戦国BASARA/エロパロ保管庫

君死にたまふこと勿かれ2

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momo

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『私は姉上様のお力になりたいのです』


嗚呼、かつて同じ事を言った者がいた。
あれはいつだったか、異母弟が元服して、そうだ、あやつの首を刎ねる2年前の春――


不意に懐かしい声を聞いた気がして、元就はぼんやりと視線をさ迷わせた。
目の前に有るのは、薄い唇、通った鼻、意志の強い瞳、凛々しい眉、紅の鉢巻……そこまで視線を動かして、漸く現実へ引き戻される。


「……お館様を亡くし、今にも折れそうな采配を振るうそれがしを救って下さったのは、元就殿でござった。先の見えぬ暗闇に捕らわれたそれがしを、元就殿が崇める日輪その物の如く優しく照らして下さったのだ」
「……………」
「今度は、それがしが元就殿のお役に立つ番にござる。日輪のようにはなれずとも、炎の明るさにて元就殿の行く先を照らしまする」


元就の手を握り締めたまま、幸村は堰を切ったように言葉を続ける。



「確かに元就殿に比べれば、それがしの力など童同然かも知れませぬ。然しながら、それがしは、それがしは、元就殿を……」


そこまで告げて、幸村の動きがぴたり、と止まった。
握り締めた手がぷるぷると震え出し、首筋から耳の先まで途端に真っ赤に染まる。


「……如何した?」
「………ぁ!?う、あ、い、いや、何でもござらぬ!先程の言葉は忘れて下され!!」


先刻の勢いは何処へやら、幸村は慌てて元就の手を離し飛びすさるように二、三歩下がった。
流石に夜半に大声を上げるのは憚られたのか、それでも両手を震わせ破廉恥、破廉恥と小さく呟いている。

その様子に元就は僅かに口元を綻ばせ、だがそれをすぐに引き締めると幸村に向き直った。


「敵の総大将とのぶつかり合い、覚悟は出来ておるのか?」
「…う、うむ、勿論にござりまするぞ」
「共に戦うは復讐のみに囚われた輩ぞ。実質頼れるは己自身のみと思え」


漸く照れも収まったのか、静かに告げられるそれに幸村はゆっくりと、大きく頷いた。


「……ならばあい分かった。真田源次郎幸村、貴様は石田治部少輔と共に関ヶ原に向かえ。後の次第は追って伝える」
「承知致した!」


満面の笑みを浮かべるその顔に、もう別の姿がちらつく事はない。

東から暁光が差し、漆黒の空を静かに照らし始めていた。
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