厭な男――闇を駆けるかすがは心の中で繰り返す。
方々回った序に立ち寄ってみれば傍目から判るほど男は全身で不貞腐れていて、
深く詮索しなかったが何か落ち込む事があったんだろうと思った。
放っておけず腕を引っ張ってスダジイの立つあの場所まで連れ出したものの、
あんな草臥れたつまらない約束など守らなければ良かったと思う。
かすがは自分が溶けてしまいそうな感覚に恐怖した。
早く主の元に戻らなければ「かすが」と言う名のつるぎが溶けてしまう。
「謙信様!」
一目散に主の腕の中に飛び込むと、驚きながらも謙信はかすがを受け止めた。
「つるぎ…どうしたのです?」
「どうか、どうかかすがをいつまでもお傍に置いて下さい。
謙信様さえいらっしゃればかすがは、かすがは……!」
一息に吐き出すと琥珀色の瞳から大粒の涙がポロポロ零れ落ちた。
「……かすが」
琥珀の中に涼しく微笑む謙信が映る。
「お前は私のつるぎ。私と共に在るが良い」
「謙信様……」
主が纏う香の薫りに包まれて漸くかすがは安堵した。
自分には主が居る。
それで良い。
それ以上もそれ以外も要らない、ただ主の望むままに舞うつるぎでありたい――。
かすがは固く目を閉じた。
直に冬が来る。
真っ白な眠りの中で己の全てを凍て付かせれば楽に違い無い。
謙信の華奢な指がかすがの髪を撫でたが、その感触に違和感を覚えてしまう自分がさもしくて
かすがは無性に悲しかった。
方々回った序に立ち寄ってみれば傍目から判るほど男は全身で不貞腐れていて、
深く詮索しなかったが何か落ち込む事があったんだろうと思った。
放っておけず腕を引っ張ってスダジイの立つあの場所まで連れ出したものの、
あんな草臥れたつまらない約束など守らなければ良かったと思う。
かすがは自分が溶けてしまいそうな感覚に恐怖した。
早く主の元に戻らなければ「かすが」と言う名のつるぎが溶けてしまう。
「謙信様!」
一目散に主の腕の中に飛び込むと、驚きながらも謙信はかすがを受け止めた。
「つるぎ…どうしたのです?」
「どうか、どうかかすがをいつまでもお傍に置いて下さい。
謙信様さえいらっしゃればかすがは、かすがは……!」
一息に吐き出すと琥珀色の瞳から大粒の涙がポロポロ零れ落ちた。
「……かすが」
琥珀の中に涼しく微笑む謙信が映る。
「お前は私のつるぎ。私と共に在るが良い」
「謙信様……」
主が纏う香の薫りに包まれて漸くかすがは安堵した。
自分には主が居る。
それで良い。
それ以上もそれ以外も要らない、ただ主の望むままに舞うつるぎでありたい――。
かすがは固く目を閉じた。
直に冬が来る。
真っ白な眠りの中で己の全てを凍て付かせれば楽に違い無い。
謙信の華奢な指がかすがの髪を撫でたが、その感触に違和感を覚えてしまう自分がさもしくて
かすがは無性に悲しかった。
読んで下さった方、どうもありがとうございました。
また書けたら投下させて下さい。
お目汚し失礼致しました。
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お目汚し失礼致しました。




