小田原城は今日も桜が満開だ。
城主も無駄に元気だ。家臣がとめるのも聞かず、槍の鍛錬をして転んでみたり、
乗り込んできた西海の鬼に貞操を狙われたりしている。
小太郎も相変わらず、城内の警備を続けている。
あの日のあとはしばらくの間、いつくびか手打ちを言い渡されるかとかまえていたが、
これといった沙汰は何もなかった。
ただときどき、城主の閨に忍び込むようになっただけだ。
つくづく、仮にも城主がこんなでいいのか、あまりに思考が足りなすぎはしないかと
思うが、単なる雇われ人の身なので口には出さない。
自分が心配しなくても、こんな国はどうせ早晩、滅ぶだろう。
そうなっても、小太郎には義理も未練もない国だ。それなりの給料はもらってきたし、
堅実な小太郎は貯金もしっかりしているので、退職後の生活にも不安はない。
情勢が悪くなってきたら、適当なところで見切りをつけて逃げ出すつもりだ。
城主も無駄に元気だ。家臣がとめるのも聞かず、槍の鍛錬をして転んでみたり、
乗り込んできた西海の鬼に貞操を狙われたりしている。
小太郎も相変わらず、城内の警備を続けている。
あの日のあとはしばらくの間、いつくびか手打ちを言い渡されるかとかまえていたが、
これといった沙汰は何もなかった。
ただときどき、城主の閨に忍び込むようになっただけだ。
つくづく、仮にも城主がこんなでいいのか、あまりに思考が足りなすぎはしないかと
思うが、単なる雇われ人の身なので口には出さない。
自分が心配しなくても、こんな国はどうせ早晩、滅ぶだろう。
そうなっても、小太郎には義理も未練もない国だ。それなりの給料はもらってきたし、
堅実な小太郎は貯金もしっかりしているので、退職後の生活にも不安はない。
情勢が悪くなってきたら、適当なところで見切りをつけて逃げ出すつもりだ。
ここをやめたら、またどこかに雇われるのもいいけれど、しばらくは全国を
旅して回るのも悪くなさそうだ。
夏の空や、秋の落葉。冬の雪景色。星空や、月の光。
舞い散る桜も美しいけれど、それとは違う、もっと別の風景もあるのだと。
それもまた美しいのだと。
桜しか知らないあの人に、ぜひ教えてやりたい。
旅して回るのも悪くなさそうだ。
夏の空や、秋の落葉。冬の雪景色。星空や、月の光。
舞い散る桜も美しいけれど、それとは違う、もっと別の風景もあるのだと。
それもまた美しいのだと。
桜しか知らないあの人に、ぜひ教えてやりたい。
可愛いだけでは、戦国大名はやっていけない。
だが人間としては最強かもしれない。
遠くで響く、ふんぎゃあと甲高い悲鳴を聞きながら、桜一色の空に
小太郎はしみじみと思いを馳せた。
だが人間としては最強かもしれない。
遠くで響く、ふんぎゃあと甲高い悲鳴を聞きながら、桜一色の空に
小太郎はしみじみと思いを馳せた。
北条家当主は今日も頑張っている。
家臣も領民も頑張っている。
雇われ忍者は、無口な仮面の裏側で、北条家の滅亡を指折り数えて待っている。
家臣も領民も頑張っている。
雇われ忍者は、無口な仮面の裏側で、北条家の滅亡を指折り数えて待っている。