政宗は、長い脚を組んで岩に乗せている。
豊かな胸とくびれた腰は大ぶりの巾で覆われているが、湯に半ば透けている。
信玄の視線を誘うように腕を頭上に抱えて、胸を強調して見せた。
その後方に、頭を抱えている彼女の「右目」が控えていた。
信玄は、政宗の挑発には乗らず、黙って笑っている。
豊かな胸とくびれた腰は大ぶりの巾で覆われているが、湯に半ば透けている。
信玄の視線を誘うように腕を頭上に抱えて、胸を強調して見せた。
その後方に、頭を抱えている彼女の「右目」が控えていた。
信玄は、政宗の挑発には乗らず、黙って笑っている。
「よかろう。越後の謙信からも書状は来ている。その話、乗ろう」
「ha!小十郎。…聞いたか。オレらも、乗るぞ」
「…では。僕は、大坂へ…」
ばたばたと、賑やか過ぎる足音が近付いてきた。
「ha!小十郎。…聞いたか。オレらも、乗るぞ」
「…では。僕は、大坂へ…」
ばたばたと、賑やか過ぎる足音が近付いてきた。
「また、うるさいのが来たね。…置いてきてくださいと、お願いしたのに」
半兵衛が、呟く。
「あれは、鼻が利くのでな」
半兵衛が、呟く。
「あれは、鼻が利くのでな」
幸村と半兵衛は、相性が悪い。
半兵衛の幸村への第一印象は、正論で理論武装し、挙句には暴力で訴える暑苦しい甲斐犬で
あった。
半兵衛の幸村への第一印象は、正論で理論武装し、挙句には暴力で訴える暑苦しい甲斐犬で
あった。
「お館さむわぁっ!背中を流させてくださいっっ!!」
「…ダンナ。ダンナ!…そこには、大坂の軍師も、奥州の姫さんも…」
佐助が樹上から舞い下りて、一応幸村の注意を促す。
「…ダンナ。ダンナ!…そこには、大坂の軍師も、奥州の姫さんも…」
佐助が樹上から舞い下りて、一応幸村の注意を促す。
騒がしい闖入者に、片倉小十郎が鯉口を切る姿が見えたのだ。
「鎮まれ。幸村。…これには、奥州の独眼竜と、大坂の軍師がおられる。女人達の前で、何
を騒ぐ」
信玄の言葉に、幸村がきょとんとした。
「女人…達…………?」
を騒ぐ」
信玄の言葉に、幸村がきょとんとした。
「女人…達…………?」
(ああ……。やっぱり、ダンナ、気付いてなかった)
佐助が、こっそり頭を抱えた。
佐助が、こっそり頭を抱えた。
「え。政宗どのが、姫御前なのは、わかっていますが…あと、誰?」
政宗が、どんなに姿が良く見目麗しくとも、あんなに乱暴で目付きと口が悪いのでは、幸村
の基準としては、とても女人には思えない。が、政宗は、れっきとした奥州の姫御前である。
で、残るは、一人。
政宗が、どんなに姿が良く見目麗しくとも、あんなに乱暴で目付きと口が悪いのでは、幸村
の基準としては、とても女人には思えない。が、政宗は、れっきとした奥州の姫御前である。
で、残るは、一人。
その一人が、ぴりぴりとした雰囲気を漂わせている。
「だから、ダンナってば。思いっきり、本人目の前にして……」
佐助が、袖を引っ張る。
信玄も、大きな手で顔を覆っていた。
「え?だって、本人って…?」
佐助が、袖を引っ張る。
信玄も、大きな手で顔を覆っていた。
「え?だって、本人って…?」
ここが、出湯でよかった。
半兵衛が得物を手にしていれば、大乱闘が始まっていただろう。
政宗が、笑いを堪えている。
半兵衛が得物を手にしていれば、大乱闘が始まっていただろう。
政宗が、笑いを堪えている。
「…僕が、女だってこと、知らなかったのかい。幸村君」
半兵衛の気分を害したような冷ややかな口調に、ようやく幸村は、湯煙の中に振り向く半兵
衛の背中を見た。
「……は…?……だって、竹中どの、僕って………」
「オレも、オレって言うけどな。真田」
面白がるように、政宗が口を挟む。
半兵衛の気分を害したような冷ややかな口調に、ようやく幸村は、湯煙の中に振り向く半兵
衛の背中を見た。
「……は…?……だって、竹中どの、僕って………」
「オレも、オレって言うけどな。真田」
面白がるように、政宗が口を挟む。
肩幅はあるが、細い腰。
しなやかな長い手。
身のこなしは、柳のようにしなやかだった。
そして、唇には毒がある。
しなやかな長い手。
身のこなしは、柳のようにしなやかだった。
そして、唇には毒がある。
「まあ、そこの政宗君と比べると、僕は胸がほとんどないからね。色気も何も、あったもん
じゃないか」
半兵衛の言葉に、政宗が爆笑する。
「大丈夫だ。竹中。お前は充分coolだぞ」
じゃないか」
半兵衛の言葉に、政宗が爆笑する。
「大丈夫だ。竹中。お前は充分coolだぞ」