特に強がっている訳でもなく、本当に気にしていなさそうな主の様子に小十郎は再び首を捻る。
そんな小十郎の困惑を見透すように、小さな姫君は微笑んで答えた。
そんな小十郎の困惑を見透すように、小さな姫君は微笑んで答えた。
「俺にはお前がいるからな。」
「は…?」
呆気に取られる小十郎の頬に、小さな掌がふれる。
左頬に走る大きな痕を白い指がなぞった。
左頬に走る大きな痕を白い指がなぞった。
「お前は一生俺の籠の中だ。…逃げるなんて、許さないぜ。」
「……」
艶然と微笑む姫君の可愛らしく整った顔を見ながら、
こんなに幼い頃から、女というのは既に女なのだな。と
小十郎は何とも言い様のない気分になった。
こんなに幼い頃から、女というのは既に女なのだな。と
小十郎は何とも言い様のない気分になった。
どう答えたらよいものやらと困る小十郎に、姫君はぎゅうと抱き付いた。
着物に薫き染められた香が花のように香る。
着物に薫き染められた香が花のように香る。
「…お前はどこにも行くな。」
「姫様…」
「ずっとずっと、俺のそばにいるんだからな。」
抱き付く、と言うよりは逃がすまいと必死でしがみつくような主の姿に、
小十郎は微かに微笑み、その小さな背を軽くなでる。
小十郎は微かに微笑み、その小さな背を軽くなでる。
「…この小十郎などでよろしければ、喜んで姫様の籠に囚われましょう。
何処にも行きませぬ。御安心召されよ。」
何処にも行きませぬ。御安心召されよ。」
「本当だな…?」
うっすらと涙の滲んだ片方だけの瞳で
キッと見据える姫君に、小十郎はさらに応える。
キッと見据える姫君に、小十郎はさらに応える。
「本当です。小十郎が姫様に嘘をついた事が有りましたか?」
「しょっちゅうつくじゃないか!お菓子だって騙して苦ーいお薬飲ませるくせに!」
「…左様でしたかな。」
「もう!」
丸い頬をぷうっと膨らますと、時宗丸と遊んでくる!と言い放ち、
姫君は子犬のように駆け出した。
姫君は子犬のように駆け出した。
(やれやれ…何だったんだかな…。
まぁしかし、元気になったなら何よりか。)
まぁしかし、元気になったなら何よりか。)
そう内心呟きながら袴に付いた土を払っていると、
いつの間にか駆け戻って来た姫君に飛び蹴りを食らった。
いつの間にか駆け戻って来た姫君に飛び蹴りを食らった。
「何してる!さっさとついて来い!」
「…御意。(このガキ…後で絶対尻叩いてやる。)」
蹴られたみぞおちを擦りながら、
小十郎は姫君に手をぐいぐいと引っ張られながら裏庭から去って行った。
小十郎は姫君に手をぐいぐいと引っ張られながら裏庭から去って行った。
青く晴れ渡った空の下、
何処かで小鳥のさえずりが、楽しげに響いた。
何処かで小鳥のさえずりが、楽しげに響いた。
(おわり)




