感と恐怖心は、一向に磨り減ってはくれない。
何故じゃ、もういいというておるのに…何故わしの心は死んでくれんのじゃ?
…恥ずかしさと悔しさで、氏政の瞳から涙がこぼれる。
瞳からぽろぽろとこぼれる涙を、小太郎はそっと唇で拭う。
何故、この期に及んでもこの男は優しいのだろう。
悲しいくらいに。
悲しいくらいに。
気を持たせて、安心させて、突き落とす。
それを平然とやってのける小太郎に、氏政は困惑を隠せない。
それを平然とやってのける小太郎に、氏政は困惑を隠せない。
氏政の布団を掴む手を半ば無理矢理にはずし、手を握る。
触れてみて初めて、小太郎の手は、大きくて力強いと実感する。
その中に握りこまれる己の手の何と弱く小さい事か。
その中に握りこまれる己の手の何と弱く小さい事か。
氏政の唇を奪い、貪るように口内を犯す。
乳房にしゃぶりつき、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め上げる。
長く骨ばった指は、氏政の秘所をねっとりとかき回す。
乳房にしゃぶりつき、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め上げる。
長く骨ばった指は、氏政の秘所をねっとりとかき回す。
小太郎は、かようにまで苛烈な男だっただろうか。
彼はおそらく以前と何も変わっていない。
ただ、何かひとつだけ、ガラリと入れ替わっているような気がした。
彼はおそらく以前と何も変わっていない。
ただ、何かひとつだけ、ガラリと入れ替わっているような気がした。
氏政はふと思った。
…孤狼だ。
群れの中に身を置いても、他とは決してあいまみえない。
身を隠すように紛れようとも、他とは明らかに異質。
群れを呼ぶ為の遠吠えさえも不要。
孤独にして孤高。
身を隠すように紛れようとも、他とは明らかに異質。
群れを呼ぶ為の遠吠えさえも不要。
孤独にして孤高。
静寂と冷徹の化身でありながら、内には狂おしいほどの熱と、衝動を抱えている。
小太郎は、決して吼えぬ孤狼なのだ。
ああ、わしは喰らわれるのだ。
…そう思うと、不思議と心が和らいだ。
喰らわれてしまえば、もうそれ以上の恐怖など訪れない。
喰らわれてしまえば、もうそれ以上の恐怖など訪れない。
悲しくも辛くもないのに、涙がこぼれた。