数刻前
可愛は実父である毛利元就に呼び出された
可愛は実父である毛利元就に呼び出された
「お呼びでございましょうか父上」
「顔を上げよ」
その声には親子の情らしい物は感じなかった。
顔を上げれば端整な顔立ちの青年がいた。
この青年こそが中国地方を治める毛利家当主であり
可愛の父毛利元就その人である。
「顔を上げよ」
その声には親子の情らしい物は感じなかった。
顔を上げれば端整な顔立ちの青年がいた。
この青年こそが中国地方を治める毛利家当主であり
可愛の父毛利元就その人である。
-以前父の声を聞いたのはいつだっただろう?-
同じ城に住みながら可愛は生まれてから
片手で数える程しか逢ったことがない
それも正月や盆といった特別な日のみで
末席の自分は必ず呼ばれる事はない
同じ城に住みながら可愛は生まれてから
片手で数える程しか逢ったことがない
それも正月や盆といった特別な日のみで
末席の自分は必ず呼ばれる事はない
だとしたら呼び出された理由はただひとつ
毛利の娘として生まれた自分にいつか訪れる
「可愛よ」
この日生まれて十数年目にして初めて父に名を呼ばれた。
この日生まれて十数年目にして初めて父に名を呼ばれた。
そして
「明日、宍戸家に嫁ぐがよい」
その口から別れの言葉を告げた
「…はい」
可愛はもう一度頭を下げた
「長い間お世話になりました」
この日、可愛の禁じられた淡い恋心は終わった