「な、なにを……!」
反応したかすがは顔を上げ、そして叫びそうになってしまった。佐助がいつの間にか、
かすがの方に体を向けていたのである。
「そのまま聞けと言っただろう!」
真っ赤になっているはずの顔を見られたくなくて、かすがは顔を背けようとするが、佐助が
両手で彼女の顔を固定したため、強制的に視線をあわせるかたちになる。手に込められた力は
さほど強くないが、かすがは佐助の手を離せずにいた。
「ね、かすが。どうなの? さっきの話だと、かすがは俺のこと好きだっていうように
思えたけど、あってる?」
かすがは、視線を逸らすことも、応えることもできなかった。佐助の声と瞳は真剣だ。彼女が
苦手としている、猛禽が捕食するときのような目ではあるが、そのなかに不安と優しさの色が
まじっているようにも見える。かすがは初めて、その瞳に胸をときめかせた。
「――俺はかすがが好きだ」
不意に佐助が口を開いた。声は低く、ふざけている様子はない。かすがは? と、あの目で
聞き返されている。
たった一言で、かすがは胸が熱く、苦しくなった。今まで曖昧にしか聞かされていなかった
彼の気持ちを、はっきりと聞くことが出来たからだ。
「わ、私は……っ」
声を震わせながら、かすがも口を開く。いまだ熱い頬にある佐助の手に、自身の手を重ねた。
骨張った佐助の手を、指先と手のひらで感じる。
「私は…………、私も……おなじ気持ちだ、お前と。わ、私は、お前が……」
消え入りそうな声でそこまで言って、かすがは自分の手で佐助の目を覆った。それから、
かすがの手に驚いてひらいた佐助の口にすばやく己の唇を合わせ、すぐに離した。
「こ、これで分かっただろう!」
佐助の顔から手をはなして、目を伏せた。
すこし強引すぎただろうかと不安なところがあった。だが、今かすがの頬に手を添えている
この忍びは、自分が不器用な女であるということを理解してくれているはずだとも思ってもいた。
なので、かすがはそれ以上なにも言わなかった。この行動ですべて汲みとってくれるだろうと、
思っていた。
なのに、佐助は無言のままだ。
予想していたより沈黙の時間がながい。また、目を伏せたままのかすがは佐助が今どのような
表情をしているのか分からない。しだいに不安がつのってきたかすがは、ちらりと佐助の顔を
盗み見て、また視線を逸らした。
「なんて顔をしているんだ……!」
佐助はかすがの顔を見ていた。そして、内からあふれてくる歓喜を抑えられないような表情を
していた。誰が見ても、彼がいま上機嫌であるということが見てとれるだろう。かすがも、佐助の
嬉々とした感情を、彼の顔を見た一瞬でわかった。猛禽とはほど遠いその表情をよく見たかったが、やはり面はゆくて顔を上げられない。かすがはそれだけが口惜しかった。
「へへっ……すっげえ嬉しい」
佐助の声がずいぶん近くで聞こえると思ったときにはもう、睫毛が触れあうほどの距離に彼がいた。
かすがは男の名を呼ぼうとしたが、それは出来なかった。佐助の唇が、かすがのそれに
押し付けられていたからだ。
反応したかすがは顔を上げ、そして叫びそうになってしまった。佐助がいつの間にか、
かすがの方に体を向けていたのである。
「そのまま聞けと言っただろう!」
真っ赤になっているはずの顔を見られたくなくて、かすがは顔を背けようとするが、佐助が
両手で彼女の顔を固定したため、強制的に視線をあわせるかたちになる。手に込められた力は
さほど強くないが、かすがは佐助の手を離せずにいた。
「ね、かすが。どうなの? さっきの話だと、かすがは俺のこと好きだっていうように
思えたけど、あってる?」
かすがは、視線を逸らすことも、応えることもできなかった。佐助の声と瞳は真剣だ。彼女が
苦手としている、猛禽が捕食するときのような目ではあるが、そのなかに不安と優しさの色が
まじっているようにも見える。かすがは初めて、その瞳に胸をときめかせた。
「――俺はかすがが好きだ」
不意に佐助が口を開いた。声は低く、ふざけている様子はない。かすがは? と、あの目で
聞き返されている。
たった一言で、かすがは胸が熱く、苦しくなった。今まで曖昧にしか聞かされていなかった
彼の気持ちを、はっきりと聞くことが出来たからだ。
「わ、私は……っ」
声を震わせながら、かすがも口を開く。いまだ熱い頬にある佐助の手に、自身の手を重ねた。
骨張った佐助の手を、指先と手のひらで感じる。
「私は…………、私も……おなじ気持ちだ、お前と。わ、私は、お前が……」
消え入りそうな声でそこまで言って、かすがは自分の手で佐助の目を覆った。それから、
かすがの手に驚いてひらいた佐助の口にすばやく己の唇を合わせ、すぐに離した。
「こ、これで分かっただろう!」
佐助の顔から手をはなして、目を伏せた。
すこし強引すぎただろうかと不安なところがあった。だが、今かすがの頬に手を添えている
この忍びは、自分が不器用な女であるということを理解してくれているはずだとも思ってもいた。
なので、かすがはそれ以上なにも言わなかった。この行動ですべて汲みとってくれるだろうと、
思っていた。
なのに、佐助は無言のままだ。
予想していたより沈黙の時間がながい。また、目を伏せたままのかすがは佐助が今どのような
表情をしているのか分からない。しだいに不安がつのってきたかすがは、ちらりと佐助の顔を
盗み見て、また視線を逸らした。
「なんて顔をしているんだ……!」
佐助はかすがの顔を見ていた。そして、内からあふれてくる歓喜を抑えられないような表情を
していた。誰が見ても、彼がいま上機嫌であるということが見てとれるだろう。かすがも、佐助の
嬉々とした感情を、彼の顔を見た一瞬でわかった。猛禽とはほど遠いその表情をよく見たかったが、やはり面はゆくて顔を上げられない。かすがはそれだけが口惜しかった。
「へへっ……すっげえ嬉しい」
佐助の声がずいぶん近くで聞こえると思ったときにはもう、睫毛が触れあうほどの距離に彼がいた。
かすがは男の名を呼ぼうとしたが、それは出来なかった。佐助の唇が、かすがのそれに
押し付けられていたからだ。




