戦国BASARA/エロパロ保管庫

しあわせのみち5

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起き上がれぬほど深かった傷も快方に向かい、いつきが上田城を去る日が近付いてくる。

「でも、すごく世話になったけんど…おらたち、そんなたいしたお礼できねえだよ」
「いや、それはかまわぬ。無償で手当てをしろと、お館様もおっしゃっておられた」
「…虎のおっちゃんは、いいおさむらいだな」
「無論!」

主君を褒められて、幸村はまるで自分のことのように誇らしげに胸を張った。
その、大人に褒められた子供のような微笑みが、いつきの心を打つ。

上田城に滞在して分かったことだが、幸村は女性に対して随分奥手で、いつきの身の周りの世話をしてくれた下女に対してすら、近く接するのは苦手のようだった。
だがそんな幸村も、いつきとならそれほど緊張することもなく一緒に遊んでくれる。
童だと思われているから、女と思われていないから、いつきとは平気で話せるのだろう。
いつきはそれで良いと思っていた。自分のような童と共に居ることで、戦のことを少しでも忘れてくれるなら、それが幸村のためになると考えていた。

「いつき殿」
「!……な、なんだべ?幸村…」
兄妹のような関係でかまわないと思っていたはずなのに、改まった声で名を呼ばれて、いつきの心臓が思わず跳ねた。何を言われるのかと、意味もなく鼓動が早まる。
だが、今見つめてくる幸村の澄んだ瞳は、いつきを子供扱いも女扱いもしていなくて。

「そなたは、強うござった。機会があれば、ぜひまた手合わせ願いたい」
「え………」

それは武人として、いつきに敬意を払っている瞳だった。
子供でもない、女でもない。戦って力を認めたいつきを、幸村は武人として見ている。
武人たちが称賛するその清々しいまなざしは、いつきにとってはこの上無く悲しいものだ。
戦のことを考えながら、どうしてそんなに楽しそうな顔ができるのか。

「ゆき、むら…」
「…いつき殿?」
そんな目で見られるくらいなら、農民だと子供だと馬鹿にしてくれたほうがまだましではないか。
戦が無い時でも、幸村の心から決して戦は消えない。たまらない歯痒さに、息が苦しくなる。

「おらは…おらは、おさむらいじゃねえ!強いなんて、戦いたいなんて言われたって…ちっとも嬉しくねえだ!」

目に涙を溜めたいつきは無我夢中で、幸村の懐に飛び込んだ。


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