腕の中に閉じ込めた女が、徐々に身を固くしていくのを、元親は抑えられない昏い高揚と共に感じていた。
波の行き戻りが永い時間をかけて貝殻の角をまろやかに磨くように、些細な意識から時間をかけて積もっていったそれひとつずつは小さな感情だったものは、今や幾重にも積み重なって、自分でも仕舞いこめない程の勢いで元親の腹の蓋を突き上げている。
それが又、同じく些細なきっかけで表に出てしまった。
まつの笑顔に引き寄せられるように触れてしまったのは、正しく勢いだった。
波の行き戻りが永い時間をかけて貝殻の角をまろやかに磨くように、些細な意識から時間をかけて積もっていったそれひとつずつは小さな感情だったものは、今や幾重にも積み重なって、自分でも仕舞いこめない程の勢いで元親の腹の蓋を突き上げている。
それが又、同じく些細なきっかけで表に出てしまった。
まつの笑顔に引き寄せられるように触れてしまったのは、正しく勢いだった。
細い肩口に顔を埋めるようにして囁いたのは怖かったからだ。
人のものだと分かっている女。
人前で臆面も無く夫への愛を謳う女。
女を知らぬ青臭い小僧でも無いというのに、我慢出来ずに吐露した己の感情を否定される事が恐ろしかった。
まつが居るゆるりと過ぎる平和な時間が、いつしかかけがえの無い物になっていったせいもある。
人のものだと分かっている女。
人前で臆面も無く夫への愛を謳う女。
女を知らぬ青臭い小僧でも無いというのに、我慢出来ずに吐露した己の感情を否定される事が恐ろしかった。
まつが居るゆるりと過ぎる平和な時間が、いつしかかけがえの無い物になっていったせいもある。
だが、元親を男というより手のかかる子どもに近い認識で捉えていたと言ったまつが、抱きしめた腕の中で刹那怯えたような目を見せた時、早計を悔やむ心はあっという間に別の感情に取って代わった。
悪意を持った言い方をするならば、敢えて可能性から目を背け擬似的な家族ごっこを楽しんでいたまつを、強引に現実に引き戻したのが他ならぬ自分の温度である事が、思いの他痛快だった。
あの笑顔でずっと居て欲しい、大切にしたい。
そう思う気持ちと比例して、己の中に膨れ上がっていく悪戯心を通り過ぎた嗜虐心。
男なのだと、分からせてやりたくなった。
悪意を持った言い方をするならば、敢えて可能性から目を背け擬似的な家族ごっこを楽しんでいたまつを、強引に現実に引き戻したのが他ならぬ自分の温度である事が、思いの他痛快だった。
あの笑顔でずっと居て欲しい、大切にしたい。
そう思う気持ちと比例して、己の中に膨れ上がっていく悪戯心を通り過ぎた嗜虐心。
男なのだと、分からせてやりたくなった。




