答えを見つけるのに、丸一日を使った。
湯を使って体と髪を丹念に洗い、夜着に香を焚き染めた。小十郎が好きだと言っていた、
流行りの甘い匂いの香だ。
まだ頭が鈍く痛む。熱は引いたが、調子は万全ではない。
無言で小十郎の居室に入る。夜着を着た小十郎は、足を崩して一人で酒を飲んでいた。
こちらに気づき、軽く目を見張っている。
湯を使って体と髪を丹念に洗い、夜着に香を焚き染めた。小十郎が好きだと言っていた、
流行りの甘い匂いの香だ。
まだ頭が鈍く痛む。熱は引いたが、調子は万全ではない。
無言で小十郎の居室に入る。夜着を着た小十郎は、足を崩して一人で酒を飲んでいた。
こちらに気づき、軽く目を見張っている。
「……幸村」
幸村は小十郎の前に両膝をつき、徳利から杯に酒を注いだ。小十郎はからくりのような
ぎこちない仕草で、酒を口に運んだ。
居室の奥に褥が敷かれている。見慣れた褥が妙にいやらしいものに見えて、思わず顔をそらした。
二人で寝るための褥は、まるで交情を促しているかのようだ。
「……俺が来ると、分かっていたのか」
小十郎は首を振る。いるか、と杯を渡され、頷いて受けとった。杯に両手を添え、酌を受けた。
「一人用の褥は、てめぇが使っていたからな」
「う」
余計なものはほとんどない片倉家に、余分な寝具などない。客用の寝具を使えばいいだろう、と
口の中でもごもごと呟き、気恥ずかしさをごまかすために酒を喉に流し込む。
「……待っておられたのか」
「いや……。——いや、そうかもしれない」
「そうか」
杯を置いた。膳の上には酒の入った徳利と杯しかない。殺風景な晩酌だった。
「幸村。お前も知っているだろう。俺は……凶暴な男だ」
「——分かった上で、お慕い申しております」
幸村は小十郎を見つめた。戸惑ったような、怯えたような目。
何に怯えているのだろう。目の前にいるのは、武器も持たず、戦う意思もない一人の女だ。
幸村は小十郎の前に両膝をつき、徳利から杯に酒を注いだ。小十郎はからくりのような
ぎこちない仕草で、酒を口に運んだ。
居室の奥に褥が敷かれている。見慣れた褥が妙にいやらしいものに見えて、思わず顔をそらした。
二人で寝るための褥は、まるで交情を促しているかのようだ。
「……俺が来ると、分かっていたのか」
小十郎は首を振る。いるか、と杯を渡され、頷いて受けとった。杯に両手を添え、酌を受けた。
「一人用の褥は、てめぇが使っていたからな」
「う」
余計なものはほとんどない片倉家に、余分な寝具などない。客用の寝具を使えばいいだろう、と
口の中でもごもごと呟き、気恥ずかしさをごまかすために酒を喉に流し込む。
「……待っておられたのか」
「いや……。——いや、そうかもしれない」
「そうか」
杯を置いた。膳の上には酒の入った徳利と杯しかない。殺風景な晩酌だった。
「幸村。お前も知っているだろう。俺は……凶暴な男だ」
「——分かった上で、お慕い申しております」
幸村は小十郎を見つめた。戸惑ったような、怯えたような目。
何に怯えているのだろう。目の前にいるのは、武器も持たず、戦う意思もない一人の女だ。
犯したいのなら犯せばいい。
どんな小十郎も、受け入れてみせる。
嫌がっても、恐ろしくても、傍にいたい。
どんな小十郎も、受け入れてみせる。
嫌がっても、恐ろしくても、傍にいたい。
幸村は小十郎に頭を寄せた。
体が熱い。まだ熱が引いていない。
「熱いぞ」
「……だから、なんだ。熱を出しても、胃の腑にあった食べ物をすべて吐いて寝込んで
いても、抱きに来たであろう」
体が熱い。まだ熱が引いていない。
「熱いぞ」
「……だから、なんだ。熱を出しても、胃の腑にあった食べ物をすべて吐いて寝込んで
いても、抱きに来たであろう」
もう、目を背けるのはやめだ。
破瓜を奪われ、酷い陵辱を繰り返された。
お互いにとって、取り返しのつかない過去だろう。できる事ならば、なかった事にしておきたい。
だが、なかった事にはできない。一度覚えた感情は、幸村の中にずっと宿り続ける。
時間を巻き戻す事など誰にもできない。
どのような過去があろうと、今、小十郎を慕う気持ちは変わらない。
破瓜を奪われ、酷い陵辱を繰り返された。
お互いにとって、取り返しのつかない過去だろう。できる事ならば、なかった事にしておきたい。
だが、なかった事にはできない。一度覚えた感情は、幸村の中にずっと宿り続ける。
時間を巻き戻す事など誰にもできない。
どのような過去があろうと、今、小十郎を慕う気持ちは変わらない。
「どうかしている」
「……お互い様にござろう」
背に腕が回った。冷えた体をしている。いったいいつからここにいたのだろう。
膝裏に腕が入り、小十郎は幸村を横抱きに抱き上げた。
「酷い事になっても、知らねぇぞ」
首に手を回し、小十郎を見下ろした。力のうまく入らぬ手に力をこめる。
「臨むところよ」
これ以上の言葉などいらない。
褥に尻をつき、幸村は小十郎の唇を求めた。
酷く犯せばいい。どんな仕打ちにも耐えた体だ。耐えられぬはずがない。
強く抱き締められながら褥に押し倒される。
「……お互い様にござろう」
背に腕が回った。冷えた体をしている。いったいいつからここにいたのだろう。
膝裏に腕が入り、小十郎は幸村を横抱きに抱き上げた。
「酷い事になっても、知らねぇぞ」
首に手を回し、小十郎を見下ろした。力のうまく入らぬ手に力をこめる。
「臨むところよ」
これ以上の言葉などいらない。
褥に尻をつき、幸村は小十郎の唇を求めた。
酷く犯せばいい。どんな仕打ちにも耐えた体だ。耐えられぬはずがない。
強く抱き締められながら褥に押し倒される。
悪い、という声を、どこか遠くに聞いた。




