慶×謙(出会い)
■月の下(もと)
月明かりは充分の明かりとなり、水上の騎士の姿を照らしていた。
空から降り注ぐ月光と、水面に在る月光。
二つの光に照らされたその姿は蒼く、その白肌は夜によく映える。
「ハッ!」
水を斬る太刀。
その度に水面の月はその姿を二つに割る。
生半可な剣士では月を歪めてしまうのだが、その剣士は月の姿を二つにする事が出来た。
空から降り注ぐ月光と、水面に在る月光。
二つの光に照らされたその姿は蒼く、その白肌は夜によく映える。
「ハッ!」
水を斬る太刀。
その度に水面の月はその姿を二つに割る。
生半可な剣士では月を歪めてしまうのだが、その剣士は月の姿を二つにする事が出来た。
こうしている間は何も考えずによい。
いつからだろうか。自らを信頼するつるぎの反対を押し切り、一人でいる事をこれ程望み始めたのは...
水面を斬る度に散る水滴は、肌は愚か、纏うものにすら触れない。
そしてもう一つ。この宵に水上を闊歩する者が、一人。
「月下の剣士たぁ....祭りの後の落ち着きより風流だなぁ。」
いつしか背後に現れたのは、自分より遥かに逞しく、自らと同じ者ではないような人影。
奇抜な格好と、髷。
背中越しに抱えた薙刀は本来の目的を果たさない程華やかな装飾と刃を称えていた。
印象的なのは、その格好とは全くかみ合わない瞳。私を見ているようで、違う私を見ている。そんな瞳だった。
背中越しに抱えた薙刀は本来の目的を果たさない程華やかな装飾と刃を称えていた。
印象的なのは、その格好とは全くかみ合わない瞳。私を見ているようで、違う私を見ている。そんな瞳だった。
柄に手をかける事無く振り返る。その必要はないと解るから。
月下の剣士が、二人。
月の下(もと)2
月の下(もと)2