「お別れは済んだのかい?」
既に風呂敷いっぱいの餞別を抱えた慶次に追いついた。
ちらっとはみ出てる招き猫とかかんざしとか、それもらってどうすんだ?
「名残り惜しいんじゃないの?」
肩を並べて歩きながら、慶次が覗き込むように聞いてきた。
名残惜しさがないと言えば嘘になる。ここは、俺の人生の一部に違いないから。
そして、もう二度と戻る事のない、人生の一部だから。
「お~い慶ちゃ~ん!」
後ろから、息急き切って走ってくるのは、どこだったかの遣り手のばあさんだ。
おいおい、フラフラしちゃって大丈夫か?
「あぁ良かった間に合った」
俺達のとこまで辿り付くと、ばあさんは肩でぜいぜい息を整えた。
「アンタが贔屓にしてた銀髪の女郎さんから頼まれたんだけどねぇ」
言ってばあさんが差し出したのは、折り紙で作られた一羽の鶴。
「じゃあ確かに渡したよ!気を付けて行っといで!」
それだけ言うと、ばあさんはまた走って戻って行ってしまった。
いや、もうそんなに急いで走る事ないんじゃないかな~
と苦笑いしている間に、隣で慶次が、受け取った鶴を開いている。
開ききったその紙に、書かれていたのは、「待ち人来たり」のたった一言。
「にやにやしちゃって…どしたの?」
その紙を持ったまま、気持ち悪い程笑みを浮かべている慶次の顔を覗き込んで、思わず俺はちょっと引いた。
「いや~春が来たな~と思って!」
言って慶次は、四つに折ったその紙を、大事そうに懐にしまい込み、またうきうきと歩を進めた。
「なぁ佐助!京も良いけど、少し遠回りして、北の方にも行ってみよっか!」
唐突な提案に、思わず俺の足が止まる。
それってつまり…
「きっと向こうにも春が訪れてる頃だぜ」
数歩歩いた先で立ち止まり、慶次が振り向きながらそう言った。
「俺の勘って、結構当たるんだ!」
とびっきりの笑顔で言いながら、また先を歩き始める。
俺も、その勘はきっと当たっている、そう思った。
そしてまた、俺は笑いながら歩き始めた。
既に風呂敷いっぱいの餞別を抱えた慶次に追いついた。
ちらっとはみ出てる招き猫とかかんざしとか、それもらってどうすんだ?
「名残り惜しいんじゃないの?」
肩を並べて歩きながら、慶次が覗き込むように聞いてきた。
名残惜しさがないと言えば嘘になる。ここは、俺の人生の一部に違いないから。
そして、もう二度と戻る事のない、人生の一部だから。
「お~い慶ちゃ~ん!」
後ろから、息急き切って走ってくるのは、どこだったかの遣り手のばあさんだ。
おいおい、フラフラしちゃって大丈夫か?
「あぁ良かった間に合った」
俺達のとこまで辿り付くと、ばあさんは肩でぜいぜい息を整えた。
「アンタが贔屓にしてた銀髪の女郎さんから頼まれたんだけどねぇ」
言ってばあさんが差し出したのは、折り紙で作られた一羽の鶴。
「じゃあ確かに渡したよ!気を付けて行っといで!」
それだけ言うと、ばあさんはまた走って戻って行ってしまった。
いや、もうそんなに急いで走る事ないんじゃないかな~
と苦笑いしている間に、隣で慶次が、受け取った鶴を開いている。
開ききったその紙に、書かれていたのは、「待ち人来たり」のたった一言。
「にやにやしちゃって…どしたの?」
その紙を持ったまま、気持ち悪い程笑みを浮かべている慶次の顔を覗き込んで、思わず俺はちょっと引いた。
「いや~春が来たな~と思って!」
言って慶次は、四つに折ったその紙を、大事そうに懐にしまい込み、またうきうきと歩を進めた。
「なぁ佐助!京も良いけど、少し遠回りして、北の方にも行ってみよっか!」
唐突な提案に、思わず俺の足が止まる。
それってつまり…
「きっと向こうにも春が訪れてる頃だぜ」
数歩歩いた先で立ち止まり、慶次が振り向きながらそう言った。
「俺の勘って、結構当たるんだ!」
とびっきりの笑顔で言いながら、また先を歩き始める。
俺も、その勘はきっと当たっている、そう思った。
そしてまた、俺は笑いながら歩き始めた。
完




