戦国BASARA/エロパロ保管庫

影身に添う・壱3

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momo

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気がつくと身体の自由は奪われていた。
全身に何重にも縄やら帯やらが巻きついていて、さながら芋虫状態だ。
兜が脱がされていて、見下ろす小十郎と視線が真っ向からぶつかった。
苦虫を噛み潰したような仏頂面だ。
先ほどは乱れていた髪も今は綺麗に撫でつけられている。
左手には愛刀。
「……………」
なぜ殺さない。
風魔は負けじと小十郎を睨みつけた。

「なんで俺の命を狙う?」
「……………」
「お前が女だと知ったからか?」
「……………」
「おい! 口がきけねえのかよ!」
胸倉を荒々しく掴まれたが、風魔は眉一つ動かさなかった。
二度も敗れた。
風魔小太郎としての誇りはズタズタだった。
最後だけは潔くありたいと思っているのに、目の前の男がそれを阻む。

「せっかく見逃してやったっていうのに、これじゃあ、意味がねえじゃねえか」
苛立ちも露わに、小十郎は舌打ちをした。
「俺はお前が女であることを誰にも言ってないし、これからも吹聴するつもりはねえ」
「……………」
「それじゃ、駄目なのか?」
問いかけに答えることなく、風魔は大きな瞳に殺気を籠めて、小十郎を睨んだ。
兜を脱ぎ、その黒目がちな瞳を露わにした風魔は、胸のふくらみを隠していようが、どこからどう見ても女だった。
もともと、機動性と隠密行動が売りの忍たちの体格は、しなやかな筋肉をつけた細身で背も低めだ。
平均的な忍よりもさらに一回り小柄な風魔でも、『小太郎』という男名の印象が先行していたせいで、その性別を疑うことはなかったが、その愛らしい双眸を隠さなければ、完全に女だった。

「殺せ」
闇に溶けるような、けれど耳に染み渡るような細い声で、女が初めて喋った。
小十郎は微かに目を見開くと、胸倉を掴んでいた手を引っ込めて風魔から視線を外した。
「って言われても、前にも言ったが、俺は女を斬る趣味はねえ」
髪を掻きむしりながら、焦れたように言う。
「女、ではない。忍だ」
女扱いするということは、忍としての風魔を貶め、その誇りを踏みにじる行為だった。
そう暗に言ってやる。
「でもな……」
ちらりと風魔に視線を走らせた小十郎は、顎に手を当て、宙を見つめて固まってしまった。
その煮え切らない態度に、風魔は歯ぎしりした。
目で殺す勢いで、小十郎を見つめる。

小十郎は、そんな風魔の視線を受け止めて、短く嘆息した。
「じゃあ、伊達と契約するってのはどうだい?」
「!」
「もともと言うつもりもねえが、自分とこの兵隊の弱みを言いふらす奴なんていないだろう?
 それでも心配だって言うんなら、仕事の傍ら俺を見張っていればいい」
「……………」
風魔は密かに失望した。
それでは、全然問題の解決になっていない。
「ちょうど、軍議でも忍の強化を計ろうって話が出てたとこなんだ。どうだ? 悪い話じゃないだろう」
「……………」
竜の右目とはこの程度か。
怒りがふつふつと湧いてきたが、今首を横に振れば、話は永遠に平行線をたどるだけのように思えた。
「分かった」
風魔は凍てついた声でそう呟いた。



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