「小十郎」
「はい」
呼びかけに小十郎は思考を一時中断し、政宗に向き直った。
まっすぐに見据えてくる主の目に映るのは、まだ従順な執事の顔をした己の姿。
「俺は早いところ帰ってTea timeを楽しみてぇ。You see?」
政宗の目が弓形を描く。映っていた小十郎の姿が歪む。
「──征け」
「はい」
呼びかけに小十郎は思考を一時中断し、政宗に向き直った。
まっすぐに見据えてくる主の目に映るのは、まだ従順な執事の顔をした己の姿。
「俺は早いところ帰ってTea timeを楽しみてぇ。You see?」
政宗の目が弓形を描く。映っていた小十郎の姿が歪む。
「──征け」
主の命令に小十郎の中の枷が緩やかに外された。
平素は理性という檻に大人しく囚われている狂猛さが目を覚ます。
目にゆらりと凶悪な光が灯る。血が猛る。心が逸る。
平素は理性という檻に大人しく囚われている狂猛さが目を覚ます。
目にゆらりと凶悪な光が灯る。血が猛る。心が逸る。
執事とは何か。
それは、地の果て世の終わりまで主に付き従う忠実な従僕。
それは、あらゆる災厄から主を護る堅固な盾。
それは、主に仇成すすべてを打ち滅ぼす強靭な刃。
それが執事という生き物。
そして片倉小十郎は、伊達政宗の唯一にして無二の──執事。
それは、地の果て世の終わりまで主に付き従う忠実な従僕。
それは、あらゆる災厄から主を護る堅固な盾。
それは、主に仇成すすべてを打ち滅ぼす強靭な刃。
それが執事という生き物。
そして片倉小十郎は、伊達政宗の唯一にして無二の──執事。
「Yes sir, My master」
了解致しました、我が主。
恭順な態度で聖句めいた返答を口にすると、小十郎は主の命に従うべく馬車の扉に手をかけた。
主を護るための戦いに身を投じられる愉悦。それが己の目に声に所作の端に滲み始めたのを自覚し、小十郎は一瞬、自嘲の笑みを口元にのぼらせる。
だが外へと足を踏み落とした時、その笑みはすでに別のものへと変わっていた。
恭順な態度で聖句めいた返答を口にすると、小十郎は主の命に従うべく馬車の扉に手をかけた。
主を護るための戦いに身を投じられる愉悦。それが己の目に声に所作の端に滲み始めたのを自覚し、小十郎は一瞬、自嘲の笑みを口元にのぼらせる。
だが外へと足を踏み落とした時、その笑みはすでに別のものへと変わっていた。




